鍋・フライパンあれこれ美味
100万ポイント山分け!1日5回検索で1ポイントもらえる
>>
人気記事ランキング
ブログを作成
楽天市場
043591
ホーム
|
日記
|
プロフィール
【フォローする】
【ログイン】
第4章
歴史
中央広場を越えた先にある翁の砦は、他の派閥の砦よりも二回りほど小さかった。
「さすが中心部、空気が濃いな……」
ゼロは砦の背後の大木を見上げる。てっぺんは見えなかった。隣ではミュアンも同じようにこの大木を見上げていた。彼女は平気そうだが、実際のところゼロは息苦しいというか、胸が圧迫される心地だった。
「これだけおっきな木だからね、出してる酸素の量が半端じゃないのかも」
ゼロはあまり熱心に勉学に励んだわけではないので、光合成の仕組みなどはいまいち理解していなかったが、どこかそれだけではないように感じた。
本当にこの木が原因なのか。何がどうであれ、このままこの場にいたら気が滅入りそうなのは確かだった。
「まぁいい。さっさと入らせてもらうとするか」
わずかだが、粉雪が舞い始めてきた。
翁の砦の門は初めから開いていた。聞くところによれば、中央に住む人々全員が翁からお言葉を賜れるように、というはからいらしい。
二人がゆっくりと中へ入ると、ふと一人の少女が現れた。
ゼロはふと怪訝に思った。今現れた少女は、気配もなく現れた。確かに自分は今空気の濃さで体調が良いとは言えないが、こんな戦闘訓練の欠片も受けていなさそうな少女の接近にも気付かないとは――。
二人の前に現れた少女は、しばしゼロの方を見つめていた。その視線には観察も羨望も皮肉も嫌悪もなく、無感情だった。彼の方を見ているだけで、彼を見ているわけではないのかもしれない。
少女はごく一般的な容貌だが、顔立ちは整っていた。だが、そんな容貌を霞ませるような、存在感の薄さがあった。確かにそこにいるのだが、本当にいるのか触れないと確信が持てないような。
「……ようこそ、“独創者”ゼロ・アリオーシュ」
小さな声でその少女が言った。“言った”というよりも、“囁いた”に過ぎない声量だが。
“独創者”という言葉に、ミュアンは驚きを隠せなかった。
「え?! ゼロが……“独創者”……?」
彼女はゼロの方をバッと振り返ったが、彼は何も言わなかった。隠すつもりもないし、今まで言わなかったことに対して弁明するわけでもない。
「翁がお待ちです……。こちらへ……」
少女がゆっくりとした歩調で進む。ゼロはそれについて行った。
「ミュアン・リリルナ……貴方に翁との謁見の許可は下りておりません……。こちらの部屋でお待ちください……」
だが、ミュアンは俯いて動こうとしなかった。
「ゼロは、闘神アリオーシュの末裔じゃないの? 神々の直系は、“独創者”になる因子を持ちえないはずじゃないの?」
彼女が本当に言いたいのはこんな知識のことではない。ゼロが自分にそのことを教えてくれなかったショックを誤魔化すための台詞だった。
「なんだと……?」
ゼロはミュアンの言葉に眉をひそめた。確かに自分は“森の守護者”のリーダー、ウォー・ガーディアンに“独創者”だと言われ、レリムにも言われた。だが、神々の直系が“独創者”になる資格を持ちえない、というのは初耳だ。
「……状況が変わりました。ミュアン・リリルナ、貴方も共にこちらへ……」
少女がミュアンを一瞥し、また進みだす。とりあえず、話は翁に会ってからだ。二人は黙って少女について行った。
―――この方が翁……流石の風格だな。
―――この人が、語り部翁……。不老不死っていうのはホントなのかな……?
二人は、椅子に座る白髪の老人を見てそう思った。白髪は乾燥してパサパサで、顎に生えている髭までも白くなっている。だが、漂わせる風格が長い歴史を物語るようだった。
「ようこそ、我が砦へ。わしが、翁と呼ばれる者じゃ」
その声には老いなど感じられなかった。経験と知識が織り成す、はっきりとした厳格な声。
「御主が、“独創者”ゼロ・アリオーシュか……。何、そう警戒することはない、肩の力を抜き、楽にせよ。そちらの十天使の者もな」
まるで心を読まれているようだ。肩の力を抜けと言われても、抜けるはずがない。今二人が向かい合っているのは、エルフ族最高峰の知恵者なのだ。
「翁、一つ教えてください――」
「御主が闘神アリオーシュの直系ならば、“独創者”になる因子は持たないという話についてか」
ゼロは驚きを隠せなかった。相手は、自分の心の内を読んだかのように、自分の思っていた質問についてを言ったのだ。
「驚いたか? これがわしのアビリティ、“予知”じゃ」
―――アビリティ……。なるほどな……。
「御主にその話をするには、まずは少々真実を知ってもらわねばならんのぉ……」
翁は、ゆっくりと語り始めた。
エルフ族の言う神々の大戦が起こった頃。今から遥か昔の頃。この森に中央などなかった。東西南北の四地方に分かれ、東のアシモフ、西のイシュタル、南のミカヅキ、北のジャスティの四大神が争った戦いじゃ。
ここまではいわゆる子どもでも知っておる伝説じゃが、実はその四大神の頂点に立つ神がおるのじゃ。その神の名を“エルフ”という。
そもそも昔は“エルフの森”という名前などなく、ただの“森”としか呼ばれていなかったのじゃ。その神の名を頂き“エルフの森”と名づけたのじゃろうが、大戦後数百年の間に、“エルフの森”に住むのだから――という理由でそこに住む種族を“エルフ”という風に認識する者たちが出始めた。そしてその誤認が現在に至っている、というわけじゃ。もちろんそれは誤認、神々たちが呼んだ我が種族等の本来の名称は“ヴォルクツォイク”という。まぁわしは“ヴォルクツォイク”も“エルフ”も、どちらでもいいと思っておるがの。ここではあえて“ヴォルクツォイク”と使わせてもらうとしよう。
“ヴォルクツォイク”は大戦に現れた神々の子孫とも、“エルフ”の創り出した生物とも言われておる。大戦に現れた神々の生みの親が“エルフ”だという説もあるからその二説うぃ区別できるか分からんが、“ヴォルクツォイク”はどの説をとっても神を絶対と崇めるのは道理に適っておるのじゃ。
じゃが、この世に不変のものなど存在しえぬ。形あるものいずれ滅びるのは世の理じゃ。“ヴォルクツォイク”の中に、神を絶対と崇めない、神を疑う心を持つ者、御主のような“独創者”が現れ始めた。それも、“ヴォルクツォイク”だけの話ではない、ヒュームにも、ゴーレムにも同時期に同様の“独創者”が現れ始めたという。
そしてその“独創者”たちの力は“森”を揺るがした。東西南北各地に生まれた“独創者”たちは民に無神論を説き、神の束縛のない生き方を知らしめた。そうして次第に無神論主義の教徒たちを増やし、やがては神々の直系たちを主導者とし、各地の神を絶対と崇める“神聖騎士団”と対等に渡り合えるほどまで巨大化した。この戦いは数多の文献を探しても決して見つからぬ、消された歴史、“森”の汚点じゃ。
最終的に、長き戦いの末敗れた“独創者”たちは森の中心部、今で言う、ここフォレストセントラルへと逃げ延びた。今改めて考えると、“神聖騎士団”対“独創者”の構図は、“森の意志”対“独創者”の構図だったのかもしれん。“森の意志”は“独創者”たちが“森”を破滅へと導くと予想し、“神聖騎士団”という駒を用意し、それを排除しようとしたのかもしれん。今となってはそれを知る術はないがの。
しかし皮肉なことに戦いに敗れた“独創者”たちの子孫には、“神聖騎士団”への復讐の念を抱く事はおろか、無神論という思想さえ引き継がれなかった。その代わり、初めの“独創者”の子孫たちは、先天的な特殊能力、“アビリティ”を備えて生を受けるようになった。その力で中央の“ヴォルクツォイク”たちは東西南北の“ヴォルクツォイク”たちを中央へと寄せ付けないようにし、現在に至る土地区分の構図を築いたのじゃ。どういうわけか現在では“独創者”は突然変異的に発生するようになったがの。
