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第14章
全てを終わらせるために
南が東の軍勢から難を逃れてから、2ヶ月が経過した。しかし、この2ヶ月の内で、ゼロの身体はまた一層細くなってきている。
虎狼九騎将のうち、大半が戦死してしまった。ジエルトを失い、フェイトを失い、グレイを失い、ファルを失い、カイを失った。そして、2ヶ月前の戦いからミリエラは戻ってこない。それ以来妹のリエルは今までの明るさが嘘のように一人自宅に籠もり、ミリエラの率いていた騎士団も途方に暮れていた。ミューの話に寄れば、クウェイラートとの決着を付けに行ったそうなのだが、それに関しては何の情報も入ってこなかった。
さらにゼロにとっての不幸は続いた。ユフィも2ヶ月前から西に戻ってきていないのだ。シスカとローファサニに連絡を取ったが、見たという情報はない。その上、ゼロの母であるゼリレアが、ついに病に倒れこの世を去った。
これで残る肉親は妹のセシリアのみ。
ゼロの頭から、父の存在は消し去られていた。
「ふぅ……」
深夜2時。ゼロは、課されている業務に一区切りをつけたところだった。
流石に疲労感は隠せないようである。そんな彼の前に、アノンが姿を見せた。
「ゼロ、少し休んだほうがいい。決戦は何時とも知れない。それに……無理は身体によくない」
アノンの不安そうな表情から、彼女が本気で心配していることが伺えた。
「ん?……あぁ、そうだな……。じゃあ、軽く寝るよ」
立ち上がり、寝室へと向かう。だが、その途中に彼は不思議な気配を感じた。だがここは城の3階。内部の者はとうに眠っているし、外部の者が近づける高さではない。ゼロは気のせいだと思い込み、再び歩き出した。
寝室のドアを開ける。すると見慣れた、大切な少女がベッドに腰掛けていた。
「セシリア……、お前、こんな時間まで起きてたのか?」
何も言わず、ジッとゼロを見つめるセシリア。どこか不安そうで泣き出しそうな感じであった。
「ったく……。“不安”なんだな?」
彼女の側に近付きながら、ゼロが呆れたように、だが妹を心から心配するようにそう言った。
「大丈夫だ。俺はお前を残してどっかに行ったりしないから。な?」
視線を合わせ、セシリアの頭を撫でながら、ゼロは優しく諭すように言う。
思わずセシリアはゼロに身体を預けた。
そして、ゼロの服を濡らし始めた。
「お父さんがいなくなって……リフェ兄が死んじゃって……お母さんも死んじゃって……。あたし……怖いよ……。すっごく……怖いよ……」
セシリアの嗚咽にも似た悲しみが、ゼロには痛いほど伝わってきた。
それと同時に、父への憎悪も沸きあがってきた。
―――親父の野郎……絶対許さねぇ……。
目に入れても痛くないほど可愛い妹を不安にさせる要因は、全て父にあるような気がしていた。
「アニキ……。今日は、ここで寝かせて……?アニキが、どこにもいかないように……」
「……あぁ」
ゼロはセシリアの穏やかな寝顔を見届けてから、一人考え事を始めた。
最近のネイロス家の朝は騒がしい。何故なら。
「ほらッ!朝だよ!起きなさ~いッ!!」
すっかりベイトの女房のような、テュルティが居座っているからである。
由緒正しきネイロス家の朝は、普段なら静かに始まるのであるが。
正直なところ、ネイロス家に仕えるメイドたちも彼女の天真爛漫さには笑うしかなかった。ベイトの個人的なことは、全て彼女に一任したようである。
「もう起きてるよ……。まったく、テュルティは朝から元気だね」
無断で声を上げながら部屋に入ってきたテュルティに対し、困ったように、だが嬉しそうにベイトは笑っていた。言いながら、室内で飼っている小鳥たちに餌を与える。ネイロス家は代々動物たちを家族同様に扱っている。それ故もあって先祖が“獣使い”などという二つ名を持っていたりするのだが。
「だって、時間が勿体ないでしょ?」
その答えにベイトは微笑んだ。彼女は彼が持っていないものをたくさん持っている。それが羨ましくもあり、惹かれる点であった。
朝の身支度を終え、朝食前に愛犬の散歩に出掛ける。彼女が居座り始めてから1ヶ月半、今まで一人の散歩だったのが二人になった。
他愛もない話をしながら、いつものコースを回る。
幾度となく歩いた道。見慣れた道。
だが。
必ず目に止まる家があった。グレイの住んでいた、アルウェイ家。
今この家には誰もいない。元々一人暮らしだった彼だが、彼が死んだことにより、持ち主不在の家になってしまった。
彼が死んだという情報は、誰もが俄かには信じられなかった。
あんなに強かったのに。誰よりも強い信念を持っていたのに。
彼の実力は見るものを惹きつけ、彼の底知れない不器用な優しさは、虎狼騎士の中でも心の支えとなってくれていた。
―――君がいない今、誰がゼロを支えればいいんだい……?
