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2016.06.19

『三蔵、妊娠したってよ』シリーズ第七十八段　～内通者～　映画『西遊記之孫悟空三打白骨精』によせて

カテゴリ： ◆映画・TV・華流・韓流・ショービズ

↓前回です♪
第七十七段　～彼に誰が逆らえる？～

★☆★☆
第七十八段

内通者。ジョンの頭に次に浮かんだのはそれだった。

ホワイトは頷いて、深刻な表情を見せた。

君には思い当たる節はあるのかい？

ふたりはぐるりと円卓を囲む兵士たちを見た。

彼等もお互いをじろじろ見ていた。

ジョンとホワイトは自分たちだけが理解(わ)かる目つきで

『誰ひとり、今回の件を知っている者たちの中には

怪しむべき者は居ない』

ということは、

とジョンはホワイトの目の奥を見つめ続けながら言った。

『私も含め全員が怪しいと言うこと』

その言葉に言外の意味を匂わせた。

『全くだ。だが実はおよその見当はついているのだろう？』

ホワイトは声を落とし、そっと言った。

ジョンは眉をひそめた。

彼はそのあからさまな質問に親切な答えを返すつもりはなかった。

『僕は知っている』

振り向くとシアンだった。

一番奥の遠い入口から入って来て、

こちらに向かって歩いてくるところだった。

かつらを除けた頭は純白の長髪が流れるように

ウエスト近くまであった。

あのネクストスタイルだ。

顔はまだ、黒服の双子と同じままだった。

軍服は脱いで、グレーの作業着のようなラフな上下に

薄手の水色のローブをはおっていた。

『誰なんです？初耳だ』

ホワイトは自分とジョンの間に彼を招きながらしらばくれて訊ねた。

ふたりは彼のために腰をずらして、隙間を広げた。

『父だよ』

シアンは腰をおろしながら、誰の眼も見ずに言った。

『殿下』ジョンの心臓が肋骨にぶつかるように跳ねた。

彼は諌めるように低い声を出した。

『滅多なことをおっしゃるものではありません』

『でも、君だって薄々気がついてはいるのだろう？』

シアンは周りを憚りもせずに挑むように応じた。

ジョンは返す言葉がなかった。ただ狼狽を隠した。

見当がついていることと、それを部下や黒服たちの前で

公にすることとは別だ。

シアンの前では特に話題にしたくなかった。

ホワイトが唇を結び溜息を洩らしながら、腕組みをした。

『そうなるとなかなかやっかいな話しだ』彼はなおも白々しく呟いた。

彼もジョンと思いは同じだった。

おいそれとは露わにするべき事柄ではなかった。

今の世界の拠り所にさえなっている

アレク総帥が世界から争いを一掃しようとしている、という共通見解。

それならば我々はそれに従わざるを得ないだろう、、

という暗黙の内の世界の人々の共有意識。

その上にようやくひ弱に成り立っているガラス細工のような

現在の平和だった。

今回の件についての総帥の意図に気がついてからと言うもの、

ホワイトは彼を一層憎々しく思っていた。

あの男の血も涙もない残酷なやり口。

自分の腹心ですら平気で裏切る。

なにをしてくれるのだ。

だが、確かにアレクの身にしてみればスティール家が衰退して、

世界のバランスが崩れることは望ましくない。

できればいつまでもキューザック家とスティール家とは

絶妙にバランスを保ちながら敵対しつつも決定的な争いはなしで、

世界政府を支えていてもらいたいのだ。

どちらか一方が台頭することは避けなければならない。

自分の地位を保持するために。

そして、それはホワイトにとっても今の世界を維持するためには

必要な流血かもしれなかった。いまわしくとも、、、

ホワイトはジョンが音を立てて息を吸い込み、

いらだたしげに、またこめかみを押さえるのを見た。

痛みに耐えて細めた目を暗く光らせ、床に視線を落とした陰気な顔。

並々ならぬ苦労の跡を忍ばせるそげた頬の陰影が

若者らしからぬ厳しい雰囲気を彼に添えていた。

アレクとポールたちの綱の引き合いの中心にいて

今日まで生き延びて来た、それは恐るべきことだった。

ホワイトは

真の彼の姿を知っていた。

彼は今も昔も変わらぬファイターだ。

いや、変わってしまった部分がある。

それは彼が限りある生命を生きているということだった。

かつてこの男は不死身で、恐れるものは何も無かった。

だが今は違う。

彼のその魂の戸惑いが

現在の彼を非常に生きにくくしているに違いなかった。

そしてホワイトはそのジョンの横に座る王子を見た。

ついに出会った恋人。そして仲間たち。腕力に長けた彼等を前に

世界の平和のために力を尽くすにしては

あまりに脆弱に見えるこの男は

あのころと少しも変わらぬ凛とした佇まいで、かつ謎めいており

冷やかな眼差しは虚空を睨んでいた。

つづく

王子仕えるかも加工して1.jpg

↓次回です♪
第七十九段　～使役犬～

下記の

↑
からどうぞ♪

ウィリアム・フォン、馮紹峰、フォン・シャオフォン、ペン・シャオペン　以上全部同じ人（笑）

『三蔵、妊娠したってよ』シリーズ早見表ってことでヨロシク♪

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Last updated 2016.09.09 15:07:06

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すみれゆきの

いつのまにか母娘でやることになったブログです。娘は主に音楽関係を2017.04あたりから担当。 '17.07.22現在『アジアの音楽』『アジア以外の音楽』の両カテ以外の音楽の記事は娘です。私は映画やドラマなどを中心に気功や太極拳などの情報ファッションや猫や人間の健康に関することなどを発信してます。混乱します？そうでもない？娘は几帳面。私はイイカゲン。そんな感じの見分け方で(笑)

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