つまり、“独創者”の無神論は世の中から消え去ったわけではない。何が理由でそこまで神を拒絶したのか、それは誰にも分からんが、確かにその思想は現在にも存在しているのじゃ。それも、数が減った分より強力な思念として。“森の意志”など、世界に存在する“神々の意志”が“独創者”に干渉できないのも、その所為じゃ。最も、現在のその思念は神を拒絶するというよりも、神の干渉を受けないという方に強く傾いておるがの。
「ここまでの昔話は理解できたかのぉ?」
翁はそこで話を切り、ゼロに尋ねた。彼は神妙な面持ちで話を頭の中で噛み砕いている。
「ええ。だからこそ、より自分の聞きたいことが謎になりましたがね」
皮肉ではない、素直な感想。
「確かに、御主はアリオーシュの直系としての比類なき武才を持ち、ナターシャの血による膨大な魔力も心の奥深くに秘めておる。闘神アリオーシュと魔法の祖ナターシャ、この両神の血が流れておりながら、神の血を引き継いでおきながら無神論を主義とする“独創者”として目覚めたのは、記録されているここ数百年の間にも前例のないことじゃ」
「――は?」
自分の耳を思わず疑う。聞き間違えかと思ったほどだ。
「俺に、ナターシャの血が流れている……?」
「……ご存知ありませんでしたか……? 闘神アリオーシュと、魔法の祖ナターシャは、それぞれ西と南に所属していながら、恋仲になり、最後の……アシモフとの決戦前には結ばれ、二児を儲けられておられたのです……。その二児の兄がアリオーシュの血を、妹がナターシャの血を継ぎ、現在のアリオーシュ家とナターシャ家に至っているのです……」
翁の隣に立つ、二人を案内した少女が静かにそう告げた。
「――――」
衝撃の事実だった。西で彼の帰還を待っているであろう、彼の愛する妻ユフィ・アリオーシュは、旧姓ナターシャ。お互いの血筋を辿れば同じところに行き着くのだ。そのことは、如何な博識であるユフィでも知らないだろう。
―――遠いながら、血の繋がりがあったってのか……。
ゼロは気付かなかったが、隣ではミュアンが少し、ほんの少し顔を暗くさせていた。
「そ、それはまぁいいとして、つまり俺は“独創者”だけれども“独創者”ではない、と捉えていいのですか?」
「ふむ……。そう仮定することも出来なくはない。だが御主は間違いなく“神聖騎士団”の思想を持つ“ヴォルクツォイク”ではない。御主の存在は確かにビーナによって感知されることがあるのじゃ」
ゼロは眉をひそめた。自分がこうにも中途半端に存在だったとは、と思うと歯がゆい気がする。
「私は……“監視者”です……。そして……現在森の中に居る二人の動向は予知することができるんです……」
少女――ビーナという名前らしい――が口をはさんだ。“監視者”ということは、彼女によってゼロは動向を予知されるということだ。
―――俺とレイのこと、か?
「じゃあ、俺は“独創者”か、或いは全く存在を確認されていない新しい“ヴォルクツォイク”ってことですか?」
どこか投げやりに、ゼロは呆れた口調になっていた。悪いがもう真面目には聞いてられない、といった風だ。
「そう捉えても構わぬ――」
「貴方が……“死神”だからかもしれません……」
ビーナが再度口をはさんだ。ゼロはあからさまに怪訝な表情を見せた。こう面と向かって“死神”などと呼称されれば、如何な聖人とて不服に思うだろうが。もしかしたら、彼女が自分の動向を予知出来るという得体の知れない“監視者”だったからかもしれない。
「なんだと――」
「もうゼロは“死神”じゃありません!」
不機嫌なゼロの声を抑え、ミュアンが俯きながら叫んだ。ゼロにとっても意外だったのか、驚きを隠せず、翁も片眉を上げた。ビーナは無感情な瞳で彼女をとらえている。
「ゼロは確かに多くの人を殺してきたかもしれません! でも、それは大義のため、夢のためです! そのおかげで東西南北は平和の兆候に向かっているじゃないですか?! ゼロは“英雄”と言われることはあっても、“死神”と言われることはないはずです!」
やり切れない思いが、ミュアンの中にあった。“エルフ十天使”が何らかの迷惑をかけたのは知っていた。それ故に彼には借りがあった。
「……貴方は彼の何を知っているのですか?」
自分を眼中にいれないで繰り広げられる口論の前に、ゼロはすっかり怒る気力をなくした。
「ゼロ・アリオーシュ。1月15日生まれ。身長168センチ、体重52キロ。父ウォービル・アリオーシュと母ゼリレア・アリオーシュの間に長男として生まれる――」
