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2020年08月26日
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カテゴリ: 経済

 世界的な新型コロナウイルスの感染拡大で、経済は冷え込み、石油消費量自体が落ち込み産油国は国家財政の根本となる歳入が減少。
 多くの産油国の内政が不安定化している。
 ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子が率いるサウジアラビアだけが、産油国の中で独り勝ち状態だという。
        ​
産油国が地獄を見る2020年に、
独り勝ちするサウジアラビア
The Oil Crash’s Unlikely Winner
ジェイソン・ボードフ
(コロンビア大学グローバルエネルギー政策研究所所長)
2020年5月19日 Newsweek
<原油価格がマイナス圏に入った危機の後も、
「体力抜群」の強みを生かして世界を仕切る勢いを見せる>
 世界中で40億もの人が新型コロナウイルスのせいで厳しく行動を制限されている今、ガソリンやジェット機の燃料(軽油)をはじめとする石油製品の需要は激減し、原油価格も落ちるところまで落ちた。
 アメリカでは一時、先物価格がマイナスに転じ、売り手が買い手にお金を払って在庫を処分する展開になった。
 当然、石油に依存する国々の経済は悲鳴を上げている。
 アメリカは世界最大の産油国だが、石油掘削装置の稼働数はこの2カ月で半減した。
 原油・天然ガス採掘業者の40%近くが年内に破綻しかねず、石油業界だけで22万人が失職するとの予測もある。
 世界に目を移すとナイジェリアやイラク、カザフスタンといった産油国も苦境に立たされ、通貨の相場が急落している。
 もともと破綻しているベネズエラなどの状況は目も当てられない。
         ​
 2020年に産油国が地獄を見るのは間違いないが、少なくとも1つだけ、このパンデミックの終息後に、経済的にも地政学的にも強くなっていそうな国がある。
 サウジアラビアだ。
 そもそも、サウジアラビアには今回のような嵐にも耐えられるだけの財政力がある。
 もちろん国家予算の均衡を保つには1バレル当たり80ドル前後の水準が必要なので、現状の原油安は痛い。
 格付け会社ムーディーズが同国の財政見通しを引き下げたのは当然だ。
  …(略)…
        ​
 地球温暖化への懸念で石油需要が抑制される気配もない。
 世界的な感染拡大が各国の経済に及ぼした苦難は、むしろ環境政策の足かせとなりかねない。
 今や世界の国々は孤立主義に傾き、温暖化対策に不可欠な国際協力の機運はしぼんでいる。
 一方で原油供給の回復には時間がかかる。
 生産を再開できない油井もあるし、新規投資のキャンセルもある。
 アメリカのシェールガス・石油掘削にもブレーキがかかる。
 今は供給過剰で、原油の貯蔵施設が限界に近づいている。
 陸上の施設は5月中に満杯になるだろう。
 いまだかつてないほど多くの油井で、生産停止を余儀なくされそうだ。
 だが生産を止めると、油井そのものにダメージが出る。
 一部の施設は生産再開が不可能になるかもしれない。
 そうでなくても復旧には多くの時間と費用がかかる。
 コンサルティング会社エナジー・アスペクツによれば、日量400万バレルほどの供給が半永久的に失われかねない。
  …(略)…
        ​
 元ゴールドマン・サックスのアナリスト、アージュン・ムルティも、アメリカの原油価格が1バレル当たり約50ドルに回復したとしても、年間生産量の増加は日量換算で最大50万バレル程度にしかならないと予測している。
 新型コロナウイルスのせいで落ちるところまで落ちた原油価格が再び上昇に転じるとして、そのときサウジアラビアは(湾岸諸国の一部やロシアと同様)価格上昇の恩恵を受けるだけでなく、世界市場でのシェアを拡大するチャンスにも恵まれるだろう。
  ― 引用終り ― 
        ​
 盤石にみえるサウジアラビアだが、内実はそうとも言い切れないようだ。
 3月6日、サウジアラビア当局は、サルマン国王の弟のアハマド王子、おいのムハンマド・ビン・ナエフ前皇太子ら有力王子を拘束したと欧米メディアが報じた。
 潜在的な政敵、王位継承権者の排除により、サルマン国王の息子であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子への権力集中が一段と進められている。
 サウジアラビア国内では皇太子の政治手法に一部で不満が高まっていると報じられている。
        ​
焦点:
サウジ皇太子が追う「機密文書」、
権力掌握へ政敵を駆逐
Reuters Staff
2020年6月27日  Reuters
 3年前に就任したサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、権力掌握に向けて締め付けを強化し、有力王族や政敵を拘束してきた。
 しかし、その中で難を逃れてきた人物が1人いる。
 情報機関の元高官で、王位継承をめぐってムハンマド皇太子とその座を争うライバルとの関係も深い。
 「MbS」というイニシャルで呼ばれることの多いムハンマド皇太子はここ数カ月、この人物、つまりサアド・アル・ジャブリ氏の親族に対する圧力を強めている。
 ジャブリ氏の家族によれば、すでに成人している同氏の子女を拘束し、カナダに亡命中のジャブリ氏の強制送還を試みている。
 事情に詳しい4人の関係者によると、皇太子が気にしているのは、ジャブリ氏が保有する機密情報を含む文書類だという。
  ― 引用終り ―
        ​
 8月7日、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子に、サウジの元情報機関職員を殺害する目的でカナダに暗殺部隊を送り込んだ疑いが報じられた。
        ​
 サウジアラビアは、イエメン内戦で暫定政府を支援するなど、アラブ社会の中で存在感を増している。
 8月10日、サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコの4~6月期の純利益は前年同期比73%減の246億リヤル(約7千億円)となった。
 サウジが3月にしかけた「価格戦争」の余波が自らに跳ね返ったと報じられた。

 政治的独裁と経済社会の現代化・開放が両立させられるか、中国と同じような道をサウジアラビアは歩み始めている。
 経済的成功がその基盤となっている。  
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最終更新日  2020年08月26日 16時00分06秒
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