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第6章
戦闘
今日は、“エルフ十天使”の話し合いのある日だった。
いつも通りの朝を迎えて、いつも通りの道を歩き、いつも通りに砦に入る。
4ヶ月近く中央で生活している間にすっかり馴染んでしまった自分に、ゼロはなんともいえない感情を抱きつつあった。
それと関係あってか、今日は少し話し合いの様子がおかしかった。
「――だから“森の守護者”を倒せば、奴らを傘下に取り組める。そうしたら“神魔団”に対抗できるだろ?!」
金髪の美男子、天子ルフィール・ネームレイアが声を荒げてそう言った。
「なんで倒すことしか頭にないんだよ?! 一時的な同盟でいいじゃないか!」
それに対し、ゼロも反論する。
「同盟だと? ハッ! そんなの裏切られて終わりだろうが!」
「俺には倒した相手が素直に恭順するとは思えないね!」
「“森の守護者”が俺たちと目的が同じっていう保障はないだろ?!」
「“神魔団”は双方の敵なんだから、敵を減らせるってことで一時的でも目的は一致する!」
ゼロが“森の守護者”と戦うことを渋るの理由は、現在同居人であり、中央での唯一無二の親友レイがそこに所属しているからだ。彼には一言では返せないほどの恩義がある上に、ゼロの目から見て“エルフ十天使”が“森の守護者”と激突して、楽に勝てるとは思えないというのもある。こちらのリーダーであるレリムと、向こうのリーダーのウォーという男と。互角か、僅かに向こうが上、というように見えるのだ。
だが、まだ新参者と見られているゼロの言葉を、とりわけ自信家のルフィールがまともに聞き入れてくれるわけはなかった。
両者均衡のにらみ合い、その光景を一部の仲間たちが不安そうに見つめ、だが仲裁に入ることもなく、レリムの言葉を待っていた。
「静まりなさい」
ゆっくりと口を開いた美女から、ついに仲裁が入った。
「ルフィール」
「は、はい」
少し強張った返事をする。無言の圧力を彼女が発しているのは、誰の目にも明らかだった。
「貴方は“森の守護者”の実力をどれほど知っていますか?」
質問され、彼は閉口した。自信は時に強さとなり、時に欠点となる。何事も過剰は禁物だ。
「ゼロ」
ゼロは目だけで返事をした。
「何故そこまで交戦を否定するのですか?」
あくまで丁寧な口調で、だが恐ろしいほどの威圧感の込められた口調だった。
正直に言うべきか、適当な嘘をついて受け流すか。だが、明らかにここでの争いに関する知識は足りない以上、ぼろが出ないとも限らない。
―――どこまで話すべきかね……。
レリムの目を真っ向から見つめ返しながら、逡巡する。その彼を、ミュアンは心配そうに見ていた。
「……ここに来る前だが、ウォー・ガーディアンとは接触したことがある」
ゼロは出来るだけ感情を押し殺し、レリムに変に勘繰られないように話した。
「何だと?! もしかしてお前敵方のスパイじゃないだろうな?!」
これを好機とルフィールはゼロに対して疑いをかけてきた。ゼロが彼を一瞥し、何か反論しようと思ったとき。
「そんな言い方はないんじゃないですか?」
まだ声変わりを終えていない、幼い声が割って入った。
どことなく、南王シスカ・コライテッドと似通った容姿を持つ、天子ゼリューダ・コールソンだった。まだ15歳ながら覚醒し、アビリティを使いこなしている将来有望な美少年だ。
彼に庇われるとは思っていなかったが、ゼロの考えていたよりも、彼には自分を好意的に受け入れてもらえていたらしい。
「少なくとも、ここまでのゼロさんに不審な行為はありませんよ」
「そ、そーだよ!」
本来なら自分が先に庇う役目なのに、とミュアンは一人思いつつも、ゼリューダに加勢した。
「ムレミック、ゼリューダ、バンディアル、ルフィール、ゼロ・アリオーシュ、お前たちには、5日後“森の守護者”の砦を襲撃してもらう」
