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三軒茶屋に昔馴染みのおぢさんが住んでいます。映画繋がりの人で、若い頃は良く呑んだものです。今はもう覚えている人も少なくなったかもしれませんが、三軒茶屋には名画座が2館あって、そこの映写技師のお兄ちゃんなんかも伴ってちょくちょく呑んだものです。しかし、年齢を重ねるにつれて会う機会も減ってしまっていました。若い頃からの友人、知人で今でも継続して呑む人は片手に余るほどになってしまいました。今でもたまにそうした人たちの顔を思い出しては呑みに行きたいなあと思ったりもするのですが、そもそも連絡手段を失ってしまった人も少なくないのだ。三軒茶屋のおぢさんについては、どういう経路を通じてかは分からぬけれど、突然LINEのお友達リストに出没したのであります。なので、久し振りとか何とかひと言メッセージを投げると反応があったので、そのうち呑みに行こうと書いたのだ。それがもう2年以上前のことらしいから、ぼくにとってのそのうちというものの時間的なスパンが明らかに長くなってきているようなのです。無論、年とともに筆不精が酷くなっていることもあるけれど、いずれとか近々になんていうことを言っていてはあっという間に1年や2年は経過してしまうのだ。久々に会った旧友なんかと町で偶然にすれ違ったりして、近いうちに呑もうよなんて言われることが稀にあるのだけれど、それで連絡がないからといって怒ってはいけないのだ。彼もぼくと同様に本当にそのうちって思っているのだけれど、パラパラ漫画をめくるように日めくりカレンダーが剥がされていくのだ。だからどうしても呑みたいのなら、その場で日取りを決めるのが一番なのだ。それで果たせないとなればその人とはもう縁が切れていると判断するのが賢明なのだと思うことにするのだ。さて、三軒茶屋のおぢさんとは会えたのかというと無事(ではないけれど)、会うことは叶ったのであります。。 しかしまあ、実際に再開してみてからの話はさておくこととして、約束の日の昼過ぎにちょっとした用事を済ませねばならないのですが、基本的に時間をやり過ごせばいいだけの用向きだから昼間っから軽めに一杯しつつ昼食を取ることにしたのです。うろうろしていたら「甲州屋」なるそば屋がありました。この界隈には他に目ぼしい店もなかったのであっさりここに決めます。雰囲気もいかにも町場のそば屋って感じで悪くないしね。混み合っていないことを願いつつ入ってみると先客はわずかにお一人だけ。昼めし時にしてこの状況はいささか寂しい気がしますが、ぼくにとっては空いている方がありがたい。品書きを眺め倒してみるとカツ丼が目に留まった。ぼくはあまりカツ丼を食べる事はありません。油があまり得意じゃないからですね。でもまあこの日は猛烈にカツ丼の気分だったのです。店のおばちゃんにビールとともにオーダーします。お新香を摘まみつつカツ丼の到来を待ちます。見ると先客もカツ丼のようです。厨房から漏れ聞こえる音に耳を澄ますとカツもその場で衣を付けているようで恐縮な気持ちになります。立て続けにバラバラと同じ品を頼むのは気が引けるものです。たとえそれが知らなかったこととはいえです。見た目にもごくオーソドックスで、だからこそまさに今食べたかったカツ丼が登場します。これが何とも分厚い肉でありまして、見かけ以上に食いでがあります。並にしたけれど特上にしたらどうなるのだろう。肉の質が向上するのであればいいんだけれど。と思っていたら続いてのお客さんが来店。前日もやって来たようでその際に特上を食べたらしいが非常にボリュームがあったらしい。おばちゃん曰く、以前この側になんとか薬科大学があって、そこの学生のために量を多くしたそうな。といったことでその体格のいい方はこの日は並を注文していました。といったやり取りをそっと眺めつつ食べ進んだわけですが、すっかり満腹してしまいました。旨かったんですけどね。ここまで満腹になるつもりはなかったので。これで午後の用件はほぼ夢見心地で過ごすことになりそうです。でもまた忘れた頃に無性にカツ丼が食べたくなるんでしょうが、その時にはこの店のような品が食べれたらいいのになあなんて思って店を後にしました。
2024/09/01
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どうも二子玉川という町を訪れるのは気乗りがしません。訪れるたびに懐かしい風景は新しい何ものかに置き換わっていくのは致し方ないけれど、その変貌ぶりがぼくには退屈に思えるのです。その退屈さの所以は、いちいち書きはしないけれど、人にとっては二子玉川の町は成熟した大人の町に進化しつつあると語ることもあるのだろうけれど、ぼくには町の利用者に阿るばかりで店をやる人たちの矜持が欠けているように思えるのです。もしかするとこの町では、そこで店を構えるに当たって、そのおしゃれっぽい景観を崩さぬよう配慮することが求められているのかもしれません。従うべきところは従ってというのは当然尊重すべきであるとは思いますが、大体がまだ若い成長過程にあるべきはずの新興の町でしかない二子玉川がまだ成熟期すら迎えておらぬはずなのに、早々に老成を決め込んでしまっては今後の成長が危ぶまれるのではないかと思うのです。 実際にそうなのかは知らぬけれど、「川よし」などはこの町ではかなり古参の酒場の部類なのではないかと思うのです。でもしかしですね、まだ初代らしご夫婦がピンピンと元気に仕事されているようなお店なのだからさほどの歴史を持ち合わせているわけではないと思うのです。店の構えは世田谷風というわけでは少しもなさそうであるけれど、少しも酒場らしい風情はありません。正直なところ、暖簾が下がる前にはこの店の前を何度も行き来してしまったほどです。暖簾が下がらぬとそこが一体何の建物だか見分けがつかず、店の裏手の表に回ってほしい旨が記された看板を見て始めてそこが目指す酒場であることを知るのです。営業時間は自前の公式のHPがあるのかないのか知らぬけれど、夕方5時とあちこちで書かれているのだから時間通り始めるか5時から店を開けても客が来ぬと考えているなら開店時間の記載を変更するよう目ぼしいグルメサイトに届け出ていただきたいものです。さて、店内は、ゆとりある造りとなっていて残暑厳しい中にあっては快適でこれはこれでいいものだと思えるのです。初代らしき夫婦とその息子さんはまだ開店準備中であるようですが、けして慌てることもなくおっとりとした感じで準備を進めています。女将さんに手間の掛からぬ瓶ビールをお願いしていると、今度は初代が手書きの品書に本日のお勧めを張り替えて、こちらもよろしくどうぞと一言掛けてくれます。時間に店が開いてないのは残念ですが、開店準備中のこういうひと時も悪くないものです。お通しはニシンの山椒煮と小松菜のお浸しでしたか。好物の前者はあっさりと炊き上がっていてこれだけで呑み続けたい気もする位です。そうもいかぬだろうからぼくにしては贅沢して太刀魚をいただくことにしました。酒はここで店の定番の焼酎に切り替えます。確実に普通においしい三岳をいただくことにします。そのうちに常連さんが一人、二人と姿を見せます。顔見知りのようで席に着くやお土産を交わしあい、店の方とも各地のお土産を交換しているようで、お二人にはやはり他の常連からの差し入れらしき肴が届けられました。こういうのはそっとやってもらいたいなあ。アウェー感が寂しく思えるのです。やがて焼き上がった太刀魚は三つ編み風に処理されていて、料理番組なんかで目にすることはあっても口にすることは初めてではないか。丁寧な仕事で手間も掛かるだろうに。その甲斐あってか太刀魚の固く鋭い小骨も気にならず、焼き目の面積も増えるのか香ばしく独特の臭みもなくて美味しく頂きました。と、美味しいし店の方もいい人ではあるのですが、毎日通うお店ではないようです。いや、常連たちのようにボトルキープするのがこの店の本来の流儀なのかもしれません。今度この地の住民である知人にボトルキープさせて伴って呑みに行くと印象がぐっと身近になるのかなあ。
2019/10/15
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酒場放浪記に三軒茶屋の酒場が放映されました。伝統的な酒屋さんの屋号を受け継ぎ酒場として営業を続けるお店は、都内の東側に多く残っていてそれらについては折に触れては訪れて報告してきました。都内の西側では数年前に移転したけれど大塚にもあって、そこは何度かお邪魔したけれど近頃めっきりご無沙汰してしまっています。実は三軒茶屋に同じ屋号の酒場があることは、随分前からリサーチ済みで実地に店の前も歩いてもいました。つまりは機会を見つけて伺いたいとは思って意識していたのです。しかし、番組で見るその酒場の姿はどうもぼくが認知している酒場とは違っているように感じられるのです。改めて調べてみると何ということか三軒茶屋には同じ屋号の店舗が2軒あるらしいのです。そんなの現地の呑兵衛なら誰でも知ってるわいという事実でしょうが、意表をつかれたぼくは俄然興味が湧いてきて、然らば当の2軒をハシゴしてみようじゃないかと思うに至ったのです。 ところが日大のある通りにある、つまりは番組に登場した「伊勢元」は、店主の体調不良とかで休業中であったのでした。心配になってネットで調べて連絡をとってみるとしばらく休ませてもらっていたけれど、大分良くなったのでもうじき再開するとのお答えだったから今頃は毎夜明かりを灯してくれているものと思います。無念な思いで店主の話を聞いていると駅のそばはやっているのでそちらに行かれてはどうかとお勧めくださいました。やはりこの2軒は姉妹店なのか縁がおありのようです。すずらん通りの店舗は良く知っています、って行くのはこれが初めてですけど。こざっぱりとした外観は大衆酒場というよりはもうちょい格上のお店のようです。店内に入ってみると、その風情は有り触れてはいるけれど、なかなか渋いものでした。渋いといってもいぶし銀とでもいうのだろうか、壮年男性がそれなりに立派なスーツでも着込んでリラックスした表情で呑むようなそんな大人な雰囲気でありました。日大通りの方の店舗はテレビで見た限りではもっとざっくばらんとした大衆感に富んでいた気がするので、この点は好みが出そうです。しかし、店の雰囲気は好みで回収できるけれど、価格は思わずギョッとする程度には高額でした。いやまあ払えぬほどの高額ではないけれど、この値段で今の世の中、商売できているのが不可解な位です。店の雰囲気や出されるものはごく世間並みなのに値段だけは図抜けているというのはどうしたことか。そしてそれを分かっていて訪れる客が少なからずいるということにまた驚かされるのです。余り悪くは言いたくないけれど、これはちょっと世間ずれし過ぎではなかろうか。もうひとつの店舗も似たようなものであるなら、足を向けることはないだろうけれど、テレビのから受けた好印象によると、こことは別物であるという淡い期待を振り払うには至らぬのでした。 この夜は三茶在住の旧来の友人と呑んでいます。これまで何度となく名古屋のライブハウス兼居酒屋の「ラブリー」に因縁あるという「ラブル ダイニング(LOVEL DINING)」に誘われるのを周到に断り続けてきたけれど、いつもいつもそれでは申し訳ないのでお付き合いすることにしました。結構混み合っているので入れないと見込んだこともありますが、あっさりと入れてしまいました。ごちゃごちゃごみごみしていて、独りで来るのはとても無理ですが、まあ人数がいればこれはこれで三茶っぽくて悪くありません。卓上に散らばっている落花生は自由に食べてもいいのだとか。料理は手の込んだものではないけれど、素材も悪くないらしくちょいと美味しいのです。みるみるうちにワインが空いていきます。若い頃ならそれでもへっちゃらだったけれど、近頃ははっちゃけて呑み過ぎるとてきめんに酔いが回るのが早くなりました。酒量が落ちてもペースが変わらないのだから当たり前かと、久しぶりに若い人たちの集う店でつい自分も若返った気分に陥ったのでした。
2018/12/04
