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第10章
死闘
“平和の後継者”結成から1週間が過ぎ、仲間内の連帯感も少しずつ根付き始めていた。特に、ゼロ、レイ、ミュアン、ゼリューダ、メルシー、ロゥら若い世代の交友が予想以上に周囲にも影響を与えているようだった。
来るべき“神魔団”との戦いに向けての準備が進む中、この兆候は明るい兆しのように思えた。
そんなある日、ゼロは一人ふらりと今はもう使われていない“エルフ十天使”の砦に足を運んだ。
砦の正面に立ち、その全貌を眺める。大きく無骨なそれは、紅葉真っ最中の木々に飾られ、普段よりも数段映えていた。
ここに初めて来たのはゼロが16歳だった時。その時は純粋な力を求めて訪れただけで、今このような状況に置かれるなど想像もしていなかった。
中央に来てもう8ヶ月も経ってしまったのだ。
自分の帰りを待つ大切な人たちを思い出しそうになり、ゼロは首を振った。これから戦う相手は強大であり、一瞬の油断もできない相手なのだ。今は、眼前のことに集中せなばなるまい。
そんなことを思いながら、ゼロは何気ない気持ちで砦の中に入った。
閑散としていることを予想しながら入ったのだが、その予想を裏切るように、中からは人の気配がした。秋の季節花の香りがほのかに匂ってくる。
慎重に中の様子を探ると、この砦を使っていた頃一度も入ることのできなかった部屋のからその匂いを嗅ぎ取ることができた。ゼロは少し緊張したままその扉を開けた。
「……ナナ?」
その扉の内側ではよく見知った人物が椅子に座りながら読書に耽っていた。
「ゼロ……?」
目元が隠れる程まで金髪を伸ばしているどこかミステリアスな雰囲気漂う少女はゆっくりとゼロの方に顔を上げた。
彼女は戦闘能力でなく、特殊なアビリティの保持者としてレリムに十天使に入れられた、アビリティを除けば本当にただの少女なのだ。
「何だってこんなところに?」
ゼロは肩から力を抜いてナナに問いた。
「…………」
ナナはじっとゼロの方を見つめるだけで答えなかった。
ゆっくりとゼロが彼女に方に歩み寄る。
普段から寡黙で誰とも喋らない彼女らしいといえば彼女らしい態度なのだが、一対一のこの状況での沈黙は耐えがたかった。
「ここが……」
ため息をつきそうだったゼロを見てか、ナナはゆっくりと小さい声で言葉を発した。
「私の家だから……」
「家?」
予想外の言葉に思わず聞き返す。ナナは、今度は頷いて答えた。
「ここに住んでるのか?」
再度頷くナナ。
改めて考えればこうしてナナと二人で話すことは初めてということにゼロは気付いた。
「お前、自分の親とか、家とかは?」
何を考えているのか分からないような表情でナナは首を振った。
その動作にゼロは少なからず驚きを隠せなかった。
「私は孤児らしいから……」
―――“らしい”?
「それからずっとここで暮らしているから……」
「なんか……悪いこと聞いたな」
ゼロがばつの悪そうな顔で顔を背けた。
しかし、ナナはゼロがそうする理由が分からないのか軽く首をかしげた。
「ここがあれば十分だもの……」
彼女の話を聞いてゼロが理解できたのは、ここがどうして入れなかったのか、ということくらいだった。
「そうか……急にお邪魔して悪かったな」
ゼロがそう言い、ナナの部屋――家――を後にしようとしたとき、ゼロが気付かない内にナナが椅子から下りてゼロの袖を引っ張っていた。
「待って」
心なしか少し、ほんの少し強い口調になったナナが彼を引き止めた。
「ゼロ……料理が上手ってミュアン言ってた……」
袖を掴んだまま照れた表情で話し出したナナを見て、ゼロは虚をつかれたような表情でナナを見返していた。
そして彼女の言おうとしたことを察して、ゼロはぽんとナナの頭に手を置いた。
「昼時だしな、気の利いたもの作ってやるよ」
「あ、あの……」
ゼロが砦内の厨房に向かおうとしたが、ナナはまだ何か言うことがあるようだった。
「作り方も、教えてほしいの……」
ゼロは笑って頷いた。
ナナに厨房で材料を準備するように言った後、ゼロは少しの間どこかへ行っていた。彼女の話からすれば生活に必要なものは定期的にレリムが持ってきてくれるらしく、色々揃っているようだ。
戻ってきたゼロはナナの髪を軽くすいた。
「ちょっと目をつぶってな」
少しおびえた様子で、だが言われるままにナナは目を閉じた。何やら髪をいじられてるようだった。
「いいぞ」
ゼロの声を耳にし、ナナが目を開けると、いつもよりも視界が開けていた。
自分の髪に触れてみると、目元までかかっていた髪は髪留めでまとめらていて、伸ばしっぱなしだった後ろ髪はツインテールでまとめられているようだった。
「あ……ありがとう」
「どういたしまして」
照れて顔を伏せたナナに向けて、ゼロは軽く笑って答えた。
“平和の後継者”の砦に、メンバー全員が集まり、彼らは緊張した空気の中レリムの言葉に耳を傾けていた。
そんな空気の中でもゼロは後方の壁にもたれかかり、時折隣から離しかけてくるレイに相槌を打ちながら適当にレリムの言葉を聞いていた。
今ばかりはミュアンもゼロに話しかけたりせず、真剣に話を聞いているようだ。
ゼロがそんな風に視線を動かしていると、ふとナナと目が合った。目が合うや否や彼女はすぐに目をそらしたが。
―――髪型、気に入ったのかな?
