遥統番外編11

Boyish Princess












「ねぇベイト。もうすぐ卒業芸能発表でしょ? 私台本書いたけど、これどうかな?」
 卒業芸能発表とは貴族学校伝統の行事の一つで卒業する第7学年の生徒たちが在校生たちに送る演劇発表のことで、卒業を控えた生徒たちが授業そっちのけで熱中するものだ。
 政術クラスは人数が少ないためレベルはどうしても低くなるので、毎年武術クラスと魔術クラスの一騎打ちとなる。評価が高い方が、気持ちよく卒業できる、という仕組みらしい。そして何よりこの行事を盛り上げるのは、演劇の内容を生徒たち自身が作るということだ。
先日のクラスの話会いでクラス委員長のクラリスが台本を作ることとなり、今日に至る。
「あ、うん。どれどれ?」
 彼女との交際があるベイトは、茶髪の可愛らしい美少年だ。クラス内で可愛さのランキングを作ったとしても、きっと女子を跳ね除けて上位にランクインできそうな、そんな容貌の持ち主なのだ。
「悪者に囚われたお姫様を正義の味方が救うけど、その悪者が小さいころお姫様の従者だった人で、正義の味方に倒されて初めてお姫様がそのことに気付く、って話かな?」
「ま、だいたいそんな感じ」
「じゃあやってみようか」




そして月日が流れ、武術クラスの発表の時はやってきた。
「なんでこんなことに……」
「ゼロはまだいいじゃないか……」
 黒衣とドレスが話している。どちらも、その声は落ち込んでいた。



「あれ? でもうちのクラスに茶髪の女の子っていたっけ?」
 台本に書いてある姫の容姿を考え、ベイトはクラリスに尋ねた。
「いないよ」
「じゃあ、ショートカットの他の人にしなきゃいけないじゃ?」
「そんなことしなくてもさ、適役がいるじゃない♪」
「へ……?」


『遥か昔、ユリア姫という美しい王女のいる王国がありました。ユリア姫には聖騎士の家系のロイドという許婚がいましたが、王女は幼い頃から自分の従者として傍にいるディンのことが好きだったのです』
フィールディアのナレーションが入る。普段の彼女とは思えない優しげな声だ。


「ねぇディン」
「何でしょう?」
「もし将来私が危険になったら、貴方が護ってくださいね?」
「……この命に代えても、お守り致します」


『しかしこの約束の数年後、ディンの一族は濡れ衣を着せられ、王国から追放されたのです』
 そうしてカーテンが開き、物語が始まった。


「きゃーーー!!」
 甲高い声が劇場内に木霊する。演技とは思えない、完璧な悲鳴そのものだった。
「ユリア姫!!」
正義の味方であるロイド〈ライダー〉が手を伸ばすが、その手は虚しく空を掴みユリア姫の手は無情にも離れていく。
「これは復讐の始まりに過ぎん……ユリア姫は頂いていく!」
 悪者である暗黒騎士ディアス〈ゼロ〉の表情は仮面で見えなかったが、その声には悪意と悲しみの両方が宿っているように感じられた。
 ライダーの後ろに控える城仕えのメイドやら執事やらに扮装した生徒たちが慌てふためくも、姫は戻ってこなかった。


「ロイド、ユリアを、ユリアを助けてやってくれ」
 青年王ギフェス〈シューマ〉の言葉に、ロイドが神妙に頷く。
「王国をやっとまとめたというのに……ロイド。そなたに課された使命は重いぞ。失敗は許されん」
 宰相グフタ〈シレン〉が押し殺した声で言っただけで、何か得たいの知れない重圧が感じられた。
「義妹を、ユリアのこと、よろしく頼むわ」
 王妃ルル〈クラリス〉が頭を下げる。ロイドは剣を掲げ、高らかに救出を誓った。