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千歳烏山という町に対しては、小奇麗な住宅街という印象しかありませんでした。そういう意味ではこの町に駆り出すきっかけを作ってくれた酒場放浪記という番組には、やはり多少なりの恩義を感じることになったのです。新宿からあっという間で着いてしまうのだからはるばるやって来たという気分は希薄なのもこの町を訪れる機会を減ずる理由となり得ると思うのです。そういう心理的に近くて遠いという町が実はまだ少なからずあると思うから、時間のある時にでも当たりを付けてみたいと思うのであります。いや、仮に訪れていても長らく縁のなかった町であれば、全く別な視線で町を再発見する事ができるだろうから過去帳を当たるより、思い立ったら予断なく出向くのが良いのでしょう。なんて事を思うのであるけれど、昨夜だって仕事の出先から早い時間に直帰するチャンスなのに身から出た錆で、無駄に潰してしまったのだからなかなか上手くは事は運ばぬのです。さて、千歳烏山ですがこれまでの書き振りだといかにも初めて散策したかのように書かれていますが、実のところ以前歩いているのですね。それなのに覚えがまるでないとは情けない限りであるし、それよりなによりこれからお邪魔する酒場を素通りしてしまったかと思うと顔から火を噴きそうな位に面目のないことに思えるのでした。 駅前の線路沿いを少し歩くといかにも健全な商店街から一転して、黒澤明の『野良犬』とか『酔いどれ天使』なんかに描かれたような胡散臭いムードの路地が不意に出没するのであります。そこにあるのが酒場放浪記で紹介された「鳥誠」であります。屋号はなかなかに高級感漂う格式高そうなものでありますが、現物を目にしたらわれわれの嗜好に親しいボロ酒場であることをご理解頂けるかと思うのです。もう何度も語っていてなおも繰り返すのはボロという言葉に含まれる愛情の何たるかを未だ理解されぬ方がいるらしいからです。と一応言い訳をしてみるけれど、まあとにかく千歳烏山なんてスカした町と思っていたところにこんな味のある酒場があろうとは思ってもみなかったのです。先にも書いたがここを見逃したは今生の恥と言ってもいいくらいです。だから先入観に基づくせっかちな散策にはこうした罠が付きものなのです。恥で済めばまだしもだけれどこのまま知らぬこととしてしまっていたら激しい後悔を噛み締めるより仕方なかったはずです。さて、混んでないし、かと言って空いてもいないから客の入りとしては、丁度よい塩梅であります。入口付近のカウンター席は、独りには格好の席です。美味そうな大皿を眺められて正直見ているだけ、匂いを嗅ぐだけでもはや肴など無用となりそうなのだけれど、それはそうもいくまい。なのでついゴーヤチャンプルーなど頼んでしまうのだけれど、いくら好きだからってそれで良いのか。正直抜群に美味いゴーヤチャンプルーを自ら拵える自信はあります。でもそれでも美味いから文句ないのだ。結論からすれば普段自分では自作せぬ肴こそ食すべきなのだろうけれどもう目先は好きな物に偏向せざるを得ないのだ。それを言うなら眼前にどっかと置かれた大皿の麻婆豆腐なんぞ好物の筆頭に挙げてもいいくらいであるけれど、これに関しては己の手作りのモノに絶対的な自信があるから頼まぬのであります。そう考えるとコチラは見掛けは独酌向きであるけれど、実は何人かで来るのが正解かもしれません。他人の気分で頼んだ品のほうがしっくりくる場合って少なかないですから。実際、カウンターのお隣の老夫婦は注文内容がまとまらずで口論寸前の掛け合いでそれもまた楽しなのです。 駅前に取って返して立ち寄ってみたのが「大衆酒場 亀屋」でした。ピンボケで何だか良く分からぬ見栄えとなっていますが、まあさして興奮するでもない普通の構えのいかにもな焼鳥屋に見えます。その推測は概ね間違ってはいないと思うのですが、閑散としているのがやや気になるところ。奥のテーブル席では世の中を一様に憎んでいるかのような険しい表情のオヤジが凄まじい威圧感で鎮座していると思えば、ぼくの隣の四十前後の男は頼もしくもとんでもない数の口の残骸を並べている。どうしたものかねえ、なんて相手にしなければ良いだけなのだけれど、すでに怯み気味になるのです。なんて席に着いてしまえばそんなの少しも気にならないんですが、とにかく曲者が多い感じです。外観は先の酒場がよほどハードでしたが人の醸すムードはこちらが余程ハードです。ここでは注文に迷うことはありません。ウーロンハイがお得だし、肴は焼鳥で構わぬだろう。どちらも特筆すべきところはどこにも見出だせぬ。店の方も客も引いた事だし、早めに店を閉めたいという気分が態度に見え隠れします。適度に緩くてダレた雰囲気をぼくは擁護します。いや、擁護というのはちょっと上からの物言いだし、大体が無礼なことを語っているのだからもう少し穏当な言い方を模索すべきだけれど、そう感じるのはむしろぼくが思いっ切りリラックスしてだらけているからもたらされる感想なのだろうなあ。
2018/11/03
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三軒茶屋という町は、呑み歩きを始めるまでは余り縁の薄い町でありました。事あるごとに映画好きであった事をネタにするのに、映画好きのメッカであった三軒茶屋に余り縁がないとは片手落ちではないか。そのご指摘は半分は当たっているけれど、残り半分は誤りです。何故なら三茶中央にせよ三茶シネマにせよ3本立てのロードショー落ちのいわゆる2番館という位置付けの小屋であった訳で、わざわざ三茶まで赴かずとも都心で存分に楽しめたのであります。ごく稀に訪れるのは時に思いがけぬプログラムが組まれたり、もしくは見落とした一本が混じったりしたからという理由がある場合に限られたのであります。しかし映画好きの集まりを何故か何度か三茶で催した事があります。その理由としては三茶シネマの映写技師だった男がそのメンバーだったこともあるし、もう一人この町に住んでいるオッチャンもいたからであります。この夜は、そのオッチャンとご無沙汰ぶりに呑むのが目的です。 以前にこのオッチャンと呑んだのは何年前の事だったかしら。ともかくその時に見掛けていた「大衆酒場 やまがた」をまずは目指すことにしたのです。初めて見て以来、何度かここの前は通過していたけれど運悪くやっていた試しがなかったので今度もダメもとで訪れたのですが、嬉しきかな営業しているようです。しかし気は抜けぬ。狭小な店舗だから、混雑して入れぬかもしれぬ。気を持たせてしまいましたが、実は大丈夫な事は分かっていたのです。O氏が前乗りしているからです。この説明が面倒だったから事実を捻じ曲げるところでしたが、この文章が日記に類するものである以上は偽りを述べては不味かろう。まあ言い落としはいくらでもありますけど。さて、店内は厨房前が立呑コーナーとなっていて、そこはそこでいい感じですが、ハードユーザのオッチャン達が指定席のように仁王立ちしているから割り込む隙はありません。やはりO氏も同様だったようで、壁に対面する窮屈な席に腰掛けて大人しく呑んでいます。第一声は雰囲気は良いけど、酒が高いなあ、だって。ぼくも店内に入るや内装と品書を瞬時に確認し、同じ感想を抱いたけれどそうあからさまな感想を述べるのは憚られたのです。やはり先乗りした分だけ余裕があるのです。ならば既に学んだここの注文の流儀に従うことにしよう。どうやら立呑コーナーでオネエさんに注文を告げて、しばし待って受け取るようだ。肴は焼鳥にしろオネエさんが厨房から出て運んでくれるらしい。確かに狭い店だから不慣れな客同士がぶつかったりして皿をぶち撒けては大変です。我々の背後には10名程度が座れる大きなテーブルがあるけれど、ここには準レギュラーといった立ち位置らしい男女混合グループがいて、一人明らかに年若い娘がいます。事更に声を張り上げて喋るオッチャンはこの娘に仕切りとかなり酷い下ネタ、猥談をかましています。彼は調子に乗り過ぎていずれ訴えられることを想定して備えておく方がよかろうと思うのです。我々の隣は独り客で何に腹を立てているのか、不気味な殺気を放っている。焼鳥のレバーがないと言われてはあからさまに舌打ちしたりそんなに不快なら来なければ良いのにね。まあ、そんな少しばかりやさぐれた所が酒場らしい酒場と言えなくもない、そんな酒場なのでありました。 三角地帯のもっとも濃い目の人一人が通るのがやっとという狭い路地に「くまちゃん」はありました。見た目からして真っ当な居酒屋らしい居酒屋がありました。これまで三茶で呑んで、いかにも居酒屋というお店はあまりなかった気がするから、これは嬉しやとお邪魔することにします。内装も煩くない程度に民芸調を基調としていて、これはいいじゃないか。ここて三茶のオッチャンともう一人も合流します。栃尾の油揚げやミョウガの千切りなどなど特別感はないけれどお値頃で飽きのこない定番が揃います。サワーはキワモノのバナナサワーやら色々あったけれど―これはO氏が呑んだけれど商品名そのままだとか―、いつもの定番に落ち着きます。メガジョッキもあり、2杯目以降はこちらにチェンジ。途中からは種類こそ少ないがやはりお安く頂ける日本酒にシフト。とまあ、いつまでだって呑んでいたくなるそんな居心地のいい居酒屋だったのです。若い頃なら朝までだって呑んだだろうけれど、年をとった我らは終電を気にしつつ帰宅の途に着くのでありました。
2018/10/27
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近頃、登場回数の増えている京王井の頭線の今回は東松原駅に降り立ちました。井の頭線が苦手とか言っておきながら、東松原駅からほど近い古い居酒屋に向かうのはこれが三度目なのです。店名に「三」の文字が含まれるから、三度目の正直とか言ってみるつもりはありませんが、事実過去の二度は時期も確かに良くなかったのですが、お休みという残念な事態に見舞われたのです。今回は、お盆前―もしくは後だったかな―の土曜日という実に危なっかしい日取りに加えて、人数が4名ということもあって悪条件が倍増しているのだから、今思うと随分と無謀な試みだったなあと思い返すのでした。でも今回はなんとか入店できたのだからそれでいいのであります。でも目指すお店が目の前に迫った時でした。駅とは逆の方から、美女2人組が不意に姿を現して、足取りの重いオヤジグループを嘲笑うかのようにして店の前に立つのでした。お二方は顔を見合わせ意を決したかのような表情で店に入っていかれたのですが、その躊躇する間にわれわれが割り込める余地は確実にあったはずであります。しかし、そんな無法な真似はできるはずもないのでした。でもありがたいことにお二人はカウンター席に通されたようで、われわれは首尾よく小上りの客となりおおせたのです。 念願仲ってお邪魔した「お酒 小料理 三木松」ですが、店は高齢の主がお一人で切り回されているらしく、とりあえずの酒を頼むとあとは手の空くのをのんびり待つしかないのです。でも機会を見つけて何か注文したはずなんですが、不思議なことにそれが何だったかまるっきり失念しているのです。ここは肴の旨さをどうこうするようなお店ではなかったのだと思います。とにかくこの古びているけれど、オンボロということもなく、賑わっているけれど喧しくはない、酒を呑むには恰好の空間さえ記憶に留めればそれで満ち足りていると思えるような、そんなお店なのです。ここでは、いつもはせかせかと呑んでは、堪能したとはとても言えぬような性急さでハシゴしてしまうのですが、ここでは四人が揃っていい気分になるまで、わずかの肴を啄みながらゆっくりと昔話などをして若かりし日を振り返りながら、酒を酌み交わせばよいのであります。記憶がないからそんな出鱈目なことで誤魔化そうとしているのだろうと、追及されたならそんあことはないと断言しきれるほどの自信はないけれど、今、思い出されるのは忙しくもスローなペースで店内を切り回すご主人の姿ばかりであって、その頑張りは年長者には失礼ながらも健気にすら思えてきて、思わず手を貸したくなったのだけれど、そうはしなかったのはオヤジさんの老いてなお気丈に孤軍奮闘する姿に自負を見ると同時に、ずっと眺めていたいという可愛さを感じたのだと思います。あと何年続けられるか知る由もありませんが、ぜひご健勝で少しでも長く店を開けていてくれることを願ってやまぬのです。なんてこれをアップしようとして写真を貼り付けていたら立派なマグロとタコの刺身のお通しも食べてますし、厚揚げもいただいたみたいですね。前言撤回で、肴も立派でした。
2017/09/20
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先般、小田急線の東北沢を経由して井の頭線の池ノ上駅の酒場放浪記登場店で呑んだ際に、東北沢駅の周辺は好んで呑みに行くような町ではないと書きましたが、どうしたものか再びこの駅にやって来たのでした。果たして何故にこの住宅街そのままの町を訪れることになったのか、それはやはり先日訪れた駒場の「居酒屋 かこ」で楽しい語らいに交えていただいた女性の常連客から最寄りな情報を入手できたので、それを頼りにやって来たのです。しかもその店名がその女性客も通い詰めるという、そしてぼくも長年世話になっていると書いた池袋の酒場と同じ店名のお店なのです。んな彼女と出会えたのも酒縁の賜物といろんな障害をかき分けて訪れたのでした。いろんな障害とは端的にいえば己の苦手意識にしか存在しないのだけれど、不得手なものを今更変えられる年代でもないので、渋谷や新宿への苦手意識はこの先もぼくの偏狭な心理に居座ることなのでしょう。しかしそれぞれの町に分け入るとそこはゲームの中のダンジョンなど所詮お遊びに過ぎぬなという程度の混迷度合いでありますが、現実の迷宮はゲームのようにやり直しは効かぬのだからおっかない。だからこそ面白くもあるのだけれど、好んで危険地帯に立ち入ることのリスクを負う愚かさを知らぬ年ではありません。そういうのは冒険とは言わずに無謀と呼ばれるべきものです。しかしそんな魑魅魍魎の跋扈する町も電車で一駅二駅と通り抜ければ呆気ないもので、途端に平穏そのものの住宅地に変貌するのでした。東北沢駅などは駅前というのは賑やかなものだという固定観念を打ち砕くにいかにも相応しい駅と住宅街が地続きの駅前風景なのです。こうした平穏が見せかけに過ぎなかったとしても、少なくとも見るからに危険な化物が姿を現すことはないのでした。 ここら辺って二十三区のどこに位置するのか言い当てるのが困難なエリアで後で調べてみると世田谷区の端にあるようです。なるほどここが世田谷区と言われるとこう雰囲気は納得であると言えるほどには世田谷区を知りもせぬのです。住むにはいいのだろうけど、散策にはさすがに退屈と存在しない駅前の周辺をぐるぐるキャンディのように旋回しつつ歩いていくとそれでも何軒かの飲食店があります。その中で最も古い居酒屋の体裁を保っている「味処 きらく」が教えられたお店です。確かにこれは思いがけぬ良い雰囲気のお店です。無口なオヤジが常連相手にやってる小体なお店を想像しており、少しだけ緊張します。引き戸を開けてみるとなんとビックリ。まずその広い事に驚かされます。まっすぐ伸びたカウンターは12席以上あったかな。その背後にはテーブル席が3卓ほどあります。想定の三倍の広さです。しかも店の主人が女性で優しそうな上品な方だったのです。なるほど池袋の同じ屋号の店の女将さんもちょっとタイプは違うけれど思いやりのある優しい人です。そして何より驚いたのが、すでに混み合う店内のぼく以外がみな女性だったのであります。まるでここが、女性限定の酒場であるかのようてす。グループ客もいますが、車椅子の古馴染みの婆さんはデイケアの方とご一緒していたりととにかく男が肩身の狭いお店なのです。オススメの餃子を頂いてみることにします。たまたまビールグラスにヒビが入っていることをこっそりと伝えたのに詫びか感謝の気持ちからか、通常より個数を増やして出してくれました。すごく美味しいとかいったものではないけれど、手作り感の溢れた丁寧さが多くの女性客を引き付けるのだろうな。大都会の先にはやはりこうした安息の休憩所があってほしいものです。
