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2015年02月02日
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カテゴリ: 読書


 水野 和夫(著)
 集英社新書 2014年3月19




 目次
 はじめに―資本主義が死ぬとき
 第一章 資本主義の延命策でかえって苦しむアメリカ
 第二章 新興国の近代化がもたらすパラドックス
 第三章 日本の未来をつくる脱成長モデル
 第四章 西欧の終焉

 おわりに―豊かさを取り戻すために
 参考文献

 P12
 もはや利潤をあげる空間がないところで無理やり利潤を追求すれば、そのしわ寄せは格差や貧困という形をとって弱者に集中します。そして本書を通じて説明するように、現代の弱者は、圧倒的多数の中間層が没落する形となって現れるのです。

 P20
 1970年代には、1973年、79年のオイル・ショック、そして75年のヴェトナム戦争の終結がありました。
 これらの出来事は、「もっと先へ」と「エネルギーコストの不変性」という近代資本主義の大前提のふたつが成立しなくなったことを意味しているのです。
 ……
 「地理的・物的空間」の拡大もできず、資源も高騰していくのですから、1970年代半ば以降の資本利潤率の低下は当然の結果です。そして、この時期からの利潤率の低下を表現したものが「利子率革命」にほかなりません。
 そして、ブローデルに「長い16世紀にならって、現代の大転換期を私は「長い21世紀」と呼んでいます。「長い21世紀」の始点を1970年代に置くのは、この利潤率の低下が、これまで世界を規定してきた資本主義というシステムの死につながるものだからです。

 P52




 P60
 現在の課題は、先進国の過剰マネーと新興国の過剰設備をどう解消するか、なのです。この問題の困難さは、このふたつの過剰の是正が信用収縮と失業を生み出すことにあります。時間をかけるしかないのです。そしてこの間、先進国ではゼロ金利、ゼロ成長ゼロインフレが続くことになります。

 P72
 そして、「長い16世紀」の「価格革命」は、1545年のボリビア・ポトシ銀山の発見が加速させたわけですが、「長い21世紀」の「価格革命」においても銀山の発見にあたる出来事がありました。1995年の国際資本の自由化です。世界中のマネーがアメリカ・ウォール街のコントロール下に入ったことで、「電子・金融空間」が国境を越えて世界でひとつに統合されたのです。


 ところが、1999年以降、この関係は崩壊し、弾性値αは急落、2006年あたりにはマイナスの値をとってしまいます。つまり、この時期から企業の利益と雇用者報酬とが分離し、2006年に至っては企業利益はあがっているのに、雇用者報酬が減少するという現象が起きてしまったのです。

 P81
 ……21世紀の「価格革命」とは次のようなものだと私は考えます。それまでの国家と資本の利害が一致していた資本主義が維持できなくなり、資本が国家を超越し、資本に国家が従属す資本主義へと変貌していくことを示すものだと。
 つまり「価格革命」とは、「電子・金融空間」創出の必然的帰結の出来事として捉えるべきことなのです。「電子・金融空間」でつくられた「過剰」なマネーが新興国の「地理的・物的空間」で過剰設備を生み出し、モノに対してデフレ圧力をかける一方で、供給力に限りがある資源価格を将来の需給逼迫を織り込んで先物市場で押し上げえるのです。



 P114
 しかし、現実には2002年から2008年にかけて、戦後最長の景気回復があったにもかかわらず、賃金は減少しました。そして日本だけでなく英米でも同様に、景気と所得との分離が確認されています。

 P128
 私なりに解釈すれば、利子率の低下とは、資本主義の卒業証書のようなものです。したがって、金利を下げられない国は、まだ卒業できていない状態にあり、金利が下がっても不幸・不満がなくならない国は、卒業すべきなのに「卒業したくない」と駄々をこねている状態です。

 P134
 資本主義を乗り越えるために日本がすべきことは…社会保障も含めてゼロ成長でも維持可能な財政制度を設計しなければいけない、ということです。
……
 そしてもうひとつは…国内で安いエネルギーを自給することが必要です。



 P176
 「努力したものが報われる」と宣言して、報われなかった者は努力が足りなかったのだと納得させることで、先進国内に見えない壁をつくり、下層の人たちから上層部の人たちへ富の移転を図ったのです。収奪の対象は、アメリカであればサブプライム層と呼ばれた人たちですし、EUであれば、ギリシャなど南欧諸国の人たちです。日本の場合は非正規社員です。

 P186
 グローバル資本主義の暴走にブレーキをかけるとしたら、それは世界国家のようなものを想定せざるをえません。金融機関をはじめとした企業があまりにも巨大であるのに対して、現在の国民国家はあまりにも無力です。



 P208
 ゼロ金利・ゼロインフレの社会である日本は、いち早く定常状態を実現することで、この豊かさを手に入れることができるのです。
 そのためには「より速く、より遠くへ、より合理的に」という近代資本主義を駆動させてきた理念もまた逆回転させ、「よりゆっくり、より近くへ、より曖昧に」と転じなければなりません。






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最終更新日  2015年02月11日 21時37分29秒
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