りらっくママの日々

りらっくママの日々

2009年07月20日
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カテゴリ: ある女の話:ユナ
今日の日記



<ユナ15>



出来たばかりらしい、キレイな雰囲気だったし、
ガラス張りで、女性も数人入っていた。
前の職場でも、女の先輩がハマってしまったとかで、
とんでもない金額が増えたって言ってた。

扉を開けるとタバコの臭いがすごくて、煙かった。
どうするんだっけ?
子供の頃、父親の友達が好きで、
連れて行ってもらったことが何度かある。
こんなキレイじゃなかったけど。

学生の時の男友達と、みんなを待つために見ていたこともある。
できるかな…
私は一人でパチンコをするって行為にドキドキしていた。

ええと、お札をここに入れればいいんだよね。
でもなぁ、千円だとランチが食べられちゃう。
どっかでお茶したと思って、500円だけ…

変なところで主婦根性が働く。
それなら入らなきゃいいんだけど、
お金増えないかな~って、つい思ってしまった。

銀色の玉がジャラジャラと箱に出てくる。

とりあえず、空いている席に座る。
隣に座ってる男の人が、すごく勝ってるらしくて、
玉が入った箱が、たくさん足元にあった。

すごーい!

私はそれを横目で眺める。
反対隣の茶髪のおにーちゃんが、上手くいかないのか舌打ちをしていた。

私は玉を入れて、この真ん中辺りかな?
ってところを狙って手元のレバーを動かす。

すると、期待してなかったのに、玉がいい場所に入ったらしい!
いきなり大きな音がして、玉がバラバラと出てきた。

「え?!どうしよう!」
私が慌てていると、隣で勝ってた男の人が店員を止める。
「ねえ、このオネーチャン当たったよ!」

上手に自分のレバーを固定して、
私に箱を渡してくれた。

店員が何か当たった印のようなものを私の台にして行った。
何か光っている。

「うわ、スゲェ!」
反対隣のおにーちゃんも私のところを覗く。

「あ、ダメだよ、まだ手緩めちゃ、このままこの位置にしておくといいから。」
隣にいた男の手が、
何でも無いことのように、私の手の上から手を握って固定した。

「うん、ココ狙うといいんだよ。
もうこうしておけば出てくるから。」

よくわからないけど、「はい!」って頷いて言う通りにすると、
男はすぐに手を離して自分の台に戻った。

男のタバコの香りがうっすらとした。
手の甲に男の手の感触が残る。

箱が一箱満杯になって、その「当たり」ってやつは止まった。

どうしよう。続けたら、スッてしまうかもしれない。
チャレンジャーになったものの、
無くなることが惜しくなった私は、
もうその一箱で満足して止めることにした。

「おねーさん、この後やっていい?」
茶髪のおにーちゃんが嬉しそうに言う。

もしかしてまだ出るのかな?
ちょっと惜しくなったけど、やっぱりやめた。

「あ、うん、どうぞ~。」

でも、箱を持って、どうするのか考えてしまう。
ええと…。

「あっちに持って行けばいーんだよ。」

さっきの隣の男が指をさす。

「あ、ありがとうございます!」
私は勝ったって言う高揚感でいっぱいになり、
満面の笑みでお礼を言った。

男は無表情に頷いた。

玉の入った箱を店員さんに渡すと、
店員さんがその玉を、玉数え機みたいな中にジャラジャラ入れる。
すると、その玉の個数が出て、
何か紙を渡し、あっちで変えるようにと指示された。

お金だと5千円だけど、こっちの品物とどうしますか?
って聞かれて、私は5千円を選んだ。

わぁ~。
なるほどね、コレは止められないって先輩が言うのもわかるかも。
私はちょっと嬉しくなった。

せっかくだからと、私は他の台も見たりしてからトイレに入る。
中は、まるでホテルの化粧室のような作りになっていた。
派手な感じの女の子たちが化粧をしてる。
もしかすると高校生だったりするのかも…?

ついこの前まで制服を着ていた気がしたのに、
ずいぶん自分が歳をとったような気分になった。
化粧を直しながら思う。

ふ~ん、すごいなぁ。
パチンコ屋さんって儲かるのね。
不思議な気持ちになる。
私は儲けたけど、更にこの店は儲かっているんだろうな。

店を出ると後ろから肩を叩かれた。
ひっ!

私が後ろを慌てて振り向くと、
さっきの男が立っていた。

「コレ…。」

男が差し出したのは、私が買った本の袋だった。

「あ、すみません。ありがとうございます。」

「あのさ…」

男が何か言おうとしてる。
何だろう?

「急いでるかな?
良かったら、飯いっしょに、どう?」

「はあっ?!」

私はつい大きな声を出してしまったのが恥ずかしくなって、
手で自分の口を塞いだ。

「いや、すごい不躾なこと言ってるのはわかってるんだけど、
今夜、飯を一人で食いたくなくて…。
勝ったから。
良かったら奢るから。」

新手のナンパ?
何これ?
さっきは無表情だったのに、男ってわからない。

でも私は頭の中で天秤をかける。
この男、ルックスは悪くない。
むしろ好みのタイプ。
私より歳上なんだろうけど、
Tシャツにジーンズにブルゾン着てるのが様になってる。

家に帰ってもどうせ誰もいないんだし、
今日も一人で何か食べるんだし…。

でもどうなの?
ついて行ったりして大丈夫なの?

いや、ご飯食べる程度ならいいんじゃない?
サトシだって女の子と食べたり飲んだりしてるみたいだし。
オネーチャンのいる店だって行ってる。

この人、何かワケ有りっぽいし、
本わざわざ渡しに来てくれたし…。

でもマズいよ、やっぱ。
私結婚してるんだし。
どんな人だかわからない男についてくのって…

私の迷いが顔に出たのか、
男が必死になって言う。

「俺別に、変なとこ連れてったりしないから。
ホントにホント!
って言うとますます怪しいか…」

男は一人で言って、困ったように笑った。
つられてつい私も苦笑いをしてしまう。

「いや、あの…ただ、ホントに一人で夕飯食うのが嫌で…。
っていうか、ちょっとカミサンと別居することになっちゃって。
一人でいると落ち込んじゃってさ。
ほら、キレイなおねーさんとご飯でも食べれば元気になれるかな~って。
あ、俺何言ってんだろ…。
いや、やっぱいいです。
すみません…。
困らせちゃってゴメンネ。」

諦めが早いのか早口で言うと、
男はトボトボと駅に向かって歩き出した。
何だか背中に哀愁がただよってるように見える。

  一人で夕飯食うのが嫌で…

「あの…」

男が振り向いた。

「いいですよ。私で良ければ。」

男の顔が驚いたと同時に、パァっと明るくなるのがわかった。

私は何を言ってるんだろう?






続きはまた明日

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最終更新日  2009年07月20日 19時39分17秒
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