ヒロガルセカイ。

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柊リンゴ

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2006/12/01
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分かれてから、もう1時間近く過ぎているはず。

螺旋階段を駆け下りながら、嘘であってほしいと願います。
宇佐美は来夢を知らないはずだし、来夢だって・・!
息を切らせて通りに飛び出した章に、マンションの塀の上から声がしました。

「あのひと誰?」
どうよじ登ったのでしょう。
自分の背丈よりも高い目隠しの塀の上に、来夢が座っていました。
「そんなところで何してんの!」

「あのひと、どこかで見たことがあるなあ・・」
「来夢!危ないから降りておいで?」
「降りれない・・」
泣き出しそうな声でした。
たしかに足場が見当たりません、「どうやって登ったの」
「さっきまでそこにバイクが止まってたから・・」
「それで登れたの?」
章は足跡のついたバイクの持ち主に申し訳なく思いました。
暗いから気がつかなかったかもしれませんが、これではネコと同じです。
後先考えずにどんどん上に登っていって、降りれなくなって鳴く。
昔飼っていたネコもそうでした。

章も脚立を持ち出して下ろしてあげたのです。
「ここに脚立はないだろうな・・」
章はつま先立ちで、手をうんと伸ばして言いました。
「飛び下りておいで。怪我させないから!」
「・・ほんとに?」

飛び下りたら受け止める前に章が道路に倒れるでしょう。
章もそれは覚悟のうえです。
自分のせいだから、怪我してもいい。
来夢には怪我はさせない、俺がクッションになれば大丈夫のはず。
章は恐る恐る指を触れてくる来夢に、微笑みました。
足から降りるかと思いきや、バランスを崩したのか、ずるっと背中から落ちてきました。
章はネコを抱きかかえるつもりでしたが・・いくらなんでも。
来夢を抱えたまま、道路に倒れました。
「章?」
来夢は無事のようです。
章は肘を打ちましたが、気づかれないように起き上がりました。
「ごめんね」
「どうして謝るの」
来夢はきょとんとしています。
「俺が何をしているのか心配だったんだろう?ちゃんと話しておけばよかった。
別に隠す必要もないのに」
章は頭を下げました。
「隠さなくていいひとなんだね?」
来夢は章に抱きつきながら聞きます。
「来夢、ひとが通るから、ここ!」
章は慌てますが、離そうと触れた来夢の冷たさにびくっとします。
「寒かった。ずっと、・・ふたりで降りてきたらどうしようかと思ってた」
頭をごしごしとこすり付けてきます。

「もう・・終っちゃうのかと思った!!」

涙声でした。
どれほど不安にさせていたのでしょうか。
携帯にも出ない、メールが来ない、そんな小言を言いながら本当は心配で仕方なかったのでしょう。
気持が通じてから半年、クラスも部活も一緒にいるのに不安な気持にさせていたなんて。
そんなに好きでいてくれる。
章はしゃくりあげる来夢を抱き締めながら、「ごめんね」もう一度言いました。


手を繋いで帰り道を歩くふたりは黙ったままでした。
来夢を送るつもりでしたが、詳しい家の住所を知らないので歩くしかない。
バスでもあれば・・と思いながら・・。
鼻をぐすぐすさせながら、「おなかすいた」
来夢が空腹を訴えました。
「何か食べていく?」
「ピザまん」
コンビニは、さっきのマンションの前まで戻らないとなさそうですが・・。
「この先、コンビニある?」
「ない」
「え~?」
ひきかけた章の指に、ぐいっと力がこめられました。
「泊まりたい」

「え?」
「あそこまで戻ったら、章の家はすぐ近くでしょ?・・ダメかな」
「今日は・・親がいるんだけど」
セックスはできない、それを暗に伝えますが
「声を出さないようにする」
言いながら章の手を自分の頬に当てました。
「このままじゃ寒くて眠れないもん」



→→次は15禁です。

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Last updated  2006/12/01 05:10:13 PM
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