SAC.COM

PR

バックナンバー

2025年11月
2025年10月
2025年09月
2025年08月
2025年07月
2025年06月
2025年05月
2025年04月
2025年03月
2025年02月

カレンダー

フリーページ

2020年09月14日
XML
カテゴリ: 民間航空
 2020年5月22日、国産初のジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」の開発を進める三菱航空機の人員を削減する方針を三菱重工業が固めたとNHKが報じた。
 8月27日、Business Journalは親会社である三菱重工業に収益が悪化し資金的余裕がないため、三菱スペースジェットが失速する可能性が高いと報じた。
 コロナ禍で航空機製造関連事業の見通しが立たなくなったことも観測の要因のひとつだろう。

旧MRJ、開発中止の観測も
…技術者間の対立で開発現場混乱、
2020年8月27日 Business Journal
  …(略)…
 わずか2年前、当時の宮永俊一社長(現・会長)は21年3月期には売上高5兆円を目指す中期計画を掲げたが、スペースジェットの開発遅れとコロナ禍で中計は雲散霧消してしまった。
 財務内容は悪化の一途だ。6月末の自己資本比率は3月末比1.9ポイント減り22.5%。
 一方、コマーシャルペーパーの発行などで有利子負債残高は2894億円増えて8877億円に膨らんだ。
 CRJ買収に資金を使い、純現金収支は3395億円の赤字となった。財務は火の車だ。

完成機を造るノウハウ
「21年3月期にスペースジェット関連の損失額は1200億円となる見通し」。
 オンラインで行った決算説明会で、小澤壽人・取締役専務執行役員CFO(最高財務責任者)はスペースジェット関連費用や損失が今期の業績を圧迫すると説明した。
 新型コロナの感染拡大でスペースジェットの開発は事実上、中断に追い込まれている。
 国産初のジェット旅客機として期待されたが、機体の安全性を国が証明する型式証明(TC)を取得できず、量産初号機の引き渡しの予定が7年遅れ、開発体制の大幅な縮小を余儀なくされた。
 三菱重工は、ジェット旅客機の主翼や胴体など構造部品では航空機メーカーに直接納めるティア1として豊富な実績を持つが、完成機メーカーとしての事業化のノウハウはまったくなかった。
 完成機メーカーは航空機、装備品に関し1機100万点ともいわれる部品をすべて管理し、機体だけでなく、複雑なシステム制御を含めてあらゆる責任を負う。
 ボーイングから部品を受注する部品会社の発想では、工程管理や安全性を確保するのに限界があった。
​       ​

スペースジェットの開発責任者を解任
 三菱航空機でスペースジェットの開発責任者を務めていたアレクサンダー・ベラミー氏が6月30日、会社を去った。
 ベラミー氏は三菱航空機に入社する以前の5年間、競合するカナダ・ボンバルディアで小型旅客機「Cリーズ」の開発メンバーであり、計7機の飛行試験機の開発に携わった。
 その前は英国のBAEシステムズに勤務。
 世界を渡り歩く航空機開発のプロを自認していた。
        ​
 宮永社長(当時)がベラミー氏をスカウトした。
 航空機開発が遅々として進まない原因の根本には、航空機部門がある名古屋から本社に適切な情報が伝わらない縦割りの弊害があると考えた。
 そこで16年以降、エキスパートと呼ばれる外国人技術者を300人規模に増やし、独善的だった同部門の意識の改革を試みた。
 その総仕上げが、18年、ベラミー氏をCDO(最高開発責任者)に起用することだった。
 しかし、外国人の助っ人が増え、主流派から転落した日本人技術者との軋轢が深まった。
 開発現場は混乱し、配線や計器類などの設計変更が相次いだという。
 19年4月、変化が起きた。
 ベラミー氏の後ろ盾だった宮永氏は会長に退き、泉澤清次氏が社長に就任した。
 1年後の20年6月、三菱航空機の新体制と役員人事が発表された。
 海外の3拠点を1カ所に集約し、社員数も現在の半数となる700人程度に削減する。
 ベラミーCDOは退任し、後任の開発責任者には、戦闘機開発の技術者である川口泰彦氏が就いた。
        ​
 三菱重工は、今年度の開発費を前年度の約半分にあたる600億円程度に圧縮する方針を示している。
 それに伴い、スペースジェット事業を大幅に縮小する。
 400人近くいた外国人技術者の多くが去る。
 三菱航空機の幹部社員22人のうち外国人はベラミー氏をはじめ13人。
 日本人は水谷久和会長以下9人で、外国人のほうが多かった。
 それが7月以降は日本人ばかりの6人になった。
  …(略)…
 三菱重工は、国産初の民間小型ジェット機・三菱スペースジェットから、国産戦闘機の開発に乗り替える。
 こうしたさまざまな状況から、 三菱スペースジェットが離陸することはないだろう との見方が広がっている。
  ― 引用終り ―
        ​​
 小型ジェット旅客機は巨額の開発費が必要で、既存のエンブラエルやボンバルディアにとってもリスキーな事業だった。
 だからノウハウがある両社は手を出さなかった。
 三菱航空機が進出したライバルがいないブルーオーシャンは、リスクたっぷりだった。
 ロシアと中国のライバルは既に実機を飛ばし、立派過ぎるライバルになっていた。
        ​
 FAAの型式証明を得る目途が立たないまま、5月末に三菱航空機はM 90の試験飛行の停止、スペースジェット関連の活動を名古屋に集約することを決めた。
 FAAの照明が型式証明が取得できないのであれば、今年度の開発費600億円も無駄になる。
 「できるだけ早くやめる」という決断も、勇気ある経営判断だ。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2020年09月14日 16時00分07秒
コメント(0) | コメントを書く
[民間航空] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

Ta152R

Ta152R

コメント新着

私はイスラム教徒です@ Re:マスク効果とマスク・リスク(05/05) 神神は言った: コーランで 『 人びとよ…
maki5417 @ Re:コメ 品薄の構図、値上げの秋(09/09) 需給ギャップは20万トン程度。 6月頃か…
maki5417 @ Re:福島原発の核燃料デブリ取り出し…着手できず作業中止(08/31) 核燃料デブリ取り出し 元請けから下請け…
maki5417 @ Re:香川産 養殖鮭に注目(07/07) 外国のように船ごとの漁獲高制限をしない…
maki5417 @ Re:星野リゾートトマム 施設売却(07/05) 中国に買われていたとは知りませんでした…

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: