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第12章
戦い 戦い そして戦い
劣勢。明らかな、誰の目から見ても劣勢。
それが南の状況であった。
騎兵部隊は東の無戦略な戦法の前に、ただただ血を流し、地に伏せるだけだった。
「指令通りに動いて、このザマか……。自由軍よっ!各自の判断で撤退も考えよ!」
グッディムがそう指示を出した。
―――ゲーバーク殿の軍師も、これで終わりか。
特に感慨もなく、グッディムはそう思った。自身も後退を始める。
「お前が、隊長だな?なんの恨みもないが、死んでもらうぜ」
ふと聞こえた声にグッディムは反応し、前方に身体を投げ出した。
見えこそしないが、彼のいた場所に短剣が突き刺さっていた。
「やるな……盲目の騎士さんよ」
ルーが気だるげに姿を現す。ここはかなり南寄りの場所であり、単身で乗り込むにはかなり骨が折れそうな場所なのではあるが、彼はいとも容易く侵入してきたようである。
グッディムは無言で抜刀した。彼の異様な形状をした剣――方刃はノコギリ状に、もう片方は普通の鋭利な刃になっている――が、にぶく太陽光を反射した。
「……お前は……東の者か」
「そりゃ、今あんたを攻撃したんだから、南の者じゃないだろうな」
ルーは黒衣のポケットに手を入れたまま、半身の姿勢で対峙していた。
グッディムは正眼の構えをしたまま、さらに問いた。
「お前の心には惑いが見える。何故戦う?」
幼少の頃に“視力を失った”彼は、視力以外の五感が発達していた。そしてとりわけ、相手の心を見透かしたような、読心術が得意だった。
「戦いたい奴がいるとでも思ってんのか?もしあんたがそういう考えなら、南もその程度ってことだ」
グッディムは押し黙った。
「“戦い”を望む奴はいらない。もしいたら、俺が殺す」
ルーの言葉に、グッディムは少し俯いた。
「君のような考えは大事だと思う。だが……世の中上手く回らないものだな……」
少し口調を柔らかくして、彼が苦笑すると、ルーも同じく苦笑した。
「死んでも恨みっこなし。まぁ、勝ったほうが、互いの思想を引き継ぐとしようや」
「君のような男が敵で、残念だ」
グッディムが動く、西の騎士たちに比べ速さはなかった。
難なくルーは後方に飛び退き、避けた、筈だった。
「ウッ!」
完全に刀身の範囲外だったはずなのだが、グッディムの刀身はルーに届いていた。太ももの辺りから、血が流れている。幸か不幸か、ノコギリ刃ではない方だったため、傷は綺麗であった。
―――厄介だな……。範囲外に届くわ、片方は切り裂き、片方は切り刻むか……。
傷口に痛み止めの魔法をかける。あまり身体に良い魔法ではないが、止む得ない状況であろう。
―――とりあえず、回避は不可能か……。
冷静にそう判断し終えた頃にはもう次の斬撃が迫っていた。
携帯用の特殊伸縮性警棒で止めた、が、その攻撃の重さにルーの軽い身体はかなり吹き飛ばされる。
幸い何かに衝突はしなかったため、外傷はない。受身もうまく取れようだ。
改めて確認して、周囲に人はいない。南の軍はほぼ撤退を完了したようである。東の兵は、まだ撤退していない兵の掃討でもしているのであろう。
静かな空気が漂っている。
―――チッ、こんなことならもう少し身体鍛えときゃよかった……。
おもむろに付着した枯葉や土を払い、一考する。
―――回避不可能防御不可能……いや、有り得ない。あのゼロの剣撃だって、俺は避けれないがシューマは避けていた……。防げない攻撃なんざ、有り得ない。探せ、あの攻撃のトリックを探すんだ……。
ルーの両目は、真っ直ぐにグッディムに向いていた。
「ここは……」
ユフィが足を踏み入れた家の中は至って普通な、だが、どこか懐かしさを感じる場所だった。
見覚えのあるような、でも、それを見たのは本当に自分なのか、曖昧な記憶が頭に浮かぶ。
中を見回すが、これといって変わったものもない。最近は数の減った、旧式の家庭だった。
