New Zealand 虹の立つ国へ

■第２５章　『新しい生活ー1』

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第２５章　「新しい生活ー1」

クリスマスのBoxing　Dayにオークランドに到着した我が一家は、クリスマスが開けるのを待って家具の買出しに行く。
とにかく、家は借りたものの買った家具と言えばベッドだけで家はガランドウ。
家具はラウンジに置く応接セットと６人掛けのダイニングセットを　そして電気製品は全て買い揃えた。
家具は足りないものもあったが、あとは様子を見ながら追々揃えてゆく事にする。
日本からの荷物が届くのもまだ先の事でもあるし、それ到着してからでも遅くはないであろう。

あっと言う間に月は変わり一月も中旬、日本の義父から突然電話が掛かってくる。
長年に渡って自分がマレーシアの取引先と築いた信頼関係を使って、　マレーシアで船の集荷代理店を始めるので一緒にやらないかと言う誘いの電話であった。

ここで父上の事について触れておく事にしよう。
さもないと後の話が判り辛いと思う。

父上は当時既に現役を引退されていたが、日本海運界の近海、南洋材輸送おいては、近海にその人有りといわれ、知らない人が居ないと言われる位に有名な御仁であった。
当時からマレーシアとの太いパイプを築かれていて、運賃同盟とその荷物の輸出国であるマレーシアとの架け橋的な仕事もされていた。
一方、私が勤めていた会社は、遠洋・近海と両方の分野でさまざまな会社の代理店業務・船舶運行業務を行っていた。

とくに近海の南洋材輸送に関しては、当時は日本船主で作る同盟、そして我々独立系船主が作る非同盟が常に積み取りシェア争いを演じていた。
そして私の居た会社は、　その非同盟グループの中心的存在でもあった為、同盟側におられた父上が自分の娘を　いわば敵のような立場（非同盟）に居る男のもとへは嫁にやれないと言われたのである。
まあ時代掛かったといえばそれまでだが、ご当人は極々真面目に考えておられたらしい。
まだ、父上が現役だった頃に、私はワイフと知り合い結婚するのだが、当時は彼の立場ゆえに　私はワイフとの結婚を強く反対され、一年半ほど面会禁止のち（勿論隠れて会ってはいたが）結婚の承諾を得ないまま最後にはワイフが大阪の家を飛び出し、駆け落ち同然で私と結婚した。
結婚するまでに２年近く、結婚後も３年間ワイフの実家とは行き来がなかったが、ご両親も孫の顔を見てからはやっと雪解けになり、NZに移住する頃には　既に書いたような普通の状態になっていた。
ただ、我々の結婚を機会にご自身は現役を引退されたのは、やはり世間をはばかっての事であろう。

その父上が長年に渡り独自に築いたマレーシアとの太いパイプを元に、引退後の仕事としてもう一花咲かせたいと言われるのである。
無論、当時の私はまだ無職であったし、仕事を探していたのも事実である。
父上も私に仕事が無い事を心配されて声を掛けていただいたのだとは思うが、やっとNZで家族と一緒に生活できるようになった今、また家族と別れて暮らすのかと思うとやりきれない気持ちであった。
とりあえず、返事は保留させて頂きワイフと良く相談する事にする。

この仕事を請けるにあたっての問題点は二つ。
１）再度家族がバラバラになる事。
２）日本と違い環境も異なるNZでワイフが一人で何処までやれるか。
（最初からマレーシアには家族を連れてゆくつもりはなかった。
これは行く先の環境によるものであったが。）
特に２番目は小生もかなり心配していた。
しかし、結局背に腹は変えられず、引越し荷物が届いて一段落してからマレーシアに向かう事にする。
ワイフも私が見ず知らずの会社で働くのなら心配であっただろうが、父上と一緒と言うことで私もかなり自由が効くので安心したらしい。

我ながらあきれるが全く腰が落ち着かない人間である。

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