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2008.06.25
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カテゴリ: ポーランド映画

第3話 「あるクリスマスに関する物語」


 ―主の日を心にとどめ、これを聖とせよ―





 ヤヌスは新しい家庭を持った今でも、エヴァとの突然の再会に翻弄されます。過去の二人は不倫の関係で、時を経た今さえ、幸せにはなれていません。孤独で満たされていない男女の不毛な関係からは何も生まれない。心から愛を注げないなんて、なんて侘しいのだろう。

クリスマス・イブ、人気の少ない街にタクシーを走らせ、病院や駅を探し周ります。そうしているうち観客には、すべてがエヴァの狂言であると知らされますが、ヤヌスはなにも知らないまま、彼女の孤独に踊らされる一夜を過ごすのです。
ふたりで暮らしているという部屋に通され、過去の恋の回想に沈んだり、家族を思い出して過ちを避けたり・・・。
家族を持ったからといって、人は簡単に変わるわけではありません。過去も現在も、父親としても夫としてもヤヌスは失格です。情けない男。そしてエヴァも、居もしない夫探しを偽って、孤独なイブをやり過ごそうとしただけ。どうしようもない、似たもの同士のふたり。
きっといつまでも滞ったまま、それぞれの場所で生きていくのでしょう。周りを騙して、人を心から愛することなく生きる、それはひとりで居るのと同じ。
この中年の男女の姿は、あまりにも侘しいものでした。



第4話 「ある父と娘に関する物語」
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 ―あなたの父母を敬え―

演劇学校に通う21歳のアンカ(ビエェインスカ)と父のミハウ(ガヨス)は二人暮らし。ある時、父の出張を見送ったアンカは、‘死んだら開けるように’と記された、自分宛ての父の手紙を取り出す。それは15歳の頃からずっとしまってあったもの。出張の時は、父が必ず持って行ったものだった。ついにアンカは封を開いてしまう―――。


この4作目は、とても面白かったです。
仲の良い父娘に突如訪れる危機。きっかけは一枚の手紙。父の封筒には、アンカが生まれて5日後に息を引取ったという母親からの手紙が入っていました。
父が出張から戻ると、娘の様子がおかしい。彼女は封印されていた母親の手紙を、暗唱してみせるのです。

「愛するわが娘へ。あなたの父親は他にいます・・・」

父は驚き、生まれて初めて娘に手を上げるのでした。

その言葉が意味するのは、父が父でなく、娘が娘でない、赤の他人だということ。突如ひとりの男、ひとりの女として、お互いの姿を見る。そして自分の感情におののくのでした。
しかし、うすうすと感じ始めていたのです。娘はひょっとしたら自分の子どもではないと。恋人ができるたびなぜか、父親に対して罪悪感を感じる、と。

育てた者と育てられた者、その間に男女間の愛が芽生えるのは、敬愛する佐々木丸美さんの『雪の断章』と同じでした。家族の愛は時として近親 相姦という倒錯した形に陥ることもあるけれど、この作品の中の感情は純粋で、時には神秘的ともえるような予感めいたものもある、どうしようもない想い。

愛している。それが異性としてなのか、家族愛なのか、区別するのは難しい。
いままでずっとかみ殺してきた感情が、突然許容されても、戸惑うばかりで上手く心を見せられない父娘の姿がとても切ないです。

面白いのは、開封して怒ったはずの父本人が、読まれることを望んでいたということ。
いつも手元に置いていた手紙を、意識して持たずに出張に出たのは、すっかり女性となった娘に対して、なんらかの説明しがたい止められない感情が湧いて、無理にでも親子関係を絶ちたかったからでしょう。
母親の手紙の中身は知らなくとも、血の繋がりがないことを不思議な予感で感じていたからに他なりません。


離れることなどできない深い繋がりがある以上、きっと答えは私の希望的観測どおりであると信じたい。
実はこれも、娘の狂言で、母親の手紙は開かれてはいないのです。
事実は闇に葬られ、親子関係の有無も闇へ―――。

娘役のアドリアーナ・ビエジンスカが、感じやすい年頃の瑞々しい美しさで大変好印象でした。




脚本  クシシュトフ・キエシロフスキ  クシシュトフ・ピエシェヴィッチ
音楽  ズビグニエフ・プレイスネル

(カラー/567分/DECALOGUE)








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Last updated  2009.11.19 21:55:20
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