「ロイド様、ディアスの狙いは何なのでしょうね?」
 ロイドに与えられた3人の兵士の一人、ダグ〈アスター〉がロイドに尋ねる。少しぎこちない動きだ。
「なんだか、あの者を見たことがあるような気がするのですが」
 リア〈フェミル〉がそう呟く。
「俺には何も分からない。分かっているのは、必ず姫を救ってみせること、それだけだ」
ロイドの言葉は力強かった。それだけで、ダグとリアが嬉しそうに微笑む。
「……ぞっこん」
 ミー〈ゼリオ〉の呟きを、ロイドはあえて無視したようだ。


「ディアス様、あの女をいかがしますか?」
 唯一ディアスに仕えるエリー〈シアラ〉が尋ねてもディアスは答えなかった。
「ディアス様?」
 エリーが声をかけ、肩を揺すったところでやっとディアスが気付く。
「む、なんだ?」
 慌てたようにディアスが振り向く。その様子を見てエリーが微笑んだ。
「どうかしましたか? 心此処にあらず、という様子でしたが」
「あぁ。ちょっとな、昔を思い出していたのだ」
 そうですか、とエリーが頷く。
「ユリア姫をどのように扱いましょう?」
「ああそうだな、丁重に扱え。だが、逃げられぬようにな」
「かしこまりました」



「あの馬鹿……自分の役名忘れてやがったな」
 クローの突っ込みが入る。
「でもシアラのフォロー上手かったねー。ゼロもよく合わせたもんだ」
シェリルが相槌を打つ。
「あの二人なら息があっても不思議じゃないだろ」
 ぼそっとリヴァスが洩らした言葉に合点がいく。
―――シアラから振ったんじゃなかったかしら……。
 3人の話を聞きながら、ミリエラは二人が別れた第6学年と第7学年との間の春休みを思い出していた。自分は聞いただけなのだが。
「ミリエラ、たぶん今あんたが考えていること違うよ」
「え?」
 フィールディアがミリエラに話しかける。
「あ、ミリエラもしかして知らないの?」
「え?」
 シェリルの言葉の意味が分からない。何だろう、自分は何も知らないのかしら?
「シアラはまだゼロのこと好きらしいよ~」
 会話に入ってきたのはブルーだ。
「シアラさん、なんだかゼロの態度が変わってしまった、と仰っていましたね」
 まさかミューも知っていたとは、たしかに色恋沙汰の話に疎いミリエラだが、これには少々ショックだった。
「つまり別れようって言ったのはシアラだけど、実質ゼロが振ったようなもんってことか」
 少しミリエラの表情が明るくなる。ジーンも知らなかったようだ。
「場面転換場面転換!」
 クローの言葉に話し込んでいた生徒たちが慌てて舞台上に走る。ほとんどの役目が終わった彼らは、主に場面転換で背景を変えるのを手伝うのだ。


「ここがディアスの隠れ家か……」
「隠れ家、というより根城ね……」
 ダグ、リアがそれぞれ呟く。先頭を歩くロイドの足取りが止まると、すっと空気が冷えたような気がした。
「よくぞここまで辿り着きましたね。ですがここから先へは行かせません!」
 メイド服姿にレイピアを構えた女性が突如4人の前に現れる。ディアスに仕えるメイドエリーだ。
「ディアス様の復讐を果たすために、ここで死んでもらいます!」
 エリーが攻撃をしかけるのをダグがなんとか止める。
「ロイド様! この女は我ら3人で止めて見せます!」
「分かった。ここは任せる!」
 ダグ、リア、ミーを置いてロイドがエリーの横を過ぎていく。彼女は黙って彼を見逃した。
 彼が見えなくなった後、再び戦闘が始まる。迫り来るレイピアをダグが率先して止めにいき、ぶつかり合っている時にリアとミーがそれぞれ攻撃をしかける。さすが武術専攻クラスだけあって、殺陣のシーンでは観客から歓声が上がりっぱなしだ。
 戦闘に通じている者ならばおそらく即気づいたであろう。エリーは全力で戦っているのだ。だが、ロイド配下の3人は剣術部であることもあり、かなり動きを抑えている。リアはそうでもないようだが。そして戦いの途中でミーがやられる。かなり自然な動きだった。
―――アスターとゼリオ、ホントに強いんだから!
 ばれないように努めているがシアラの息が上がってきている。それに彼女はメイド服という設定だ。そろそろ話を進めないとまずい。
「危ない!」
 エリーの攻撃からリアをかばってダグのわき腹をレイピアが貫いた。赤い液体がその場に溢れていく。
「ダグ!」
 リアの悲鳴が上がる。観客からも「おおっ!」という声が届いてくる。
「きさまぁ!!」
 アスターとの交際があるフェミルは完璧に感情移入をしているようだ。
「ディアス様の邪魔はさせない!」
 エリーとリアの武器が交差する。両者とも相手の武器に貫かれ、その場で倒れ伏せる。
「おつかれさま、シアラ」
「ほんと、こればっかりは疲れるや……」
 倒れたあと、フェミルとシアラは観客に見られないように言葉を交わす。どうせこの歓声だ。内緒話の声など聞こえないだろう。
 一度カーテンがしまっていった。


