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第10章
流れる雲は止まることなく
南
シスカは重鎮の家臣たちを一同に会し、それぞれのこれからの動きを確認していた。おそらく、東西南北の中で一番国王が天職なのは彼であろう。15歳の少年とは思えないくらいに、その姿は堂々としていた。
そんな中、一人の男が前に出た。
「今一度お目にかかります、シスカ新国王陛下。フィートフォト家が嫡子、ラスティでございます」
一瞬だけ彼を見て、シスカはすぐに彼から視線を外した。
「あぁ。ハイハイ。あの時の人ね。えっと、君の配属は……紅騎士団副参謀でいいかな?」
手元の資料と自身の記憶から、シスカはそう言った。彼の実力は知っている。紅騎士団の戦果から見れば“文句なし”の有能さである。
「いえ、本隊直属の、第一軍師を希望します」
だが。彼は大胆にも反論してみせた。
流石にシスカも彼に視線を戻し、不敵に笑った。野心というものに少し欠ける南の貴族だが、どうもフィートフォト家は例外らしい。
「へぇ。……いいよ。ただし条件付だ。次の戦いで大した戦果を上げられなかった場合……フィートフォト家の“政治的”干渉力は、ほぼなくなると思ってくれるならね」
周りが唖然とし、ざわつく。
当のフィートフォト家の現当主は不在だが、フィートフォト家の実質的権限を今まで行使してきたフィールディアは、別段うろたえたりはしなかった。
政治に興味がないのか。兄を信じているのか。
「分かりました。次の戦いでわたしの戦略を用い、南を勝利へと誘ってさしあげましょう」
ラスティも、不敵に笑った。
その光景を、シックスは苦笑しながら見つめた。
―――この二人……似ているな……。
一同に解散を命じ、各々がそれぞれの準備の為に足早に帰っていく中、シスカに反論を申す男がいた。現本隊直属の第一軍師、シスカ直属の参謀であるゲーバーク・ジェビルであった。彼の今までの戦果は優秀と言っていいほどの働きだったため、一流の軍師と言っても過言ではない男だった。
「陛下!先刻の約束、どういうおつもりでしょうか!?不肖ながらこのゲーバーク、あのような男に退けを取るとは思えませぬ!」
シスカは興味なさそうに、冷たい視線をゲーバークに投げた。
「だから、一回彼を試すんじゃないか。それでどちらか上かが分かる。簡単なことだろう?」
シスカの視線に脅えたかのように、ゲーバークは押し黙った。
「もし彼が役に立たなかったら、まだまだ君の時代は続く。もし負けそうになったら優しい優しい“ゼロ”の援軍を呼べばいい。心配することはない、南に敗北の種なんかないさ。……北みたいに崩壊することもないんだよ。ボクはそういう政治をしているんだから」
シスカの眼は遠くを見据えていた。まるで、夢でも見ているような。
「し、しかし……」
「まったく、これ以上反論があるなら、直接ラスティのところへ行ってくれ。まぁ、フィールディアの反応を考えれば、怖くて行けないだろうけどね♪」
シスカにそう言われゲーバークは渋々と引き下がった。
これ以上反論して王の信頼を失うわけにはいかない、だが、あの凶暴なフィールディアのところに行って今のようなことを言えば……恐ろしくてそんなことはできない。
ゲーバークの後ろ姿を一瞥し、シスカは呟いた。
「地位や名誉を守るような姿勢は、ボクの南にはいらないんだよ……。必要なのは、戦う本能と、出世のために命をかけるような、野心さ。保守的な考えは、いらないんだよ」
シスカは、天井に視線を投げた。
見えない空を見ようとするかのように。
崩壊しながら燃えゆく城を見上げながら、ローファサニは叫んでいた。
「グレイ!!グレイ!!早く、早く出て来い!!グレイ!!!!」
誰もがその姿に鎮痛な思いを抱き、泣きながら悲しみを身体から追い出していた。
鉄壁を誇ったアイアンウルフ城が、今200年の長い歴史に幕を下ろそうとしている。元北の騎士、ベル・チェインと、西の虎狼騎士グレイ・アルウェイをその中に残したまま、アイアンウルフ城は崩壊を終えた。
一同を代表するかのように、セティが前に出た。
「閣下……今は、これからを考えねばなりません。酷な話ですが、たった今、二つの波動が天へと昇るのを感じました……。恐らく、ベル・チェインと……グレイでしょう……」
セティは涙を堪えていた。
「この終わりの兆しを見せない統一戦争……真っ先に抜けたのが……我が北、か……。もう終わりだよ……セティ。我々には何も残ってはいない……。あとは、西と南に託すしかないようだ……」