2017/06/24
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都心に近い鉄道路線でもっとも縁の薄いのは、恐らく京王井の頭線です。正確に言うと東京メトロや都営の地下鉄路線も全線を乗り潰したかどうかは、正直にところ自身が持てぬのでありますが、その路線網を眺めてみるとー本当は眺めていないー、範囲内は間違いなく歩き潰しているようです。そうした程度のモヤっとした意味で井の頭線は何度も乗車はしているけれど、沿線をしっかり歩くということはあまりしてこなかったのです。それはひとえこの路線の始発駅と終着駅が苦手というただそれだけの理由に尽きるのですが、渋谷も吉祥寺もできる事なら避けて通りたいというぼくのような者にとっては、井の頭線はそれらの鬼門を通り抜けてようやく乗車できる路線なのです。だからたまに抜け駆けというか抜け道を通って乗車します。遠回しな割にあまりうまい言い回しではありませんが、始発駅、終着駅を利用せずに途中から井の頭線に乗車するという程度の意味なのです。 酒場放浪記で放映された「熊八」もまた井の頭線の沿線の駅ですが、実は新宿駅から小田急線に乗車して、東北沢駅から最寄りの池ノ上駅まで歩いたのです。これがまあほんの数百メートル程度の距離しかないので歩いたという程には歩き甲斐もなく辿り着けるのです。新宿駅の乗り換えも消して好みませんが、渋谷駅のそれと比すると遥かに心の重荷は軽く感じられるのです。どちらの駅もほとんど利用した記憶がありません。降り立ってみて納得するのですが、とりあえず下車した東北沢駅の界隈は駅前がすぐに閑静な住宅街でした。まあ呑兵衛があえて好き好んで呑みに訪れる町ではなさそうです。まだしも池ノ上駅の周囲には数軒ばかりは居酒屋もあってうち幾つかにはお邪魔したいと思うのだけれど、とりあえずは目当ての店を訪れておかねばなりません。ところが探せど見当たらぬのです。もしかすると閉店してしまったのか。こういう時に確かにスマホは便利なのであります。検索するとおや、どうやら今いるこの場所こそが目指す店であるらしいのです。半地下の垢抜けぬ雑貨屋のような少しも居酒屋らしき指標のないその構えは、ぼくを引かせるに十分なものです。看板するないけれど小さな手作りのボードになにやら店名らしきものが記されていた気もしますが、それを確認するのも面倒なので、とりあえず入ってみることにします。ダメなら早々に席を立てばいいだけのこと。ハイボールを頼むと500mlの炭酸水のペットボトルとウイスキーが出されます。なるほど自分で割って呑むスタイルなのね。これは気が利いている。お通しは千切りのジャガイモを炒めたのに麹風味の塩辛を乗せたもの。おお、これはいいね。じゃがバタに塩辛というのは定番になりつつあるけれど、あれは量が多過ぎてそれ以外何もいらなくなる。それにしてもちょっと工夫を凝らした気の利いた肴が豊富だなあ、しかも値段が200~300円程度というのは大したものです。贅沢してカツオなどの二点盛りを頼むのですが、これが切り身も分厚く新鮮なのが明らかな立派な品なのです。これで酒がもっとあればなあと振り返ると、なんだホッピーやらもあるんじゃないか、なのでお代わりは焼酎のナカにしました。外観は正直ひどいけど、店内は町外れの酒場っぽい小上がりとカウンター席の造りで、内装の安普請さがむしろ酒場らしくて心地よいのでした。近所なら通わずにいられないだろあなあ。
2017/06/02
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東急電鉄は、一日乗車券が発売されて以来、いや正確にはその存在を認知してから東急の各線はようやく自分にとって身近な存在になりました。いやいや、これも正しくは副都心線が開通して渋谷駅での乗り換えにかかる煩わしさがぐっと軽減したことも大きいと思うのです。渋谷に限ったことではありませんがいくつかのウイークポイントがあるが故にまだまだ都内にいくらもあるであろう散策範囲を狭めてしまうのはホントもったいない。でも渋谷のことは苦手意識があるとかじゃなくてホントに苦手なんだから致し方ないのです。それはともかく東急線沿線を知るとその楽しさにすっかりとハマってしまい、丸一日自由になってしかも予算のない時には東急を乗り回すことが度々ありました。なのに目黒線はいつまで経っても馴染めずにいるのです。馴染めぬというより、この路線に何という駅があるか今でも十分把握できていないのです。 だか駅前のビルの二階に喫茶店を見つけて、喜び勇んで入ってみたはいいけれど、入ってみると以前見たことのある光景が広がっています。だけれど奥沢駅に下車したことがないとの思い込みの方が、現に目の前にする個性的な資格情報に勝るのです。「ドミンゴ」というその喫茶店は、一見するとパイプソファがモダンでシックな印象をもたらしますが、視線を転じてティルトアップするとどぎつい原色の虹のような照明が他店にない個性的でアンバランスな魅力を放っています。こんな特千代的なお店を再訪であると確信できたのがマッチを手に取ったときだったのは我ながら呆れたものです。 さて、であれば以前来たときに酒場放浪記で放映されたことのある「鳥汎」を探さなかったのか、その記憶はまるでないのでありますが、当時訪れていれば間に合ったかもしれないと思うと悔しくてならないのです。探せど見つからぬ。駅前からすぐの三叉路の島が店の住所を示していますが、ぐるりとひと回りしますがそれらしいお店は見当たらぬのです。店を仕舞われたのでしょうか。 時間も遅くなったので、捜索中に目に止まった一軒に入ることにしました。外観は典型的な居酒屋らしい店でなかなかよろしいではないでしょうか。何より「やきとり 駅 奥沢店」という店名が良い。駅という漢字にはそれだけで想像力を膨らませてくれる含蓄があるのが好きです。都心の地下鉄なんかでは、駅という漢字に見合っているとは思えませんが、ここ奥沢はその地名のローカル感からも似つかわしいのもに思われます。奥沢店とあるからには他にも店舗があるようですが、どこかで見かけた気もしますがしかとは思い出せません。店内も木造駅舎のムードがどことなく感じられる―手摺というか席の間仕切りの雰囲気―のてす。見方によっては西部劇に出てくる酒場のようなムードと見えなくもありません。そんな好みの店内は混み合っていて、入口そばのカウンター席に腰を下ろします。そして店のざわめきの中に見を置くとそれで十分満足なのです。肴は居酒屋らしい品が揃っていて、さほど旨くはないけれど手頃な値段なので文句があろうはずもない。昔の駅はこういう一息つける場所だったのでしょう。今では真逆の場所になってしまったのが悲しいことです。
2016/10/06
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前回、魚だらけのお店に行った際の感想では、そうそう下高井戸に来ることなどなさそうだと言ったばかりなのにまたまた来てしまったんですね。その報告では書きませんでしたが、久々に見掛けたそば屋というか食堂があまりにも素敵だったので、また来てしまったのです。その素晴らしくいい風情のお店は後のお楽しみにとっておくことにして、まずはそのすぐそばにある大衆食堂にお邪魔することにしました。 そのお店「よ志み」って言いいます。がしかし実は以前一度来ていたようです。まあ覚えてないんだからなんの問題もない、いや、いくらなんでもわずかに5年前位のことさえ覚えていないというのはやりちょっとどころかかなりヤバイかもしれない。物忘れのひどいことは置いておくにして、入った店内は飾り気なく味気ないほどでそれはまあ悪くないのですがいしか綺麗すぎるのが難点です。品数はそれ程多くはないものの、食堂らしい体裁は十分整っています。なのにどうしてこんなに空いてるのかなあ。近くにはマンモスな大学もあるって言うのにこの空きようはどうしたものか。今時の学生はチェーン店ばかりで、こうした個人の店には目も向けぬのか、なんて嘆かわしいことかとたまたま時間から外れただけかもしれぬのにムキになって憤ってみせるのでした。 さてお楽しみの「おそば お食事処 さか本(さか本そば店)」です。都内西部でたまさかに目にすることがありますが、寡聞にもここほどに風情のあるお店はついぞ見掛けたことがありません。よく店を見渡すと増築と改装を重ねたのでしょうか、2つの棟がくっついたようなかなり間口の広い店舗になってます。入口が左右に分かれていて、どちらから入るかで当たり外れがあるのではなかろうかと、慌てて入らずしばし観察と検討を重ねた末に左手の入り口を選択しましたが、それは予想通り店内は続きとなっていますが、風景にはそれほどの差異はありませんでした。こちら品数は大変豊富で、ここまでくれば本来が蕎麦屋であることなどどうでもよく思えてくるのですが、とにかくまあ愉快なお店であることに相違ありません。特別旨いとかどうとか言うつもりはありませんが、それでもこの店に感じる今はなき田舎の食堂のような緩やかな時の流れを存分に全身で味わうため、また訪れることになりそうです。
2015/12/25
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先だって長年の懸案だった下北沢での呑みを無事というか、ちっとも無事じゃなくなんとかかんとかクリアできたので、もはや当分来ることは無かろうと思ってたのに、一度来てしまえばぐっと敷居は下がるものらしくて、いやはやまたもや行ってしまったのですね。前回のノルマを消化するような味気のない呑みとは打って変わって、今回は何ものにも束縛されずに気ままにハシゴできるのがなんとも気持ちが楽になるのです。それにしても駅前のマーケットは、ほとんど原型を留めぬほどに跡形もなくなっており、白々した気持ちになるのですが、それはもう経験済みのことなのでだらしなく嘆くこともなく酒場を探して未練のないその場所を背に歩き出すのでした。 すると何とまあ芳ばしい佇まいでぼくの視線を一瞬にして虜にしてしまうお店があったのでした。「宮鍵」というお店のことはどこかで聞いたことがある、どうやら鶯谷の「鍵屋」なんかとイメージがダブってしまって、格調高いお店だと思い込んでそれがために記憶の片隅に追いやられてしまったようです。店内は大盛況ですが、奥の一列だけは空いているのは、団体の予約があるのかと思いきや、さにあらず、訳知り顔の常連風が涼しい顔をして入っていきました。どうやら常連のために確保しているようです。ぼくが隅っこの劣悪席で窮屈げに呑むのを何事もないかのようにチラ見されるのが悔しいが、それが馴染みの特権というところか。別にこういうやり方嫌いじゃないから気にしないけどね。それにしても場所柄ということもあるのでしょうが、やけに若い人が目立つのはなんだか店の雰囲気からするとしっくりこないなあ。何周年記念とかで半額とか書いてるけどこれって本当かなあ、ずっと貼ってるんじゃないの、しかも会計はなんだか腑に落ちないところがあるし。いや全然気になんかなりません、なんてったって雰囲気は抜群だしね。オヤジの無手勝流の仕切りっぷりもーやけに席を移動させられるーホントちっとも気にならないんだからね。 正直すごい好きな酒場だったですけど長居する気にはなれなかったので、次なる酒場選びは慎重にしよう、と思ったところに「とんかつ とん水」というお店が見えてきました。この雰囲気は間違いないないと入ることにします。まあどうってことのないありふれた食堂といえばそれまでですが、酒の肴になりそうな品が充実しています。これでもう少し酒に選択肢があれば言うことないのに。ぼくはカウンター席で呑んでいたのですが、地方から来て友人宅に転がり込んでるらしい若者たちが必要以上に絶賛を放ち捲くるのはちっとうっとおしいのでありました。それにしても近頃の若いモンは必要以上にゴマすりがお好きなようで、ちょっと面倒くさいなと思うのは、オッサンであることの証左なんであろうなあ。