存在しない彼に問いかける。そう、彼はゼロの支えでもあった。ゼロの作戦を支えていたのはグレイだった。
常に独りで、必ず作戦を成功へ導き、それをまったく自慢せず、何も言わずみんなを見守っていた。
―――弱気になるな……。そんな問いかけをするぐらいなら、お前が支えてやれ、ベイト。
ふと彼の声が頭に響いた。辺りを見回すが、当然彼はいない。
「ん?どしたの?」
急に立ち止まったベイトにテュルティは問いかけた。
「いや、何でもないよ」
微笑んで答える。
ベイトは確かにグレイの声を訊いた。
―――僕はその言葉を待っていたのかもしれない……。僕がゼロを支えるんだ……。それが僕にしかできない、僕だけにできることなんだ……。
ベイトの心に、決意の炎が生まれた。
スフェリア家のある一室で、一人の少女が、椅子に座ったまま、ひたすらに涙を流していた。
その表情は、見るものを凍らせるような無表情の笑顔。
まるで見てはいけないものを見たような、知ってはいけないものを知ってしまったかのような、壊れた人形の様。
「……お……ねぇ……ちゃん……あたしを……一人に……しないでよぉ……お……ねぇ……ちゃぁん……」
まるで永遠にリピートするかのように繰り返される、悲惨で、哀しい声。
ミリエラという最愛の姉を失ったリエルは、生きる気力を失っていた。
『私なら、ミリエラに会わせてあげることができてよん♪』
ふと、知らない声が響いた。ここは彼女の部屋。執事やメイドは、全て王城に移させた。だから、今この家にいるのは彼女だけのはずである。
「……ほんとぉ?」
だが、すでに半ば生ける屍状態の彼女には、疑惑など浮かんでこなかった。
彼女を包み込むように、美しい女性が舞い降りる。
『もちろん♪ついてくるかしらん?』
「……うん。あたし……行く」
リエルの返事を聞くや否や、その女性、“ムーン”は彼女を連れてまた現れた時のように、忽然と姿を消した。
虎狼騎士の中から、スフェリア家の二人が消えた。
グレムディア家
一人、黙々と素振りをする美しき女性。
流れ落ちる汗など、まったく気にも止めずに、ひたすらに刀を振る。
その瞳は一点を見つめ、無心で集中していた。
彼女の胸は、哀しみでいっぱいだ。
カイという支えを失い、グレイという目標を失った。
だが。
それが故に彼女は強くなろうとしていた。
もう何も失いたくない。全て、自分で護るのだ。
彼女の決意は一つだった。
コールグレイ家
ライダーの負った傷はほぼ完治していた。だが、彼の心の傷は消えていなかった。
自分が優位に感じていた、ミルとの死合い。だが、彼は見事に彼女の前に屈した。意識を失うほど、完膚なきまでに負けた。言いようのない敗北感は、いまだに彼の心を捉えていた。
「……経験の差か……」
ぼんやりと、屋根に座り流れる雲を見る。大小様々な雲がある。だが、彼は別に何を見ているわけでもなかった。
彼には実戦経験がなかった。ミルとの戦いが、初めての命の削りあいだったのだ。
持って生まれた天性の才能を生かせない、今の環境。
「っちくしょぉ……強く……もっと強くなりてぇ……」
彼の嘆きは、誰にも聞こえていなかった。
ゼロが目を覚ましたのは、相当疲れが溜まっていたのかもう昼に近い時間だったが、セシリアはまだ緩やかな寝息を立てながら、穏やかな可愛らしい寝顔を見せてくれた。
それを見ているだけで、ゼロは妙に嬉しい気になる。
セシリアは誰よりも自分を慕っている。そう思うと、彼女は自分が護らなくてはならないという気持ちが生まれる。
彼が起き上がった時。
「ん……アニキ……どこにも……いっちゃダメぇ……」
起こしてしまったのかと思い振り返ったが、どうやら寝言だったようである。
「俺は、どこにもいかないよ」
そう聞こえていないであろう妹に答え、微笑みながら毛布を掛けなおした。
そして寝室を出て、身支度を整え、業務室へと向かう。
いつものように椅子に座り、昨晩の続きからはじめる。
