りらっくママの日々

りらっくママの日々

2009年10月23日
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今日の日記




「ある女の話:アヤカ66」



結局離れられなくなった。
そのままその部屋に泊まって、
翌朝出ると、雨が降っていた。

朝食を兼ねた昼食を済ませて、
どこか行こうか…って昨日みたいに言うけど、
これが最後ってお互い思っているから、
堕落したようにまたホテルに入った。

こんなに相手のことを求め合うことが、
何だか動物みたいで怖かった。

私の理性はどこに行ってしまったのだろう?
なのに彼から離れられない自分がいる。

ベッドに転がって、彼に抱きつき、
つまらない話をして、また抱き合う。

欲望のままに寝て食べて。
時間だけが過ぎて行く。

どうして時間は流れてしまうのだろう?
明日がどうして来てしまうのだろう?

 アイシテル

 アイシテル … ?

陳腐な言葉が頭に浮かぶ。

言ってはいけない言葉が頭に浮かぶ。


外に出たら雨がやんでいて暗かった。

夕食を食べるけど、
もうこんなふうに食べることも無いんだと思うと、
何を話していいのかわからなくなった。

明日からは、また元通り、
仕事の仲間として過ごすんだ…。
もうすぐ会うことも無い。

今だけの恋人。

車の中で、赤木くんが好きな曲を聴いて、
ずっとお互い手を繋いでいた。

何も言葉が浮かばなかった。

家に近づくといきなり赤木くんが車を止めて、
私にゆっくりとキスをして抱きしめた。

溜息をついて、
「参ったな…」
って独り言みたいにつぶやいて、
抱きしめながら私の頭を撫でた。

私も彼の体を抱きしめ返した。

それから決心したように体を離して、
私を家の側の道に降ろした。

「またね…。」

「うん…。」

家に帰ると誰もいないことにホッとした。
ボンヤリしてるのが何だか嫌で、
お風呂に入ると、
妙に現実感がようやく蘇ってきた。

私はずっと眠っていて、
長い夢を見ていたのかもしれない。

それならどんなに良かっただろう。

ううん、やっぱり夢だったんだ。
そう思おう。

髪を乾かして、バッグを開けたら、
テープが入っていた。

赤木くんから借りたテープだ。
やっぱりあれは現実。

ヘッドフォンをして、家の片付けをしながら聴く。

やっぱり上手い。

普通に私がライブハウスで聴いていた人たちよりも数段上手いって、
素人の私でもわかった。

耳に残る伸びのある声と曲。
彼独特の世界感が私の頭の中に広がる。

人の弱さ、
振り切る未来への希望。
明るさ、
温かさ、
激しさ、
今を生きていく、刹那。

ツカちゃんや、マノくんたちも上手かったけど、
こんな才能持ってる人って、本当にいるんだと思った。

彼はどうして会社なんかでくすぶっているんだろう?

ふとそんなことを思った。
余計なお世話だけど。

運とか縁とか?
世の中ってそんなことで満ちてる。

でも、もしも彼が音楽の道を選んでいて、
私も故郷にずっといたら、
私達は会うことはなかったんだろうな…。

罪悪感はあるのに、後悔は無かった。
終わりにする恋だと思っていたからかもしれない。
いつまでも続くワケ無いって。
この気持ちも薄れていくものだって。
私はそう思っていた。

寝る前に捨てる物をまとめていたら、
ヒロトから電話がかかってきた。

一瞬赤木くんかと思って、
そう思う自分に呆れてしまったり、
バカみたいに罪悪感が起こったりした。

でも、ヒロトの声を聞くとホッとする。
やっぱり、ここが私の家なんだ。

なんて身勝手なんだろう。


夢を見た。
忘れていたはずのツカちゃんが出てきた。

「オマエが好きなのはマノなんだろ?」

私はあの頃の気持ちに戻っていて、
違う違うと泣き始める。

私じゃなくて、ツカちゃんこそ、他の女の子好きになったんじゃない!
って、責めたてる。

好きになりたくてなったワケじゃない!
ツカちゃんが怒鳴る。
オマエを嫌いになったワケじゃない!

じゃあずっと側にいてよ!
他に好きな子がいたって、
私は良かったのよ!

無理やりツカちゃんにキスをしたら、
やめろよ!ってツカちゃんに引き剥がされた。

あの頃言い合えなかった言葉を、
お互いぶつけ合う。

こんなの私じゃない!
ツカちゃんなんて大嫌い!

嫌いなら行けよ!
どっちともなんて付き合えない!