2015/12/14
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近頃になってこの数年来はめっきり乗ることの少なくなっていた京王線を使う機会が増えています。実は下高井戸駅に降りたのもつい数日前のことですが、下らぬ理由から時系列を無視して報告することにしました。という訳でこの夜は、つい先だってまで上司であったT氏がー今は京王線沿線の某駅で勤務中ー誘ってくれたので、当初は新宿で呑むという申し出だったのを遮って下高井戸の肴が旨いと評判のお店にお邪魔することにしたのでした。 ご存知の方は当然ながらご存知であろう「魚魚魚(ととうお)」に向かいました。待合せは、下高井戸にある日大文理学部という巨大かつ文系と理系がごちゃまぜになった変な大学に向かうあまり代わり映えしない商店街の途中にある、味はどうでもないようですがなぜか結構有名なお店の前。このお店、居酒屋さんのサイドビジネスだったみたいですね。何度も見ていたはずなのに見過ごしてました。さて、目当ての店は定評のある店の割には枯れた雰囲気も少しあって悪くない雰囲気。ここを知る方の情報では、開店して即入るか、予約でもしとかないととのことだったので慌てて向かいますが幸いにもお一方呑まれているだけでしたが、テーブル席は宴会の準備が整えられていて、出遅れると危なかったかも。と思っているうちにも次から次へとお客さんがやって来て開店して30分するもほぼ満席となってしまいました。店に入るとクーラーボックスに入った主人が釣ってきたらしい魚を見せられて、見るからに旨そうでなかなか目にする機会のないあいなめを造りにしてもらいました。この日は火曜日だったのですが、呑み物の多くが半額となっていて実にいいタイミングで訪れたもので、自分の運の良さをほめてやりたくもなったのでした。さて、いつもの居酒屋よりはいくらかお高めですが、T氏はというと案外ご満悦で、久し振りにご馳走したからということもありますが、このお店のこと結構気に入ったみたいです。T氏の反応でこの店の良さが最も伝わるのではないでしょうか。ぼくは下高井戸に来ることはもうそうそうはないことと思いますが、選択肢の一軒になることは間違いなさそうです。 なんで先送りしてまでこのお店を報告する気になったのかと言えば、このブログをしっかりご覧頂いている奇特な方には気付かれた方がおられるかもしれませんが、昨日報告したお店の系列が「Bar 魚魚(うおうお)」だったので、魚繋がりのつもりだったのですが、だったら次は「魚」とか「魚魚魚魚」なんて店を探し出して行ってみるくらいの気概があって然るべきですが、残念ながらそこまでの気概などぼくにありはしないのてす。
2015/11/26
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経堂という町は何だか掴みどころのない印象で、小田急線の上下の各駅に比べるとまだしも町並みが賑やかで南北に結構な距離に亘る商店街もあったりするのですが、ここぞというポイントになる店などがなくて来るたびに希薄な記憶を頼りに歩いてみると、やはり何だかピンボケした町だなあという印象が残るのでした。逆に言えば毎度新鮮な気分で町歩きできるという重宝な町と言えなくもないわけですが、結局ぼんやりした町であることは変わりがないのでした。でもやはりと言うべきか見逃しているお店もあるわけで、夕暮れ迫る中途半端な時間帯に小腹が空いたので古臭くてくたびれ切った雰囲気の中華料理店があったので入ってみることにしました。その前に「経堂パンチ」とかいう微妙な喫茶店にも 駅前の人通りの少ない路地にある「光陽桜」にお邪魔しました。この町には案外多くの飲食店がありますが、ここぞと思えるような店が少ないように思われます。ってまあそれほど歩きこんだ訳でもないのにそんなこと言い切ってしまうのは後ろめたくはあります。そんな中では異彩を放つ中華料理店がここでした。角張った無骨な外観が古い中華のお店らしくて、溜まらず入ってしまいました。店内は中華のお店らしからぬ黒を基調としていて、独特の怪しげなオーラを放っています。店は老夫婦とその娘さんらしき方でやっていて、娘さんは一見とっつきにくい雰囲気でしたが案外気さくだったのに対して、感じの良い夫婦に見えたお二人は、娘さんの注文を伝える声に答えることもなくむっつりと黙りこくったままです。ちょうど餃子包む作業をしておられたのでもちろん餃子を注文。この餃子、まず8個という数も変わっているし、それより何より口がぱっくり開いてしまっています。まあ、口に入れば一緒だから問題ないですけどね。それより変なのが上海風ヤキソバで麺が中華麺とは思われぬグズグズの柔らかさで、ぼくはこういうもの嫌いじゃないですけど、ダメな人はきっと残しちゃうんだろうな。ラーメンもこの麺使ってるのかしら。ユニークなお店でありました。
2015/11/14
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下高井戸って用があってひと頃ちょくちょく訪れた町ですが、最近は縁が薄くなってすっかりご無沙汰していました。何度か呑みに来たこともあるにはあるのですが、それも数年前のことになるような気がします。駅の半径30m位は、マーケットなんかもあってごちゃごちゃした区画整理もままならないというカオスなムードもあり、これはなかなか面白そうだなと思うものの、そのエリアを越えるとまあ商店街はその先も続くものの、こぢんまりとまとまってしまっていてどうも胸わく感に乏しいのです。住宅街もしかるべく好奇心を発動させることで楽しめないこともないはずですが、まだぼくの枯れ方では町のほうがずっと楽しく思われるのです。 さて、そんなことはともかくとして、この夜は珍しくも寿司をご馳走になれるとのこと。でも寿司のためにわざわざ下高井戸とは面倒な事よとあまり乗り気ではありませんが、断るのも気が引ける。「旭鮨総本店」という都内に多くの店舗を構えるというその総本山、いや総本店がどうして下高井戸なんていう歓楽街もない町にあるのだか少し不思議に思いもしたのですが、まあ実のところはそんなことはどうでも良かったらしく、店の方に聞きもしませんし、後から調べてみようとも思わぬのでした。そういう豆知識を披露すると少し位はそのブログも役に立つものとなるだろうし、何より物知りだと勘違いしてもらえるかもしれぬという下心もないことはないのですが、現場に来るとすっかり気持ちは酒に傾き、そんな事前のリサーチなど記憶の片隅に追いやられるのでした。5時を回った頃のまだ客のない時間に入ったせいか店は閑散としており、寒々としたムードが漂っています。店内の雰囲気もあまり寿司屋っぽくなくて、もっぱら会合なんかで使われそうな感じです。刺身を中心とした肴も今ひとつ感心せず、まあ値段だけは二流どころのお店といったところでしょうか。肝心の寿司すら今では美味かったとか不味かったとかの記憶さえなくて、これならまだしも酷いくらいのお店のほうが余程面白みがあったと思うと、スボンサーには申し訳ないことです。 なので、会を終えるとたまたま同席した知人と「吾作」に向かいます。ここは以前から来たいと思っていたので、京王線に揺られて下高井戸駅のホームに電車が滑り込むとーって言い方をたまに見かけますが、ホームに電車が滑り込んだらえらい大事故だー、細い路地を隔ててホーム上からその勇姿を眺めることができました。「ちえ分店」とあるので、やはり本店もあるかというと実際存在するようです。本店を差し置いて酒場放浪記に登場するとはいかなることか。きっと本店は改装されて味がないのだろうな、いやもしかすると単に店主がーちえというからにはきっと女性なのでしょうー、メディアへの露出を拒んだだけかも。そちらにもいずれ伺うことにしましょう。さて、こちらはというと一見するとごく当たり前の居酒屋ではありますが、いつも言うことの繰り返しで恐縮ですがこういう何でもない居酒屋って実は希少な存在になりつつあるので、以前であれば特に関心を持たなかったはずてすが今はじっくりと眺め倒していつまでも記憶に止めようという意識が働きます。で、今でも記憶に鮮明かというとそんなことはないのが情けないやら恥ずかしいやら。大体が意識を覚醒させるコーヒーを飲む場所の喫茶店さえ記憶に曖昧であるのにいわんや居酒屋にあっては覚えていろというのが無理が多い。今回はやけに饒舌ですがこの店、取り立てて旨いわけでもないし、特別なものもない。だけど、そこらの立ち呑み店程度の良心価格でこの雰囲気の中で呑めるのだから下高井戸で勤めている人は幸運だと思わずにはいられないのでありました。
2015/11/11
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とうとう来てしまいました。下北沢に来たことがないなんてことは申しません。映画ファンであれば好むと好まらざるに関わらずどうしても通わざるを得なかったことは、こまめな映画好きの方であればご存知なはずです。そればかりでなく、「邪宗門」を始めたとした喫茶も数多くあり、これまで訪れた限りではさほど好奇心を満足させてくれるお店も多く、つまりは苦手ながらも下北沢に出向くことは少なくなかったということです。でも確認したわけではありませんが、酒場巡りで下北沢に来ることはついぞなかったはずです。いやまだ日が落ちきらぬ夕陽がまだ赤く染まりきらぬ時間帯に、ほぼ原型を留めぬまでに解体された駅前のマーケットで呑んだことは今でも記憶に新しいのです。でもこの町はあらゆる世代が行き交うとはいえ、基本的には若者の町です。ぼくのようなおっさんが闊歩して様になる町ではありません。 地下化されてすっかり以前の町並みを刷新された駅周辺を散策した後、これで町も他と変わらぬ退屈なものになるのだろうなと思いながらもいくらかも感傷を含まぬのは馴染みのなさだけが理由ではなさそうです。目指したのは「柳(りゅう)」です。ボロい店やヤバそうな店にはそれほどに気後れなどしないぼくですが、気取った店や若者の多い町の店に入るのは躊躇するのです。なので似たような感性の持ち主であるA氏を伴ったのでした。小奇麗で控えめな外観の店舗で、店内もカウンターに小さめの小上がりがあるだけで、町歩きの雑誌なんかでは隠れ家居酒屋なんて紹介されたりするかもしれません。でも入った瞬間に雰囲気は悪くないもののここはわれわれの酒場ではないなということが直感されるのでした。口明けと同時に入ったのでまだ空っぽの店内は確かに快適です。でもちっとも楽しい気分にならぬのは、値段が高いことに主に起因するのが貧乏人の悲しいところ。こんなところで一人腰を据えて呑めるといいんだけどな、ないだろうなあ、とシケた会話を交わしながら頼むのは手頃な衣かつぎとカリフラワーのバター醤油ソテー。お通しのキンピラを見て、これは一体いくらなんだろうと考えてしまうさもしさ。丁寧に調理されているけれどどうということもない。でもカリフラワー、こうして食べるの初めてだけど案外いいなあ。今度晩酌で作ってみようか。 近くにある「酒亭 二軒茶屋」も酒場放浪記に登場しているようです。こちらは下調べがなくともきっと立ち寄ってしまったに違いないくらいに枯れたムードが漂っています。店内は余計なポスターなどの貼り物はなく、ストイックなまでの潔癖さを保っています。女将さんがこの町で商売を始めてから四十数年、開店当初はピンクな店が少しある程度で後は何にもなかったのよと半世紀を経過してもなお少しも変わらぬ京都弁でおっとりしながらも凛とした語り口で語られます。店内の造作は紀州杉?の壁板を除くと10年ごとに改装していたものの40年目には手を掛けることができなかったと無念さをさほど感じさせぬ様子で淡々とお話くださいました。肴の品書は簡単なものばかり十品ばかりでありますが、もはやそんなものはいくらも問題となりません。しんみりと杯を傾けるとここが下北沢ということを忘れそうになりますが、でもここは紛れもない下北沢の酒場なのです。と書いてきましたが、たまたま見てしまった酒場放浪記のおんな版で放映されましたが、女将さんの口から語られるのは似たような内容でした。 それにしても下北沢は想定していた以上に高く付くなあ。無論安酒場もあるに違いないのですが、とても夜な夜な通う気にはなれません。加えて町を闊歩する若者たちがなんの躊躇いもなくそんないい値段を取る酒場に入るんだから全く虚しいことです。
2015/11/09
