おいしい 千葉 ~ponの食べある記~

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2007.05.27
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と、少しあいまいにぼかして言った。香穂も、同じようにあいさつしてくる。

「思い返すとおかしくて。じつは今でも頭の中にそのシーンが出てきて、吹きだしそうなくらいなの」
「そうですか」
平静を装って返事した。そのときは別に長くつづかず、そのまま何もなく終わっていた。

その日、残業を1時間半ほどこなしてから私は帰途についた。いつもどおり自宅に帰るつもりだったが。実際私がしたのは、工場から出た車を東京方面にむけることだった。近くのインターから高速にのる。首都高から東名に入った。横浜・町田ICを降りてから16号バイパスのほうに向かう。そのまま直進していけば彼女と入ったモーテルのほうに行く。手前から脇道に入り、陸橋をこえた。

橋のたもとの電話ボックスから、香穂に電話をかけた。すでに夜の9時をまわっていた。
「今、大丈夫ですか」
「平気ですよ。ちょうど自分の部屋にあがって、やっとひと心地ついたところ」
そうそう、と自分口調でつなげてくる。
「さっきまた、何曲か聴きましたよ。○○さんのカセットを」
私はひと呼吸置いてから、彼女の名前をゆっくりと呼んだ。
「これからまた、ボクと会ってもらえますか」
「会うって…まさか…いったい今どこに居るの?」
「そのまさかそのものです」
ボックスの場所をいう。彼女の家から50mほどしか離れていなかった。
「冗談でしょう…本当にそこにいるの」
「まさかの冗談の逆の…まったくもって本当です」
「わかった。わかりました」

彼女は、2日前とは印象がまるで異なるグレー系のコートでやってきた。助手席の窓をコンコンと叩いてからドアを開ける。乗りこむとすぐに発車した。手近なファミレスに入った。2時間ほどそこにいてから、また彼女を家まで送る。

帰り道は横浜経由にした。大黒パーキングで小休止してから、千葉に帰った。家に着いたのは、3時近くだった。

次の日の夜も同じようにして彼女を呼びだし、近くのファミレスで過ごした。その翌日も同じようにした。

切実さをこめて「お願いだから」と彼女がいう。「もう来ないで」という言葉がつづいた。
「私、もう婚約しているんですよ。分かっているでしょう。分かっていながら、それでどうしてこうしてやって来るんですか」
まさにその通りで、それに対して反論ができない。常識中の常識。正論中の正論で、こうしてやってくる自分のほうが100%悪いに決まっている。

それでもその場でことわらず、香穂は顔を出してくれていた。そして、別れぎわにはかならず、到着の知らせを入れてくれるよう告げてくる。電話口のむこうでは、待ちに待っていたようすが手に取るようにわかる。間髪をおかず即座に取りあげてくる。最後の「おやすみなさい」という声には、女性の優しさのすべてが注入されているかのような至上の柔らかさが感じ取れた。





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Last updated  2007.07.07 05:40:11
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