「さてと、いくぞ。ユリア姫」
「う~……」
 身体の線が如実に現れるドレスを着、軽く化粧をし、髪にはコサージュをつけたユリア姫は恨めしそうに黒衣に身を包み顔の上半分を覆う仮面を付けたゼロを睨んだ。口元が笑っている。殴ってやりたかった。
「大丈夫だって、可愛いから」
 まさかライダーまでそんなことを言うとは。ユリア姫は次に少しボロボロになっている正装を着たライダーの方を向いて恨めしそうに見上げる。ライダーとは身長さがあるため、ゼロのように睨めず、上目遣いになってしまうから全く迫力がない。
「っていうか、クラリスも何考えてるんだかな」
「ホント……はぁ」
 機材の設置を終えたカーテン裏の舞台で、ディアス、ユリア姫、ロイドの3人が話している。観客には見せられない光景だ。
「そろそろ開けるよー!」
 舞台袖からクラリスの声が聞こえる。ここ以降はこの3人しか出ないのだから、あとは皆で見守るだけだ。
「ま、あとちょっとだしな。その可愛い格好を見れなくなるのは少し寂しいけど、頑張ろうぜ“ベイト”」
「ゼロ……」
 ユリア姫〈ベイト〉の心中は誰も知らない。


「ディアス!!」
 ライダーは性格に反して演技が上手い。彼が家庭では非常に大人しくしていることを知っている者ならば合点がいくだろうが、ほとんどのクラスメイトたちにとっては意外極まりなかった。
「ユリア姫を、返してもらうぞ!!」
 ユリア姫の首に腕を回しながらディアスが姿を現す。
(ちょ、ゼロ! 苦しいって!)
(あ、悪い)
 少し苦しそうにした方がいいと言われたのでベイトは自分でその表情を作るつもりだったのだが、思いの外ゼロのしめつけがきつかった。
「これは俺の復讐だ……何人たりとも邪魔はさせん……!」
 低く、無表情な声でディアスがロイドに言い返す。ゼロもなかなかの演技力で、観客は固唾を呑んで見守っていた。
「ならば、力ずくでも!」
「……いいだろう。聖騎士ロイド、まずは俺の復讐劇の生贄となってもらおう!」
 そっとユリア姫を背後に回し、ロイドと向き合う。
 二人が激突した。
(本気でいいんだな?)
(当然!)
 ゼロが改めて確認する。3分間は迫力を出すために本気で戦ってもらい、頃合になったらユリア姫の台詞が入る予定だ。
「おりゃああ!!」
 右肩から斜めに振り下ろすロイドの剣をバックステップ一つでディアスが避ける。二人にとってはなんでもない動きだが、観客からの歓声は大きかった。
―――やりにくいな……。
 ライダーが胸中でそう吐き捨てる。彼と決着をつけたくこの役を志願したのだが、やはりもっとちゃんとした場所の方が良さそうだ。
 一瞬集中力を切らしたところにゼロが迫る。慌ててそれを防ぐもロイドは弾き飛ばされた。
「聖騎士とはその程度のものか……。王国もたかが知れているな」
 これが実戦であったならばきっと追い討ちが来ていたのだろうが、演劇ということで命拾いをしたようなものだ。
「う……」
 ロイドが何かを言おうとして慌てて口をつぐむ。舞台袖のメンバーたちも一瞬だったが心臓が止まるかと思う心境だった。明らかに「うるさい」という所だったのだ。
「やめて!」
 そこに甲高い声が割ってはいる。まだ3分は経っていないが、これ以上やるとライダーが何を言うのか分からないと思ったユリア姫のファインプレーだ。
「ユリア……」
 ディアスが剣を下ろし、振り返る。
「無礼者! ユリア姫を呼び捨てにするとは、何様のつもりだ!」
 ロイドが剣先をディアスに向け激昂する。だがディアスはちらっと一瞥しただけでユリア姫の方へまた向き直る。
「もうすぐ、もうすぐなんだ……もうすぐ約束を果たすよ……」
 そう言ってユリア姫を抱きしめる。そこで観客からの大歓声が起こる。主に黄色い声だったが。
「え?」
 それ以上は告げず、ディアスがロイドへ向き直る。
 決着をつけるのだ。

「なんか、ベイトくん、すごいね……」
 舞台袖で見守っている15人はベイトとゼロの今のシーンに見入っていた。思わずミリエラがそう洩らす。全員同じ気持ちだった。
「クラリスといるときより自然に見えるな」
 リヴァスの皮肉に何人かが思わず笑ってしまう。クラリスとしては腑に落ちなかったが、あながち間違っていない気もした。
「あの二人ならお互いの気持ちが手に取るように分かるだろうからな。気も楽だろうさ」
 シューマの言うことももっともだ。もっともなのだが、何かそれ以上のものがあるように見える。
「それよりも、ベイトくん可愛すぎでしょ……」
「そう、ですね」
「なんか、複雑……」
 順にシェリル、ミュー、シアラだ。もしかしたら自分より上かも、そんな不安が募る。
「ベイトの初恋はゼロというしな……」
 シレンがぼそっと呟く。14人が全員一斉に彼の方を振り向く。
「冗談だ」
 そして一斉に殺意へと変わる。彼が言うと、冗談に聞こえないのだ。


「うおおおお!!」
 ロイドの剣がディアスを襲う。だが紙一重で避けられ、ディアスが反撃に転じる。その一撃を片手だけでバク転をし見事にロイドが避けた。観客の歓声が上がる。確かにすごい動きだった。
 そこにディアスが追撃を加えロイドの剣を弾き飛ばす。
 そして今まさに止めを刺さんとした。
「だめえぇ!」
 ユリア姫が泣いていた。その声にディアスの動きが止まる。
 それが、彼の命取りとなった。ロイドが懐から咄嗟に取り出した短剣がディアスを襲う。観客から悲鳴が上がり、ユリアの悲鳴も上がる。
 だが。
「ぐはっ!」
 つい反射的にその攻撃を避けたゼロは反射的に回し蹴りでライダーを蹴り飛ばしてしまった。
 一瞬、ユリア姫が信じられない、といった表情を浮かべた。


「あの馬鹿!」
 思わずシューマが叫んでしまった。他の生徒も同じようにうな垂れている。今のシーンでディアスがロイドに倒され、フィナーレに繋がる予定だったのだ。
「信じるしか、ないわね……」
 あとは全部あの3人のアドリブに任せるしかない。そう判断したクラリスはため息をついた。


