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2008.02.08
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カテゴリ: ドイツ映画


当時を描いた近年の佳作といえば『シンドラーのリスト』。こちらは、人々が虫けらのように殺され、あまりの冷酷さに再度見返すことが難しいほどの映画でした。
本作はノンフィクションでありながら、映画らしいドラマを演出した、人を選ばない、より幅の広い作品になっていました。それでいて考えさせることができる。


(あらすじ)1942年、トラウドゥル・ユンゲは数人の候補の中からヒトラー総統の個人秘書に抜擢された。1945年4月20日、ベルリン。第二次大戦は佳境を迎え、ドイツ軍は連合軍に追い詰められつつあった。ヒトラーは身内や側近と共に首相官邸の地下要塞へ潜り、ユンゲもあとに続く。そこで彼女は、冷静さを失い狂人化していくヒトラーを目の当たりにするのだった・・・・。


untergang-set.jpgUnterHitlerPeter.jpg




 人類史上屈指の残忍な男に残されている人間性が、見事に表現されていました。秘書のユンゲや恋人には、優しい顔と弱さを見せていたヒトラー。
神経質に怒鳴りちらす、血も涙もない男のもうひとつの一面に、つい引き込まれていきました。
ブルーノ・ガンツの名演がただただ素晴らしいというものあるけれど、人間として好奇心に駆られる人物像であることはたしかでした。
その好奇心でもって、総統の秘書となったのが当時23歳のトラウドゥル・ユンゲ。
地下要塞で過ごした彼女はずっと、大虐殺やドイツ市民の無残な死を、自分と結びつけることができなかった――そう冒頭で証言します。
それでも「若さのせいにしてはいけない」と、おばちゃんになった彼女は締めくくります。半分ドキュメンタリーであるぶん、重さが違う。この言葉の重さは『シンドラーのリスト』で生き延びたユダヤ人が画面に映し出されたのと同じだと思う。



実在の軍人が辿った、たくさんの波乱の生涯や功績や非情さ。事実だと思うからこそ、目を背けられません。
巧みによく描ききっていると感心するのみでした。

残虐さをあえて見せるか、見せないか。見せないで表現するほうがよほど難しいと思う。
いかに死に様が恐ろしくても、あえて見せずに撮る方法を選んだシーンは、絶妙に選ばれていて、監督の手腕を感じます。
観て良かった。恐ろしいなかに、うっすらと横たわるユーモアが素晴らしい。
禁煙である要塞での煙草の扱いかた、乱痴気騒ぎが物語る様も見事です。
監督は『es[エス]』が鮮烈だった、オリヴァー・ヒルシュビーゲル。






原作  ヨアヒム・フェスト 『ヒトラー 最期の12日間』
    トラウドゥル・ユンゲ 『私はヒトラーの秘書だった』
脚本  ベルント・アイヒンガー
音楽  ステファン・ツァハリアス
出演  ブルーノ・ガンツ  アレクサンドラ・マリア・ラーラ  ユリアーネ・ケーラー
トーマス・クレッチマン  

(カラー/155分/ドイツ・イタリア合作/DER UNTERGANG)









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Last updated  2008.02.08 10:45:02
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