non*non's diary

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暴れん坊さんより(戦士の背中)

暴れん坊さん より77777打記念に素敵なお話を書いて頂きました~♪
暴れん坊さん、いつもありがとうございます。m(__)m



戦士の背中(黒崎一護)


「あれ?制服ちょっと小さくなったか?」


夏休みが終わり、新学期が始まるその日。
一護は制服に腕を通してみて気がついた。

元々制服は少し余裕を持って購入していたため、丁度よくなったといった方がいいのかもしれない。

成長期もまっさかりにいる一護。
夏休みの40日間で体が大きくなったとしても、全くおかしくはない。

一護自身、あまり気にせず朝食を取るために階下へ降りていった。

黒崎家の中で、一護の変化を最初に口に出して言ったのは遊子だ。
茶碗を持つ一護の手が、明からに以前よりも筋肉により太くなっている。
心なしか背中も大きくなった様な気がする。

「お兄ちゃん・・・なんだかたくましくなったね。」
「え?そうか?」

一護がどこかへ旅行していた時があったため、暫く会えなかった。

『・・・なんだか大人の人みたい。』

態度そのものは以前と変わっていない。
今も父の一心と仲良く喧嘩をしている。
でもなんとなく大好きな兄が少し離れていってしまったような気がして、遊子は少し寂しくなった。

夏梨も一護の変化にはいち早く気付いていた。

恐らく気付いたのは遊子よりも先だ。
だが、何も言わなかった。
兄が変わったのは体だけではない。
雰囲気も少し変わってしまった。

なんと言ったらいいのだろうか、人間に幅が出来た様な気がする。
困難に会い、それを乗り越えて来た自信の様なもの。
以前よりも格段に兄は精神的にも成長しているようだった。

旅行で何があったかは知らない。
でも自分が知らない兄になって帰ってきている。
きっと実りある体験をしたのだろう。

でも自分はそれが何か知らない。
・・・・何故か無性に悔しくなった。
だから、兄が変わったことを口にはしない。

言ってしまえば、また兄が遠い所に行ってしまう気がして・・。
・・・・夏梨は沈黙していた。


父である一心は楽しかった。

人間・・・特にガキっていうのは不思議な生きもんだ。
一日一日成長しやがる。
昨日出来なかったことが、今日は急に出来るようになっていたり、以前は我慢できなかったことが今日は出来るようになっていたりする。

・・・見てて飽きねえもんだ。

一心は息子の成長を喧嘩で試す。
一心から言わせると、親子の微笑ましいスキンシップの延長だ。
自分の繰り出す突きや蹴りを息子がどう捌いてくるのか。
それで息子の成長を見てきた。
無論、こんなのは娘たちには絶対出来ない。
息子だからこそ出来るのだ。

息子が尸魂界から戻ってきて、真っ先に試してみたかった。
無事に戻ってくることは信じていた。
『俺の息子だからな。』
どれくらい成長しただろう。

「軽いスキンシップの延長」でそれを確認した。
格段に強くなってきている。
判断も的確で、反射スピードも上がった。なにより力がついた。
『成長したな・・。一護。』
親がこの成長を喜ぶ時と言うのはこういう時なのかもしれない。

『まあ、まだまだガキだけどな。』
隙を見て一発お見舞いしてやろうと、意地の悪いことを一心は考えていた。
『よく帰ったな・・・一護。』


一護はもう以前の一護ではない。
一介の男子高校生。
それは変わらない。

だが、幾つもの死線を乗り越え、仲間の命を救い、数多くの信頼を受けてきた男だ。
困難を一つ乗り越えるたびに人は成長する。
数え切れぬほどの苦難を乗り越えて来た一護。

静かな自信。
でもその中に殺伐としたものはない。
激しい戦いを制しながらも、平安を心から願う者。
強いからこそ生まれる優しさ。

そこには仲間が命や願いを彼に託せるほどの魅力がある。

夏の間に一回りも大きくなった一護の背中。
護りたいものを護る力。


一護の背中はその象徴だ。


今まではオレンジ色の髪の色と、絡んでくるタチの良くない輩の為に、近寄らなかったクラスメートたちも、一護の魅力に気付くのもそう遠くはないだろう。



護るべきものは増えていく。

だがどんなにその数が増えていこうとも・・・。

黒崎一護はあきらめないだろう。そして護ろうとするに違いない。


・・・黒崎一護は・・・そういう男だ。



*おまけ*

『なんか・・・すげえ久しぶりな気がする・・。』
9月の初め。
まだ夏の気配が色濃く残る頃だ。
吹く風も熱気をはらんでいる。

校門をくぐると見知った顔が挨拶して来る。

死闘などとは無縁の世界。戦いとは無縁の奴ら。
軽く挨拶を交わしながらも、一護は無邪気とも思える生徒たちの横をゆっくりと歩いていく。
ついこの間まで死と隣りあわせだった一護にとっては全てが何故か懐かしく思えた。

『ま、戦いなんて無いほうがいいんだけどよ。』
右手に持っている学生鞄を肩にひょいとのせる。
そんな何気ないしぐさにさえも、制服を通して背の筋肉が動く様子が見える。

泰然としているにもかかわらず、歩む様子に隙が無くなっていることに、まだ本人は気付かない。

無意識なのだろう。
そう遠くない時に、また自分が戦わねばならぬことを一護は知っていた。

校舎に消える一護の背は、一人の戦士の背中をしていた。

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