ローファサニは燃えゆく城と、星の瞬く空を見上げた。
その光景は、哀しいほどに美しかった。
「ご無礼、お許しを」
セティはそう告げるとローファサニの頬を殴った。おそらく、全力で。
たまらずよろけるローファサニを、周囲は慌てうろたえていた。
「……お前は何を考えているんだ!ロー!!回りを見ろ!皆お前に付き従ってきた者たちだ!!お前はその彼らを裏切るのか?!全て諦めるのか?!まだ全てが終わったわけじゃない!!考えろ!死ぬその瞬間まで考えろ!!お前の身体はお前一人のものじゃない!!お前の身体に、脳に、俺たち北の者全員の命が懸かっているんだ!!甘ったれるな!まだ終わってない……そんなこと、あいつは望んじゃいないだろ……」
セティはそこで崩れた。
そのセティを呆然と見つめるローファサニ。
そして彼の眼に、炎と輝きが溢れた。
「すまなかったな、セティ……。……この場にいる全員聞いてくれ!我々はまだ負けたわけではない!何故ならこうして立っている、生きているからだ!今回の戦いで負傷したもの、大事なものを失った者たちも多いだろう!だが!!北はここからまた歩き出すのだ!統一の夢はまだ捨てるわけにはいかない!!皆……辛いこともあるだろうが、信じて私に着いてきてほしい!!」
その場にいた者たちから次第に拍手がおこり、歓声が起こった。
ローファサニはその光景を感じながら、涙を流した。
―――まだ……まだ終わったわけじゃない。グレイ……見ていろ、お前の仇は必ず……!!
北は今一度命を宿し、一から空を目指した……。
スフェリア家。そこでミリエラは片付けねばならない業務をこなしていた。
だか、いまいち集中できていないようだ。
―――ユフィ王妃の話が本当なら、ゼロは、どこに行ったんだろう……?
彼女の一途な想いは、業務の差し支えになっているようだった。
「はぁ……」
ミリエラは今日何度目かのため息をつき、伸びをした、その瞬間だった。
!!!!!!!!!!
どこかで爆発音が響いた。
急いで虎狼騎士の制服兼戦闘服に着替え、準備をしていると、リエルが先に駆け出していった。
「お姉ちゃん!先に行ってるね!!」
「あ、ちょっと、危ないわよ!!」
ミリエラの注意をものともせず、リエルは駆け出していった。
「まったく、落ち着いていられもしない……」
どこか行き所のない怒気を含みながら、着替えを終えた彼女も駆け出した。
爆心は、どうやら民家のある付近ではなく城よりの森のほうであった。
「あんなところで爆発なんて、森が燃えたらどうするんだ……!」
「ベイト!急ごう!!」
外へ出たミリエラは、ネイロス家から一緒に出てきたベイトとテュルティを見つけた。
―――ベイトと……テュルティさん……?
駆け出していく二人を呆然と見つめ、思い出したように彼女も駆け出した。
「これが、一応虎狼騎士としての初陣なのかしら?」
「そうですね、お嬢様」
虎狼騎士の制服が非常に似合っているミューと、重い甲冑に身を包んだカイも、ゆっくりとグレムディア家から出陣した。
「ゼロからの伝令がこないってことは、勝手に動いてもいいってことだ!いくぞ、お前ら!!私兵騎士団は、虎狼騎士団に退けを取らない猛者の集まりだって、思い知らせてやるぞ!!」
「おぉーーーー!!!」
ライダー・コールグレイの率いる私兵騎士団も、爆心へと突撃した。
おそらく、ここに一人でも虎狼騎士がいたらこう言ったであろう。『勝手に動いていいわけないだろ』と……。
帰路の途中に、ゼロは後ろから声をかけられた。
「おい、ゼロ!」
気配を察知していなかったからか、油断仕切っていたからか、ゼロは慌てて振り返った。
そこにはエルフ十天使の一人であるムレミックが立っていた。
「なんや、西が怪しいことになっとる。急がんとヤバイかもしれへん。急いだほうがええ!お前は国王やろ?国王不在の国を考えてみ!」
ゼロは言われるがままに走りだした。
「忠告すまない、ムレミック」
ゼロの後ろ姿を見て、ムレミックはため息をついた。
「ワイは、西に賭けてんのや。負けたら許さへんで、ゼロ……」
「アノン、先に様子を見てきてくれ!」
疾走しながらゼロはアノンにそう告げた。グレイの様子を瞬時に見に行ったことから、彼女が瞬間移動か、それに似た能力を持ったことは確信した。しかも、伝えられた言葉はひどく正確で、信憑性に富んでいたのだ。
それならば、と思いアノンに言ってみたのだが。
「イヤ……どうやらそれは奴が許してくれなさそうだ」
ゼロは立ち止まった。
そこにはあの時の敵、ヴァルクが立っていた。
―――この急いでるって時に……!