最近ナナはずっとゼロが作った髪形でいるのだ。悪い気はしない。
―――たまに顔出してやるか。
彼女を見ていると、どうしても妹であるセシリアを思い出してしまう。年齢は彼女のほうが少し下で、見た目も性格も全然違うのだが、小さい女の子というだけで妹を連想させてしまうらしい。最近ではゼロ自身も己のシスコンを自覚していた。
「では、今回“神魔団”の砦へと攻撃を仕掛けてもらう人を発表します」
知らぬ間にレリムの話が進んでいた。
ウォーが一歩前に進み出て、紙面を読み上げ始めた。
「旧十天使からは、レリム、ルフィール、ミュアン、ムレミック、ゼロの5名。旧守護者からは、俺、ロゥ、メルシー、レイの4名で今回は戦いに望む。他の者は、ダイフォルガーの指揮の下で砦の防衛の任務に当たってもらう」
少しざわめきが起こる。レリムとウォーの、中央で五指に入る二人ともが攻撃に参加するということから、これを最後の戦いにするような意気込みが感じられた。
「それと」
ざわめきを押さえるようにレリムが口を開いた。
「絶対に一人で動かないでください。必ず二人一組以上で敵に当たってください。そして」
一旦レリムが言葉を切る。さしもの彼女も息を整えた。
「ヴァリスに出会ってしまった場合、逃げ生き延びることを最優先してください」
“神魔団”のリーダーである、ヴァリス・レアー。彼らにとって、因縁積もる相手だ。
「では、出発は1時間後です。各員、準備に移りなさい」
レリムの話が終わると皆それぞれに動き出した。やるべきことがない者などいないのだ。
「ゼロ」
一旦家に戻り準備をしようと思っていたゼロとレイのところに、ミュアンが寄ってきた。
「私も、一緒に動いていいかな?」
彼女の表情には不安が立ち込めていた。実力では上位に当たるが、実際の所彼女はまだ覚醒していないのだ。アビリティもなしに、“神魔団”と渡り合える保障はどこにもないのだろう。
「ああ」
特にどう思うわけでもなく、ゼロは承諾して頷いた。レイも同じように頷く。
それ以上何を話すわけでもなく、ミュアンは歩き去る二人の背中を黙って見つめていた。
慣れ親しんだ家につき、ゼロは自分の服棚の下の方から、綺麗に折りたたまれた一着の服を取り出した。まだ一度も着たことがないようで、真新しい衣類の匂いがした。
「ん? ゼロいつのまにそんなん買ったん?」
以前レイがゼロの洋服を買いに行ったときに、その服は決して買っていない。
「買ったわけじゃないんだが、ちょっとな」
ゼロが着始めた服は、虎狼騎士の制服とも言える戦闘着のようだが、一般の青基調ではなく、黒を基調とし、多少の装飾を施したものだった。伸縮性はないが、身体の動きの邪魔をせず、多少の衝撃を和らげてくれる特殊な服で、以前マリメルと会った時に頼んだものであった。当然のことながらサイズは申し分なく、かなり似合っていた。
実際のところゼロが中央に現れた時も同じものを着ていたのだが、激戦の後という理由も重なりぼろぼろになっていたので廃棄してしまったのだ。
「悔しけど、似合っとるなぁ……」
マジマジと観察するレイに向かってゼロは小さく首を振った。
「俺はお前が選んでくれた服の方が気楽で好きなんだがな」
それはゼロにとってはどうってことない一言だったのだが、レイはぽかんとした表情でゼロを見ていた。
「なんだよ?」
その視線に気付き、装備を確認する手を止め視線を投げ返す。
「あ、いや」
照れたようにレイは頬をかく。
「なんでもない」
怪訝そうに首を傾げたゼロだったが、それ以上何も追求せずに確認を進めた。
―――ゼロとなら、なんにも負ける気はせえへんな……。
急ぎ足で砦に戻ったのだが、時間ギリギリだったようだ。
他の者たちは既に緊張した雰囲気でレリムとウォーが来るのを待っていた。
ロゥとメルシー、ルフィールとムレミックがそれぞれ二人組みになっており、ゼロたちに気付いたミュアンが彼らのほうに歩み寄ってきた。
その表情は、どことなく照れたような、憂いを帯びた表情だった。
「あの、さ」
ミュアンはゼロの方に視線を向けて口を開いた。やはりまだレイに対してはしっくりと仲間という実感が湧かないようだ。
「もし、敵とあったらさ」
少しずつ区切りながら話す彼女の言葉を、ゼロは黙って聞いていた。
「私一人に任せてくれないかな?」
迷いを断ち切ったように早口で言い切った彼女の眼差しに、ゼロは力強いものを感じた。意志の強さ、身に覚えのある彼女の考えに、ゼロは小さく頷いた。
ここで「危なかったら助けに入る」などと甘いことを言うのかと予想したレイだったが、その予想に反してゼロは頷いただけで、何も口を開かなかった。
そのゼロの態度を見てミュアンは一瞬何かいいたげな表情を見せたが、すぐにそれを消して普段の表情を作った。
「ゴーストと戦えたらええんやけどなぁ……」
周囲に聞こえる独り言をぼやくレイに対し、ゼロは軽く頭を小突いた。
「お前も一人でやるか?」
「う……。それは勘弁してや……」
この状況下でも冗談を言えるゼロに対し、ミュアンは改めて彼と自分のくぐってきた修羅場の違いを感じた。
数分後、重装備のウォーを従え、レリムが軽鎧と得物のレイピアを携えて参上した。
「では、そろそろ出発致しましょう」
ウォーが先頭となって“神魔団”の砦へと向かい始める。ゼロとレイ、ミュアンは最後列――正確には前からレイ、ミュアン、ゼロとすぐになれるように――を歩いていた。
中央の中でも真ん中に位置する“平和の後継者”の砦から、方角にして東の方向へと一行は進んでいく。
その足取りは、どことなく暗く見えた。
「囲まれたな」
「あぁ、そうみたいな」
最後列で、ゼロとレイがぼそっと呟いた。その言葉を耳に、ミュアンは二人に振り向くと同時に――。
「全員気を引き締めろ!」
ウォーの叫び声を皮切りに、それぞれのグループが散開する。
レリム、ウォーが進行方向そのままに、ロゥ、メルシー、ムレミック、ルフィールらが進行方向左へ、そしてゼロ、レイ、ミュアンらが右へ。
はたして、全員無事に砦へと帰還することはできるのだろうか。
「メルシー、逃げれる準備はしとけよ」
「うん……」
普段の緊張感のない声ではなく、いまのロゥの声は微かに震えていた。
しかしそれも仕方ないと言えば仕方のないことかもしれない。以前にロゥは“神魔団”の攻撃を受け瀕死の重傷を負ったのだ。そのときはメルシーのアビリティが覚醒したことによって事なきを得たが、実際問題、あの時の二の舞になる確率は非常に高かった。
辺りの気配を探りながら、4人は歩を進めた。
「来るぞ!」
ムレミックが気配の方向に槍の矛先を向ける。
「おわッ!!」
しかし接近する気配は急に進行方向を変え、ルフィールに突撃した。
彼の優れた反射神経を持ってしても、ギリギリのところで盾を出したが耐え切れず吹き飛ばされた。
なんとか受身を取った彼に追撃が迫る。
「上や!」
ムレミックの声に反応し、それを信じて盾を上向きに構える。
その盾と気配が再度正面から衝突した瞬間を、尋常ならざる光景を3人は確かに見た。
「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ルフィールの悲惨な叫び声が森に木霊する。あろうことか、気配の男と衝突した盾は粉々に砕け、彼の腕ももぎ取られた。
左腕を失い、顔面を蒼白させた彼に、容赦ない追撃が繰り出される。なんとかそれを食い止めようとムレミック、ロゥの2本の槍が男に繰り出されるが、その矛先よりも早く、男の拳がルフィールの胸部を陥没させ、それから反転し二人の槍を止めた。