今まで何一つ口を開かなかったダイフォルガーが、会話に割って入り、そう命令した。
一同がダイフォルガーを見た後、レリムを見た。やはり彼女の表情にこれといって変化はなく、彼女の同意の上か、彼女の考えということだ。
「あいよ」
軽く了解するムレミック。
「分かったぜ!」
大げさに了承するバンディアル。
「は、はい。心得ました」
「わ、わかりました」
「……わかった」
残りの3人は、驚きを隠せずに、だが天師の命令には絶対と了承した。
「勝利を得るためには、チームワークは大事ですよ。それを肝に銘じておきなさい」
少し強い口調でレリムがそう言うと、彼女は奥の部屋へと入っていった。
―――まぁ、俺は見届けるだけなんだがな……。
同日、“森の守護者”の砦。
「この前の“神魔団”の襲撃から察して、残っている派閥は少ないはず。ここで“エルフ十天使”に仕掛けて、奴らを傘下に入れてはどうでしょうか?」
“森の守護者”所属のロイが、ウォーに提案した。
「俺は反対やで」
真っ向からその意見に異を唱えるレイ。
「何も戦わんでも、一時手を組むだけでええんとちゃう?」
彼の心中には、“エルフ十天使”に所属している親友ゼロがいた。
「そんな甘いことで勝てるような相手なら、この前ロゥがあんな怪我を負うこともなかっただろうが」
ロイがレイを言いくるめようと発言する。
「もし、戦って死傷者が出たらどないするねん? 本末転倒やで」
偶然にも“エルフ十天使”でも同様な話題が出ていたのだが、こちらでは声を荒げての討論にはならなかった。だが、両者は睨み合い、一触即発、という状況だ。
「話し合いで手を組めるなら、それに越したことは無い。俺が交渉に出よう」
ウォーの発言に、レイの表情が明るくなる。
どうやら、こちらは交戦を望まなかったようだ。
そして、話し合いから五日はあっという間に過ぎた。
レリムに任命された5名は、各々の準備を終え十天使の砦に集まっていた。
ゼロはルフィールを避け、ルフィールも同様にしていた。
「“森の守護者”とは戦ったことあるのか?」
この前味方に付いてくれたからか、それなりに信頼を置いているゼリューダにゼロは尋ねた。南王シスカに似通ったところはあるが、性格は非常に温厚で、例えるならばゼロの親友ベイトに似ている感じである。
「いいえ、ありませんよ。実際の所、最近の偵察で分かっていることが、全ての情報なんですよね」
苦笑交じりに答えるゼリューダを見て、ゼロも半笑いだった。だが、実際に戦うつもりはないにしても、味方がやられそうな時どう動けばいいか分からないのは不安だ。敵を知るのは兵法の初歩だと思っているのは自分だけなのだろうか、そんな錯覚も覚える。
「……とりあえず、俺はお前の後ろで控えてるか」
「あはは、じゃあ僕が負けそうになったら助けてくださいね」
どこまで本気か分からない会話だが、なかなかに仲良さそうに二人は話していた。似てこそいないが、兄弟のように見えなくも無い。
「ムレミック」
ゼロとゼリューダを視界にいれないようにしたルフィールがムレミックに話しかけた。
「天師はいったい何を思ってこんな編成をしたっていうんだ」
「そんなんわいにゃわからへんわい」
独特の口調でムレミックは答える。だが、それは嘘だった。
ダイフォルガーの次にレリムの信頼を得ているムレミックは、この編成の意味を事前に知らされていた。彼女の言葉はこうだった。
『今度我々は“森の守護者”を攻めます。本来なら私かダイフォルガーが出陣したいところですが、少々やることがありまして。ですから、貴方に指揮をお願いしたいのです。メンバーは、貴方とゼロと、ルフィール、ゼリューダ、バンディアルです。そろそろ未覚醒者には辛い戦いが多くなるはず。まずバンディアルに覚醒させ、それに触発させて残りのメンバーを覚醒させるのが今回の目的です。何かと面倒をおかけしますが、よろしくお願いします――』