―――焦るな、ゼロ。まずは……奴を倒してからだ……。
言葉交わさず、視線を合わせると、両者は無言で抜刀した。
虎狼騎士の六人が集まったとき、爆心らしきところには何か抉られたような痕があるだけで、炎は見当たらなかった。
「むぅ……さっきのは何だったの?」
リエルがそうぼやいたとき、風に舞って唐突に一人の女性が現れた。
全身を覆うフードに隠れ、彼女の素顔は見えなかった。
「お初目にかかる、虎狼騎士よ。私は……ミル・シャドウ、影を操る、東の四死天の一人だ……」
六人は、聞き覚えのない言葉を繰り返した。
―――四死天……?
六対一の死闘が、始まろうとしていた。
剣を交えながらヴァルクは話し出した。
「今しがた、決まった名なんだがね、ムーンは精鋭四名を四死天と名づけ、各地に放ったのさ。俺をお前に、ミルを西に、ルーを南に。ちなみに隊長はお前の親父さん、ウォービル殿さ。まぁ、お前にとっちゃもう血縁なんてないも同然か」
明らかな挑発だった。
それを分かっているからこそ、ゼロの剣は落ち着いていた。
同時にヴァルクに少し焦りが見える。
―――ちっ……前より格段に剣筋が速くなってるな。やべぇな……。
レリムの相手をしていたゼロにとって、すでにヴァルクは相手ではなくなっていた。
速く鋭い剣を、ヴァルクは懸命に捌いている。
ゼロの眼には、ヴァルクを倒すという一心しか見受けられない。
―――これは、奥の手を早々に使うしかないか……。
ネルの言葉で、いち早く再度東が侵攻してくることを察した南は、戦いの準備を始めていた。
「お誂え向きに、敵さんから来てくれたようだ、フィー」
城の会議室で、ラスティは不敵な笑みを浮かべフィールディアにそう告げた。
「準備をするよう、伝えてくれ」
そう彼女に言い、ラスティもまた何か支度を始める。
彼の未来を、フィートフォト家の未来を決める戦いである。
「単純な力量では比べるまでもなく、人数差も含めても私が上だからね、“オモシロク”ないな……。ハンディキャップとして、魔法を使わないで戦ってあげるよ」
ミルがそう言い放つと同時に六人の視界から消えた。
いや、物凄い速さで動いたのだ。
さしもの虎狼九騎士将でも、この速さには付いて行くのには相当な労を伴うのか目で追うので精一杯のようだ。
ベイトとカイはその場に留まり、テュルティとリエルは合わせて動いた。ミリエラとミューは、すっと眼を閉じ気配を探った。消えたまま、敵は出てこない。張り詰めた緊張感の中、カイが唐突に吹き飛んだ。甲冑を着込んだ彼の総重量は、軽く150キロは越えている。その彼がいとも容易く、吹き飛んだ。
衝突した木に、大きく亀裂が入った。
「カイっ!」
ミューが慌てて彼の元に駆け出す。
「お嬢様!私は大丈夫です!!油断なさらないで!!」
カイの叱責で彼女は緊張感を取り戻し、背後から迫った衝撃を彼女の愛刀大光が止めた。神速の抜刀術であった。
そして斬り返し、衝撃の来たほうに剣圧を送り込む。
「ちっ……!」
ようやく、ミルの姿が捉えられた。
「なかなかやるじゃないか、お嬢様……」
ミューは無言。無心の境地というべきか、彼女の眼は真っ直ぐ、敵を捉えていた。
眼光で殺す、ということが可能ならば、その光はミルを貫いていただろう。
「ベイト……敵の動きの規則性、見えた?」
対峙しているミューとミルをわき目に、テュルティが、ベイトにそっと告げた。
「あぁ……なんとなくならね。でも、まだ確実じゃない」
「なる。私も、もう少しで掴めそう」
その言葉が本当なら、二人は何かを掴んだようだ。
対峙したまま、睨み合いを続ける二人を見て、リエルはそっと、ミルの背後に回り、一気に接近し、ナイフを突きたてた。
が、彼女のナイフが届くコンマ何秒か前に、敵はもう動いていた。だが、そのミルが動いた地点には、ミリエラが待ち構えていて、一閃。ミルは大きく弾き飛ばされた。
よろめきながら立ち上がるミルは、こめかみから血を流していた。
「くっ、さすが、虎狼騎士六人相手ということに対して、過小評価だったようだね……。70%、いくよ……」
さらに速くなったミルの動きに対応できたのは、ミリエラとカイだけだった。
「くっ!お嬢様!!」
カイが懸命に走る。明らかにミルの標的はミューだった。
疾走したカイは、寸前のところで間に合った。だが、彼女の一撃に甲冑は大きな傷をつけられた。
