おいしい 千葉 ~ponの食べある記~

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2006.02.12
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その店は千葉パルコの並びにあった。ビルの入口の脇に、そこだけ特別な入り口というように石造りで固められていた。両脇にRのついたガラスがはめられ、中央にやはりアーチ形にゲートが抜いてある。

その外玄関の中には丸いテーブルが置かれている。ランプの燭台が置かれ、淡いブラウン基調のメニューが開かれていた。

(A)\6000
(B)\9000
(C)グルメのための \12000

奥の階段を一直線に降りていくと、店の本当の入口があった。

ローザンヌは思い出が濃いレストランだ。というか、今と違ってフランス料理の店自体少なく、千葉で行くとしたらこの店しか知らなかったのだ。

Hシェフの作る料理は(味は当然のこととして)ビジュアル的にとても優れていた。すっきりシンプルで、コントラストがはっきりしていて、それが皿の上で具現化されていた。具材のならべ方、ソースの配し方、デザートの組み合わせなどに、それらが見て取れた。ベタベタに塗らない。五重の塔のように積みあげたりしない。飴のドームなどかぶせたりしない。でも印象に強く焼きつく。ルネ・マグリットの絵画のようだ、といったら言いすぎか。

メニューも、(AのB)というような、シンプルでよけいな装飾語のない皿がならんだ。

・オマール海老の蒸煮
・トリフのパイ包み
・舌びらめのムニエル
・生ハムのメロン添え

これで充分おいしかった。ほとんど説明文のような長ったらしいメニューが、必ずしもおいしいとは限らないのである。大事な人はここに招けば、まず間違いがなかった。ラフな服装でも大丈夫だったが、私はジャケット姿でしか入ったことがなかった。

電球色の甘暗い光。折り目正しい純白のクロスやナプキン類が、鈍色っぽく染まっている。各テーブルには、また折り目正しい男女が、静かに食事を楽しんでいた。腕時計を見るものはいない。そこには確かに、この店を愛し、この店に魅せられた人々が格調高く集まっていた…。

そんなローザンヌがいつ閉店してしまったのか。記憶は定かではない。ただ、あるとき店の前を通りかかり、あの特別な入口が雑多な廃材品でふさがれているのを見た。いつしか自分もそちら方面から足が遠のき、その後どうなっているのか、確かめていない。

千葉はその後、信じられないほど変わり、あるはずのビルが消え、ないはずのビルがニョキニョキ伸び、モノレールがそれらの間を縫っている。シムシティより劇的な展開だ。

Hシェフが東京のどこかのホテルで仕切っていると、風のうわさで聞いた。だがこれも確かめたわけではない。いつか、あの場所にいた人々が発起人となり、シェフを囲んであの当時のメニューを楽しむ賞味会(パーティー)を催せたら、どんなにか素敵だろうと、勝手な夢を見たりしている。





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Last updated  2007.06.22 13:09:07
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