「聖騎士ロイド、貴様の想いもその程度ということだ……。ユリア姫を頂き、この手で王国を滅ぼす。そうして俺の悲願が果たされるのだ……」
 ディアスが倒れ伏したロイドに向かって言葉を振り掛ける。ロイドの身体が、力を振り絞ったように立ち上がり剣を拾う。
「王国は……ユリア姫は俺が護る!!」
 残された力の全てを使い、ロイドがディアスに斬りかかる。その攻撃は凄まじく速く、ディアスは反応できなかった。
「ば、馬鹿……な……」
 彼の仮面が割れ落ち、その素顔が晒されたところで黄色い歓声が沸き上がる。やっと学校中でも大人気のゼロの素顔が舞台上で見られたのだ。
「ユリア様……すみません……結果的に貴方を……危険に晒してしまった……」
「ディン?!」
 ユリアが彼の元へ駆け寄る。ロイドも信じられない、といった表情を見せている。
「ディンだと?!」
 彼の頭を自らの太ももに乗せ、涙をこぼす。ユリア姫の涙が暗黒騎士ディアスの顔に落ちた。
「なんで……なんでお前が……」
 ロイドが二人の後ろで膝をつきうな垂れる。
「ごめんなさい……ごめんなさい、ディン……」
 既に息を引き取ったディアス――ディンにユリア姫が口づけを交わす。
 こうしてこの物語はカーテンフォールとなった。

「びっくりした?」
 鼻と鼻が触れ合うような距離で、少しいたずらっぽい表情でベイトがゼロに尋ねる。まだ幕が閉じ終わっていないので、動くことができないが、拍手喝采のため声は漏れないのだ。
「ちょっと」
「えへへ♪」
 その答えに満足したようにベイトが身を起こす。カーテンが閉じきったのを確認してからだが。
 おそらく彼がゼロをびっくりさせたのなど貴族学校7年間の中で初めてだろう。
「またその格好してよ」
 ゼロが身体を起こし、お返しとばかりにそう言う。練習の所為で慣れてしまった女の子座りで、ドレス姿のベイトが頬を膨らませる。そうしていると本物の女の子だった。
「い・や・だ!」
「はは、悪い悪い、拗ねんなって」
 笑いながらゼロはそう言って膨らんだベイトの頬を突っついた。そこでようやくクラスメイトたちが声をかけてくる。
「お前ら仲良すぎ」
 シューマが傍から見ればじゃれ合っているような二人の背後に現れ二人を同時に持ち上げた。突然のことに二人が慌てた声を上げる。
「いやぁ、でも最後はすごかったね~」
 シェリルが二人に向かってそう言ってくる。
「二人とも! もう、心配させないでよ」
「ク、クラリス、ご、ごめん」
 クラリスの台本ではあそこまでロイドが瀕死になる予定ではなかったのだ。ライダーも相当痛い思いをしただろう。
「ライダー、大丈夫ですか?」
 ゼロの回し蹴りを素で食らったライダーのもとにはミューとゼリオが寄っていた。
「あ、ミュー……あ、あの程度なんか、全然平気さ!」
 慌てた様子の彼を見て、無事なのだと思ったミューが微笑む。ゼリオが少々むっとした。ミューは何も分かっていないようだ。
―――気付かれないライダーも、ちょっと気の毒だな……。
 クローがライダーを見て一人そう思う。彼のミューへの片想いは、当人たち以外にはバレバレだ。
「何はともあれ成功してよかったよ」
 シューマの腕からなんとか抜け出したベイトがそう言う。皆彼の方を見て頷いた。たぶん一番苦労したのは彼だろう。女言葉を覚えさせられ、口調を変えさせられ、慣れないドレスでの動きをさせられ。
「終わってみれば楽しかったな」
 役決めの話し合いに欠席したゼロだったのだが、押し付けられる形で主役を任せられたゼロがそう言うのは、少々意外だ。
「でももうこんな役やらないからね!」
 最後のベイトの台詞に全員から笑いが起きる。当の本人も心からの笑顔で笑っている。クラス全員で取り組んだだけあって、成功の喜びもひとしおだった。

 こうして武術クラスの演劇は最優秀賞を取り、彼らの思い出に新たな一ページが刻まれた……。


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