選ばなくていいから…
お願いだから…

そういうの苦しいんだ…

うつむくツカちゃん。
ツカちゃんの胸を泣きながら叩く私。

こんなこと言い合ったって仕方無いのに。
だって私達、別れちゃうんでしょう?

ああ…でもこれ位すれば良かったんだ。
それともこうしたんだっけ?

どこまで言った?どこまでした?

私が私を見ながらそう思う。
でももうツカちゃんは戻って来ないだろう。

そう思って見上げると、ツカちゃんの顔がマノくんに代わり、

「俺、ホントはずっと好きだったんだ…」

強引に抱きしめられた顔が赤木くんに代わる。

怖くなって目をあげると、
遠くの方でヒロトが悲しそうにこっちを見て、
何も言わずに去って行った。

待って!
待って!

心ではそう思ってるのに、
体が動かない。

赤木くんの体がドロリと溶け始めて、
溶けた私の体と融合し始めた。

ああ…
もう終わりだ…

私は離れられない

心が妙にそのことに納得している。

遠くで音が鳴っていて、
頭の中を叩きまわる。

警報?!

りりりりりりりりりり


目覚ましだった。

気持ち悪い位リアルに感じた夢だった。

自分で自分の体を抱きしめて、
息を吐く。

体に赤木くんと融合した感触が残る。

私って、こんな人間だったんだ…。


  赤木くんの歌、聴きました。
  スゴイね!
  どうしてプロになろうと思わなかったの?


赤木くんの姿を会社でみかけると、
私は何事も無かったようにしたくて、
メールを書いて出した。

昼食から戻ると返事が来ていた。


  なりたいと思った時期もあったし、イイ線いきそうなこともあったけど、
  オレの中ではどうしても家族が欲しかったし、
  音楽一本で養っていくほどの才能があるとも思えなかったから。

  でも、まだこれから、ライブやってって、
  どうするか考えるよ。
  気楽な独り者だしね!
  ジジイになってもバンドやってやる!
  って、オレは思ってる。


そっか。
彼の中ではメジャーになるとかよりも、
ライブの一体感が好きなのかも。
その感覚なら、なんとなくわかった。

でも、やっぱり淋しいのかもしれない。

彼の未来に私はいない。

そんなことをポツンと思った。

どうしよう、テープ…。
お礼に読んでないって言ってた本も持ってきている。

今日も二人で会えたら…
会いたいって、
彼の顔を見たら思ってしまっていた。

でも、
やっぱり誘うことに気後れした。

それは、もういけないことだと思う。
朝の夢のヒロトの悲しそうな顔がチラついた。

机の上に置いておこうかと思ったけど、
持ち帰ることにした。

やっぱりこのテープはダビングさせてもらってから返したいと思った。

電車の中で、
ふと、今夜も一人で夕食を食べるなら、
あの赤木くんが教えてくれたバーレストランで食べて帰ろうと思った。

あそこなら一人で食べても大丈夫そう。
コーヒー豆、買えるか聞いてみよう。

店に入って、
カクテルと夕食になりそうなものをオーダーした。
今日はピラフ。

赤木くんが作ったって言う、
卵がグチャグチャになって失敗したチャーハンの話を思い出した。

以前、赤木くんに声をかけていた、
店の男性がカクテルを出しながら私にも声をかけてくれた。
どうやら私のことを覚えてくれたらしい。

「今日は一人?
これから赤木くん来るの?」

「いえ、違うんです。
ココが気に入っちゃって。
もうすぐ引越しちゃうから、
来収めしようと思って。」

「あ~、何だ!そうなの?
残念だなぁ~。」

「でも、引越すまで来ます。
ここのコーヒー美味しくて…。
インスタントじゃないですよね?
豆ってどこのなんですか?」

「あれ?わかるんだ?
アレグロ・ヴィバーチェってとこのでね…」

通販の仕方を教えてくれて、
マスターは今ある豆を少し安く売ってくれた。

ここに来て良かった。
もう夕飯を作ることも無いから、
毎日通っちゃおうと思った。

店のドアが開いて、
マスターが、
お、いらっしゃい!来てるよ!
って声をかけた。

ドキンって心臓が音を立てた。

中に入ってきたのは赤木くんだった。

心のどこかで期待してたのかもしれない。
でも、実際赤木くんを見たら、
驚いてしまった。

また心が高揚するのがわかる。

ダメだ。
やっぱり会うと、気持ちが止められない…。





続きはまた明日

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最終更新日  2009年10月23日 18時17分43秒
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