数年前のMさんとの出会いは不思議だった。
妻の店の常連客だった若いMさんは、担任ではないが子供の学校の先生だった。その縁で時々言葉を交わす事はあったが、お互いそれ以上の事は知らなかった。妻から、忙しい時に注文を忘れていて 2 時間近く?も待たされたのにMさんは何も言わずに待っていたと聞いた事があったが、本当に紳士で穏やかな人だ。
そんなある日、突然の事件が起きた。Mさんが店に置いてあった週刊碁を読んでいるのを発見した。その様子を見ていて、ただものではない気配を感じた。よく見ると、眺めているような読み方ではなく、棋譜を目で追いながら思考している姿だ。
気配と言えば、以前新宿の駅前で大道詰将棋をやっていたのを見かけた時のこと。自分が解けるレベルではないとは分かったが、他のお客がポンポンと手を出す中でじっと盤面を眺めていたら、テキ屋のおじさんから「兄さんあっち言って!」と追い払わた事がある。競技違いだが、何か気配を感じたのだろう。
Mさんに声をかけた。「M先生、碁をされるのですか?」
Mさん「え、いえ少しだけですよ。」
私「どのくらい、お打ちですか?」
Mさん「弱いですよ。学生時代に少し。 nippart さんも打たれるのですか?段ですか?」
私「いえいえ私も弱いですよ。今度、打ちましょうか?」
と言うようなお互いの手の内を読み合うような、不思議なやり取りが続いて対局の約束をした。
この時は、Mさん
3
~
4
段は打つのかな?と思っていたが、碁会所で改めて話をして驚いた。何んと、全国大学選手権の常連校の主将だったとのこと。このクラスは普通はアマ棋戦の予選などで会うはずなのだが、仕事が忙しくて大会には参加していないとのことだった。これがきっかけとなり、その後からMさんが転勤した今に至るまで時々打つようになった。週刊碁を置いてなかったら起こらなかった奇跡的な体験だった。
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