何故か火のついた暖炉に近付くと、また、先程のような不思議な現象が起こった。視界に入ってきたものが、今まで目の前にあったものと変わった。
そして今いる場所には、地面がなかった。
「ようこそ、ユフィ・ナターシャ。ここは記憶の世界。かつて起こった大戦……貴方たちが“神々の戦争”と呼んでいるもの。それの最中の記憶です」
自分の上下左右、どこを見回しても、それは戦争の光景であった。
この光景の中ならば、目の前に現れた彼女の言っていることも嘘ではない気がする。彼女が自分と酷似した姿形だということも、その感じを強めていた。
「貴方は……魔法の祖ナターシャですね?」
ユフィは、確信を持ってそう問いた。
彼女は、肯定するように頷いた。
「そう、確かにわたしはナターシャです。ですが、魔法の祖というのは、過大評価ですね。わたしは確かに初めて戦いに魔法を導入しましたが、魔法の根底理論を打ち立てたのはわたしではなく、もっと遥か昔の時代の賢者たちです」
「でも、残念ながら現代に生きるわたしたちにその過去を知る術はありません。なぜなら、僅かな記録や証拠があれば、それに基づき歴史を辿ることはできますが、その賢者たちとやらの情報はまったく痕跡の残っていない状態です。つまり、わたしたちの技術ではどうすることもできないのですよ」
ユフィの模範解答のような説明に、ナターシャは苦笑した。
「やはり、貴方はわたしの直系のようです。知的好奇心旺盛なのはいいことです。ですが、今はそのことを調べにきたのではないでしょう?」
ユフィはハッとし、頷いた。
「そ、そうですね」
ついつい、癖のように知らないことを知ろうとする方向に持っていってしまったようだ。
「貴方の探している禁忌の魔法、わたしたちは〈終焉の引き金〉と呼んでいたものですが……正直に言います。あれは人の使うものではありません。何故なら……貴方も見たでしょう?ここに来る途中の光景の中に、身体の組織が魔力の過剰消費による負荷に耐え切れず崩壊していく様を。そしてそれを無駄と知りながら、必死に支えるアリオーシュを……。あれが使用した術者の、終焉を呼び込んだがために己の終焉すらも呼び込んでしまった者の末路です」
予想していた範囲内だった。禁忌とされるものが、リスクなしで使えるはずがない。
―――でも、その光景見てないな……。見逃したかしら?
「わたしの敵は、強大で最悪です。でもゼロがそれと戦うのだから、わたしも何か手伝いたい。例えそれが哀しい運命を辿るとしても」
ユフィは真っ直ぐにナターシャを見た。その瞳に宿った決意は、決して折れることはないだろう。それほどに、一途な瞳。
運命ならば、自分に受け入れることができるのならば、彼女は躊躇いなく受け入れるだろう。それがどんな末路でも。それが彼女の決意なのだから。
「そうですか……ですが、貴方に使う決意があろうが、わたしは貴方にこの引き金を手渡す気にはなれません。諦めてください」
ナターシャは冷たく言い放った。だが、ユフィは食い下がった。
―――ここまでは、最悪のケースとして予想していた範囲。問題は、ナターシャの実力ね……。文献通りの力ならば、勝算はある……!
「ならば、実力行使で奪うまでですっ!」
ユフィが臨戦態勢に入り、直線系の魔法を放った。
―――負けるわけには……いかないの……!!
人対神。人の想いは、高く厚い壁を打ち破ることが出来るのだろうか。
ルーの放った魔法は、無常にも空に飲み込まれた。
これで5発目。彼の剣を魔法で防ぎながら、彼は動き回り、魔法を放ち、なんとか勝機を探していた。だが、グッディム優勢は明らかだった。
―――…………。勝ち目が見えなきゃ、負けない方法を探さなきゃな……。
今勝てずとも、生きていればまたチャンスは来るのだ。
ルーは木々を飛び移るように移動した。眼が見えないのならば、気配を断ち、周囲に同調させればいいはずだ。
案の定攻撃の手が止み、ルーは一息つくことが出来た。
だが落ち着いてはいられない。倒したわけでもなく、勝つ手立てが見つかったわけでもないのだ。いずれここにいることも発見され、攻撃が再開されれば“死”あるのみである。