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正直言って小田急線と京王線の駅名を問われても、瞬時にどちらの路線だったか答えられるかというと少しも自信が持てません。梅ヶ丘という駅も先日降りたばかりなので覚えていますが、一年後、いや数ヶ月後に問われたとしてもあやふやな回答しか出来そうにありません。かと言って両路線にこれまで縁がなかったわけではありません。とりわけ小田急線には随分前のことになりますが、週に何度かは往復していたのだからもう少し覚えていたっておかしくないはず。大体このブログにも控え目ながらもたまには取り上げていて、自分の記憶力の性能の低さを嘆きたくもなりますが、両沿線の個性のなさにも問題があると言いたい。そう言い切ってしまうとお住まいの方に異論を唱えられそうでが、とにかくまあぼくにとってはあまり代わり映えしないように思われるのです。ともかくほとんど印象にない梅ヶ丘駅に降り立ってみるとボンヤリと記憶が蘇ってきます。行列のできる有名寿司屋はやはり列をなしていますが、そんな店には目もくれず町を散策します。 やがて今日の昼はここしかあるまいという素敵なレストランを見つけました。「富士レストラン」と看板に記されていますが、見た目はレストランというよりは紛れもなく大衆食堂のそれです。昼下がりの時間帯ということもあり案外広い店内にはお客が三人だけ。まあこう書いてみるとそれなりに入ってそうですが、なにせ案外広いので閑散とした印象が深まります。さて品書きを見ると定食メニューに混じって酒の肴向きの品も多く、これだけ充実しているなら酒もビールと日本酒以外にもせめて焼酎だけでも置いてもらえると嬉しいかな。昼間てまだ簡単な用件を済ませなくてはならないので、日本酒でまったりしているだけの余裕はありません。マカロニサラダや玉子焼は既製品のような感じもしなくはないのですが、この際気にするのはよしておくのが賢明でしょう。この雰囲気はでもむしろ夜に味わいたいものですがそんな機会が訪れることは当分なさそうです。
2015/11/05
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東急田園都市線の駒沢大学駅にこの半年で三回も訪れることになるとは、思っても見なかったのでありますが、一軒の喫茶店への未練がぼくを三度かの地に走らせることになったのでした。 その喫茶店とは「アポロ」のことで、ここでも何度か振られたことを愚痴らせて貰っているのですが、今度はどうなることでしょう。駅を出るともう歩きなれた道を脇目も振らずにひたすら直進します。しばらく歩いて右に折れると店の側面が見えてきます。そこには軽食と喫茶、店名の文字がペンキで記されています。遠目からも目立つとても大きな一軒家で、果たしてどれほどのオオバコなのか想像が嫌がおうにも膨らみます。近づいてもやってるんだかが判別できず、幾度か経験している不安にまたも晒されます。店の前に立つとおやおや扉が開かれています。これは大丈夫と慌てて飛び込みますが、案外平凡な装飾で途端に興味と関心が薄れるのを感じました。ランチの看板も仕舞われているので、もう営業時間を終えるところだったようです。どうやらランチタイムだけの営業なのか。渋々ながら迎え入れていただけたのでコーヒーだけでも頂いて、迷惑にならぬうちに引き上げようと思ったら、コーヒーとともに焼きそばパンとコロッケパンを差し出され、よかったらどうぞとの嬉しいお申し出がありました。お隣りの古ぼけたパン屋と経営が一緒なのでしょうか。どうにも気が引けて伺えませんでした。翌朝パンは朝ごはんに頂きました。こちそうさま。 パンを持ち帰ったのは、駅に引き上げる途中にある定食屋風の店に寄りたかったので、お腹いっぱいにしてはまずいと思っていたからでした。黄色いテント看板の「三友軒」にお邪魔しました。こうして改めて見てみると定食屋というよりは紛れもない中華屋さんの趣きです。もちろんそれはそれで一向に構うことのないことです。以前から気になっていたのが、サッシの扉越しに見える店内の様子で、安普請なテーブルと椅子に味があると感じたからでした。昼から呑んでるオヤジを目撃したのも目を付けた理由になりますか。店内に入ると古ぼけてはいるものの思ったほどには年季が感じられませんがまあ悪くありません。昼の繁忙時間を過ぎたからか、女性店員は奥のテーブル席でテレビを眺めています。入店前に高齢のご夫婦の姿が脳裏に去来したのですが、調理を主に担当するご主人らしき方は案外お若い。ビールを貰うとお通しに冷奴を添えてくれて、ちょっぴり嬉しい気持ちにさせてくれまです。女性の方は終始無言を貫いて、それは店主にまで及び、もしかするとお二人は夫婦で目下喧嘩の最中なんてところではあるまいか。貼り紙にがあり、これによるとラーメンとカレーが店内では350円ということなのでカレーにしました。カレーのるはルーからは、微かにごま油かラー油の風味が漂い、とくとくの味わいと香りがしてそれはそれで美味しいのでした。
2015/09/15
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東急大井町線の九品仏駅は、以前散歩の途中に通り掛かった程度でこの駅を目的として散策したのはこの日がはじめてのことでした。それなりに店舗があるものの人影もまばらなその町で喫茶店を数軒はしごした後、駅の反対側にあるもつ焼き屋さんを目指すことにしたのでした。 やって来たのは活気を失って久しそうな町外れの寂しげな雰囲気のお店です。「やきとん 大虎」に到着したのは、開店間もなくと思われる時間帯だったためなのか、それがむしろ当然なのか外から眺めた時に感じたよりずっと広いお店でした。が、寂れた詫びしげなムードは外観そのままでしたーそれは正直期待通り、くたびれた後だったのであまり騒がしいのもねー。入口付近のカウンター隅の席に遠慮深くー正しくは店内全体が眺められるぼくにとってのベストポジションー腰を落ち着けることにします。飲物と焼物を女将さんにお願いすると、焼物は少しお待ちくださいと言われたのでお通しなど摘みながらボンヤリとしたひとときを待つことにしました。炭を起こしているのでしょうか。と思っていると待つというほどもなくオッチャンが入ってきます。テーブル席を使ってバタバタと着替えを始めます。どうやらこの人が店の主人だったようです。この主人が来ると店の雰囲気は一転明るいものになりました。楽しい気分がこちらにも伝染したのか、ちょっと飲むだけのつもりが、いつの間にか杯を重ね、いつしか5杯ほどいただいていました。やきとんはごく標準的でこれと言った印象は残らぬものの、雰囲気の良さが店を支えています。すっかりいい気分にほんのり酔って店を出ましたが、他に訪れた客はお一人だけでした。
2015/01/04
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今年も早いものでいつの間にやら師走を目前にしてしまってしまいました。あれこれやり残したことの多い一年をそのままに終えることになりそうなのですが、とりわけぐずぐずといつまでもふさがらない傷口のように爪先で弄んては完治を遠ざけるようにすることで、記憶の片隅に仕舞い込まないようにしている一軒の喫茶店があります。その喫茶店があるのは東急の世田谷線沿線の駅、駒沢大学駅から10分ほどの場所にあります。でもとりあえずは、駒沢公園を抜けてこちらもまた何度か空振りしている老舗喫茶を訪れることにしました。 駒沢公園に面するほぼ住宅街の様相を見せる通りに「喫茶 芝生」はあります。一見して古いお店であることが察せられ、駅から近くはない場所にあるため、あまり面白くもない通りを歩くのは憂鬱でもありますが、なんとしてもなかを覗いてみたい、一杯の珈琲を店の歴史を感じつつ味わい尽くしたいという一念のみでひたすら歩を進めます。何度目かトライで到達した当のお店はこの日は無事営業していました。カウンターはどこかしらスナックらしさが感じられるものの、それ以外は紛うことなき純喫茶の佇まいで、それも正統的な純度の高めであることにひとまず大満足します。大きくやけに健康的な人々の溢れる、散歩したくなるような魅力にかけるーあくまで私的な感想ーのそばに、こうした暗くてどこかしら怪しげで不健康な印象すら漂わす喫茶店の存在することに安堵すら感じます。 もう一軒の空振りを続ける喫茶店は同じ通りをひたすら北上することになります。何度目かの同じルートを飽きもせずーウソ、もうウンザリですー、首都高の渋谷線を見上げつつ突っ切り、さらにまだまだ直進します。うっかり回り道をすると袋小路やたんに遠回りになるだけなのは、すでに経験しています。 さてようやく目当ての店が見えてきました。「アポロ(APOLLO)」です。ここのことを書きたいと思ったのはまたもや入ることができなかったからです。こちらのお店は未だ現役なのでしょうか? ご存知の方がおられるなら是非ともお聞かせ願いたいと思ったのです。店内にはそうお年を召したわけでもなさそうな女性の姿もあります。無作法ながら覗き込んだ店内も渋くて味わいがあり、しかし充分現役でも耐えうる輝きが感じられます。すぐ先にはこちらも負けず劣らす古めかしいパン屋さん「Syogetsu Pan」があり、立ち寄りたくなる誘惑に駆られますが、この二軒は是非ともセットで楽しみたいものといつも通り涙を呑んで見送ることにするのでした。 そんな場合に。「カフェ プティ フォンティーヌ」に立ち寄るのもお決まりになってしまいました。上品で可憐なお店で、まさに高級住宅街のカフェにふさわしいお店で、美味しいコーヒーを上品に味わいたいならお勧めします。 せっかくなのでもうちょっと、「LARE(ラルー)」は、洋菓子屋さん併設の喫茶店、装飾は抑え目ですが古びていながらもお客さんのたくさん出入りする明るく賑やかなお店です。 もう少し時間を潰すと呑みにも程よい時間となりました。三軒茶屋に向かうことにしましょうか。のんびり歩いていると環七にぶつかり、そういえば環七に面して、良さそうな喫茶店があるということを思い出しました。しばらく南下するとありますあります。期待通りの古い喫茶店、「カフェ・ド・ラ・メール」です。若干散らかっているのが惜しい気もしますが、紛れもない硬質な印象の純喫茶です。ところがお客さんもいない店内は寂しいくらいで、こうした古い喫茶店て独りぼっちはとっくに慣れっこのつもりでしたが、妙に人恋しくなります。急激に酒を呑みたくなり、しかも誰か愉快に呑める相手が欲しくなり、ふと思い立ち三茶在住の知人と急遽約束を交わしたのでした。
2014/12/07
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これまで単に面倒だという理由だけで、避けてきた土地がいくつかありますが、この三軒茶屋もその一つです。下北沢や表参道のように根っから好きになれないのとは違って、本当は好きなのにどうしても足が向かない町というのがあるもので、そんな時は逆療法でとにかく立て続けに通ってみることで苦手意識を無理矢理に取っ払ってしまうのが効果的なことがあります。そんな訳で、ここひと月ほどでこれが三度目の三軒茶屋への訪問となります。果たして今回で苦手意識を克服できるものやら。 今回は、2回の訪問で目を付けておいたぼく好みの古いお店を訪ねることにしました。まず始めにやってきたのは「とん起」です。町の隅にポツンと忘れ去られたかのようにひっそりと薄暗い呑み屋街があるというシチュエーションが嬉しいのです。1箇所に呑み屋が密集している迷宮めいた呑み屋街も楽しいものですが、似ているようでいながらよくよく眺めてみるとそれぞれの横丁に各々個性が感じられます。「とん起」のある呑み屋街は、高齢の店主が一人でやっている固定した常連が集まるばかりのけして満席になることはないようなどことなくわびしげな店が多いようです。とりわけ味のあるこのお店に入ると壁との隙間もあまりない窮屈なカウンター10席ほどのお店でした。大当たり、好みの店にバッチリ該当しています。オヤジさんは、パッと見には無口で静かな印象の方ですが案外に饒舌でその喋りにも一癖あって一筋縄ではいかないかんねということにやがて気付かされます。もつ焼は一串80円だったでしょうか、値段以上には十分満足の行くべきものでした。そのうちに中年二人組が来店。どうやらかつての常連、そうは言っても10数年振りになるようで、オヤジさんはつれない態度で適当にあしらうのが愉快でカッコよかったです。 続いて駒沢大学駅方面にしばらく進みます。結構歩いたところでなんとか言うスーパーの脇に屋台があります。東京で暮らしていると屋台なんて滅多に出会えるものではありません。これは入らぬ訳にはいかないでしょう。「ぶんた」という店名のようです。せいぜい7、8名程度入れる程度だったでしょうか。明るくて元気ハツラツなお母さんがにこやかに出迎えてくれました。こちらは焼鳥とお好み焼の屋台で、せっかくなのでお好み焼きを焼いてもらうことにしました。焼き上がりまで時間があるのでトイレを所望すると、お隣のスーパーのトイレを借りてくれとのこと。そりゃ屋台にトイレなんてありませんからね。さっぱりして戻ると出来上がったお好み焼きに齧り付きましたがこれがボリュームあって美味しいのでした。日頃旨さなどどうでもいいこととうそぶいていますが、やはり旨いものを食うと酒が進むもの。やはりたまには屋台で呑むのも楽しいものです。
2014/09/04
