ヒロガルセカイ。

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柊リンゴ

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2016/06/28
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お昼になり、お弁当箱を開けたらご飯が入っていなかった。


サニーレタスに包まれるように2口で食べられるようなコロッケがこれまた6つも入っていて、
フルーツトマトや黄色いパプリカ、ツナとマヨネーズで合えたブロッコリー、
ハムで巻いた甘そうな卵焼きに別添えでゴールドキウイ。
自らの女子力を試しているような可愛らしい色合いだ。

いつもは何も感じず、ただ黙々と消化していたのだが、
今日は感謝しなければならないなと強く思う。

僕の食欲を満たすよう、



しかし今日も量が多い。

さて、どうしたものか。


「綺麗だな。自転車の前かごに載せていて、よくぐちゃぐちゃにならなかったね」

その声にどきりとした。見上げるとやはり颯秩だ。

「朝さあ、すれ違ったくせに。挨拶くらいしなよ。おはようって言うのは、1日の始まりだ。
爽やかでいいことだと思わない?」

僕の机に両手を置いて目線を合わせようと覗き込む颯秩が責めているのか呆れているのかわからない。
心や気持ちは掴めなくても、ただ、体の距離の近さに何故か胸が高鳴る。

「颯秩、あのさ」
「ん?」

表情は穏やかだ。



「いや、怒っているのかなと」
「怒らないよ。どうしてそう思うかな。
ただ、壬の後ろ姿が逃げているみたいで気になった。
何だろうなあ」

逃げている・か。

僕は友人に囲まれた颯秩に嫉妬したのかもしれないのだ。

まだ僕はこの気持ちが理解できない。
何故、こんなにもやもやとしているのか。
そして昨日初めて声を聞いた、
初めて並んで歩いたこの颯秩を意識するのは何の意味があるのか。


「お弁当、食べないの?」
「食べるよ。だけどご飯が無いなと不思議に思っていたところで」
「へえ?」
颯秩がまじまじとお弁当を観察する。

「お。もしかしてライスコロッケ? 1つ食べていい?」
秩颯は僕がコロッケだと思ったそれを口にして頷いた。
「凄い。中にチーズが入っている。美味しいなあ」

「えっ? コロッケと違うの?」

「ライスコロッケだよ。チキンライスを丸めてコロッケみたいに揚げたもの。
手が込んでいるなあ、本当に」

わざわざチキンライスを作って、それを揚げたのか。
母さんが早朝からそんなことをしていたなんて知らなかった。

「息子として愛されているなあ」
「そうかな」
母さんはただ料理が好きなだけかも知れない。

「人からの愛情を認めないな。他に愛されたい人がいたりするわけ?」
「愛は知らないよ。恋なら人並にしてきたけど」

「ふうん」

このはぐらかすような態度。

僕は颯秩が馬鹿にしていると思った。
思わずその顔に両手で触れ頬をぐいと押してやろうとしたとき、
指に触れた髪の柔らかさにまるで体に電流が走ったかのように痺れてしまった。

もう動けないはずなのにじわりじわりと顔を近づけてしまう。

「鼻、当たってる」

息がかかる距離だった。

「あっ、その、あ」

「強引に来ておいて尻込みするなよ」

まるで引力だった。
僕は飛びつくように颯秩の唇を吸い、そして舐めた。
人の肌はこんなに温かく、そして唇は柔らかいものだと初めて知った。
もっと深く入りたい。
知りたい。
でもどうしたらいい? 僕は衝動におされているだけで知識も何もない。

すると僕の中に颯秩の舌が入り込み、歯列をなぞると僕の舌を探り出した。
読まれているのか?
いや、受け入れられたのか。


僕は、いけないことをしているのか。


違う。


僕たちを見て教室内は蜂の巣を突いた騒ぎになったようで耳の鼓膜が刺激される。
耳に入ってくる喧噪、だけどもう衝動が止められない。
颯秩を巻き込んでしまった罪悪感はあるが、
僕はおかしいかもしれない。

一緒にいてほしいと、
僕だけを見ていてほしいと願ってしまっているのだ。












●雨、止まないかな●

新品のレインブーツを履くのが楽しみでもあるのですが


あれですね
とまらないですね
書きたいものって、やっぱりそうくるかという感じです







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Last updated  2016/07/01 02:27:44 AM
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