出演者:二宮和也

第十章 幸福へのレールと月光


―――幸福へのレールなんて本当にあるのだろうか?
     神様がこの世界を創造された時に使われたレール・・・
     そのレールが月の光で作られたものだと聞いたことがある
     もしもそのレールに乗ることが出来たなら―――


新しい街に来てからは毎日がむしゃらに働いた。
何かに集中していれば余計な事を考えなくて済むから――――

朝と夜は急激に温度が低くなる季節となった。
吐く息が白くなり、手が悴み、身に纏う物も増えていった。
静かな街にもイルミネーションが施され、ジングルベルが鳴り渡っていた。
行き交う人々も着飾り、軽快にステップを踏んでいるようだった。

街はこんなに明るいのに。
人々はこんなに楽しそうなのに。

・・・どうして俺はこんなに冷えきっているのだろうか――――


「はーい、どうぞー!」
俺は一枚の紙を手渡された。
見ると案内状のような物だった。
「お兄さん、彼女は?」
「えっ?」
今の俺にとっては痛い質問だ。
そんな俺に気付いたのか彼女はこう言った。
「まぁ、彼女のいないあなたも、このイベントに参加すればきっといい事がありますよー!」
「慰めてくれてどうもありがとう」
俺はぶっきらぼうに答えた。
「そんな顔してちゃ幸せも逃げちゃうよ。ほら、笑って」
彼女の一言が何故か心に染みた。
俺はその言葉を胸にしまい、また歩き出した。

「絶対来てよー!!」
彼女が叫んでいた。
サンタの格好をした・・・

彼女の言葉は単なる営業用の言葉だったのかもしれない。
でもそんな事は関係ない。
今の俺に温かい風が吹いたのは事実だから――――

クリスマス当日。
こんな忙しい日に仕事を休める訳もなく・・・

結局仕事が終わってからイベントが開催されている場所へ向かった。


目的地に着くと、結構遅い時間なのに人が沢山いた。
ここまで来たのはいいが、人混みが苦手な俺は人気のないを探した。

やっと人混みから抜けた俺は一歩ずつ踏み締めながら歩いた。
一歩踏み出す度にあの日の出来事が鮮明に甦ってきた。


彼女と出逢ったあの夜の事が――――

俺は月の光が照らし出すレールの上をずっと歩いていった。
このレールの上を歩いていけば幸福に出会えるのだろうか?
そんな事は分からない。
それに昔聞いた話が本当かどうかさえも分かる筈がないのに・・・

――俺はバカだ・・・――

人は孤独の窮地に立った時、おかしくなってしまうのかもしれない。
そうなることで少しでも孤独を感じないようにしているのだ。


少し歩くと胸の鼓動が早くなっているような気がした。
いや、確実に早くなっていた。

それは――――


俺の目に・・・
あなたが映ったから――――

もう二度と映る筈がないと思っていたあなたの姿が俺の目に映ったから――――





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