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前回の三軒茶屋呑み会の続きになります。今のところいくら友人との旧交を温めるとはいえ、わざわざ電車を乗り継いでまで訪ねるまでの店には出会えておらず、ここはぼくからのリクエストということで、格安でジビエ料理が食べられるという噂の老舗居酒屋にお邪魔することにしました。 「味好亭」です。珍しく食い気優先で伺ったお店ですが、店の雰囲気もしっかり枯れていてそのいかにも古くからやっている居酒屋という雰囲気に浸った時点でこの居酒屋に来たことに間違いはなかったと確信するに至るのはわれながら脳天気なものです。地元在住のF氏もこの店は知らなかったようで、闇市の臭気を現在まで留めるこの界隈がおっかないんだよねなんて軟弱なことを仰る。父親との確執がもたらす好悪入り混じった複雑な感情を今になっても引き摺るナイーヴなオッサンですが、見てくれはヒゲもじゃでガッチリした体格の世界中を放浪し三茶に流れ着いた風の風体なんですけどね。それはともあれジビエといっても目に付くのは鹿肉料理ばかりです。もちろんこれから頂いてみることにしました。いきなりアレコレお願いする気迫もないのでひとまずソテーから頂いてみました。鹿肉料理は一律400円とお手頃なのも嬉しいことです。さて肝心のお味はというと、これがビックリするほどうまいのでした。サイズこそさほど大きくはありませんが、ジビエという素材の想起させる肉の臭味などまるでなくーホントは臭い肴は大好きなので臭っても一向に構わないのですが、時折素材の臭味とはまるで異なる、処理がひどさがもたらすまるごと飲み込むことさえ叶わぬひどい肉を出す店がありますー、しかもちっとも筋張ってなくて、さらにバター風味の効いたドミグラ風味のソースがとてもいい。これを摘んだF氏が言うことには、今度誰か連れてこよだって、ぼくとまた来ようなんて思ってもいないよう、失礼だなあ。 玉川通りを越えて、駒沢大学方面に歩き出します。古い商店街をぶらぶら歩いているとオンボロ物件あり、女性の名前をそのまま屋号にしていますが、やっていなません。今でも営業してるのかしら。すぐそばの「やまがた」も安普請な感じがとても気になりますがお休みのよう、こちらはまだ営業しているようでたまたまお休みだったみたい。やむを得ずどこにでもありそうな洒落た雰囲気の新しいお店「KITCHEN MURAYAMA」に入ります。F氏って案外こういう感じの小洒落ていてカジュアルな感じの若い人向けのお店が好きなんですよね。始めこそカールスバーグの瓶なんかを上品に呑んでいましたが、効率よくワインをボトルでもらうことにしました。そのワインもみるみるかさを減らして、互いにいい大人なんだから味わって呑む習慣を身に着けねばといくらか反省してみたりするのでした。ところでこちらのお店、女性のおひとりさまがいたりして、確かに洋風食堂として、上品にグラスのワインを1、2杯ゆったりと傾けて、ブルスケッタ程度の軽い食事兼お摘みで切り上げるといった使い方がカッコイイのかもしれません。つまりわれわれには不釣り合いなお店なのでした。
2014/08/25
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行こう行こうといつも思いつつ、乗り継ぎが悪くてなかなか足を伸ばす気にならない町がいくつかあって、それは自宅からの所要時間と必ずしも比例するわけでなく、端的に渋谷を経由するのがそれを想像するだけでうんざりとさせられるというのが、大きな理由のようです。そういう意味では副都心線の恩恵により東横線への苦手意識は随分と薄れはしましたが、渋谷乗り換えを余儀なくされる田園都市線には未だに嫌悪感を拭えずにいます。それほどまでに嫌う三軒茶屋にやって来たのには理由があって、ここに居住する友人と呑むことになったというだけのことでした。 苦手と言ってもそこはそれ、来るまでのことであって、この町は本当は大好きな町です。かつては今は閉館してしまった三軒茶屋中央劇場に度々通ったものですし、三軒茶屋シネマもちょくちょく出向きましたがここもつい先日歴史を閉じたということです(そういえば新橋文化劇場、ロマン劇場もまもなく閉館とか。ピーター・フォークとジョン・カサヴェテスの『マイキー&ミッキー』が今週上映されること聞いてたの今の今まで忘れてました、これはなんとしても行かねば)。 ともあれ三茶の関所、エコー仲見世をぶらついているとやけに賑わしい場所があるので吸い寄せられてみると通りさえ店の一部として取り込んだ酒場があります。どこかで見たよな屋号ですがひとまず入ることにします。「もつ焼き エビス参 三軒茶屋店」です。上野アメ横のようなオープンなお店で、一日散々歩いて涼を求めた身にとっては極めて残念なことにアーケード下とはいえ空調も効かぬ蒸し暑さで、これは適当に切り上げねばと消極的な気分でのろのろと呑み出します。するとそこに待ち合わせたわけでもないのに、件の原住民F氏がこちらに向かってくるのを驚愕とともに見守るのでした。今となると近く20年にもならんという付き合いなのですからぼくの行動など見透かされていたのでしょう。そうなると暑いばかりでなく、座りも悪く低すぎるスツールに今しばらく耐えねばならぬでしょう。これならいっそのこと立ち呑みにしてしまえばいいのに。ともあれもつ焼、特にタンはなかなかの味でありました。 F氏がちょっと散歩してみようというのでまだまだ行きたい酒場があるものの、夜は長い、お付き合いすることにしました。銘酒酒場「赤鬼」を通過、どういう訳だか話題は名古屋の酒場になります。このF氏というお方、多趣味ではありますがとりわけライブハウスに出入りしてジャンルはよくわかりませんが音楽鑑賞するのがこのところの楽しみのようです。名古屋のテレビ塔のそばでとF氏が語り始めてすぐにピンときます。『名古屋の居酒屋』なる名古屋の老舗居酒屋について取材した本があって、今となれば入門のそのまた鳥羽口といった程度の紹介店の一軒にライブをやる老舗居酒屋があるという記載のあったことを、そしてむざむざとライブのために訪れて入れなかったことを思い出したのでした。どうやらF氏はここに行きたいようです。さほど興味はありませんが、断るべき理由も見当たらぬままに店に到着。「酔処 ラブル」というお店でした。八丁味噌で煮込まれた具材は贅沢で量も味も、値段もーただし酒は高いー納得でしたが当のF氏はしばらく仕切りに甘い甘いと唱え続けたのでした。
2014/08/19
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近頃、東急線沿線の面白さに遅ればせながらも目覚めました。東急沿線は戦後の振興の住宅街が連想され、あまりぼくの趣味には合わないと知らずに思い込んでいたのでした。やはり思い込みは良くない、良くないどころでなくはっきり罪であると言い切っても良いほどに愚かなことであることに気付かされます。ちょっと考えればわかることですが戦後ってもう70年位も昔のことだし、その頃からやってる店ならもう十分老舗なんですね。大体戦前の建物が、未だ現存するほうがおかしいわけで、戦後の町は今では十分古い町なのです。 等々力駅の目の前、ホームからも丸見えのこんな場所にこれ程までにぼく好みの酒場がそれも仲良くとなりあわせにあるなんてなんて素晴らしいんだ。当初何一つ予定を立てずに来たわけではなくて、たまたま散歩の途中に見掛けただけという、まるで先入観もなく不意打ちのように巡り会えたことが喜びをいっそう強いものにした理由のようです。 さてどちらの店からお邪魔することにしようかしら、さほど迷うこともなく「やきとり とよだ」に決めていました。理由もはっきりしています。こちらが圧倒的にボロだったからです。これほどまでに見事なオンボロ酒場にはそうそう出会えるものではありません。ほとんど風化していて触れるとそのまま崩落してしまうのではなかろうかという暖簾を慎重にかき分けて店に入ると、5時を過ぎてなお猛烈な日射しの止まぬ表とは、まるで対照的なその暗さに軽い目眩を覚えつつもじっと目を凝らして、自分のポジションを探ります。L字のシンプルなカウンターは、飴色どころかもうすぐ黒光りと言っていいほどに見事に染まっています。奥の位置から表を眺めてみたいと思い奥に進みます。ひとまず品書きを眺めると1本140円のもつ焼のほかは、肴が一切ないという潔さ。こういう店では焼酎をもらうことにしています。もっきりスタイルで受け皿に焼酎をこぼし、ペットボトルの水で好きに割って呑めという事のようです。いや~、実にいいなあ。暑いはずなのになぜかそれほど苦にならないのも不思議なものです。等々力の人が羨ましいとつくづく思わざるを得ないのでした。 さて、「とよだ」程の風格こそありませんが、仮に日頃通いなれた町にこの酒場があったとしたら、これまで知らずに過ごしてきてことを激しく恥じるとともに、今後通い詰めることを決心するのは間違いないであろうこと疑いないお店、「大衆酒蔵 大吉」に移動しました。お隣の唯一の欠点であるところの空調がないことーそれがまたお隣の味ともなっているのですがーと違って、ありがたいことにこちらでは快適に呑めそうです。奥に細長く伸びるカウンターの入口付近に空きがあります。ここでは奥が常連席のようです。ちょっと不審気な表情を浮かべる女将さんに飲物を注文すると、焼鳥見繕いますかとのこと。壁の品書きを見ると焼鳥130円からとあって部位の記載はありません。じゃあ、ひとまず3本をタレで頼んでみることにしました。すでにご機嫌となった夫婦が二組、こういう大人の付き合いは羨ましいなんてことを思ったりします。焼鳥はサイズも味もまずまずですが、この雰囲気こそが肴となってくれます。まったりとした気分で涼しくくつろげるよい酒場です。近隣に住む方に後日聞くと大井町線沿線は数こそ少ないもののこうした古くから営業を続ける酒場などをちょくちょく見受けるそうです。そう聞くとせっせと通わざるを得なくなりました。
2014/08/06
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またまたやって来ました。祖師ヶ谷大蔵です。先日は呑み屋街の外れの居酒屋をハシゴしたので今度は祖師ヶ谷大蔵の味わい深い呑み屋街で呑んでみることにしました。 まずはじめにまるよし横丁なる路地裏酒場街を歩いてみることにします。エリアは狭小で店舗数も必ずしも多くはありませんが,今では絶滅危惧種並みに希少な悪所として貴重な存在となっています。横丁の雰囲気は抜群にいいのですが,それぞれの店舗は古からず新しからずといった具合でここぞという決め手に欠けるお店が多いのでした。中でもっとも味があるように感じられたのは「阿部食堂」でした。この日は大変な豪雨であったのでほうほうの体で店に転がり込みました。後に調べてみたところ1963年の開店と思った以上に年季の入ったお店だったようです。テーブル1卓を除くとすべての席がご高齢の方たちに占められ,すでにすっかり出来上がった様子で大盛り上がりとなっていました。ビタミン補給のために野菜炒めを注文,肉の入らぬまったくもって純粋な野菜炒めで味付けもごくごくシンプル。これといった特徴があるわけではないのですが,まあ単なる野菜炒めがまずいわけがありません。独り黙々と野菜を口に運びながらウーロンハイをすすります。特に変わったところがあるわけではないですし,今後もこのまま店は続いていくのでしょうが,どうしてだかホッとできる居心地良い食堂なのでした。 商店街を外れて北に向かうとこちらにもさらに小規模な呑み屋横丁がありました。そんな中の一軒「まかべ」にお邪魔してみることにしました。コの字のカウンターがある正統派のお店。もつ焼の名店としての誉れは「たかはし」の方が上回っているのかもしれませんが,店の雰囲気に関して,ぼくはこちらのお店を押したいところです。肝心のもつ焼もなかなかのレベルで,お腹は空いていなかったのについつい頼みすぎてしまいました。当然ながらお客さんの入りもよくて大層繁盛しています。案外高齢のお客さんも多くて,年齢的にははるかに下回るぼくをはるかに凌駕するほどの串を平らげておられました。写真を見て思い出したのですがお通しとしておせんべいが出されるのもユニーク。祖師ヶ谷大蔵ではもつ焼屋は独自の進化を遂げているようです。
2014/05/24