というもので、いわば実戦修行なのであった。
ムレミック自身最近戦っていなかった分久々に身体を動かしたかったので、問題なく承知したのだ。それでも、覚醒するかしないなどは誰にも分からないので、ムレミックは自分の修行のように考えているのだが。
―――なんか引っかかるんやけどな……。
「そろそろ行くで」
指揮権を持ったムレミックが全員に呼びかけ、先頭を歩く彼の後ろにバンディアルとルフィールが、やや離れてゼロとゼリューダが付いて行っていた。
“エルフ十天使”の5名が出発したのとほぼ同刻の“森の守護者”の砦。
「それじゃ、そろそろ行ってくる」
リーダーであるウォーは、護衛も連れずに“エルフ十天使”の砦へ向けて出発した。
その彼をメンバーたちは心配そうに見送る。当然ながら、ゼロたちが向かっていることなど知る術もない。
「もーすぐやな」
“森の守護者”の砦へと向かう最中、ムレミックがそう呟いた。その言葉には、敵の奇襲があるかもしれないから気をつけろ、という意味が込められている。無論、全員その意味を察しているが。
自然と足取りが慎重になる。
目標地点まで残り500メートルほど。そこでゼロは足を止めた。何かの気配を察したのは彼だけのようだった。
「どうかしましたか?」
ゼリューダがそれに気付き、声をかける。バンディアルが一瞥しただけで、他の二人は先に進んでいった。
「任したで」
後ろ向きに手を振り、ムレミックはそう言った。どうやら彼も何かの気配を察したようだ。ダイフォルガーに次ぐ、十天使ナンバー3の実力は伊達ではないらしい。
ゼロは感覚を研ぎ澄ました。だが、すぐにその表情を僅かだが緩める。その表情の変化に気付いたものはいないだろう。
「出て来い」
ゼロの声に反応し、木々の間から気配が動いた。僅かに青混じりの、銀というより白に近い髪をした青年が姿を現す。身構えるゼリューダに対して、ゼロは最初の姿勢のままだ。
「タイミング悪いのぉ。今砦に向かったって、ウォーさんはおらへんで」
青年――レイが告げた言葉に、二人は僅かに驚きを見せた。
「なんですって?」
怪訝そうにゼリューダが聞き返す。ゼロは何も言わなかった。
「折角俺らが“エルフ十天使”と手ぇ組もうと考えとったんに、タイミングの悪いことこの上ないで、ほんま」
「それは惜しいことをしたな」
レイではなく、ゼリューダを見てそう言うゼロ。自分の意見を取り入れなかったからだ、とでも言いたげだ。
「僕は反対してないですよ」
その視線に気付き、ゼリューダは首を振った。
今さら言ってもどうしようもないことを分かっているため、ゼロはそれ以上追求しなかった。
「まぁ、約束どおり戦ってこい」
レイを指差し、あっさり告げるゼロ。
「はいはい」
その言葉通りにゼリューダは得物である短剣を構えた。隙の無い構え。以前ゼロが戦ったときよりも、大分型が出来ている。
「戦うしかないっちゅーのは、悲しいことやのぉ」
小さくため息をついた後、レイも剣を構えた。ゼロが戦わないは知っている。だが、そのことについては何一つ触れない。下手に話しかけて彼の立場を危うくするわけにはいかないのだ。水面下で、親友たちは出来る限りの情報隠蔽行動をしていた。
優しい風が撫ぜ、木の葉の揺れる音が耳に入る。
その音に紛れるように、ゼリューダはレイに突進した。
仲間と親友とが戦う様を見届ける、ゼロの心境とは如何に。
「バンディアル」
二人を置いて先に進んでいた最中、ムレミックが仲間の名を呼んだ。
「任したで」
ただその一言で大男は足を止めた。彼は気配を察するのを得意としていないため、その言葉を信じないわけにはいかなかった。
「ここは任されました。天子どのたちは先へお進みください」
その巨大な身体からは想像もつかない穏やかな口調で彼は返事をした。彼は十天使古参のメンバーだからこそ、階級を大事にしていた。年齢においては年上だが、この世界ではそんなものより実力だ。強き者のみが、生き残る。
