りらっくママの日々

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2009年08月14日
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カテゴリ: ある女の話:ユナ
今日の日記



<ユナ37>



ブレーキなんかかけてなければ、
もっと単純なことだったかもしれないのに。

「それでまたお別れしに来たんだ?
今度は遠いね。簡単には来れないね。」

ヨシカワが優しい声で言う。
私は返事ができなくて、コーヒーを眺める。

「何か…言って?」

私があまりにも何も話さないのが不安になったのか、
ヨシカワが私の顔をジッと見る。

思ってることは沢山ある。

引越してから、
もう一度夫婦でやっていこうと思ってたこと。
でも、自分の中で、もとに戻れない何かがあって、無理だったこと。

優しい男の子が自分を好きになってくれたこと。
その男の子に支えられて生きてたこと。
心の中からサトシがいなくなってしまったこと。

ヨシカワが心からいつまでも消えてくれなかったこと。
いなかったのに、存在ばかりが大きくなってしまったこと。

言葉にしたら、あまりにも陳腐な話。
うまく伝えられるのか、伝わるのか、自信がなかった。

ヨシカワにもサトシにも、
多分私以外、誰にもわからないんじゃないだろうか。

心の中はそうだとしても、
現実は、夫以外の男を好きになって、
忘れるために若い男の子と不倫して、
その結果、夫と別れることにした女がいるだけなんだ…。

そして、状況はますます悪いことに、
そのバカ女はこうして、
好きな男に会いに来ている。

とろけるようなキスをされてメロメロってやつ。

客観的に見れば見るほど、
自分に呆れてきた。

でも心のどこかに、もうバカでいいやって開き直ってる自分がいて、
とことん落ちちゃえって自分がいて、
いや、実家に戻って頭を冷やせば?
って自分と葛藤していた。
ここまで来て何言ってる?

ううん、引き返すなら今しかない。

でも、そしたらまた同じことを繰り返す。
わかってるからここに来たはずだ。

もう一度勇気を出せ。
出すんだ。
受け入れてもらえるかはわからないけど…。


「そう。
お別れしに来たよ。
もう引きずるの嫌だから。
いつまでも前に進めそうも無いし…。」

口から出たのはそんな言葉だ。
いいの?私?
本当にそれでいいの?

だってやっぱり重たいよ、こんなの。
やっぱり拒絶されるのは怖い。
ヨシカワのために何もかも捨てたと思われたら、
多分…
いや、きっと、逃げたくなると思う。
ヨシカワといっしょにいられる先のことを期待したくない。

「俺と寝れば、俺のこと終わらせられそうなの?」

ヨシカワが淋しそうに私を見た。

私は言ったことに後悔したけど、
頷いた。

「淋しいこと要求するね…。」

ヨシカワはそう言って、私の顔をジッと見て、
キスをした。
そのまま手が、私の服を脱がしていった。

ずっとずっと、本当に欲しかった男の体だ。
ずっと会いたかった。
もっと早くこうなりたかった。

好き。

大好き。

お願いだから、ずっと私の側にいて。
ずっと私を抱きしてめていて。

そう思ってるくせに、
バカだ…私は。

怖い。
拒絶されるのが怖い。

また恋が終わって行くのを見たくない。


最後だと思うと胸が刺されたみたいに痛いのに、
ヨシカワの唇が、指が、
体に触れる度に、頭の芯が痺れる。
体がとろける。


気付くと私は眠っていたらしい。
毛布と布団がかけられていて、
素肌に男物のパジャマが着せられてた。

コタツの上に手紙とカップラーメンがある。

  仕事しに行ってきます。
  いなくなっちゃうと困るんで、
  服隠した。
  帰るまで待ってて!!!


やるかなぁ、そういうこと…。
私がタンスあさって適当な服着て出て行くとか、
家捜しするとか考えないんだろうか?
でも笑ってしまった。

外を見る。
真っ暗。
繁華街のネオンが近くに見えた。
もう10時か…。

昨日、よく眠れなかったせいか、
どうやらかなり深く眠ってしまったらしい。
安心し過ぎだ。

私はありがたくカップラーメンを食べた。
食べ終わってテレビを見ていると、
携帯が鳴ってる音がした。

サトシかも…。
表示を見たら実家からだった。

「ユナ?あんた今どこにいるの?」

母が暗い声を出している。

「友達の家。」

「夜サトシさんから電話来たの。
こっちに来てないか?って。
気になって眠れなくて…。」

「そっか…。ごめんなさい。
何て言ってた?」

「携帯にかけてみますって。
連絡行った?」

「うん。言ってあるから大丈夫。」

大丈夫じゃないかもしれないけど。

「何でこんな時間に友達の家にいるの?
早く帰りなさいよ?
そう言えば、年明けにはこっちに戻れるんだって?
じゃあお正月はどうする?
そっちで過ごしてもいいんじゃない?交通費もあるだろうし」

お母さんが一息に言いたいことを話す。

「ねぇ、お母さん…」

「何?」

「家に帰ってもいい?」

「…どういうこと?まさかアンタ変なこと考えてないわよね?」

やっぱり察してたんだ。
じゃあ話は早い。

「サトシと離婚したいの。」

お母さんが大きなため息をつくのが聞こえた。

「ダメよ。
ちゃんとサトシさんと話し合いなさい。
お正月はこっちに来なくていいから。」

「どうしてもダメなの?」

私は泣きそうになる。

「ダメよ。」

「サトシには言ったわ。」

「…何て言ってるの?」

「考えてみるって。」

「…ユナ、結婚はそんな簡単なものじゃないのよ。
帰ってよく考えなさいよ。」

「だってもう帰りたくないのよ。
もう嫌なの。
どうしても嫌なの。
お願いだから家に帰らせて?ね?」

「ダメよ。
ねぇ、サトシさんが何かしたの?」

「何もしてないけど…」

「じゃあそんなこと言わないで。
アンタが好きで結婚したんでしょ?
贅沢よ。
じゃあ結婚なんてしなきゃ良かったじゃない?」

「離婚しようと思って結婚する人なんていないよ。」

「そりゃそうだけど…
ちゃんと帰りなさいよ。
今帰りたくないなら、お友達が大丈夫なら、
気分転換して帰ればいいじゃない?
お母さんのこと、あんまり疲れさせないでよ…。
それじゃあね。」

「うん…。
あ、お母さん」

「何?」

「心配かけちゃってごめんなさい…。」

「おやすみ。」

電話を切った。
ため息をつく。

ごめんね、お母さん。

でも、昼間にサトシに送っちゃったの。
離婚届。


人の気配で振り向くと、
玄関の方でヨシカワが立ってるのが見えた。

「ただいま。」









続きはまた明日

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最終更新日  2009年08月14日 23時08分59秒
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