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もっぱらウルトラマンを生んだ円谷プロ―円谷プロ、というより円谷英二についてはいろいろと語りたいこともありますが、ここでは割愛―のある町として知られる祖師ヶ谷大蔵ですが、訪れるのはほぼ10年振り位と随分ご無沙汰しました。ぼんやりとした記憶では案外大きな商店街があるもののあまり活気が感じられなかったような印象ですが、久々に眺める町の様子は記憶とは打って変わって賑やかに人通りも多く、商店も繁盛しているようでした。今回はいつもとは別の上司M氏が一緒。祖師ヶ谷大蔵まで足を延ばしたのもこの上司の話題に頻繁に出てくるとあるもつ焼店に行くためでありました。実は身の回りの数名が口々に絶賛するお店で、初めて耳にしてからすでに7,8年経ってのようやくの訪問が叶ったのでした。 そのお店は「たかはし」です。駅改札を出て魅力的な呑み屋横丁を通過、さらに進んで右にある路地を進むとあります。開店時間僅か前に暖簾はまだ下がっていませんがすでに店内に人の気配が感じられたので慌てて入ります。アブナイ危ない、すでにカウンター15席ほどの店内は2席を残すだけでびっしりになっています。なんという繁盛振りなのだと驚愕します。身近な連中の賞賛があながち嘘でないことに納得します。店は最近改装されているようで、さほど味わいはありませんが、装いを新たにしても恐らくかつてと同じスタイルが踏襲されていることがわかります。せいぜい10本程度並べれば一杯になる程度の小さな焼台を担当するのは店の主、呑み物や焼物の下ごしらえはその息子が担当―どことなく大雑把な投げやりなムードが漂っているのが気になる―、それにあまり愛想のない女将さんと店の方との交流を求める向きにはあまり適さない酒場かもしれません―といってもかつて常連だったという上司に、主は随分ひさしぶりだねと一言だけ声を掛けていました―。焼物以外にはきゅうりの一本漬などごく限られたものしかなく、焼物も価格表記無しと強気を貫いています。酒も値段はギョッとするほどのお高さで、そうなると焼物の値段は一体いくらなんだろうと、1串、1杯ごとについつい金勘定に耽ってしまいます。実際支払った額はその予想さえ上回っていましたが、スポンサーの上司が大部分を支払ってくれたのでした。さて、肝心の焼物はと言うと、確かに肉の処理も丁寧だしマッシュルームにはオリーブ油をたらして絶妙な焼き加減で出してくれたりとうまいのですが、この値段ならまあ当然といえば当然ではなかろうかというひねくれた感想が浮かんできます。店を出て上司曰く、随分値上がりしているなあと来店前の賞賛っぷりはどこへやら、どことなく寂しい表情を浮かべて独り駅の改札をくぐったのでした。ここを褒め称えた一人は5年程前にあの世に旅立ったのですが、殊の外お気に入りであったシイタケの軸の部分を食べることができたことは満足ですが、確かにうまかったものの今もし彼がこの世にいたら果たして喜んで食べていただろうかと思いをはせずにはおられません。でもきっと彼のことだからどうだうまかっただろうと言っているはずだったろうと思います。 駅に向かう際に上司が「平八」なる店を指し、あすこではスピリタスを呑ませるんだぞ、行ってみたらどうだと勧めてくれます。暗にお前はスピリタスを知っているかという問い掛けが含まれているようなので、アルコール度数が97%位あるごっついウォッカですねと答えると満足したような、ぼくが知っていたことが悔しいような微妙な表情を浮かべて帰って行きました。実はこのスピリタスをお土産でくれた同僚はこの上司と親しくしていて、思いがけずぼくはこの上司と一緒に仕事をするようになったのでした。その同僚もまた6年ほど前に急逝、3人で一緒に顔を合わせる機会を永遠に失ってしまったのでした。とまあ思いがけず感傷的な気分を引き摺って店に引き返してきました。駅のそばの渋い呑み屋横丁にも何軒かの気になる酒場がありますが、ここはぐっと我慢で素通りです。横丁を抜けるとちょうど正面に「平八」はあります。うん、ここは「たかはし」と違って、開店当時の面影をそのままに他保った外観をしていてよいではないかとちょっと満足。引き戸を開けて中に入りますが、独りの客もいません。煙と煙草の脂ですっかり燻された店内は歳月の経過以外の何物にもなし遂げようもない充実した成果を感じさせてくれます。枯れたムードとスピリタスがどうにもイメージが一致しませんが、一応注文してみました。すると若い店主からは先代で取り扱いをやめたのですとのご回答。39年前に始めたという店であることとか、M氏の名を挙げたところ、最近お目にかかっていないとか、向かいの横丁は案外歴史が短いということなど快活にお喋りしてくれます。脇に立つ恐らく奥さんは可愛らしくて、他にお客はいないけれど長く続けてもらいたいと願ったのでした。
2014/04/29
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小田急線の梅ヶ丘駅にはとんと縁がなくて,駅名から想像して梅の名所とかがあるんだろうなあなんて思っていたらやはりあるらしくて,梅の名所である羽根木公園というのがあるそうです。なんてしたり顔でいたら最寄の知人に羽根木公園は梅林で知られているけど,駅名・地名が先と聞かされたのでありました。まあ,もちろんぼくは花より酒なんであって,駅名なんてもとよりどうでもいい訳です。事前に調べたところでは(といってもアド街HPや吉田類の酒場放浪記HPなど),梅ヶ丘で飲食店というと本当の意味での飲食店が多いらしく,そこらへんはやはり住宅街であるなあなどと,期待に沿わないことがあってもおかしくはないだろうと覚悟を決めて向かったのでした。 都内に7店舗をもつ「寿司の美登利総本店」には,うんざりするほどの行列ができており,無論寿司なんぞつまんでしまっては,酒が入らなくなるし,ましてやいくらお得であるといってもお財布事情が厳しくなることは目に見えているので横目でちらりと眺めつつ通過します。結局入ったのは,「吉田類の酒場放浪記」で放映された昭和47年創業の「洒落亭」です。この界隈では老舗の部類に入るのでしょうね。店内はカウンターがメインではありますが,民芸調の造り込まれ過ぎた雰囲気には馴染めないところがあります。立派なお通しを見て幾分鼻白むのもこうしたお店ではしょうがないかもしれません。若いご主人は,見た目の印象では常連客と賑々しく馴れ合っているタイプのお方ではなかろうかと勝手に思い込んでいましたが,そんなことは決してなく真面目に居酒屋稼業と向き合っているようで好感が持てました。さして広くない店内であるのに客の入りはまばらで,酒場放浪記で紹介される店には,そういった場合も少なくありませんがぼくのような一見客によって,夫婦連れなどの常連さんたちの静かでまったりとした晩酌の邪魔にならないよう心がけたいものです。 やはり本当に自分に合った店は自らの足で探さねばなるまいなと心して次の店を求めて脇道に入ります。あっ,ここがいいんではないかいと思ったのは,「洒落亭」からわずか数十歩程度のところにありました。「やきとん みうら」というお店。赤いテント地に「やきとん みうら」とシンプルに書かれた年季が入った庇に,紺地に白文字でやきとんと記されただけの暖簾。こういうありふれているけれど長く商売を続けてきたことがなぜだか一目で感じ取れるお店がやはり好きなんです。店内は7席程度のカウンターにテーブル4つ,これまたくごく普通ですが不思議と安心感があります。特に見入ってしまうわけではないのですが,神棚や壁に貼られた皇室と大相撲カレンダーも古い居酒屋らしい。女将さんと常連さん1名だけの静かなお店ですが,ぼくを見て,あきらかにはじめてこの店を訪れたのだと瞬時に察せられたことからも常連さんで回っている店なんだなあということがわかろうというものです。お二人の邪魔をすまいと考えていると,お二人は非常にざっくばらんな方たちで,あれこれぼくに語り掛けてくれます。なんでこの店入る気になったのといつも聞かれる質問に古くからやっている居酒屋が好きなんですと当たり障りなく答えると,このお店はこの界隈ではもっとも古くからやってんのよといくらかの自負を込めておっしゃっていたのが印象に残っています。もつ焼も酒もすでに記憶から消え去らんとしていますが,店の雰囲気と女将さんとの交流は今でも薄っすらと思い返すことができます。品書:ビール大:600,チューハイ:350,やきとり:100
2013/06/14
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東急世田谷線の山下駅と小田急小田原線の豪徳寺駅は距離としてはわずか50m程度の至近距離にありながらその駅前風景はまったく異質な印象を受けました。駅前風景というか沿線風景と言った方が適当かと思いますが,世田谷線の線路を挟んで西側こそただ住宅街がのっぺりと広がるばかりですが,東側には古びた店舗の立ち並ぶ商店街が続き,とりわけ山下駅前は店舗の古びた様が町並みにも反映しているようで,駅前のごく狭い一角ではあるものの,閑静な住宅地がすぐそばにあるようにはとても想像できないほどの,くすんだヤミ市のような商店が立ち並んでいます。 一方で小田急線沿いは,都心から間近でありながらどこか郊外のニュータウンの駅前のようなこざっぱりしてきれいなばかりで,人気もなくどこか沈うつな印象があります。それでも駅前に雄々しいネーミングの立飲み屋さんがあったので,まずはこちらにお邪魔することにします。 看板には,「風林火山」とありましたが,「風林」が正しいようです。平成22年創業のまだまだ新しいお店。それでも飲み屋さんそのものが少ない町なので,すでにすっかり顔なじみのお客さん同士が多いようにお見受けしました。若い女性がひとりでやっているお店でそこはかとなく上品な内装となっています。2回は常連さんのためだけにパーティなどがある際は開放しているそうで,この日も若い方たちが4,5名ほどで盛り上がっていました。呑み始めて程なくして南米の生まれっている気配を滲ませた青年がママさんに声を掛けてきます。彼もこちらにちょくちょくやってきているようです。豪徳寺は案外インターナショナルな町なのかもしれません。お喋りしているうちになんとなく空気を感じたのか上から若い娘さんが降りてきて,その青年を2階へと連行していきました。若者たち,あんまり羽目を外しちゃいけないよ,ぺらぺらな天井が抜けちゃうかもしれないからねなんてことをぼんやり考え,次の店に移動します。 次はお楽しみにとっておいた山下駅前の古いお店から「晩酌の店 住吉」をセレクト。外見にはさほど年季を感じないものの,店内に入るとこれぞ酒場そのものという渋すぎる佇まい。一瞬にして大好きになりました。全面が茶褐色に覆われており,実直そのものといった風情のカウンター質素そのもののテーブルと革張りのスツールをソファやカフェテーブルに置き換えればそのまま喫茶店であってもおかしくないような飴色感です。品書きも最低限でありながら過不足なく,酒飲みが好むお新香や板わさ,さつま揚といった定番です。季節感があるといえばアスパラ程度だったかもしれません。しかし,カウンターをぐるりと囲む常連たちの表情からは,これ以上の肴はいらない,酒と気の合う常連通しのひと時の語らい,もしくはひとりしっとりとくつろげる時間さえあれば充分だという満足感が溢れ出ています。どこか気品を感じさせつつも気丈さを併せ持つ女将さんの振舞いっぷりもまさに堂に入っていると言っていいと思います。駅前の佇まいとともにずっと残していって欲しいお店でした(ちなみに「吉田類の酒場放浪記」にて紹介されていたようです)。
2013/06/07
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小田急小田原線は,かつて頻繁に利用して各駅にもたびたび下車して歩いてはいたものの,最近はめっきり利用することも少なくなりました。そういうわけで酒場めぐりのウィークポイントとなっていることもあって,しぶしぶ重い腰を上げることにしました。この夜出向いたのは,急行停車駅の経堂駅です。経堂駅の付近には東京農業大学があることは知ってはいたものの,他に何があるかもわからず,かつて下車しているはずですがその町並みは少しも記憶にありません。 あまりにも地の利がないので,事前に何軒かの酒場に目星をつけておくことにしました,折よく「吉田類の酒場放浪記」で2軒の居酒屋が取り上げていたようなので,そちらにお邪魔するつもりです。 まずは北側の経堂すずらん商店街をぶらぶらします。庶民的な商店が案外長く伸びていて,各店舗を覗いたりしながら歩いているだけでもなかなか愉快になります。通りの裏手は住宅街が広がっており,横道に幾らか居酒屋なんかがあったりしますが,1度歩けばおおよそ町のイメージは掴むことができると思います。引き返しも基本的には同じ道を通るしかないのはちょっと物足りないです。それにしても目当ての店が見つかりません。引き返す際にはよそ見をせずに注意を払って歩きます。こんなある意味では単調な通りで見逃すなんてどうしたことでしょう。駅まであとわずかばかりというころでようやく店の看板を見つけることができました。 「赤ちょうちん 太郎」です。飲食店を中心とした古い雑居ビルにテナントとして入ってたのですね。雑居ビルの飲み屋さんっていうのは,どことなく怪しげでやばい感じがしてわくわくさせられます。しかもこちらはうら寂しく薄暗い廊下の奥にあるので不気味さはかなりのものです。入口付近も雑然と散らかっていて少し入るのを躊躇います。店に入るとかなりくたびれた感じではありますがいかいも居酒屋という雰囲気でちょっとホッとします。カウンターがメインのお店にはお客さんがひとりだけ。静かなオヤジさんが主人で,調理も酒の準備も配膳もひとりでこなしています(店を出る際に入れ替わりで入られたのは店の方かもしれません)。ジャンボ玉子焼だかニラ玉だかは確かにジャンボではありますが特に味らしい味もなくてちょい物足りないかも。夥しいほどのサイン色紙が壁中張り巡らされています。この酒場のどこが芸能関係者などに支持されたんでしょうか。見かけの煩雑さとは異なり,落ち着いて酒の呑める酒場であると思いますが行きつけにするにはいくらか魅力に乏しい感じがしました。 続いて駅の南側の経堂農大通り商店街を進みます。「関所」がその目的地です。ごく普通の民家に赤テントの庇と赤地に篆書の黒文字で屋号が書かれた暖簾が出されています。暖簾をくぐるとすぐに焼台があって,土間のような場所には広いテーブルが1卓あるばかり。そこをぐるりと囲んで10脚ばかり椅子が置かれ,近所の寄り合い場のような雰囲気です。お客さんたちも近所の友人宅を訪れているかのようにリラックスしてくつろいでいます。土間の先には照明も灯らず薄暗くてからっぽの座敷があって,混雑したときや宴会の際にはここを使うのでしょうか。初老のご夫婦と娘さんらしき方で店をやっているようで,あまり愛想はよくなくてちょっとおっかない位です。まだ時間は早いのですがすでに売り切れの部位も多く,その日捌けるだけの量だけを下準備されているようです。お客さん同士の距離がとても近く,ぼくのような闖入者が入り込むと,お客さん同士の輪を壊してしまうようでちょっと居辛くなります。それから最後に一言だけ。酒も肴も値段が一般的な酒場の1.5倍を目安にし,それを心得た上で訪れてください。さもないと一軒くだけた雰囲気の店に入って,その値段に驚かされることになりかねません。