彼を置いて二人が遠くなる。途中一度だけルフィールが振り返ったが、何も言わなかった。
「俺としては、正々堂々姿を現し、正々堂々と勝負をしたい!」
彼を中心として半径50メートル以内ならばはっきりと聞き取れるほどの大声で、彼は叫んだ。その手に握られるのは、一振りで大木であろうが薙ぎ倒してしまいそうな、鎌。
「面白い奴だな」
何処からともなく姿を現した人物は、バンディアルの言葉通り正々堂々の戦いを所望したようだった。
「俺は“森の守護者”のジェント・ラークだ」
「俺は“エルフ十天使”の天使バンディアル・セルフォークだ。貴公の心意気に感謝する」
「なぁに、俺も正々堂々戦うほうが好きなだけさ」
ジェントの武器は大剣、バンディアルの武器は鎌。
お互いに大きな武器を持った、見ごたえのある戦いが始まろうとしていた。
「ルフィール、先行けや」
足を止めたムレミックは、もう一人の仲間にそう告げた。
「敵、か?」
「ああ、しかも、わいの敵や」
「わかった」
素直に彼の言葉を聞きいれ、ルフィールは先へと進む。ここまで来れば目的地まであと目と鼻の先だ。
ルフィールが見えなくなってから、ムレミックは感覚研ぎ澄ました。背後に殺気を感じ、彼は咄嗟に横に飛び退いた。
一瞬前まで彼が立っていた位置に、鋭い攻撃が突き刺さった。
「こちらの思いも知らず、のうのうと攻めてくるたぁな……」
奇襲をしかけた戦士、ロゥ・バルバトスは地面に突き刺した槍を引き抜き、2、3回振るって付着した土を払った。
「こっちの都合って奴やで」
どうやら初めての手合わせではないようだ。
同じく槍を構えるムレミック。お互い槍使いの戦いに、勝利の女神はどちらに微笑むのだろうか。
砦の目の前までたどり着き、ルフィールは門の前に立つ男に有無を言わせず切りかかった。
それに対し慌てる事無く、寧ろそうなることを予想していたように、“森の守護者”所属の戦士、ロイ・スクートは攻撃を避けた。
拳を正眼の高さで構える。どうやら格闘家のようだ。
「戦う前に色々話す奴が最近多くてな、お前みたいな典型的な敵は大歓迎だ」
「そいつはどうも!」
好戦的な二人は、不敵に笑ったまま戦闘を開始した。
ゼリューダの攻撃を半身になって避けたレイは、すぐさま反撃に転じた。だが、素早く反応したゼリューダは見事短剣で防ぐ。短剣の分僅かにゼリューダの方が軽く見えるが、レイのポテンシャルはゼリューダを圧倒している、ゼロにはそのように見受けられた。
―――いい動きしてるな……。参考になる……。
二人の戦いを黙って見ているだけではない、第三者的立場から冷静且つ客観的に戦いを観察する。少しでも自分の技にと吸収しようとしているようだ。彼ほどの剣士が、とは思うが、彼にそう思わせるレイの動きには筆舌し難いものがあった。
一手ごとに、ゼリューダに余裕がなくなる。詰みまでもう数手といった感じだ。
「そう簡単にッ!!」
後ろに飛び退いたゼリューダは、巨大な気迫とともに言葉を吐き出した。普段の彼からは想像付かない、凶暴な気迫。そしてそれと同時にレイが後方へと吹き飛ぶ。
ゼロの身体が僅かに反応した。レイの方へ半歩踏み出してしまう。幸い、ゼリューダには気付かれなかったが。
「羨ましいで。アビリティ持っとる奴は」
吹き飛び、地面を転がった時についた砂を払いながら、レイは気楽にそう言った。傍から見たところ気を失ってもおかしくない飛ばされ様だったが、思っていたよりもダメージは少ないようだ。
驚くべきことに、彼はゼリューダのアビリティ“衝撃波”が発生し、自分にぶつかる瞬間に自ら後方に飛び退き、ダメージを軽減したのだ。衝撃波の直撃を受けていない分、ダメージは転がった分だけ。信じられない反射神経だ。
ゼロは怪訝そうにレイを見つめた。
―――こいつ……本当に――?