あっという間に仲間が、ルフィールが殺された。その事実が、3人の感覚を凍らせる。
「どうやら俺は、雑魚を引き当てたのか?」
鋭い眼光で3人を睨みつける男は、“神魔団”の副団長ブラッド・ダークであった。
「おい」
小さくムレミックがロゥに声をかける。
「お前らは先に逃げぇ」
恐怖に足が竦んでしまっているロゥは、声も出ずムレミックの言葉に気付いているのかも分からなかった。
メルシーがロゥの手を取り、彼の手を引っ張る。
「逃げるよ!」
その声に引かれるままロゥは彼女について行く。
意外なことに、ブラッドは二人を黙って見送った。
「女に手を引かれて逃げるような奴は、殺すにも値しないな」
確かに、先程のロゥは情けなかったのはムレミックも感じたが、今はそのことに感謝した。
―――犠牲は、少ない方がえぇ……。
ちらっとルフィールの亡骸を一瞥する。彼の美しかった顔は苦痛を表したままだ。
自分も動かぬ骸となった彼の後をすぐ追うのだろう。不思議と恐怖心はもうなかった。
「お前は少しくらい楽しませてくれるのかな?」
にやりとした表情を見せたあと、ブラッドが拳を突き出す。いつの間に間を詰めたのかは捉えられなかったが、勘だけを頼りにムレミックは攻撃を回避する。
一度間を詰めてしまえば、それなりに相手の動きを見ることは出来る。何発かを避け続けるムレミックだが、完全に避けきれないときもあるようで、何発かは掠めているようだ。拳圧でうっすらと血が滴り始める。
そしてついにブラッドの一撃がムレミックの胸部を捉えた。
だが。
「ぐっ!」
何故かは分からないが、ブラッドのわき腹からムレミックの槍が突き出ていた。
「へへ、どや? 効くやろ? 俺の槍は」
肩で息をしながら、ムレミックはにやりと笑った。
彼のアビリティは“空間転移”。自分を瞬時に視界に入っている空間ならどこへでも転移することが出来るのだ。それを利用した、奇襲であった。
本来ならば心臓を一突きといきたかったところだが、ブラッドの猛攻とアビリティ発動による疲労で照準がずれてしまった。
「確かにな……!」
だが、わき腹に槍を刺した状態のままでブラッドは出血を気にも止めず、ムレミックに接近した。
疲労で意識が絶え絶えだったムレミックには、その動きに反応が出来なかった。
「ぐほぁ!!」
ルフィールと同じように胸部を強打される。自分の胸骨が砕ける音が、ムレミックの聞いた最後の音だった。
「雑魚め……。いや、流石十天使の戦士、とでも言うべきか……」
ブラッドはムレミックの槍を無理矢理引き抜き、腹筋に力を込め出血を一時的に止めた。
そして槍をムレミックの遺体の前に突き刺し、その場を後にし、砦へと戻っていった。
どれほど走っただろうか。メルシーに手を引かれていたロゥは足を止めた。
「メルシー……」
彼女の名前を絶え絶えの声で呼んだ後、彼は激しく咳き込んだ。原因不明の吐き気がした。
「だ、大丈夫?!」
その彼の様子に気付いたメルシーが彼の背中をさすってやった。ゆっくりと呼吸を落ち着け、ロゥはゆっくり背筋を伸ばした。
「俺……情けないな……」
額に手を当て、吐き棄てるように彼は言葉を洩らした。
「っくそ……何にも、何にもできやしねぇ……。何が“中央十本指”だ……」
パンッ、と軽い音が響く。
「かっこ悪いよ。今のロゥ、すっごいかっこ悪い」
ロゥの頬を叩いた手は虚空を彷徨ったまま、メルシーは泣いていた。
「私たち生きてるんだよ?! ムレミックさんやルフィールさんを差し置いて、生きてるんだよ?! なんで、なんでマイナスにしか考えられないの?! 私より力があるくせに……そんなのずるいよ……」
膝が崩れ落ち、ロゥの胸に当てた手が下がり落ちる。
「メルシー……」
泣き崩れた彼女を、ロゥは黙って抱きしめるしかなかった。それ以上の言葉を、見つけることができなかった。
