Nonsense

October 12, 2007
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『流星郡の夜。』



きらきら。
星屑の鬼ごっこ。

鬼は大変だね。
誰が鬼かな?
誰か捕まったかな?








小さい頃に家族で見たことがあった。
あんなキラキラしているもの、初めてみたと思う。
十何年…もう何十年かな。
それぐらいの年月が経っているいまでも、あの衝撃は覚えてる。


懐かしいことを思い出してるうち、自然に手はケータイへと向かっていた。
自分の行動の無駄に気がつき、手をひっこめ
「どうせ、出ないわね。」って独り言。

食べかけのトーストを無理矢理押し込んで、
野菜ジュースで流し込んでからテレビを消した。

今年の夏は暑いなって、まるで人事かのように思いつつ、
仕事へ向かうための窮屈なハイヒールに身を縮め込む。


彼に連絡しても、もう仕事中だもの、ね。

ひとり、わからないように苦笑いをしてからリズミカルに足音を鳴らした。




―――…



仕事中は流星郡のことなどすっかり頭から飛んでいた。

今日も、いつも通りの労働を重ねて。

だから、か。
暗くなった夜空を見上げて、朝のテレビの画面を連想する余裕があった。



鞄のサイドポケットからケータイを取り出して、短縮ダイヤルを長押し。
しばらくして最後の呼び鈴が鳴り終わり、電子音が鼓膜を震わせた。

…もう、この電子音も飽きたな…

ピーという発信音の後に簡素な伝言を残し、
緩めた歩幅を再び開き、我が家に向けて今日最後の労働を強いる。


流星郡のことは、言わなかった。


忙しいところを無理に連れ出すことはない。

星屑より休養が必要。




食欲はなかったから、
おつまみ程度にお惣菜を買って。



家に帰るまで空を見なかった。見ないようにした。

だって、一面の星屑がみたいんだもの。すこしは、欲張ろうと思ったの。




メイクを落とし。軽くシャワーを浴びて。
くてくての部屋着に身を包んでから、レジ袋の中の夕飯をだそうとしたところでケータイに呼び止められてしまった。

ディスプレイの文字なんか見なくても、音でわかる。



「もしもし?」

「電話、取れなくてごめんな。」

「私こそ、いきなりごめんなさい。」

「いや。最近忙しくて、連絡してなかったし。
 …お詫びといっちゃなんだけど、


 今、

 お土産持ってドアの前なんだ。」






「えっ…」



急いで玄関の向こう側を確かめに走った。

開放音とともに目の前に現れた彼の手にはシャンパンと、
美味しいと有名なケーキショップの箱。



「明日、記念日だろ?」

笑いながらお土産を突き出す彼。


「…一体なんの記念日?」

「んー。久々に一緒に朝を迎えられる、記念?」


彼の言葉で、少し、頬の熱が上昇したのを感じながら、
飽きれ顔を造って、彼を部屋へ招く。

テーブルの上にあった夕飯を退かし、お土産をひろげて。
グラスに注いだシャンパンだけ片手に、ふたり、ベランダへ出た。

メイクも落として、ヨレヨレの部屋着。スーツの彼には見劣りするけれど…。
雲のない空で輝る一面のきらきらがちょっとでも、私を照らしてくれるばいいな。


空では鬼ごっこが始まってる。





影が重なるとき
ふと
おもった



貴方の腕のぬくもりのなか
朝が迎えられる日は


確かに




記念日だわ











星屑の舞いに


願わずとも。











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Last updated  October 12, 2007 10:14:27 PM
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