「参りました。ギブアップです」
ゼロが余所見をしている間に、ゼリューダは負けを宣言していた。短剣を地面に落とし、両手を上げる。秘策が通じなかったのだから、仕方がないだろう。
レイはその彼を一瞥した後、剣の切っ先をゼロに向けた。
「お前も俺と戦るんか?」
まったく赤の他人のような口調。
だが、ゼロには彼の言わざる言葉が聞こえた。「今戦う必要はない」と。
「いや、どうにも敵いそうにない。大人しく撤退させてもらうよ」
ゼロは手を上げ、首を振った後、ゼリューダの短剣を拾い上げた。
「それに、どうやら今は戦っている場合じゃなさそうだ」
苦笑交じりにそう告げたゼロは、疲弊しきっているゼリューダを立ち上がらせ、肩を貸しながら“エルフ十天使”の砦の方へと撤退を始めた。
その二人を、レイは何か思うところあり、というように見つめていた。
その視線の意味とは如何に。
「うおぉぉぉ!!」
バンディアルの豪快な叫びが森の中に響いた。大きく振りかぶられた鎌が、勢い良く振り下ろされ、大地を抉る。相対するジェントは、出来る限り武器の衝突を避けていた。十天使の中でも1、2を争う怪力のバンディアルだ。ジェントも腕力には自信があるが、どう贔屓目に見ても自分に利があるとは思えないようだった。
鎌と大剣という、射程距離の長めの武器同士の激突は、周囲の木々を問答無用に薙ぎ払っていた。二人の周囲は樹齢数十年と見受けられる木々が無残に横になっている。つまり、二人の攻撃にはそれほどの威力があるということだ。勿論当たれば即戦闘不能なのは間違いない。
「あんたまるで暴れ牛だな! もう少しクールに戦ったらどうだい?!」
繰り出されるバンディアルの攻撃の数々を避けながら、ジェントは叫んだ。攻撃しないのではなく、あの相当な重量を持つ鎌を振るっているのになかなかのスピードがあるバンディアルの猛攻の前に、打ち込めないのだ。
「俺の魂が叫んでいるんだ! それは無理な提案ってやつよ!」
ばてることも、手が止まることもなく、バンディアルは鎌を振り回した。ここまでくると、技など何も無い。下手な鉄砲数撃ちゃ当たる、といった感じだ。
「悪いが、避けてばっかりは趣味じゃないんでね! 本気でいかせてもらうぜ!」
小さく舌打ちしたあと、ジェントはかなりの間合いを置いた。大きく息を吸いこむ。
「む?!」
大分間合いがあった筈なのだが、気付けば一瞬にして間合いを詰められていた。
「でぇぇぇい!」
その勢いのまま体当たりを繰り出す。体重差が30キロはありそうな二人だが、バンディアルは激しく飛ばされた。
「ぐはっ――!」
―――何が……起こった……?
