☆公開対局
県選手権者へのご褒美である碁聖との公開対局は例年10月ころに行われるが、張う碁聖名人のスケジュールが一杯になっていて今年になって行われた。名人人気が年々上がっていて、今年は入場整理券の倍率が4倍を超えたらしい。
対局は一時半開始だが、十時過ぎに放送会館に到着。すでにスタッフさんにより会場の準備は万全。
控え室で緊張しながら張名人を待つと、しばらくして名人が到着。挨拶して名刺を渡すと名人からも名刺を渡された。自作詰碁が印刷された噂の名刺だ。さらにサイン入りの詰碁の本までプレゼントされた。思いがけないことで大感激。
以前から面識のある解説の山城先生もすぐに到着し、打ち合わせまでのしばらくの間歓談。
テレビのタイトル戦中継などで張名人の張り詰めた様子を見ていたので、ちょっと近寄りがたい雰囲気なのかなと思っていたが、たいへん気さくで物腰の柔らかい先生だったので驚いた。ほんとにウックンという雰囲気だ。おかげでかなり緊張は和らいだ。
新聞社の社長はじめ役員、張・山城先生、聞き手の平岡夫人と昼食。社長が昭和52年に世界アマ選手権で来ていたアルゼンチンのアギラールとの親善試合で勝ったという話が出た。どれくらいすごいのか評価が難しいが、その後にプロを連破したアギラールだからすごいという結論になった。
記事 の話が出てびっくり。本人は、打たれるまで下がりの利きに気づいていなかったという衝撃の事実が発覚した。それなら相当焦ったはずだが、それを全く気取らせないのもさすが。
途中張名人がトイレに立った時に会場入りしていたファンの人達に発見されて、囲まれて大騒ぎになっていたが、丁寧に対応している名人の人柄に改めて感心した。その後、立ち木問題やネット碁の事など雑談しているうちに、あっという間に時間となった。
☆対局まで
いよいよ別室に移り対局開始。手合いは3子。負けられない手合いであるが、怖い手合いでもある。心の持ち方が難しい。日取りが決まってからの2ヶ月ほどの間、どういう心構えで打とうか心が揺れていた。
3子のいうのはかなり大きなハンデ。とにかく中盤までに一切反発せず、緩く緩く無難に打つのが一番確率が高い。昨年小沢一郎氏が依田先生に4子で勝った碁が週刊碁に載っていて驚いたけれど、まさに置碁で勝つための打ち方の見本だった。ただし、本人の得るものも少ない上に、見ている方は全く面白くない。
かつてアマの強豪が3子で負けた碁を見ると、イキナリ暴走したり、固く打ったり暴走したりの反復でチグハグになったり、心の揺れが見える。原田実先生が趙本因坊に負けたの碁は、ひたすら厚く厚く打っていて、白は強大な厚みの中に薄い開きが各所に取り残されたような状態だったけれど、結局何も仕掛けないうちに薄みが地になってしまうような不思議な碁だった。あの原田先生にしても、何かが狂ってしまったのだろう。
2004年依田先生との最初の公開対局は、序盤から超消極戦法の連続で、小ヨセの入り口まで約10目リード、しかし気持ちが震えに震えていて信じられないようなヨセの後退でジゴ。局後に依田先生から「ストーリーがない。」と言われて大反省した。
翌年は反省も生かしてリベンジに成功したが、白もあまり策を弄しない打ち方であった。張名人はもっと序盤からかく乱してくるのは間違いない。
名人と打てるのは貴重な機会なので思いっきり打ちたいという気持ちがあり、普通の指導碁なら当然迷う余地もないのだが、公開対局では3子では負けたくないという気持ちも強い。
張碁聖に替わり県の代表は2連敗。新聞に出ている人の碁を見ていて歯がゆかった。やはり県の代表が3子でコロコロ負けるのは見るのも辛い。碁会所などでも「内容はどうでも良いからとにかく勝ってほしい」と言う人もいた。
迷っている時に、本屋でふと「勝負脳の鍛え方 林成之著」という本が目に入り買った。勝負や成功への心構えを理屈っぽく書いてある本だが、特に気になったのは「勝負に勝つためには結果でなく過程に集中せよ。」「相手の弱点を突くのでなく、強い部分で戦え」という教訓。
結論は出なかったが、あくまで勝つことを目標にバランスを取りながら、そしてストーリーがないと言われない程度に最善を尽くして勝とう、などと玉虫色の事を考えていた。
序盤いきなり、大きな分岐点が来た。今右上に白がかかった局面。黒はどう打つか。
局面図

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