2013/05/29
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「おでん・やきとり きんせい(金星)」は「吉田類の酒場放浪記」,「ハシゴマン」などでも紹介されていてよく知られたお店です。先般代田橋を訪れた際に立ち寄ろうと店を覗いてみると満席でとても入店は敵わなさそう。というわけで改めてお邪魔しに向かったのでした。今回は無事入店完了。安心して店内を見回します。カウンターのみのお店には男性,女性のひとり客。昭和24年頃に建てられた長屋の一部を使って昭和60年に店を始めたそうです。こうしたビニールテントで覆われた店ってなんだか秘密基地で遊んでいるような児戯的なちょっと後ろめたいような楽しみがあります。飲み食いしたものについては特に記すべきところはありません。トイレが長屋の裏手まで回りこまなくてはならず,それは愉快で楽しくはありますが,寒いからといって我慢しすぎると大変なことになりかねないのでご注意を。品書:ビール中:500,酒1合/焼酎割:400,おつまみ得得セット(Aセット[おでん3個+焼とり2本]:500,おでん:200,焼とり:100,こまい/いわし:200
2013/02/26
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これまで1,2度散歩がてらに下車したことがある程度でまるで地縁のない千歳烏山駅で飲む機会がとうとう巡ってきました。上司のM氏が一緒ですが,M氏はあまり酒を嗜まない人なので一軒ご馳走になってから町をぶらぶらしてみることにしました。 まずはM氏お勧めの「やきとり 仲屋」に向かいます。ごくありふれた一軒家の焼鳥屋で,昨年改装したため,店そのものからはさほど個性を感じ取ることはできません。それでも壁一面に貼られた品書きの豊富さとアミレバやのどぶえ,タン入りつくねなどのこだわりのありそうな肴には只者ではない感じがあります。店主はまだお若くてちょっと意外の念だったのですが,非常に態度も丁寧でしかも勉強家です。祐天寺の「忠弥」や東十条の「埼玉屋」,立石の「宇ち多゛」,十条の「斎藤酒場」などなど各地の酒場について静かにしかし熱く語ってくれました。うれしくなってこちらも調子に乗って王子の「山田屋」や東十条の「新潟屋」,赤羽の「米山」なんかについてお喋りしたら熱心に話を聞いてくれてメモまでとっておられました(こんな風に書いていてようやく思い出したのですが,滝野川の渋いオオバコやきとん店「高木」はやはり休業もしくは閉店されたんでしょうか,先日バスで通過したら店内が雑然としていました)。上司などはその姿勢を見て,お前の仕事にはこれが足りないんだなんて説教されたりしたのですが,楽しくて聞く耳持たず。出された肴はどれもひと手間きっちり掛けられていていずれもすごいおいしかったです。品書:ビール大:579,チューハイ:330,中:260,焼物:94~,牛もつ煮込:399,ポテトサラダ:451 千歳烏山は日本で最初にスタンプカードを導入したことで知られるえるも~る烏山があるということは知っていましたが,時間のせいもあるんでしょうけど,人通りもありますが,帰宅を急ぐ人たちの流ればかりのように感じられました。居酒屋もあるにはあるものの琴線に触れるような古いお店には行き着けませんでした。 ただし,「仲屋」とは線路を挟んで反対側にある立飲み屋「なんで、や」はなかなか楽しいお店でした。ちょうど男子日本代表のサッカーを放映していることもあり,大変な盛況ぶりで,しかもいずれの方々も常連さんばかり。そういうこともあり,ぼくもアウェー感をひしひし感じながらの滞在となったわけですが,陽気な方たちが多く,楽しく呑むことができました。
2013/02/17
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西小山駅は東急目蒲線の駅として昭和3年に開業しました。平成11年に旧駅舎が解体され,目蒲線は目黒線と多摩川線に分けられ,開業当時の目黒線の駅として新たなスタートを切りました。その後,地下化,駅ビルも竣工,駅前広場が完成し,街並みは大きく変化しつつあります。 西小山の商店街はかなりレトロな(というか薄暗くてぼろっちい店が多い)雰囲気で,小さいけれど味わい深い町です。全長50m程の小さなアーケード街の西小山東口商店街も闇市時代の名残を感じることのできる貴重な場所です。すっかり観光地となっているお隣の武蔵小山商店街パルムには,全長800mにわたり店がぎっしりと軒を連ねていますが,チェーン店系の飲食店などが多く,老舗の店舗もあまり見当たらないのでさほど魅力的に思えませんでした。一方で,西小山の商店街は,先述の西小山東口商店街や西小山銀座通りには八百屋や魚屋などの食料品店がやたらあって,しかも安いのでした。駅前はかなり開発が進んでしまっていてなんだか間の抜けた感じになっているのが残念。 駅前に「つくば鶏 銀や」という焼鳥の持帰り店がありました。ビニールシートの内側に立飲み用カウンターがあるので,生ビール:200円と焼鳥:100円をもらいます。隣では居酒屋もやってるようです。味はそこそこでしたが,闇市めいた雰囲気があって楽しめます。 ロータリーの反対側を歩くと大きくてクラシックなパン屋があって,その脇に恐ろしく味わいのある小汚い酒場がありました。「鳥かつ」です。生レモンサワー:400円,酒:350円,ホッピー/ハイッピー:440円,もつ焼:100円,煮込:450円と店外の置き看板に明記されています。思わず入店。1階はまっすぐなカウンター10席ほどで,2階では少人数の宴会もできるようです。もちろんハイッピー:440を呑むべし。お通しがあったので肴はなし。ばあちゃんひとりでやってる店で常連らしき客とのんびりテレビを見ていてのどかです。なかなかよい酒場でした。 ちなみに帰宅して調べたら,昭和40年創業の「やきとん道場 三鶴」というのも「鳥かつ」のすぐそばにあったようですが,再開発により新しいビルの1階に移転してしまったそうです。ネットで見る限りなかなかいい雰囲気を残してはいるようで,行ってみたいなあ。
2012/03/29
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土曜日の午後,二子玉川を散歩することにしました。渋谷から東急田園都市線で10分ちょい,一駅手前の用賀駅下車します。つまらない幹線道路と住宅街をしばらく歩くと坂の下に二子玉川の街が見えてきます。この眺望はなかなかいいですね。 古臭い閑散とした二子玉川商店街を歩いていると酒場放浪記で紹介された「のんき」が見えてきます。うらびれた商店街でひときわ目に付くマーケット風の店舗が並んでおり,その一番奥にあります。なかなかいい風情です。開店したら来てみることにします。 さらに進むと「藤屋ベーカリー・ジュン」でハム玉子ロール(コッペパンにハムと卵をはさんだもの)などを購入。これがちょいしょっぱいけどなかなかうまいのです。種類豊富なコッペパンロールが並んでおり,以前あるテレビ番組できゅうりのサラダロールが紹介されていたのを思い出しました。こういう懐かしい感じのパン屋は散歩の楽しみのひとつ。都内では本格的なパン屋さんが筍のようにどんどんできていますが,おいしさだけではない楽しさがあります。 商店街を引き返し,多摩川方面に向かうと「西河製菓店」があります。ここは餅菓子で知られた店のようで,みたらし団子や季節がら櫻もちなどを購入。近くの公園でいただきました。うん,特別すごいわけではありませんが,丁寧に作られていてなかなかおいしい,もちの伸びもすごい。 「玉川高島屋」と「東急フードショー」といったデパ地下を覗きに行きました。これがまたすごい。前者は新宿高島屋の規模に新宿伊勢丹のブランド感を加味したような感じで,知らない店舗も多くあり,催事コーナーも充実していました。後者はそれこそ知らない店舗だらけ。二子玉川には裕福なファミリーがたくさんいることが実感されました。 さて,お楽しみの「のんき」に行ってきました。おしゃれな二子玉川には不似合いと言ってはお店の方や常連さんに失礼ですが,思わずそう感じてしまう位に鄙びたムードです。ガラスの引き戸を開くとテレビで見たまんまですね。テーブル4卓と小上がりにテーブル2卓。ちっちゃなカウンターは6席だけ。すでに3名のお客さんがいます。遠慮もなしにカウンターにお邪魔します。レモンサワー:400をもらいます。でっかいジョッキでけっこう濃い目。肴類の値段はちょっと高めです。テレビではおばちゃんだけが出ていましたが,その旦那らしきおっちゃんも一緒に切り盛りしています。バナバ茶ハイ:400というのをお替りします。おっちゃんに聞くとウーロン茶の苦みを抜いたような味とのこと。珍しいので頼んでみますが,どうってことはないですね。ともあれなかなか雰囲気のいい店でした。 その後,二子玉川の飲み屋街の柳小路を散策します。三列ほどの小道が並行して走り,抜け道なんかもあって感じはいいのですが,肝心の店がなんだか小奇麗な酒場ばっかりでイマイチ冴えませんでした。その後、二子新地にも足を伸ばしこれまた酒場放浪記で登場した酒場にお邪魔しましたが、またいずれ報告できればと思います。 帰りは路線バス。東急バスの黒02で目黒駅に向かいます。東急バスの黒02系統で目黒駅を目指しました。上野毛駅までの区間は辺りもすっかり真っ暗となりコンビニひとつ見当たりません。上野毛駅周辺はそこそこ店舗もあり面白そう。いずれぶらりと訪れたいと思いました。
2012/03/18
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世田谷区は23区の南西部に位置しており、南側は神奈川県と接し、多摩川が流れています。区内には高級住宅地と呼ばれる地域が多く,緑も豊かで住環境として優れています。三軒茶屋駅,下北沢駅周辺,千歳烏山駅周辺,自由が丘駅(中心は目黒区)南側、二子玉川駅周辺が商業地としても発展しており,どちらも住みたい街ランキングなどで上位にランキングされています。 飲み屋の多い地域は,三軒茶屋,下北沢,下高井戸周辺でしょうか。特に三軒茶屋はさまざまな利用者や用途に対応できる多くの酒場があり,古い酒場の集まる路地などもあり面白いエリアとなっています。下北沢,下高井戸にも渋い酒場がわずかながら残されていますが,多くは若者向けの店に移行しているようです。三軒茶屋 焼豚 とし 相当ボロな外観とは裏腹に平成2年に創業したもつ焼屋さん。とにかく無口で不機嫌そうなオヤジさんが受け容れられない人にはお勧めできません。カウンターのみの狭い店内は外観同様やはり手入れが行き届いておらず,これまた不潔さが耐えられない人は避けた方が賢明かも。世田谷の「やきとん 福の家」も似たタイプのお店ですが,少なくとも御主人は感じがいいです。街のイメージとは違って世田谷区にはこうした酒場が多いのでしょうか。三軒茶屋 味とめ 昭和43年創業のいつでもやってる食堂兼居酒屋さん。カウンターと座敷の店ですが,もうちらかり放題でそれがまた店の味を出しているのかも。女将さんも愚痴を繰り返し呟きつつ,のんびりとカウンターで鰻の串刺を続けています。あまり好きな言い方ではありませんがほんとに実家に帰ったような気分にさせてもらえます。松陰神社前 バッカス 昭和35年に創業したという「バッカス」は松陰神社前駅からすぐそばの線路沿いにあります。バーとは思えぬ民家のような佇まいにまずは驚かされます。扉を開くやいなや古き良きバーが忽然と現れます。銀座にあるような一流のバーとは趣の違うレトロな内装に触れて,こういうバーに行きたかったんだとしみじみ感じいったものです。バーテンダーの老紳士もイメージ通りでうれしくなります。長く店を続けられることを心から祈念します。世田谷 酒の高橋 世田谷駅前の閑散とした通りに赤提灯が灯るひっそりとした一軒家があります。「酒の高橋」という簡潔な屋号にしびれます。昭和35年の創業ということで,暗色に塗られて年季の入った店内はその落ち着いた造作を眺めているだけで心癒されます。接客のおばあちゃんも愛想がよくて非常に感じがいい。本当に心安らぐいい酒場です。店奥の便所脇に地下室がちらりと窺えて見ものです。世田谷 まつもと 世田谷駅と松陰神社前駅の中間位に位置する「まつもと」はくたびれた外観で,店内も掃除がまったくされていないかのように寂れてるし,天井の照明は真っ黒に染まっていて役割を失っています。ところがカウンター6席は常連でびっちり,小上がり2卓も丸椅子と組合せなければならない位繁盛しています。繁盛の理由は肴のボリュームとおいしさ。特にヌタは様々な魚介とわかめやネギがどんぶり程の器で出されます。すごいなあ。ただしオヤジさんがひとりで忙しすぎるのか燗は付け過ぎになるので注意が必要。
2011/12/12
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