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この中では、先天鼻涙管閉塞症(せんてんびるいかんへいそくしょう)という、赤ちゃんの鼻涙管が下鼻道に開口する部分で閉鎖しているため、涙やめやにが止まらない病気の治療についての話が印象に残りました。
ほんのしばらく前までは、抗菌薬の点眼と涙嚢部のマッサージで生後3~4ヶ月までは経過観察をし、この方法で治らなければ生後4~5ヶ月をめどにブジーという細い針金のような器具で開通させるというのが一般的で、当院でもしばしば施行していたのですが、最近になって、「治療は観察のみでよい。目やにのあるときのみ抗菌薬点眼を短期間使用しても良いが2週間以上は使用しない。涙嚢部のマッサージは炎症のある時は破裂の恐れがあるので注意しなくてはならない。ブジーは汚染手術で敗血症などのリスクも0ではないし、自然開通が極めて多いので急性涙嚢炎などの場合を除き、7~12ヶ月は経過観察するべき」という意見を述べる専門家の方が多くなっているのです。 そのため、先天鼻涙管閉塞症は以前よりも積極的な治療に踏み切るかどうかの判断時期が遅れる傾向が強まっています。今回のセッションでもまさに上記の意見を仰る専門家の方がいたのですが、この方法には1つ問題点があり、もしも12ヶ月待っても治らなかった場合に、赤ちゃんがかなり大きく力が強くなっているので、沈静や全身麻酔をかけないとブジー治療がかなり困難であるということがあるのです。
今回のセッションでも結局ベストの治療法の姿が提示されず、私の心の中にはかなりのモヤモヤ感が残りました。「全ての病気の治療法がすっきりクリアカットになるわけではないこと」、これもまた医学の真実の一つなんですね。
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