「どうしますかねぇ。この現状……」
ルーはポツリと呟いた。額から流れる汗を拭う。
―――俺には気配を断って魔法を唱えることはできない。そんな訓練を受けてるのは、南の孤児強制育成機関だけだ……。『今出来なかったことは、次出来ればいい。失敗を決して繰り返さないのが、本物だ』か……ちっ、こんなところでアイツの言葉を思い出すとはな……。
気配を断つ基本は、周囲に自分を同調させること。だが、周囲に同調させるからこそ、下手に動けば容易くばれてしまう。
慎重に、且つ、一撃必殺の威力を込めて魔法を詠唱する。
だが。
「そこかっ!」
グッディムは僅かな空気の変化を察し、短剣を投げつけた。
それを慌てて回避する。また気配を断ち、息を潜める。
―――相手がアレじゃ、相当厳しいな……。
相手が五感に優れていなければ、多分成功していた筈の攻撃も失敗した。
またもや思案。戦場であることを忘れたかのような、無防備な思案。
―――……こうなったら、自信はないが静詠唱の高速起動しかないか……。
静詠唱の高速起動、“サイレントファストキャスト”と呼ばれる超高等技術の一種である。敵に察知される前に魔法を起動させる技術と、敵に回避や防御魔法を展開させる前に、魔法を起動させる技術を兼ね揃えた詠唱法で、確実に敵を滅す。
だが、失敗すれば、魔法式の反動でしばらく身体の自由が効かなくなる諸刃の剣。
「ジェシカは、静詠唱が得意。俺は高速詠唱。皮肉かな……。まぁ、今だけは、ちょい力貸してくれや……」
妹のことを思い、気を集中させる。失敗すれば終わりだ。そして最も効果的な魔法を選択する。
「俺は、空間系の魔導師。やっぱりコイツしかないな……」
ルーの選択した魔法、それは僅かな空間の、時の流れを、ほんの一瞬だけ止める魔法。
だが、その一瞬があれば敵を倒せる。その自信がルーにはあった。
気配を断ち、チャンスを待つ。タイミングを外せば終わり。必ず成功するわけでもない。チャンスがこないまま、位置がバレるかもしれない。かなり分の悪い賭け。
―――俺は……負けるわけにはいかないんだ……!
「槍よっ!貫け!」
「障壁よ、阻め」
その空間には膨大な魔力が充満し、一撃必殺の魔法が飛び交っていた。
「雷よっ!焦がせ!」
「大気よ、飲み込め」
ユフィが必殺の攻撃魔法を放つが、その尽くをナターシャは防いでいた。どちらも超高位の魔術師であり、完璧な構成の魔法であった。
だが、経験の面でナターシャが上回っている様子である。
「その程度ですか?やはり、最初の勢いは口だけのようですね」
ナターシャが言い放つ。
「あら?まだまだ全力じゃありませんので!」
ユフィも口では負けてはいない。その言葉を引き金に魔法を放とうとする。
だが、無常にもその魔法は現象しなかった。
自分の魔力の逆流で、ユフィを激痛と疲労感が襲った。
「どうやら、これで終わりのようですね……。わかったでしょう?実力の伴わない想いは、所詮夢に過ぎないのですよ」
その言葉を、ユフィは俯いて受け止めた。
「少し回復したら、お帰りなさい。もう、“終焉の引き金”には関与してはいけませんよ。私には未来は見えませんが、少しくらいは、貴方がたの栄光を祈っておきます」
そう言い、背後を向けたナターシャ。そのとき、俯いているユフィの口元が動いた。
「歯車よ!回れ!」
先ほどユフィが手を向けた場所から突如無数の鎖が飛び出し、ナターシャに絡みついた。
驚愕するナターシャ。どうやら、魔力も抑えられているようである。
不敵な笑みで、ユフィは微笑んでいた。
「私の勝ちですね♪」
木の上から、息を潜めてグッディムの様子を伺う。魔導式の準備はすでに出来上がっている。あとは、これを起動させ発動させるのみ。チャンスは一瞬。失敗は敗北、敗北は“死”。
ルーの見定めた、最もこの魔法に適する位置にグッディムが来るのを待つ。緊張に手が汗ばみ、冷や汗が額を伝う。彼はそれを気にも留めなかった。
そして、グッディムが狙いの位置にやってきた。
―――いっっっっけぇぇぇぇーーー!!!
