鬼の交換日記


バカネコ劇場

~ 雷鼓巣日記、落天日記は、いかにして生まれたか ~

鬼の交換日記


第1章 ひと喰い鬼

これは、
村を救うため、いけにえとして鬼の住むほらあなに、
ひとりで、のり込んだ若い娘の物語じゃ。


むかしむかし、雷鼓巣という名の村があったそうな。
じゃが、その村はずれの山には、鬼が住んでおって、
しょっちゅう、村をおそっては、人を喰っておったそうな。


喰わせろ!


ついに、たまりかねた村人は、毎年イケニエの人間を差し出すから、
どうか村じゅうの人間を襲うのはやめてくれと申し出た。

鬼は、竹槍でつつかれながら、ひとりひとり追いかけ回すより、
ラクだと思ったのかどうかまでは、わからんがのう。
毎年、若くてきれいな女を差し出すなら、ということで話は決まった。

それから、村の衆は毎年、ひとりずつイケニエをささげてきた。
少しでもおくれると、鬼が暴れて、何十人も犠牲者が出るでのう。
ウルトラマンも孫悟空もおらなんだから、しかたなかったんじゃ。

ことしは、仁緒という娘の番じゃった。
それは、たいそう美しい娘で、村一番の器量よしとの評判じゃった。
仁緒には、将来を誓った若者がいたんじゃが、これが青びょうたんでのう。
鬼退治どころか、ただ、おろおろと泣くしか、能がなかったんじゃ。

鬼が相手では、逃げて逃げきれるものではないでの。
しかし、仁緒だって喰われとうはない。 必死で生き延びることを考えた。
まず、いのししやら、野菜やら、酒をごっそり用意して、
鬼のすむ山に向かったんじゃ。




「むほほ、来たか。 よしよし、こっちゃ来い」

舌舐めずりする鬼を横目に、あたりを大げさに見回した仁緒は
「鬼さん、こんにちは。
 ずいぶんと汚いわねぇココ、これじゃモテないわよ。
 あんた、童貞でしょ!」

いきなり突っ込まれた鬼は、思わずギクッとした。
今までのイケニエどもは、口もきけずに震えておったでの。

「な、なんじゃオマエは」
「やっぱりね。 恋のひとつも知らないなんてっ」
「はぁ?」
「はー、じゃないわよ。 あんたそれでも鬼なの?
 そんな大きな図体して情けないわね」

予想外のきびしいツッコミに、鬼は真っ赤になったそうな。
「やっぱりそうなのね。 あたしが教えてあげるから、そこに座りなさい!
 まずは、テーブルマナーからよね」

仁緒は、用意してきた食材で、手際よく猪鍋を作った。
いままで嗅いだこともないうまそうな匂いに、鬼はがつがつとたいらげ、
風呂桶のような大鍋をカラにしたそうな。

「ダメね」
すかさず、仁緒が突っ込む。

「もっと、上品さってものが、必要なのよ」
「ぐっ、なんだと」
「知性と教養が必要だって言ってるの! あんたのは痴性と狂養」
「はぁ?」
「はぁ、じゃないわよ。 あんた、字は書けるの?」
「バカにすんな。 こう見えても俺はインテリなんだ」

「じゃ、ラブレター書ける? 書いたことある?」
「うっ」
「だから、あんたはモテないのよ! 一生、童貞のままで死にたいの?」
「いや、その」
「あたしが教えてあげるから、ほらっ、エンピツ持って!」

腹一杯になった鬼は、食料にするはずじゃった仁緒に、
交換日記を書かされることになったそうな。





第2章 っ込む仁緒

先手を取られ、痛いところばかり、ずけずけと突かれた鬼は、
取って喰うどころか、ひとことも、言い返せなかったんじゃ。

腹が減って気が立ってくるたび、うまそうな料理が、さっと
出てくるから、さしもの鬼も、仁緒を取って喰おうとはせなんだ。
あたりまえじゃが、そのへんの鹿や熊を、とって喰うよりはるかにうまいんじゃ。


がお~、喰うぞ!


仁緒を喰う気満々の鬼じゃったが、だんだん殺すのが惜しくなった。
もっともっと、うまいモノを食いたい、というのが本音じゃろうな。

おまけに、自分の知らないことをどんどん教えてくれるから、
利用価値も高いわけじゃ。
口の悪いのが、少々むかついては、おったがの。

「あんた、好きな子はいないの? 告白したの?」
「い、いや、その...」
「やっぱりね。 そのかっこじゃ、相手にもされないわね」
「これは、中国まで出かけて仕留めたトラの皮だぞ?」
「これだから、ダメなのよ。 センスないわ」

もう、このころになると、完全に仁緒のペースなんじゃが、
仁緒とて、油断はでけんでの。
うっかり、食事が遅れようものなら、自分が取って喰われる。
味が悪ければ、これまた喰われる。

仁緒は、しゃべりながらも、必死に食事を用意しておった。
気丈に振る舞っておったが、内心、いつ喰われるか、いつ喰われるか
と、ビビりまくっておったんじゃ。
ボロが出れば、即、鬼の腹の中じゃからな。

鬼の住む洞穴の奥には、金銀財宝があるというが、
ここにはそんなものはない。
わけの分からんガラクタばかりじゃ。
じゃが、その中に、伝説の「打ち出の小槌」があることに
仁緒は気がついておった。


「このトラの毛皮のどこが悪い?」
「は~、だからあんたはモテないのよね~
 たまには、羽織ハカマでも着て、ビシッと決めてみなさいよ」
「そんなもん、あるか」
「あんた、打ち出の小槌を持ってるんでしょ、
 それで、ちゃっちゃと出しちゃえばいいでしょ」

「うーん、それがなぁ」
「なによ?」
「あれは他人に振ってもらわんと、ダメなんだ」
「へ?」
「着るものは、誰かに頼んで、振ってもらわんと」

鬼は、あんまり頭が良うないでのう、応用ちゅうもんが利かん。
振りだしておいて、それを拾って着ればすむことなんじゃが、
昔ながらの使い方しか覚えておらぬ。

「じゃ、あたしが振ってあげるわよ」
「だめだ」
「なんでよ?」
「あれは、ものを大きくしたり、小さくしたりできるから」
「それで?」
「もしオマエが、俺を縮めると困るからな」


「それって、一寸法師の逆よね?」
「そうだ」
「だったら、何回も振らないと小さくできないんでしょ?」
「あ、そうか。 30回は振らんとな」

やっと、打ち出の小槌の欠点を思い出した鬼は、
急に乗り気になったそうな。
妙なマネはするなと、念を押してから、小槌をよこした。

「おっしゃ、りっぱなのを着せてみてくれ」
「じゃ、いくわよ。 上等の着物よ出ろ~」



仁緒もバカではない。
下手な武器など出しても、鬼には通用しないことくらい、
百も承知じゃ。 素直に羽織ハカマを着せてやった。

「あら、見違えるじゃない」
「ん? 何も変わらんが?」
「バカね。 今、姿見を出してあげるわよ。 鏡よ、出ろ~」
「おお~っ!」
鬼は、初めて見る己の盛装に、目を見張ったそうな。

仁緒の頭は、フル回転を始めた。
今まで、さんざんケナしておいたのは、このための
いわば、布石。

「いいじゃない、いいじゃない!
 かっこいいわあ。 鬼さんすてきよ」
「ん、そうか?」
「扇子もあった方がいいわね。 扇子、出ろ!」
「おお、そうか」

すっかり調子に乗った鬼は、さらにポーズをつけ、
右から左からと、鏡に映った姿を夢中になってのぞき込んでおった。


その時!

そっと、死角に回り込んだ仁緒は、鬼に向かって小槌をひと振り。









第3章 アメリカン・ショートヘア

だいぶ、昔の話じゃでの、思い出すのに苦労するわい。
どこまで、話したんじゃったか...。

おお、そうじゃ。
鬼が、鏡に見とれているスキに、打ち出の小槌を振るところまでじゃったな。

この小槌は、何でもアリの神具での。
振る時に唱えた言霊が、そのまま実現するんじゃ。
じゃが、サイズを縮めるには、何回か振らねばならん。

ただの一度でも振れば、鬼に気づかれてしまうから、
二度振る余裕はないんじゃ。
たちまち喰い殺されるからな。

長い言霊もだめじゃ。
唱えている間に気づかれる。
だから、仁緒は必死で考えた。

心臓がバクバクする。
小槌を握る手が汗ばんできた。

チャンスは今! この1度きりしかない。
しくじったら、死ぬ!
相手は鬼だ。


妙な気を起こすなよ!











 気力をふりしぼって、唱えた。














 子猫になれっ!










そしたら...



こーんな、大鬼が...


いっぺんに...


しゅるしゅる...


しゅるしゅる...



しゅぽんっ!



こうなった...


仁緒は、その場にへたりこんだ。
やっと、喰われる心配がなくなったんじゃ。

しきりと手をかじる子猫の頭に、ぺしっと一発くれて、
ふところにしまい込むと、山を下りることにした。
仁緒はネコ好きだったんじゃ。
もちろん、二度と鬼に戻らぬよう、小槌を振っておいたことは言うまでもない。

ちゃんちゃん。

      .
      .
      .
      .
      .

実は、これには後日談があるんじゃ。

仁緒は、持ち帰った小槌のおかげで、金持ちになった。
そして、自分を助けに来てくれなかった、青びょうたんとの婚約を解消して、
連れて帰ったネコと暮らすことにしたそうな。

例の鬼との交換日記は、雷鼓巣日記として評判になり、
のちに、市町村合併で落天村に吸収されてからは、
落天日記として有名になった。

子猫はどうしたかって?
珊瑚と名付けられた、もと鬼ネコは、トラ皮にこだわっていたせいか、
シマシマ模様が美しかった。
これが、米国短毛猫という種類の祖先じゃ。


もとバカ鬼だったので、バカ珊瑚とか、
バーニャン珊瑚とか呼ばれたが、
これが、バーニャン3号と関係あるかどうかはわからん。

ただ、バーニャン3号は、落天日記に移した雷鼓巣日記も
バックアップできるそうじゃ。 作者は保証しとらんがの。
雷鼓巣村出身のものが、試してみたらうまくいったそうじゃ。

※この物語はフィクションです。

【バーニャン3号、ユーザの声】
海獣トドさん、こんにちは。仁緒(仮名)です。
「全日記採取」では楽天広場開設月の頭から
最新までが、自動で取れてましたけど
「全日記採取」のチェックをオフにして
日記の一番古い日付から楽天広場開設の前日までを
指定したら、ライコスから持ってきた分どころか
楽天広場に来てから書いたライコス以前の日付のも
ばっちしバックアップ出来ましたぁ!
ISDNなんで13時間半かかったけど(爆)。
↑ライコスから移行してきた人が買う時
教えてあげてくださいな~~♪
楽天広場開設前、開設後、で
とりあえず、2つのフォルダに取ったんで
次は、日付指定で年度別に元旦から大晦日まで
取っとこうかな~~?と思ってますにゃ。
ホント、便利&楽しいですね~。
いいソフトをどうも有難う御座いますぅ♪


※村長追記 バーニャン3号はブロードバンド用です。
 ISDNではしんどいと思います。



【ダウンロードページ】
・楽天日記専用バックアップツール、バーニャン3号のサンプル版、
 「バーニャン・ミニ」のダウンロードは こちら。
・にゃんタグのサンプル版は、 このページ の中段付近。
・バカネコ・ビューアのダウンロードは ここ。

日記保存用 バックアップツール  →  バーニャン3号


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