りらっくママの日々

りらっくママの日々

2009年04月23日
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カテゴリ: オレとボク
今日の日記



「アイツとオレ22」



オレは半信半疑で言った。

「わからない…。ただ、2週間位、もっと…、ずっと来てない。」

オレは黙った。

何だかテレビドラマみたいだな…
この状況が滑稽で笑いそうになる。
でも、笑うわけにはいかない。

避妊しても、妊娠することはあるって聞いたことがある。
オレは少し心当たりがあった。

「ねぇ、ちゃんと避妊しててくれたの?」

サキがつぶやく。

「した。したけど…、100パーとは言えないし…。
でも…
まだ来るかもしれないよな?
そんなこと無いの?」

女の体はよくわからない。
でも、サキの様子がホントのことなんだと語っている。

「わからない…。」

サキは、黙った。

今日は車だった。
落ち着いて運転してられそうにない。

夏に花火を見た土手に行った。

でも、お互い何も言えなくて、
けど、何か言わなきゃいけない気がして。
頭の中が、これからの現実で回る。

でも、オレの決意は固まっていた。

「サキ、結婚しよう。
子供、産んでよ。
オレ、学校辞めて、働くから。」

それでもサキは黙っていた。
石を水辺に向かって投げる。

オレも投げる。

「本気で言ってんの?」
サキがオレの方を見ないで言った。

車に戻る。
サキがため息を大きくついた。

「学校辞めて、どこかで働けるってホントに思ってるワケ?
それで、どうするの?
私も就職、やめるの?
で、子供育てるの?
無理だよ。
絶対無理。
私、まだ20歳になったばかりなんだよ?
まだそんな自信ないよ!」

サキは、オレをニラミつけていた。
涙が出ていた。

「じゃあ、どうすんだよ?堕ろしたいのかよ?!」

オレもキレそうになって、つい大きな声を出してしまった。
サキも負けずに大声になる。

「嫌だよ!そんなことしたくないよ!だからこんなに悩んでるんじゃない!
どうしたらいいのよ!
何でこうなっちゃうわけ?
もう、嫌だ…。」

サキが泣き出す。
顔がベトベトで、可哀想な位だ。
ハンカチで顔を拭き、
オレはサキを柔らかく抱き締める。

しばらく、
サキの泣く声だけが車に響いていた。
オレのシャツが湿っている。

オレは、サキを強く抱き締めて、
口を開いた。

「何とかなるよ…。
やってみなきゃ、わかんねーだろ?
オレたち位の歳のヤツが、産んでたりするじゃねーかよ?
うちの親だって、結構若くてオレ産んでるし。

オレ、働くからさ。
何してでも、オマエら守るから。
どうせ、大学だって、
去年の春、辞めてたかもしれないんだし…。」

サキが泣き止んで、オレの顔を見る。
オレは続ける。

「それがちょっと早まっただけだよ。
神様が、辞めろって言ってんじゃねーか?

ただ、サキには悪いけどさ…。
な?
ちゃんと病院行って、調べてもらって来いよ。
オレ、ついてくし…。」

サキが、小さな声で言った。

「ホントに、…それで、いいの?」

「もう、なっちまったんだから、お互い、腹くくるしかないだろ。
でも、産むのはオマエなんだから。な。
大丈夫かよ?」

「…病院行く。でも、…来なくていい。
いかにもみたいで、
…恥ずかしいから。」

サキが恐る恐る言った。
さっきより、顔が和らいでいて、
オレに抱きついてきた。
お互い、顔を見合わせて、軽く笑う。

不安だけど、
もう、なるようにしか、ならないだろう。


オレは、翌日から、就職のことを考えて、
大学に探りを入れたり、
就職情報誌を買ってきたりした。

高卒で就職するなら、学校が企業を斡旋してくれたけど、
大学中退じゃ、そうは行かないらしい…。

条件、経験者。
新卒。
経験無しで大丈夫。
ガテン系。

やっぱり現実は厳しそうだ…。
何とかなるんだろうか?

オレはシュウから譲ってもらったギターを眺める。

バンドは…
やっぱ、解散かな。
それどころじゃなくなるだろうし…。

親にも話さないといけない。
味方になってもらえるだろうか?

ホントにオレは親不幸ばかりだな。

サキの親にも…

怒られるんだろうな。

殴られるの覚悟しないと…。

まずは、どこから手を出せばいいんだろう?
考えれば、考えるほど、
オレは自分が子供だと言うことを思い知らされる。

生活していくには、一体いくらかかるんだろう?
子供産むにも金がいる。

どこに住むかも…。

ああ言ったものの、
オレは生活して行くことを、何も知らない。

オレは甘ちゃんだ。
ホントに甘かった。

全く無責任だったことに気付いて、愕然とする。
せめて、オレが就職してさえいれば…。

でも、もうどうしようもない。
やるしかない。

そんなことをグルグル考えていた。
子供を堕ろすことだけは、できれば考えたくなかった。

そんな時、携帯が鳴った。
サキからだった。

「…ごめん。
病院いったよ。
遅れてただけみたい…。
すごいデカいホルモン注射、打たれたよ…。」

バツが悪そうに、サキが言った。
オレはホッとして、力が抜けてしまって、笑った。

「大丈夫か?
ごめんな。サキにツライ思いさせて。
オレもっと、
もっと気をつけるからさ…。」

サキもオレの様子に気が抜けたらしい。
声が和らいだ。

「ううん。私こそ、シンちゃん責めてばっかりで…。
嫌なヤツだったよ。
ゴメンネ。
嫌いになってない?」

「大丈夫だよ…。」

オレたちの間に、心地良い沈黙が流れた。

「サキ、いつかもっと、オレちゃんとするから。そしたら、
そしたら、結婚しような。
あのさ、明日、時間あるか?会えるか?」

「うん…。
ホントに良かった。
シンちゃん、ごめんね…。
ホントにごめんね…。」

サキは泣いていた。
ずっと泣いているのを、オレはただ聞いていた。


今から思うと…

この時子供が出来ていたら、

今のオレの隣には、サキがいたんだろうか?


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最終更新日  2010年03月27日 16時19分18秒
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