カイ自身も耐えがたい激痛に襲われ、その場に膝をついた。
―――なんて一撃だ……。甲冑越しだというのに……。肋骨も4,5本やられたか……。
甲冑騎士が比較的多い西は、その甲冑の強度などを試す実験も多く行われ、かなりの対衝撃性を誇っている。生半可な一撃や、武器など、先に仕掛けたほうの手や武器が壊れるほどである。
そして、彼の甲冑は、西でも指折りの技師に作らせた、最高の代物なのだ。
―――これ以上やられたら……。
緊迫した空気の中、一人の青年が現れた。
「ここかっ!!現場は!!」
緊張感無視。その青年は、ゼロの天敵ライダー・コールグレイその人であった。
「ラ、ライダー……」
「ライダー君……」
「ライダー……」
彼のことをよく知るベイトとミリエラ、ミューは、呆然としてしまった。
「援軍かい……?」
ミルが、一瞬怪訝そうな表情をした。
「お前か!西を荒らす奴は!!許さん!!」
ライダーが抜刀し、動いた。意表を付かれたこともあるが、その動きは誰の目にも捉えることが出来なかった。
「お前なら、もう結果は見えてるはずだ。退け、ヴァルク!」
ゼロの言葉にヴァルクはニヤッと笑った。
「……“運命の楔”は、お前のアノンだけじゃねぇ……。俺にだっているんだぜ。来い!ユンティ!!」
その言葉とこの後に起こる現象に、ゼロとアノンは言葉を失った。
二人の前にアノンと酷似した少女が現れる。
アノンは全体的に白い感じにまとまっているが、彼女はアノンと対をなすかのように、」黒を基調とするような感じだった。
驚きを隠せず、アノンも姿を現し問いかける。
「“運命の楔”は、元より私だけだったはずだっ!なのに、何故貴様がいるのだ?!答えろ!ユンティ!!」
アノンの怒るような問いに、正面にいる少女は悪態をつきながら答えた。
「はっ!これだからアリオーシュ一筋の馬鹿は困るぜ。お前より後に封印されたんだから、お前が知らないだけなんだよ。我が主、アシモフはムーンこそが王に相応しいと判断したんだ。そのためにお前と同様俺は封印された。“ムーンの矛”となる、こいつ、ヴァルクに備えてね!」
彼女の言葉にアノンは言葉を失った。
「か、神々の戦争の際……決着がつかなかったために……イシュタル様たちは……後世の世界でムーンの支配を避けるために…私だけを封印したはずだ……元より私自身“禁忌”の存在……」
困惑するアノンを見てユンティは笑った。馬鹿にするような、冷笑。
「そのときの話し合いに我が主、アシモフがいたか?いなかっただろ?馬鹿なイシュタルやジャスティ、ミカヅキとは違うんだよ!たった一人、孤立した我が主、アシモフの軍をお前ら三国連合は倒せなかったじゃないかっ!!その上後世に決着を持ち越して、絶対に東が勝利を収めないようにするために、“運命の楔”とかいうお前を封印して。俺たちにバレてないわけないだろうがっ!セコイ上に馬鹿じゃ、もうどうしようもないよな!」
ユンティの言う言葉に、ゼロも驚きを隠せなかった。
「アノン……お前“記憶を消去された”って言っていなかったか……?」
ゼロの冷たい感じの声に、アノンは脅えた。
「そ、それは……」
答えられない。
アノンは“嘘”をついていた。
言えば、ゼロを傷つけるかもしれないという不安がために。
「隠してた、ってわけか……。やれやれ……。まぁいいさ、お前の事情があったんだろ?だが、この戦闘が終わったら全て話せ。隠し事は許さないからな」
「あ、あぁ。了承した」
アノンは内心安堵した。
見捨てられなかった。
ゼロに、見放されなかった。
「さて、御託はもういいだろ?続きといきますか!!」
ヴァルクの剣はさっきと比べて何倍も鋭くなっていた。だが、ゼロもアノンの力を借り、さっきよりもパワーアップしているのだ。
実力は伯仲しているように見えた。
―――ゼロ、不安にさせるかもしれないが、これだけは伝えておく。私たちが実際に動き、戦っていたころ、私は奴と幾度となく戦い、情けない話だが、一度たりとも奴を倒し伏せたことはない……。実際のところ、奴は私より単純な実力では上だ。
―――……だが、ヴァルク自身と俺なら、俺が上だ。それで五分五分だろ?あとは……信念だな。
アノンの言葉を聞いても、ゼロは真っ直ぐだった。
―――すまない……。ゼロ……私の全て……貴方に託す!