ルーの手から、白い何かが生まれ、グッディムを包み込んだ。そしてルー自身も、その何かの後ろから彼に向かって突撃、短剣を突き立てた。
確実に殺した感触であった。だが、その感触に安心したのか、一歩反応が遅れた。
死に際に突き出されたグッディムの剣は、ルーの左胴に突き刺さっていた。無理矢理に引き抜き、止血の魔法と痛み止めの魔法をかける。得意魔法ではないのと、魔力が底を尽きかけているために、大した効果はないようであった。
「ちっ……死に際まで往生際の悪い……」
もう動くことはない、グッディムの亡骸を一瞥し、ルーははき捨てるようにそう洩らし、足を引きずるように自陣へと後退を始めた。意識が朦朧としてきている。
まさしく死闘を終えた彼の身体は、限界に近かった。
「こういう時……シューマがいて、ベイトがいて、そしてゼロがいたんだよな……。へへ……いまさら、懐かしくなんか……」
フラフラと歩いている彼の前に、一人の男が現れた。
「ハイ、お疲れ様。相変わらず、傷だらけだねぇ……君は」
そう言い、男はルーに何か魔法をかけた。するとたちどころに彼の外傷という外傷が消えていった。
「まだ、内部の組織は治ってないから、今は本陣で休みなよ。あとは、彼女に任せて。ボクらはお茶でも飲んでよう?」
この事態に、気楽に冗談を言う男――いや、少年と形容したほうがいいだろう――は、ルーと同じような年頃の、整った顔立ちの中性的な美少年だった。
「アル……。アイツも来てたのか」
怪訝そうな表情でそう言うルー。
どうやら、彼にとって好ましいことではないらしい。
「彼女が志願したのさ。君を助けるために、ね?」
アルの屈託のない笑顔を見て、ルーは苦笑した。
「どうだか……ねぇ……」
―――とりあえず、今は疲れた。……眠い。
彼はそこで意識を失い、倒れかけたところをアルに支えられ、肩に担いで本陣まで連れて行ってもらった。
東の本陣に、薄い鎧を着用し美しいマントを羽織った女性騎士がいた。彼女の指示で軍が動いている。どうやら、指揮官らしい。
彼女は、ルティーナ・フォード。16歳にして一個師団を率いる戦いの天才であり、貴族学校において『魔術のユフィ、武術のルティーナ』と称されていたほどの猛者だ。ユフィの大親友であり、ライバルである美少女だった。
剣術の才は特に秀でて、努力する天才の典型でもある。
そして、彼女こそが先刻ルーとアルの話題に出てきた人物であり、ルーの恋人的存在であった。
フォレストセントラル
ゼロは、エルフ十天使の本拠地である砦の一室で死んだように眠っていた。その隣で、レリムの命令なのだろう、十天使の中で4番手のミュアンが彼を監視していた。
「はぁ……。なんだってボクら天子までが監視役やらなきゃいけないんだよぉ。こんなの天使クラスのやつらに任せればいいのにぃ~~~」
彼女、ミュアンはゼロと同じ17歳。整った容姿に、青い髪を伸ばしている様は、どこかのお嬢様のようであった。
「悪かったな……。やりたくもない監視をやらせるようなことになっちまって」
ミュアンが不貞腐れている間に、ゼロは目を覚ましたようだ。
まだ、本調子ではないのだろう。白い病人用の服が、ひどく似合っているように見え、そのさまは、儚くも美しく見えた。
「おろろ?目を覚ましたんだね。しっかしまぁ、君ほどの奴が手酷くやられたもんだ♪」
ミュアンの弾むような声で皮肉を言われても、いまいち怒りは沸いてこないだろう。
「ってことはお前なんか瞬殺だな」
故にゼロも皮肉で返した。
「むっ、心外な!ボクならまず戦わないね、見極めて逃げるから死なないよーっだ!」
彼女にその気はないのだろうが、可愛らしい様子で反論するミュアン。それを見てゼロは微笑んだ。
―――え……?
その表情に、ミュアンは見とれてしまった。普段はまず見せない、ゼロの弱い表情の一つかもしれない。
「まぁ、何はともあれ、迷惑かけたな」
その表情はすぐに消え去り、ゼロは少しだるそうに上半身を起こし、詫びた。
「いや、いいよ……。そんな……」
さっきのゼロの表情が頭を離れないのだろう、ミュアンは顔を紅くして、ゼロを直視できなかった。
「まず!ボクは君が目を覚ましたことをレリムに伝えてくるから!まだ、この部屋から出ちゃダメだよ!」
そう言い、足早にミュアンは部屋を出て行った。ゼロは部屋に残された。服はテーブルの上にあったが、愛刀は見当たらなかった。
「まず、着替えるとするか」
レリムの部屋に向かう途中、ミュアンは走りながら自己嫌悪を感じていた。
―――な、なんだってゼロのことをカッコイイなんて思うんだよボク!そ、そりゃアイツはたしかにカッコイイけど……あぁ!いけない、いけない!こんなことを思っちゃダメダメ。どうせボクなんかじゃ相手にならないし、第一ゼロにはもう奥さんがいるんだから……。