右へ進んだゼロたちには、2つの気配が感じられた。
「ミュアン、言葉通り任せるからな」
ゼロは気配からその強さを判断し、抑揚のない声でそう告げた。
―――やっぱ、心配なんやな……。
あえて感情を出さないという行為が、レイには彼なりの強がりに見えた。
「うん、大丈夫」
ミュアンの返事はゼロに答えるというよりも、自分に言い聞かせるようなものだった。その言葉を聞き、ゼロが小さく頷く。
「あとでまた砦で会おう」
ゼロとレイは、ミュアンを置いて強い気配、ゴーストの元へと駆け出した。
しばらく沈黙が訪れる。
「もうそろそろ出てきたら?」
ミュアンは得物のレイピアを鞘から抜き、誰にともなく声をかける。
「バレてたのね」
ミュアンの向いていた方向から、一人の女性が姿を現した。
すらっとしたモデル体型の美女で、ミュアンは自分と比べると非常に大人の女性、という感じを受けた。艶やかな金髪のロングヘアーは同じ女性であるミュアンからしても見とれるほどで、彼女は自分の髪に触れた後、少しむっとした。
言いようのない敗北感を感じ、無意識に目がやや釣りあがる。
「当然よ!」
まだ構えもしない相手に対し、問答無用でミュアンは攻撃を仕掛ける。地面を蹴り、一気に距離と詰めレイピアを突き出す。先手必勝をモットーとする彼女の一撃を、苦もなく避けられたことに対し、少々のショックを覚える。
「貴方みたいなお嬢さんも武器を手にしなきゃいけないなんて、十天使はそこまで人手不足なの?」
気がつくと彼女はもう既にミュアンの射程距離外に移動していた。
―――は、速い!
十天使の中ではレリムを除けば1、2を争う速さを誇る自分が、全くついていけないとは。その事実にミュアンは唇を噛み締め、自然と相手を睨みつける。
そのミュアンを見て、女はくすくす笑い出した。
「私は“神魔団”のリーロ・オーグ。貴方みたいな可愛い人は本当は見逃したいところなのだけど、私たちの一員が一人、貴方たちの仲間に倒されちゃったみたいだからね。その代わりに、貴方に死んでもらおうかな」
大人びた彼女、リーロが子どもっぽく小首を傾げて微笑む。ここが戦場でなければ、その姿は多くの男を魅了するだろう。だが、彼女の言動はミュアンにとって焦りを生むだけだった。
―――相手は……殺す気でくる……!
レイピアを持つ手に力がこもる。一気に詰められる距離でもないので、ミュアンは相手の出方を窺った。
「そんなにビクビクしなくても大丈夫よ」
敵の攻撃は、ミュアンの予想外の距離から飛んできた。
咄嗟に跳躍しその攻撃を避けたが、鋭くしなって遠距離を飛んできたリーロの攻撃はミュアンの背後にあった大木の幹を大きく削り、あろうことかその大木を倒してしまった。
―――これは……鞭?
初めて戦う武器だ。槍よりも長い射程の武器などとは一度たりとも戦ったことはないのが真実だった。
―――勝てる……のかな?
冷や汗が、ミュアンの頬を伝った。
「この感じ、間違いないで」
少しだけ開けた場所に辿り着き、前を走っていたレイの足が止まった。
ゼロも気配を探るが、何も感じられない。
「俺にはなにも」
一応刀に手をかけるが、どんなに気を集中させてもレイ以外の存在は掴めない。
「ホ、ホンマに? なんかこう、胸ん辺りがざわざわせぇへん?」
身振り手振りで何かを伝えようとするレイだが、ゼロにはさっぱりなんのことか分からなかった。だが、レイははっきりとゴーストの常時発動型アビリティ“恐怖”を感じ取っていた。
「いや、何も……」
―――ゼロの精神力が、ゴーストの“恐怖”に打ち克ってるんか……?
少し惚けた感じのゼロを見て、レイは自分とゼロの差をまざまざと痛感し、改めてゼロが仲間でよかったと思った。
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