いつものようにスッとアノンが現れた。
「おぉ、おはよ」
ゼロはふつうに声をかけた。
アノンはどこかにやついた表情でゼロを見ていた。
「心の底から妹に優しい兄だな……」
彼女が冗談を言うことはそんなに多くない。ゼロは大きなお世話だと言うかのように照れてみせた。
「ところで、お前はそれだけを言うためにでてきたのか?」
無理に作った笑顔でゼロは尋ねた。
「あぁ」
シレッと答えるアノン。その答えにゼロはガクッときた。
「だったら少し手伝え。時間がない。お前の考えうる最良の策を考えるんだ」
そう言い、アノンに一枚の紙を渡す。それは、ゼロが今までためていた各国の戦術や主要な人物についてまとめた資料だった。
「これは……なかなかおもしろそうだな」
相変わらず、コイツは年相応とはほど遠い。そう思ってゼロは苦笑いをした。
昼下がりの、ティータイムのような時間。一匹の猫がゼロのいる業務室に飛び込んできた。そして我が物顔でゼロの頭の上に居座る。
「お~、どうした?」
無造作にその猫の首根っこを掴み、慣れた手つきであやす。クローバーは気持ちよさそうに鳴いた。この猫は、ふつうの猫と違い野性味がまったくない。来るもの拒まず。まるで動くのが嫌いな感じさえする。しなやかな身体つきからは考えられないダルさがあった。
「にゃ~~~」
時計のほうを見つめて鳴いていた。ゼロもつられて時計を見やる。
「ふむ……もうこんな時間か。少し休憩するか」
ゼロはそう呟き、クローバーを肩に乗せて一旦寝室へと戻った。
「まだ寝てたのか」
ベッドにいまだ寝そべっている妹を見てゼロは軽く笑った。
「プリンセス、ティータイムは如何でしょう?」
ゼロは恭しく、執事を真似て言ってみた。はたから見ればなかなか滑稽なのだが。
「にゅ?……んむ。苦しゅうない」
セシリアが笑って答え、クローバーよろしくゼロに飛びつく。
「その答えは正しくないだろ」
笑いながら、二人と一匹は会食の間へと向かった。
「しかし、お前と二人っていうのもなかなか久しぶりだな」
おもむろにシェフたちが着ているエプロンを着始めるゼロ。
「アニキが忙しいからでしょ~」
皮肉っぽく言っているようだが、笑顔は隠せていなかった。
「まぁ、久々に兄妹団欒とでもするか」
「うん♪」
そう言い、ゼロは厨房に入っていく。
流石に城の厨房。その大きさはとてつもなく広かった。
そしてゼロは手馴れた手つきで材料を取り出し、調理し始める。
見事な手つき。セシリアが見とれている間に出来上がったようである。
「少し、作りすぎたか」
ゼロは手製の、超一流と言っていいほど素晴らしい出来のイチゴのショートケーキを見て一言そう言った。
彼には、剣術の他にも、料理という特技があった。嗜む程度にやってみたのだが、実際嗜み程度では自分が満足できず、その“嗜む程度”がいつしか超一流のシェフ以上の実力まで育てていた。ゼロとゼリレアがアリオーシュ家の食事を賄っていたのは確かな事実だ。
これまた手馴れた様子で紅茶をいれる。
セシリアはその様子をずっと楽しそうに見ていた。
「どうぞ、お嬢様」
一礼しケーキと紅茶を置く。セシリアは、一口食べただけでニッコリ微笑んだ。
「さっすがアニキ♪最近料理してないと思ったけどぜんぜん腕落ちてないね♪」
その褒め言葉にゼロはニッと笑った。
「当たり前だろ?なんたってお前のために作ったんだから」
冗談を織り交ぜ、ゼロは心から楽しそうに笑った。そして、二人仲良くのティータイムは久々にとても楽しい時間となった。
それから30分程経った後、マリメルが入ってきた。
「ゼロ様。昔の、旧友の方々がおいでになっています」
「ん……?なんだろうな、通してくれ」
「畏まりました」
そう言い残し、マリメルがまた出て行く。少し経って入ってきたのは、確かに懐かしい旧友たちだった。
「セシリア、先に部屋に戻ってくれ。どうにも……辛気臭い話になりそうだ」