二つの光が、正面から衝突した。
単身東へと足を運び、セントル遺跡へと急ぐ。
ナターシャ家の古い文献によると、遺跡の最深部に、“古代魔法”が封印されているはずである。
「使うことを“禁忌”とされる“古代魔法”……。それさえあれば、私だって……」
彼女の頭には、魔力でムーンに負けたときの記憶が鮮明に残っていた。
遺跡にたどり着き、入り口に立っている門番を見る。
どうやら、新米兵のようだった。少し様子を伺うと、一人の女性が現れた。
そして、兵に何かを告げ、遺跡の中へと入って行く。
―――ジェシカ……先輩……?
ユフィの見覚えのある女性だった。
そしてユフィも意を決し、門番に睡眠性の〈干渉系〉魔法をかけ、足を運んだ。
ユフィが遺跡の内部に入り少し進むと、先に入っていった女性が待っていた。
「!!ジェシカ……先輩……」
ユフィは緊張していた。戦闘を恐れているわけではない。実力の面では遥かにユフィが上で、魔道士として、貴族学校在学中にユフィを越える者はムーンくらいなものだったのだから。
女性は美しく微笑んだ。
可憐で、儚げで、おとなしく、とても優しい彼女が今は敵なのである。
「久しぶりね、ユフィ」
ユフィは言葉が出なかった。
「今、ルーが南に攻め入っているところよ」
「え?」
ユフィは絶句した。
だが、彼女の言葉はそれ程驚愕に値した。
やはりレドウィン家は、完璧に東に寝返ったようだ。
「事実よ。ところで貴方も、“古代魔法”を探しに?」
ジェシカは、敵である後輩を前に、至って穏やかだった。
「も、ってことは、先輩も……?」
「えぇ、でも私は、ホントのところ……ね」
ジェシカの言葉は小さく、聞き取れなかったが、哀しそうな表情をしたのは分かった。
「どうせなら、一緒に行きましょう?」
ユフィは少し悩んだあげく、同意した。
―――敵……なんだよね……。
いまいち、彼女が敵だということが実感できなかった。
奥深くに行くにつれ、嫌な感じがする。
理解できない嘔吐感がする。
それでもユフィは黙って彼女についていった。
「ゼロは元気?」
唐突に彼女が質問してきた。
「え、あ、一応、辛そうですけど、元気です……」
曖昧に返事をする。
「お父様が東に寝返るなんて言わなければ、貴方たちの婚礼の儀に参列できたんだけど、残念だったわ」
苦笑するジェシカ。ユフィは、そこで彼女がゼロに好意を持っていたことを思い出した。
そして、複雑な心境になる。
―――この人は、東にいちゃいけないんだ……。
「先輩だけでも、西に来ませんか?」
ユフィは意を決し、そう言った。
彼女は寂しそうに笑った。
「そうね、行きたいわ。でも、行けば行ったで、辛くなりそうで。あ、貴方の所為ではないから、安心して」
ユフィは変わらずマイペースな彼女に、もう言う言葉がなかった。どうも緊張の所為か調子が狂う。
遺跡は、まだまだ長そうである。
「いいか、命令を一人でも無視する者があれば、勝利は消えるものと思え。先刻告げた通りに動いてくれ。それでは、貴公ら諸兵の武運を祈る!」
ラスティの命令で、兵たちが動きだす。
それをシスカは後方で笑いながら見ていた。
遂に本格的に始まった東の攻撃。
崩壊した北の行方は?
ラスティの戦略とは?
ユフィの探す禁忌魔法とは?
虎狼騎士らの戦いの行方は?
そして、新たな楔の登場にアノンは?
ゼロとヴァルクの戦いの行方は?
雲が、止まらず流れるように、時代も確実に流れ、進んで行く。
誰にも止められない。
確実な流れとして。
そして、物語はいよいよ佳境を向かえようとしていた。
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