淡々と語りだしたビーナの言葉に、ミュアンは唇を噛み締めた。
「おいおい、そんな個人情報まで把握されるのか?」
ゼロは呆れ顔でそう言った。このまま個人情報をべらべらと語られては堪ったものではない。
「というか一つ言わせてもらうが、俺が“独創者”に目覚めたのは17歳になった頃からなんだろ? さらに聞けば俺が“独創者”として目覚めたっても、17歳以前からの“森の意志”の介入効果で周りからの干渉を受けたから、結局ムーンを倒すように転んだんだろ? だったら、俺が“死神”と呼ばれるくらい敵を倒したのは、“森の意志”の思し召すところなんじゃないのか?」
「………………………………」
ゼロの言葉の前にビーナは閉口した。
「御主の言う通りかもしれん。じゃが御主はその頃、人を殺すことに抵抗はあったか?」
「俺たちにも目的があった。相手のそれとはぶつかるしか方法がなかった。それに付いてきた結果、ってのは理由になりませんか?」
ゼロは反論した。その表情には何故か不思議な余裕が見られた。
「抵抗はなかった、というわけか……。死んでいい命がおると言うか? 本当にお前の奪った命は、ムーン打倒の目的に繋がっておったのか?」
ゼロを一瞥した翁の眼は、獰猛な猛禽類と似かよった色が秘められていた。
「俺たちの目的は東西南北の統一。結果としてそうなっただけで、決してあいつを、ムーン個人を倒すことが最終目的だったわけじゃありません。確かに、死んでいい命などありませんが、殺らなければ殺られる。そういう場所で戦っていたんです」
「詭弁です……それ」
「……ミュアン、帰るぞ」
ゼロは、肯定も否定もせず、翁たちに背を向けた。ミュアンは何も言わず従った。翁とビーナの二人は、感慨のない目でゼロを見ていた。
「話したってわからないでしょうね。戦場で命のやり取りをした奴の気持ちなんか。戦いたくないのに、結果として悲しい結末があるって分かっているのに、この手を血に染めなきゃいけないことがあることを。貴方のような文人には、決して分からないでしょう。お時間をとらせて、すいませんでした」
ゼロの言葉に含まれた大きな意味を、ミュアンは少し理解できた。“死神”と呼ばれる所以は、大義のための一言で片付けられるものではないが、犠牲のない戦いなどないのだ。
二人が扉から出て行ったあと、ビーナが二人を追うように退出した。
「ゼロ・アリオーシュ、待ってください……!」
砦を出ようとしたところを、ビーナに呼び止められた。
「確かに私は……“監視者”で、貴方は私を良くは思わないでしょう……。ですが、この言い伝えだけはどうかお覚えになってください……」
会ってそう経っていないが、彼女が自分に大事なことを伝えようとしているのは容易に見て取れた。
ゼロは視線だけで返事をした。ビーナは頷き、口を開いた。
「中央に、東西南北の者を近づけないためのただの言い伝えに過ぎないかもしれませんが、こういう言い伝えがあります。
『死神の鎌振り下り 在らざる者は必滅す
運命は不変にして絶対 夢を見てはいけない
死神は死なない 死神は死を司る
如何なる折にも 其の鎌は絶対』
誰もこの真意を知る者はいません。それを知る術もありません……。ですが偶然の結果にせよ……“森の意志”による、何らかの作意があったにせよ……貴方は“死神”と呼ばれし者……。頭の片隅にでも、覚えておいてください……」
その言葉を聞き、ミュアンは訝しげな表情を見せたが、ゼロは無表情だった。
「あんたは、俺の味方か?」
ミュアンもビーナも、その質問の意味を理解できなかった。
「……それは、“監視者”と“独創者”の関係ですか?」
「違う。あんた個人のことだ」
ビーナに戸惑いが生じる。この人は何も言っているのだろう、といった感じだ。
「……私は……私個人の感情としては中立です……。ですが、“監視者”という立場で見れば味方にはなりえません」
答えたが、これが本当に正解なのかビーナには分からなかった。だが、ゼロは小さく頷き。
「俺にはここのルールは通用しない。あんたの言葉は覚えとくよ。その代わり、あんたも俺の言葉を覚えとけ」
ゼロは再度振り返り、砦を後にした。ビーナが、困惑の表情でゼロの背中を見えなくなるまで見つめていた。
―――在らざる者……まさか、な……。
「すっかり暗くなっちゃったね。雪もつもってるし」
砦を出て、ミュアンはゼロに話しかけた。歩くたびの足跡が地面に記録されている。