ぶつかってきたのは敵で、ただそれだけの行為だった筈だ。それが何故こんなにまで吹き飛ばされるのだろうか。バンディアルの頭は混乱していた。胃液が逆流し、口の中に特有の苦味が広がる。
「俺のアビリティは“加速”。瞬間的に時速100キロを越えた速度で動くことが出来るんだよ」
ジェントも、バンディアルの大きな身体にぶつかったからか少なからずダメージを負ったようだった。衝突した右肩を押さえている。
「アビリティ……」
うわ言のように呟く。そしてバンディアルは、自分が覚醒するために戦うよう命じられたことを思い出した。
「悪いが、これで止めだ」
再びジェントが間合いを置き、深く息を吸い込む。
「アビリティ……!」
自分に向かって踏み出したジェントの姿を目で捉える。
「うおおおおお!!」
バンディアルの咆哮が森に木霊すると同時に、先程と同じように体当たりをしたはずのジェントが、尻餅をついていた。
「バリア……か?」
「そうらしいな……」
流石のバンディアルも疲弊し、普段どおりの大声は出せなかった。
同様に、ジェントも疲労は隠せず停戦を申し入れた。お互いこれ以上の戦闘は無用、いや、これ以上の戦闘続行は不可能だと理解しているようだ。
二人は、それぞれの砦の方へと歩き出した。
両者の勝負は引き分けだが、バンディアルからすれば覚醒できたということもあり、勝利と同等かもしれない。
結局、“エルフ十天使”の砦に全員が帰還を終えたのは、出発からおよそ15時間後の、真夜中だった。砦で寝泊りしているレリム、ダイフォルガー、ナナを除く他の数名はとっくに帰宅しているのだろう。
「皆さん、よく無事に戻ってきてくれましたね」
レリムは労をねぎらうためにか、全員の帰還を待っていたようだ。比較的早めに帰還を果たしたルフィールとムレミックは、普段話し合いの時に使っている会議室の机に突っ伏して眠っていた。最後に帰還を果たしたバンディアルの報告でレリムの顔色は明るくなった。
「天師、無事覚醒することが出来ました」
戦果からすれば、ゼリューダ以外は引き分けで、“森の守護者”と絶対的な差がないことも把握できた。真正面から激突すれば、数の利もあってきっと勝利を収めることが出来るだろうというレリムの言葉もあった。
だが。
「実は、皆さんに告げねばならぬことがあります」
急に声のトーンを落とし、レリムは真剣な眼差しで話し出した。薄暗い会議室の空気が、少し冷たくなったように感じられる。
「皆さんが出陣している間、“森の守護者”のリーダー、ウォー・ガーディアンがこちらに来ました」
―――レイの話は本当だったってわけか……。
ゼロとゼリューダは、嘘か真かは分からないがその話を聞いていたのであまり驚かなかったが、他のメンバーは一様に顔をしかめた。
「もちろん単独でこの砦を落としに来るような愚行ではなく、私たちと手を組み“神魔団”を滅ぼしたい、という提案をするためだったのですが」
レリムの表情が暗くなる。ゼロは“神魔団”についての情報を大して知っているわけではないが、たしかに今のまま、“エルフ十天使”と“森の守護者”が別々に挑めば双方とも潰されるような実力差を感じるのは確かだった。
「正直、手を組むのは良策かもしれません。ですが、軽く同意するには少々と事が大きすぎるのです。そこで、一度“神魔団”と一戦交えようと思っています」
提案したレリム自身、好んで戦いたい相手ではないようだ。今回は幸運にも死者が出なかったが、次も死者無しで済む保障などない、むしろ死者が出ないほうがおかしい戦いになる確率が高い。
「予定する日は2週間後です。その時まで、各自準備を怠らないようにお願いします」
これで終わりだろうと一同は帰宅しようとした時だった。
「それから、ゼロ。ちょっと私の部屋に来てください。少しお話があります」
そう言い、自室へと姿を消したレリム。その後を追って彼女の部屋へ向かうゼロを尻目に、他のメンバーは疲れた身体をおして自分の住む場所へと帰っていった。
本日の“エルフ十天使”対“森の守護者”の戦いは、総合的に判断するに“引き分け”、のようである。
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