りらっくママの日々

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2009年04月02日
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カテゴリ: オレとボク
今日の日記

「アイツとボク13」



いつもの服装と違っていて、ちょっとオシャレしてる感じがしたし、
独身みたいに見えた。
化粧もキチンとしているようだった。

「フジサワさん…」

ボクはフジサワさんに向かって言うと、フジサワさんがこっちを向いた。
ボクだとわかると、
すごく戸惑った顔をしていた。

そして、
彼女は、ボクと反対方向に走った。

「フジサワさん!」

ボクは叫んだ。彼女の後姿が、どんどん遠くなって行って、角を曲がった。
咄嗟のことだったので、ボクは呆然としてしまった。

とりあえず、コンビニに入る。
飲物を選びながら、今起こったことを考える。
うまく選べない。

追いかければ良かったんだろうか?
この駅は、フジサワさんを送った駅の隣の駅だ。
多分、彼女はこの辺りに住んでいる。

もしかして…
ぼくは、
ストーカーと思われたんじゃないだろうか?

あ、何か、落ち込んだ。

悔しいし、悲しいし…。


レジは混んでいた。
店員がレシートを取り替えていた。

カップルが、何か沢山買い込んでいた。
楽しそうに笑っている。
ボクはそれをぼんやりと眺めていた。

ボクはレジを済ませて、店を出る。
涙が出そうだった。

飲物を開けて飲む。
タクシー乗り場へ行こうか…。

ため息が出た。

脱力…。

このままずっと歩いて、家まで帰ろうか。

それもいいかもしれない。
誰とも話したくない…。

ボクは、そんな、ストーカーなんて、する人間じゃないのに…。
なのに…。

「アオくん…」

顔を上げると、フジサワさんが立っていた。

「ゴメンね…。逃げたりして…。」

コレは夢か何かなのだろうか?
現実感が無い。

ボクは、思わず、フジサワさんを抱き締めていた。

「ひどい…。フジサワさん、ひどいよ…。」

フジサワさんは、慌ててボクから離れようとした。
でも、ボクは離れないように力を入れた。

彼女が一度ギュッとボクを抱き締めて、力を抜いたので、
ボクの力も抜けた。
その瞬間に、彼女はスルリと、ボクから離れた。

「どうして、この駅にいるの?」

ボクの頭にフジサワさんの声が届くのに、時間がかかった。

「電車で、寝ちゃって、間違えて、降りちゃって、終電で…喉が渇いて、それで…」

フジサワさんが納得したように頷いた。

「そっか…。そうだよね。」

フジサワさんは目を逸らす。

ボクは何もできずに、フジサワさんを見ていた。

「良かったら、送ってあげようか?」

一瞬、何を言ってるかわからなかったけど、ボクは頷いた。
フジサワさんが行く方向にボクは、トボトボと付いて行く。

駅から離れた道は、うす暗くて、その中をボクたちは無言で歩いた。
住宅街の中に駐車場があった。

彼女が車の鍵を開ける。
コレは現実なんだろうか?

車に乗る。

「えっと、どこに向かえばいい?」

フジサワさんがボクに聞く。
エンジンをかけようとした。

「…旦那さんは?大丈夫なんですか?」

ボクはずっと気になっていたことを聞いた。

「出張。」

彼女が不機嫌そうに、ポツリと言った。
ボクが黙ったままだったので、彼女はエンジンをかけるのをやめた。

ボクは足元を見ていた。

このまま帰されたら、また同じように終わってしまう。
いろいろ聞きたいことがあったのに…。
何から聞けばいいんだろう。

「…」

「アオくん…?」

ボクがずっと黙っているので、フジサワさんが、ボクの顔をのぞきこんだ。

「どうして、…バイト終わってたって…言ってくれなかったんですか?」

「ごめんね。…、アオくん。…ホントに、ごめんね。」

ボクは顔を上げなかった。

「ねぇ、怒ってるの?こっち向いてよ。」

ボクは、そのまま下を向いていた。

結局、ボクと本気で話をする気は無いのかもしれない。

「アオくん…」

彼女は、ボクが泣いてると思ったのかもしれない。
小さい子をあやすように、
肩に手をあてた。

ボクが、顔を上げると、ホッとしたようにちょっと笑顔になった。
ボクは、何だか腹がたってきて、
彼女を思いきり抱き締めた。
今度は、逃げられないように。

そして、キスをした。
強く。
もう、逃げられないように…。

「ホテル。」

「え?」

「ホテルに行きたい。どこに向かうか聞いたじゃないですか。」

やけくそだった。

どうせ、ボクなんか年下だと思って、ナメてるんだ。
もう、嫌われたって、構わない。
この女をメチャクチャにしてやりたい。
もっと困ればいいんだ。
もっともっと、困ればいいんだ。

「アオくんらしくないよ…。
何でそんなこと言うの…」

「言わせてるの、そっちじゃないか!」

適当なことを言って、また逃げるつもりなんだな…。
ボクはそう思っていた。

「…それで気が済むの?」

「…うん。」

彼女は考え込んでいた。

「わかった。」

彼女が車のエンジンをかけた。



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最終更新日  2009年07月03日 19時46分16秒
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