あとりえ猫の宮殿~ネリとおたくな猫ちゃん達

あとりえ猫の宮殿~ネリとおたくな猫ちゃん達

童話「天上の猫の日」



虹の橋にある猫の宮殿でも、たくさんのお友達を招いて

今夜は、猫の日パーティーが開かれているところです。

テーブルの上には三毛猫の玲央ちゃんとサビ猫のちゃくらちゃんが作った

たくさんの料理が並べられています。

みんな、ワイワイ賑やかにオシャベリをしながら

楽しく食事をしています。

こちらの世界では病気なんてものは存在しないから

普通の猫だった頃は食べられなかった甘いものや

塩分の強い物だって全然食べても構わないから

どんどん食も進みます。


コロちゃんは、お食事会が終わると

みんなを地下にあるシアタールームへと招きました。

先日、地上の世界へ遊びに行った時にこっそり撮ってきた、

みんなの家族の元気な姿を見せたいと思ったからです。

フィルムの中の家族を見たみんなは、

懐かしくて嬉しいような、寂しくて切ないような・・・

とても複雑な気持ちになりながら

溢れ出しそうな涙をこらえて画面を見ています。

コロも何だか急に悲しい気持ちになってきて

玲央の作ってくれたツナサンドを無理やり口に詰め込み、

ちゃあぼが注いでくれたマタタビワインをグイっと一気に飲み干しました。


マタタビワインを飲みすぎて少しほろ酔い気味のコロたちは

酔いを醒ますためにバルコニーへ出ました。

虹の橋にある猫の広場の方では、花火が打ち上げられ

年に1度の猫の祭典の夜空を華やかに彩っています。

「このはなび、ちじょうのみんなにも見えてるかな?」

一番ちいさなちゃくらが目をキラキラ輝かせながら問います。

「見えるわけないじゃん~!!」

超現実主義者のちゃあぼは少しうつむき加減で答えます。

ちゃくらは悲しい気持ちになり小さな体を更に小さくしてしまいました。

その肩を軽くポンっと叩くとコロは言いました。

「いや、みんなの想いがつながれば・・・きっと見えるハズだよ。」

「今日は2月22日だから、みんなでお願いをすれば

きっと神様が地上へ降りられる階段を降ろしてくれると思うんだ。」

「その階段を降りてゆくとどんなところへ出るの?」

「そのカミサマとか言うやつはどこに居るんだよ!?」

ちゃあぼが少し口を尖らせてコロにこう尋ねると

「あたちも、かみしゃまって、まだ見たことがないよ~!!」

それに続けるかのようにして、ちゃくらも聞きました。

「やっぱさ~、天上に来たからには、そのカミサマって~のにも挨拶しとかね~とな!!」

「そだね!!ちゃくらも握手してもらうんだ~~♪」

ふたりの会話を微笑ましく思いながら

コロが口を開こうとすると

「みんなも、カミサマにはお会いした事があるはずよ?」

ステレオの前でレコード選びをしていた玲央が

ハスキーな声で優しげに言いました。

手にはドヴォルザークの新世界交響曲が握られています。

「え~うそだ~☆ちゃくら、こっちきてからエラそうな人みたことないよ~?」

「だから~ここに来る前にみんな、1度だけお会いしているの!!」

「ちゃくらもあったことありの~?」

コロは火の付いていないキャットニップタバコを

虹色クリスタルの灰皿の中に置くと

ニコニコ顔でみんなに問いました。

「じゃあ、とりあえず皆で会いに行って見ようか?」

するとリビングの方からお友達たちもバルコニーへ集まってきて

「ねえ~、ぼくらも一緒に行ってもいいかな~?」

と聞きました。

「みんなもいっしょにおでかけ~♪たのしいねえ~♪」

ちゃくらは満面の笑みを浮かべて、とても嬉しそうに

ポンポン飛び跳ねています。

「じゃあ~取り合えず皆、中庭の方に集まってもらえるかな?」

白い扉のクローゼットを開け

愛用のマントを取り出すと

ちゃあぼ達にも仕度をするように促がしました。

「おいおい、なんで中庭なんだよ~ちょっと狭めえ~んじゃね~の?」

文句を言いながらも、冒険が大好きなちゃあぼも、ちょっと楽しそうです。

「ちゃくらはね~、せまいところ、だいすき~♪」

昨年のクリスマスに仕立ててもらった

玲央とお揃いのコートを着させてもらっています。

「これだけの猫数がいるんだから、せめて庭園の方がいいと思うんだけど・・・?」

コロの親友のヒトリであるマスダ君が心配そうに、

こっそり耳打ちをしました。

「いや、狭い場所の方が都合がいいんだ。

取り合えず行ってみれば分かるよ!!」

そう言いながらコロは軽くウィンクをすると

羽織っていた藍色のマントの内ポケットから

金色に輝く小さな箱のようなものを取り出しました。

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