ゼロの言葉を疑いもせず、セシリアは駆け足で出て行った。
そして来客である、6人を適当に座らせた。
「……急に訪ねてすまないね」
一人の優しそうな青年、マーシュがどこか引きつった声で言った。昔と比べて相変わらず目が細く、整った顔立ちの美男子だ。
「いや、むしろ丁度いいときに来てくれた。処理に困ってたところだ」
そう言い、ゼロは切り分けたケーキを配っていった。同時に紅茶もいれる。
「しかしお前……一応国王だよな?」
陽気そうな、しっかりした体格の青年クローがゼロにそう言う。彼も貴族学校の同級生だ。
そこでゼロははたと気付いた。マーシュの声が引きつっていた理由も。
自分がまだ“エプロンを着ていた”ことに。
「え~。で、何しにきたんだ?」
少し顔を赤くしたゼロが、改めて尋ねた。まだ数人笑っている。
「昔の友に会いにきただけ、ってのはダメか?」
たれ目の少年、ブルーが答えた。彼もゼロの同期である。
今日のお客は、男4人に女2人。いずれも、彼のよく知る顔だ。
「いや、構わないが、そうだったらまだ残っているケーキを食べていってもらう」
マジメな顔でゼロがそう言うと、たまらず6人は吹き出した。
「ハハハ♪なんだか、ゼロくん性格変わったねぇ。昔はあんなに無表情で、私らなんかには全然声もかけなかったのに」
「でもそんな先輩も素敵♪」
最初に話したのはフェミル、貴族学校時代の同級生だった美しい女性だ。
そして次に話したのが、2つ年下のリン。剣術部の後輩で、計り知れないセンスの持ち主だ。その才能を見抜き、少し手ほどきした際に異様に懐かれてしまった。背が低く、童顔の愛くるしい見かけとは裏腹に、戦場では敵に恐れられる虎狼騎士の一人である。ちなみに、さっきからずっとゼロにベッタリである。離してもどうせまたくっ付くことはすでに分かっているので、いまさらもう気にしていないようだ。
「僕らも一応虎狼騎士ですから、先輩の力になりたいと思い参じたんですよ」
穏やかな物腰の眼鏡の少年が言った。彼はカイン。東のルティーナと同期の、剣術部の後輩である。
「そういうことだ。それに……どうにもな、俺らの代は、この戦争から逃げちゃいけない気がするんだよ。だから何か、俺らにもやらせてくれないか?」
ゼロは逡巡した。
このとき彼の出した雰囲気に、リン以外の全員が飲まれた。ここにいる者はみな虎狼騎士ではあるが、少し前までの制度の、小隊制の時はリン以外みな第15小隊以下の、虎狼騎士でも格下の部類だったのだ。リンだけはミリエラの小隊、第3小隊所属だったが。
「お前らは、今まで何人敵を殺した?」
唐突なゼロの質問に皆黙り込んで考え始めた。だが、リンだけは。
「先輩!わたし、覚えてません!」
そう元気よく答える。元気よく答えるのはどうかと思う質問だが、その答えはつまり殺した相手の数を思い出せないほど、ということである。
「分かったか?これから来る決戦は、生半可な実力じゃ、あっという間に死んじまう。この中で通用するのはリンだけだ」
全員が息を飲んだ。
死神、ゼロ・アリオーシュ。彼の迫力に指も動かなくなっている。
そんな彼らをわき目に、褒められたと思ったリンがゼロの腕に抱きついた。
「――でもよ……そんなこと言われたってよ……俺は……俺はどうしてもシェリルの仇を取りたいんだ……!」
先ほどまでの雰囲気が大きく変容する。クローの声は、ひどく悲しかった。
シェリル、元同級生の女性が死んだことは知らなかった。どうやらクローと彼女は付き合っていたらしい。
「……明後日、ここで南と北も含めた最後の打ち合わせを行う。最後の決戦に参加するつもりなら、そのときまでに死んでも文句言わないくらいの覚悟を作っておけ。……今日はこのくらいにしておこう」
ゼロの言葉を受け、5人が退出していった。だが、リンがただ一人残っていた。
「どうした?」
なにやら、いつもと様子が違うことに気付いたゼロは、心配そうに問いかけた。
