仁志・多喜馬の戯言日記&戯言通信

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2024年11月27日
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中世ヨーロッパで活躍した処刑人に関して関西大学名誉教授の浜本隆志氏は「処刑人は不名誉な職業として知られていたが、都市の秩序を維持するために不可欠な存在となっていた。報酬は法律で具体的に定められており、残酷な方法であるほど高い報酬が得られた」という。死刑執行は古代のゲルマン時代においては神の役割を代行する名誉な行為であり、処刑用の剣は神の正義のシンボルであったそうで、処刑された罪人は神に対する供犠ともみなされていたというが、中世初期まで職業的な処刑人は存在しておらず、被害者やその親族が刑を執行したりあるいはその代行をしたりする役人しかおらず、中世ドイツでは1276年にアウクスブルク都市法にはじめて処刑人が登場し職業として拷問と処刑を行っていたという。

 死刑執行人は裁判所の死刑判決などを受けて死刑執行を行う者で、執行する刑罰は死刑だけでなく鞭打ち刑などの身体刑が行われている国では身体刑の執行も行われていたが、死刑執行人は国から明確に死刑執行人に任命された人物であり、ドイツなどでは完全な公務員であるがフランスでは公務員というよりも外部委託業者のような形態に近かったという。もっとも死刑執行は毎日あるわけではなく近代に近くなるほど件数は減少し、1年以上も全く死刑執行の仕事が無いことも珍しくなかったという。ヨーロッパにおける死刑執行人は世襲制によって受け継がれてきたそうで、ヨーロッパの大半の国で国家の設立から近年の死刑制度の廃止まで政治体制に関係なく世襲が続いていることがほとんどだという。

 世襲は死刑執行人が一種の被差別民として扱われたためだというが、14~15世紀ごろにドイツのケルン・マインツ・リガなど各都市に職業としての処刑人が生まれ、処刑以外にも自殺人や動物の死体に汚物の処理だけでなく娼婦の監督を任されていたことから、処刑人の仕事は死や不浄なものに接触するものだったという。そこでしだいに「不名誉な職種」に変化していったというのだが、人を殺める職業柄もあって処刑人自身も罪の意識を自覚し、なかには職を辞して贖罪の巡礼をした記録が散見できそうで、たとえば15世紀の処刑人は神の思し召しによって罪深い仕事から足を洗いローマへの贖罪の巡礼にいったという。そして中世後期から比較的高収入を得たが社会の最下層の者として差別される傾向がますます強くなったという。

 具体的な中世の差別の例を挙げると、日常生活のなかで処刑人は市民と出会うと通りで道を空けなければならず、市場で食べ物に手を触れてはならないとか、教会すら特別の席に座らねばならなかったという。住居も市外の橋のそばに住まなければならないというように処刑人の置かれた立場が示されていて、事実バーゼルの職人は刑吏と同席して飲んだというだけでツンフトから追放されたそうなのだ。処刑人の身分とかかわるが処刑される未婚の女性は処刑人と結婚する場合にのみ命を救われたそうで、これは都市法が定めた決まりだったが二人は町を去らなければならなかったという。しかし結婚難に悩む処刑人と死を逃れたい女性の思惑が一致することがあり、結婚のケースは少なくなかったそうなのだ。

 処刑人は差別されていたにもかかわらず都市の公的な秩序維持のために不可欠な職業で、とくに公開処刑の花形であって派手な衣装で処刑場に登場したといわれており、死刑執行人が二人の助手を連れ正装して処刑場に向かうところを描いた図が残っている。が、派手な黄色の羽根に青い服と赤いマントに帽子という出で立ちでとなっている。また都市法は処刑人およびその助手に対し手当てを定めており、中世以来の残酷な刑罰の方法の伝統を継承し極刑である車裂きと四つ裂きの刑が最高で次に絞首刑、剣による刑が続いていたという。当時は拷問から処刑は連続している場合が多く刑吏はそのため何重にも手当てを受け取ることができ高給を得ていたそうで、中級役人の年収を優に超えていたそうなのだ。

 処刑人は通常副業を行なっていてさらなる収入を得ていたそうで、たとえば斬首の際に傷口から大量の血が流出するが見物している者は先を争ってその血を求めていて、処刑人は容器で血をすくい布切れにそれを浸しお金を取って販売したというが、その際に処女の血はもっとも高価でユダヤ人の血はもっとも安かったという。これは処刑された者は犯罪人であったとしても神への供犠にあたり、聖体拝領における赤ワインがキリストの血であるという解釈と繫がっているからだという。また処刑人は日ごろ拷問を行う経験から人体の構造に通じており、骨折や捻挫の治療など闇ではあったが外科医としての仕事にたずさわったそうで、治療技術は高く評価されていてドイツでは処刑人に対して骨折や傷病治療を許可していたという。





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最終更新日  2024年11月27日 03時12分08秒
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