ゼロは答えなかった。黙々と、彼女と並行して歩いている。
「ゼロ?」
「ん? あ、悪いな。ちょっと、考え事してた」
ゼロは苦笑いをしたので、ミュアンは呆れたような表情をした。
「足元見ないと、転んじゃうよ?」
右手の人差し指を立てて、ゼロの顔を覗きこむようにそう言う。自分の教訓を踏まえて、だろうか。
「お前じゃないから大丈夫だよ」
ゼロが冗談っぽくそう言ったので、彼女は安心した。
ゼロの背中を軽く叩いてやり、彼女は笑った。
一息つけたところで、ミュアンは呼吸を整え。
「ゼロは、ゼロだから。気にしすぎないでね?」
小さめの声で、独り言のようにそう言った。
「……ありがとな」
ゼロも、小さく答えた。
ミュアンを送り、レイの待つ住居へと戻ったゼロを、しかめっ面の彼が待ち構えていた。
「……どうかしたのか?」
ビーナの言葉が頭を過ぎり、ゼロは彼を平常通りに見れなかった。
「――遅いねん!」
ビシッと人差し指でゼロを指差さし、レイはいつもの笑顔ではなく、怒っているとまではいかないが、怒った雰囲気でそう言った。
「今何時だと思っとんねん! 良い子はもうオネム時間やで?!」
時刻を見ればもう午後10時過ぎだった。ゼロは、いつものように切り返すことができなかった。
「悪かったよ。次からは気をつける」
謝る彼を見つめながら、もう一人はふっと表情を和らげた。どこか、悲しみをおびたような。ゼロが彼の横を過ぎ、背中だけが見えるようになったあたりでレイはゼロを呼び止めた。
「翁に会ったんやな……?」
ゼロは足を止めた。レイの声は、今までに聞いたことの無いような、切ない声だった。ゼロの肩が、僅かにだが震えていた。
「あぁ」
レイの表情が落ち込んだ。
「あれは、嘘だと思っていいのか?」
「あれがホントなら、俺は――」
レイがそう言いかけたとき、ゼロはバッと振り返った。その表情には、どうすればいいか分からないと書いてあるかのように、戸惑いが浮かんでいた。
「違う……!」
レイはそこで頬を緩ませた。いつもの表情に戻った。
「東から来たお前が“在らざる者”だとしたら、西から来た俺もそうなはずだ」
その言葉の矛先はレイではなく、ゼロ自身のように思われた。自分を納得させるため、自分自身に言い聞かせようとしていた。
「そうやな……」
レイはゼロの肩に手を回し、抱き込むようにして背中を軽く叩いてやった。
「お前は“死神”やない。ふつうのエルフで、俺の友達や」
レイの腕の中は温かかった。ゼロが誰かをここまで頼ったのは久しぶりだった。
そしてそれは、ゼロの中で、レイへの警戒心の全てが解かれた瞬間だった。
―――俺は……“死神”なんかじゃない……。
BACK
/
NEXT
ジャンル別一覧
出産・子育て
ファッション
美容・コスメ
健康・ダイエット
生活・インテリア
料理・食べ物
ドリンク・お酒
ペット
趣味・ゲーム
映画・TV
音楽
読書・コミック
旅行・海外情報
園芸
スポーツ
アウトドア・釣り
車・バイク
パソコン・家電
そのほか
すべてのジャンル
人気のクチコミテーマ
アニメ・コミック・ゲームにまつわる…
風次とシン工藤の平成ゲーム研究所 #…
(2025-12-01 20:00:06)
REDSTONE
グランドフィナーレ〜♪
(2025-05-18 20:25:57)
『眠らない大陸クロノス』について語…
みみっちー
(2025-11-22 02:38:23)
© Rakuten Group, Inc.
共有
Facebook
Twitter
Google +
LinkedIn
Email
Design
a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧
|
PC版を閲覧
人気ブログランキングへ
無料自動相互リンク
にほんブログ村 女磨き
LOHAS風なアイテム・グッズ
みんなが注目のトレンド情報とは・・・?
So-netトレンドブログ
Livedoor Blog a
Livedoor Blog b
Livedoor Blog c
楽天ブログ
JUGEMブログ
Excitブログ
Seesaaブログ
Seesaaブログ
Googleブログ
なにこれオシャレ?トレンドアイテム情報
みんなの通販市場
無料のオファーでコツコツ稼ぐ方法
無料オファーのアフィリエイトで稼げるASP
ホーム
Hsc
人気ブログランキングへ
その他
Share by: