ヒロガルセカイ。

ヒロガルセカイ。

PR

Profile

柊リンゴ

柊リンゴ

Calendar

2008/10/12
XML
今日は月曜日だよな? 


普段は賑やかな駅前も閑散としている。
枯葉舞う静かな通学路を歩きながら何かがおかしいと感じて携帯を取り出し、日付を見ると愕然とした。

(日曜日だ!) 

間違えて日曜日に登校するなんて、下手を打った。
高二にもなってこの体たらく。
こんな間抜けな姿を誰にも知られないうちに早く帰ろうと踵を返すと、誰かの胸元にぶつかった。



顔を上げるとアイアングレーのジャケットにモカピンクのシャツ、そしてドットのネクタイを締めた若いお兄さんが立っていた。

「きみ、大丈夫?」

流行のエアリー感のある盛った髪型と、涼しい目元、そして手入れされた眉毛に俺は怖気づいた。水商売の人に違いない。

「だ、大丈夫です。すみませんでした!」
俺は深々と頭を下げると駆け出した。


(きっと、何処かの店のホストだ。こんな朝早くにいるなんて!)


少し低めの声だった。
それに鼻筋のとおった端整な顔立ちで、朝帰りのホストにしては珍しく髭が処理されているから清潔感があって、良い香りがした……。

(今頃、あのホストは俺を不審に思っているだろうな。日曜日に制服を着ているから)

パパーンとクラクションの音で気がついた。
 僕は赤信号の横断歩道を渡ろうとしていたのだ。

「あ、あぶな……」

命拾いをしたが、急に走ったので息が苦しい。

俺は先程のホストが気になって、注意力が散漫になっていたのだ。

俺が通う高校は駅前にあるせいか、歓楽街が近くにあり、ガムを噛みながら歩く髭の伸びたホストなら通学途中に何度も見かけたことがあるが、先程のホストは清潔感が漂っていた。
朝帰りにしてはちゃんとしたスーツ姿で、髪もみだれていなかった。
休日は朝から営業するのだろうか、大変な仕事だなと思っていると、握ったままの携帯が鳴り響いた。

「わわ」

バイブ機能にまで驚くなんて、今日の俺は怯えすぎだ。
胸に手を当てて鼓動を落ち着かせながら着信を見ると馴染みの店の店長からだ。
こんなに朝早くからどうしたのだろう。

「……はい、蒼空(アオイ)です」

息を整えながら出たが、店長は無言だ。
いつもなら『アオイちゃーん』と、気味の悪い裏声を使うくせに、おかしい。

「もしもし? 店長、どうしたの?」
『西野蒼空くんだね?』

店長ではない、知らない人の声がした。
瞬時にヤバイと判断して携帯を切ったが、俺の手首に何かがカチャンと掛けられた。

「えっ?」
 手首を見ると銀色の大きな輪が掛けられ、太い鎖がしなる。

「何だ、これ!」
 ドラマで見たことがある手錠にそっくりだ。
鎖の先を目で追うと、誰かの手首と繋がっていた。
袖はアイアングレー。
もしかしてと顔を上げると、先程ぶつかったホストだ。


「ようやく確保―」
「確保?」

「西野蒼空くん。きみがとある店で要らないものを処分していた件で話が聞きたいので、同行して貰えるね?」
 この人はホストではなかったのか。まさか警察? ではこの手錠は本物なのか? 

俺は何も悪いことをしていないし未成年に手錠をかけるなんて尋常ではない。
第一、逮捕状を見せずに身柄を確保するなんて、常軌を逸している。
いきなり犯罪者扱いなのか。

「あなたは誰ですか! これを外して下さいよ!」
 見上げたまま叫んでも、ホストなのか警察なのかわからないお兄さんは首を振った。

「そんなに目を三角にして怒ることも無いだろう。私は藤江陽斗(ひろと)、見たままの職業」

「はあー?」
 それがわからないんだけど。

「手錠は外せないね、きみは走るのが速いから逃亡の恐れがある。また逃げられたら面倒なので」
 微笑んだ藤江さんの片手には見覚えのある携帯があった。
男のくせに女子高生を真似てクリアなラインストーンを貼り付けた派手なキラキラデザインのデコ携帯は間違いない、馴染みにしている店の店長の携帯だ。

「どうしてそれを持っているんですか?」
「きみを捕まえる為に、とある人からお借りしたんだよ」
 では、本物の警察か。あの店にガサイレが入ったのか……。

「西野蒼空くん。では任意同行願います」
 そういいながら俺の襟首をぐいと持上げた。
 身長差があるので爪先立ちにされてしまう。

「ちょっとー!」
「何?」
「任意同行と言いながら乱暴は止めて下さい。大体、俺は何も悪いことをしていませんよ」

すると藤江さんが不意に顔を近づけた。
鼻の頭が触れそうだ。
「ち、近い!」
「悪いことをしていないだって? おかしいね」
「何が?」

「蒼空くんって、一風変わった店に、下着を売っているんだろう? しかもきみが履いた後、つまり使用済みの下着を……」

「言うな!」

言葉を遮り、藤江さんの胸を拳で押した。
ようやく襟首を放されたが、顔から火が出るかと思った。

「……言わないでください。人権侵害です」
「へえ、人権ねえ? 悪いことをしているのに権利を主張するのか。小賢しいね、最近の高校生は」


2話に続くのだ。



●拍手をありがとうございます●

びっくりしました、ありがとうございます!
「恋情」は去年書いたのかな…このブログを休んで、BL誌に初投稿したんです。
結果は…だったからここでUPしたんですが。
今、見てみると爪が甘くて反省しきりだけど、
よく動いているな―と思ってしまいました。だめじゃん。

「ゴカン。」は今年書いた分かな―。
また、読んでいただけると幸いです。








お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2008/10/12 09:00:52 AM


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: