Everybody needs a little sunshine

purplemoon

Everybody needs a little sunshine

あたしの親父は

十数年前あたし達を捨てて出て行った

「自分の誇りのために生きる」

そんな言葉を残して

仕事、女、金

彼の関心はこれしかなかった

あたしは彼に愛されたかった

あたしが手に入れることのできなかったもの・・

それは父親の愛情

切望してもその望みは叶わないと分かった時

愛情は憎しみに変わり

憎しみは諦めに変わった

あれから十数年

親父が電話をかけてきた

「いきてんのかよ、ぼけ」

「まあね」

「お前男いんのかよ」

「いるよ、腐るほど」

「男経験どれくらいあんだよ」

「数え切れないほど」

「最低な女だな」

「あんたの子供だからね」

あたし達はそんなくだらない話をしていた

何を話していいか、お互い分からないのだ

あたしが何人の男と寝て

それが殆ど黒人で

今まであんなことこんなことやってきたこと

そんなくだらない事を話していた

親父と娘の会話とは思えない内容

「俺は、誰にも文句を言われる筋合いなんてない

自分の会社もここまで大きくしたし

誰の力も借りずやってきた

人の数十倍働いてきたからな」

「親として、夫としては失格だけどね」

「子供は勝手に育つんだよ、ぼけ

男は自分に誇りのために生きるもんなんだぜ」

「あんたには人の心がないの?

家族捨てて・・家族ってそんなもんなの?

一人で何でもやってきたのは尊敬する

でも心の支えになるものがないなんて哀れだね」

「生意気なこと言ってんじゃねえよ、タコ」

あたしは泣いていた

だって、あたし親父に愛されたかったんだ

愛してるって言われたかったんだ

「泣いてんのか?」

「泣いてなんかない」

「家族ってそんなに簡単に捨てられるもの?あたしのこと愛してないの?」

「お前は何も分かっちゃいねえな

いいか、よく聞けよ

俺とお前は嫌でも血が繋がってんだ

俺とお前は親子なんだぜ

分かるだろ?」

「わかんないよ」

「俺とお前は何が合っても気っても切れない縁なんだよ 血の繋がった親と子なんだよ 分かるか、この意味?」

「何となく」

これが親父にできる精一杯の愛情表現なのか・・

その後、あたしと親父はくだらない会話をした

身のない会話

「有難う」

最後にそう言って親父は電話を切った

あたしは電話を握り締めたまま暫く座っていた

涙が落ちていくのも気にせずそこに座っていた

きっと、親父も寂しかったんだろう

強がって意固地に生きているあの親父も

心を明るくする何かが欲しかったんだろう

娘との会話

娘の涙

娘の屈折した愛情

きっと親父の心には光がさしてるだろう

あたしの心に光がさしてるのと同じように

「愛してる」

の言葉がなくとも

いたわりの言葉がかけられなくとも

あたしと親父は確認しあったんだと思う

そこに愛があるってこと

寂しい時は又電話かけてこいよ

人間一人ぼっちじゃ生きていくの、辛すぎるぜ

『Everybody needs a little sunshine』


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