「え?あ……あ、なんでもないです。ただ、先輩ってけっこうわたしのこと過大評価してくれてるんだなぁ、って思って」
その言葉を聞き、ゼロは軽く微笑んだ。
「リンは戦力として数えていいよな?」
「は、はい!」
うれしそうな彼女を見て、ゼロは少し考えることがあった。
―――たしかに、性格変わったかもしれないな……。
来る日。王城に、集まった顔ぶれは様々だった。
「今日集まってくれた皆に厚く感謝する。早速だが、本題に移る」
ゼロは集まったメンバー、西のベイト、テュルティ、ミュー、ライダー、クロー、リン、南のフィールディア、シックス、北のセティを見て少し感慨にふけた。
―――幾多の勇敢なる戦士たちも、もうこんなに少数になってしまったか……。去年までの虎狼九騎将で残ってるのはベイトだけとはな……。
少し暗い気持ちになったが、すぐに切り替えた。
「今ここにいる、俺を含めて10人から7人を選抜し、それを直接ムーンを狙う突撃部隊として、残りの3人には兵を使った大規模な野外戦を指揮してもらう。これ以上被害を出さないためにも、敵の頭を叩くのは重要だ。だが、兵を展開する野外戦も軽視するわけにはいかない。民の安否に関わるからな。……ではそれを踏まえて、突撃部隊“以外”でも構わない、という者はいるか?」
あえて“以外”を先に提示したゼロ。彼自身、突撃するか否かと聞かれれば、間違いなく突撃すると答える。それほど、ムーンへの憎悪は募っているのだ。ほかの者も同様であろう。
「私は、“以外”でも構いません。ライダーと話し合いをして、お互い倒したい敵が同一でした」
ミルという東の四死天たった一人の相手に、大敗を喫した虎狼九騎将――ベイトとテュルティ――は、その相手を思い出し、顔を伏せた。
「だから私は国民のために、無駄な血を流させないために戦いたいのです」
ゼロはミューの決意を聞き、頷いた。
「すまない、よろしく頼む」
他には、という風にゼロはまた皆を見た。
「……では俺も“以外”に残ろう。この面子を見る限り、俺の実力は下位のようだからな」
シックスがそう言った。自分で自分を下と察することは容易いが、それを認め、受け入れるのは容易ではない。ゼロはシックスという義理の兄を誇りに思った。
「義兄さん……、ありがとう。それじゃあ、あと一人……」
「俺しかいないんじゃないか?」
クローがそう答えた。正直、ゼロも彼はそちらがいいと思っていた。このメンバーの中で、明らかに実力のランクが下なのである。
「すまない。3人の決断に感謝する」
ゼロは深く頭を下げた。集まった9人はそれぞれの深い思いを抱いた。
「作戦決行は今日から6日後。作戦の詳細は追々シスカとローファサニに送るから、今は自分の家に戻り、準備なり始めてくれ。……必ず勝って、長い戦乱に終止符を打つんだ!」
ゼロが拳を振り上げ、ほかのメンバーもそれに合わせて声を上げた。
全員を帰し、ゼロはまた業務室の椅子に座っていた。
今までの出来事を思い出し、それをバネに気持ちを高める。
「最後の戦い、か……」
その呟きに反応したかのように、アノンが現れた。
「そうだ、これで全てを終わらせるぞ」
この作戦を発案したアノンも、どこか思いつめた感じがする。
「これに勝ったら、ムーンを倒すために仕組まれていたお前はどうなるんだ?」
長い間疑問だったことを、ついにゼロは問いかけた。
アノンは暗い顔をした。
「確証はないが、存在意義を失うのだから、おそらく消えるだろうな。まぁ、詳しくは私にも分からないが」
―――一緒に、居続けられればいいのだがな……。
その言葉を予想していなかったわけではないが、実際に聞くと衝撃は大きかった。
「そう……か」
ゼロはあえてもう何も言わなかった。
今は眼下の敵、ムーンを倒すことに専念するのだ。
不安は、計り知れない数だけあるのだから。
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