そんなことを考えながら、彼女はレリムの部屋のドアを叩いた。
「天師。ゼロ・アリオーシュが目を覚ましました」
深呼吸をし、落ち着いた声でレリムに報告する。先ほどのゼロとの会話をしていた彼女と同じ人物とは思えないほど、落ち着いた声だった。
「わかりました。もう少ししたら伺います。それまで、彼のことをもう少し見ていてください」
レリムの透き通った美しい声が返ってくる。
「わかりました」
もう少しゼロと話せることを喜ぶ反面、あまり会いたくないような。二つの気持ちを胸に、了承の返事をする。そして、またゼロのいる部屋へと戻る。
足早に戻り、部屋のドアを開ける。
そして彼女が思わず見てしまったのは、まだ着替えている途中のゼロの姿だった。上半身裸のゼロを、ミュアンは直視してしまう。細く華奢に見えるが、要所要所の筋肉が引き締まった身体。無駄な肉など一切なく、多くの細かい傷が見受けられるが綺麗な身体だった。
「バ、バカ!何やってんのさ!」
ミュアンは慌ててドアを閉めた。心臓がドキドキしている。どうも調子がおかしい。
「何やってるって……。普通はお前がノックしてから入ってくるもんだろうが……」
「ふむ……。お前もそれなりに苦労してたんだな」
数分後、ゼロの着替えが完了してから、ちゃっかりミュアンはゼロと談話をしていた。
「そうなんだよ……。東西南北に属さないからって、平和なわけじゃない。むしろ、セントラルの覇権を争っての小競り合いの方が、個々の力量が高い人が多い分危険なんだよ。ボクらエルフ十天使は、ダイフォルガーとレリムが格別に強いから、上位の派閥だと思うけどね」
話の話題は、フォレストセントラルの実情について。
ゼロ自身今まで知らなかったが、やはりエルフは何処も彼処も争いが起きているらしい。セントラルと東西南北は互いに不可侵の原則があるため、情報は初めて得たことになる。
「ちなみにセントラル最強と謳われるシーナって奴は、派閥も組んでないのに無敗だからね。もう化け物だよ。なんでか知らないけど、覇権には興味ないらしいからいいんだけど」
「ほぉ……。そういう話を聞くと手合わせ願いたいものだな」
ゼロの相槌は、半分本気であった。
「やめときなって。ゼロはムーン打倒の使命があるんだし、ここのエルフの基本スペックはそっちとは違うからね。下手すりゃ死んじゃうぞ?」
ミュアンは呆れ半分、冷やかし半分で答えた。ゼロも「そうか」と笑って返した。
少し、沈黙の時が訪れた。
「ねぇ……ゼロ?」
口調を改めてミュアンがゼロに問うように声をかけた。
「うん?」
「あ、あのさ……」
そこで、ミュアンの声は途切れざるを得なかった。
「遅くなりましたね、ゼロ」
レリムが、部屋に入ってきた。
南の軍勢は散り散りになり、東のルティーナ率いる軍団はもはやシスカの辺りまで迫っていた。
およそ、8000いた兵はすでに3000程度まで減り、敵勢は依然10000近くを保っている。
「しっかし、ムーンさんもどっからこんな兵を持ってきてるんだか。国政は大丈夫なんだろうかねぇ」
現状をさほど重く感じていない口ぶりで、シスカは脇に立っているラスティに問いかけた。
本陣には、グッディムの妹ネルや、フィールディア、ユフィの兄シックスもいるから、安全と判断しているのだろうか。
「流石に御察しかねますね。奇なること山の如し、と言ったとこでしょうか」
すでにゲーバーク元軍師は目前に迫ったこの大敗に責任を感じ、一兵として戦場に行っている。遠まわしに、死んで償うつもりらしい。
ネルの予知で、グッディムの死は知った。そして、敵兵が近いことも分かっている。
とはいえ、彼らの余裕は優勢を装うようだった。
「西の援軍……3000。指揮官はミリエラ様のようです」
ネルの落ち着いたその言葉にフィールディアは眉を細めた。あまり仲はよくないようだ。しかし、兄の死にも関わらず、ネルは然程気にせずに予知を行っているようだ。
「彼女か。ってことは、ウェブモート家の彼も来てたりしてね」
シスカが冗談のように笑った。しかしネルは生真面目に。
「ご名答のようです。陛下」
そう答えた。
負けっぱなしのまま、じっとしていられなかった。それがミリエラとミューの共通の感情であった。故に、二人は南の援軍へと駆けつけたのであった。
「今は、戦うしかありませんね」
「そう……だね」
ミューの瞳には、決意の炎が。
ミリエラの瞳には、不安と揺らぎの炎が。
この戦い、何かが起こる予感をさせていた……。
依然終末の見えない戦い。
最後に笑うのは誰か。
そしてレリムはゼロに何を語るのか。
加速していく戦いの中、哀しみの感情だけが、いつも空を舞っている。
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