日記

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有機EL





ソニーが米国の見本市で公開した有機ELテレビ。今年は有機EL市場の成長を占う1年になりそうだ(同社提供)
 「究極の薄型ディスプレー」と言われて久しい有機EL(エレクトロルミネッセンス)。これまでコストや製品寿命などの問題で本格普及が進まなかったが、ここに来てソニーが27型の有機ELテレビの開発に成功。さらにKDDIが主画面に有機ELパネルを搭載した携帯電話を発表した。薄さや画質などで既存の液晶やプラズマパネルを上回る性能を持つ有機ELに対する期待は高いが、市場の立ち上がりには解決しなければならない課題もなお多い。(田端素央)

 ソニーは今月、米国で開かれた世界最大の家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクスショー(CES)」で、27型の有機ELテレビを展示。高精細のフルハイビジョンによる完成度の高い映像は来場者の目を引き、「壁掛けテレビ」の実用化を予感させた。

 厚さは最も薄い部分で1センチ以下。この見本市には同時に、最も薄い部分では3ミリ以下にした11型テレビも展示した。

 ソニーでは「10インチ台の量産技術にはメドをつけた。液晶テレビとは違う新ジャンルを開拓できれば」と期待を込める。発売時期や価格は未定だが、出光興産と発光材料の共同開発を進めるなど製品化を急ぐ方針だ。

 有機ELは、その駆動方式から「アクティブ型」と「パッシブ型」の2つに大別される。アクティブ型は応答速度が速く解像度も高いため動画向きで、消費電力も低いが、製造コストが高いのが難点だ。一方、パッシブ型は回路が比較的単純でコストは安く抑えられる。しかし、応答速度が遅くて解像度も低いため、文字や静止画しか表示できない。

 現在、市場に出回る有機ELのほぼすべてがパッシブ型だ。このため、用途の約9割を携帯電話のサブ画面や携帯音楽プレーヤーが占める。世界市場規模も550億円程度と小さく、数兆円の市場を誇る液晶やプラズマとは圧倒的な差がある。韓国サムスンSDIや台湾ライトディスプレイなどアジア勢が高いシェアを握っている。

 一方、開発・製造に巨額のコストがかかるアクティブ型は、投資余力のある企業しか事業化できない。有機EL業界をリードしてきたパイオニアでは、1年余り前にアクティブ型の事業化を断念し、同様に量産を目指した三洋電機も撤退に追い込まれた。

 その意味でKDDIが今春発売する携帯電話「メディアスキン」に対する期待は高い。主画面の有機ELは2.4インチのアクティブ型を使って26万色を再現しており、鮮やかなテレビ映像も視聴できる。パネル寿命が3年を超えたことで商品化できたとされる。この有機ELは、サムスンSDI製とみられる。

 今後の有機EL市場の浮沈はアクティブ型が握っている。米調査会社ディスプレイサーチでは、携帯電話向けに本格的に普及し、今年をアクティブ型の「普及元年」になると予想している。「不確定要素が多い」としながらも、有機EL全体の市場規模(金額ベース)は「前年比50%増を超える成長が期待できる」とみている。

 ただ、大手電機メーカー関係者は「アクティブ型は材料だけでかなりのコストがかかる。ビジネスとして本当に踏み込めるのか疑問だ」と指摘する。巨額投資の先にあるのは“バラ色の未来”かそれとも“泥沼”か。事業化の見極めに残された時間は少ない。






【用語解説】有機EL

 電圧をかけると発光する有機物を利用したディスプレー。液晶のようにバックライトを必要とせず、紙のような薄さで折り曲げることもできる。色の再現性や解像度など画質に優れるほか、低消費電力で視野角も広い。半面、コスト高や寿命の短さのために製品化が進んでいない。発光原理がLED(発光ダイオード)に似ていることから、欧米では「有機LED(OLED)」とも呼ばれる。

(2007/01/23 14:58)




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