子育て終了した父親の独り言2013

子育て終了した父親の独り言2013

1 中3の秋 サッカー中に異音





運動器 腰椎椎間板ヘルニア:1 中3の秋 サッカー中に異音

 幸せそうに寄り添う新郎新婦の写真がリビングに飾られている。今年3月、東京都内の総合卸商社で働く横浜市の石黒弘二(いしぐろ・こうじ)さん(33)は結婚した。その2カ月ほど前、石黒さんの下半身に激痛が走った。救急車で病院に運び込まれた。持病だった腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニアが再発していた。急きょ手術を受け、なんとか、結婚式を挙げることができた。

 引っ越しも済ませ、「やっと、落ち着いてきました」。

 ヘルニアの始まりがいつだったのかはよく分からない。ただ、最初に腰を痛めたのは中学3年生の秋だった。サッカー部の練習中に仲間とヘディングで競り合っていた。跳び上がり、先に着地した石黒さんの背中に、チームメートが落ちてきた。

 「ブチュッ」

 体の中で嫌な音がした気がした。下半身に力が入らなくなり、四つんばいでグラウンドを出た。30分くらい横になって、帰宅した。

 放っておけば治ると思っていた。しかし、その夜、右のおしりの真ん中からふくらはぎが、長時間、正座をした後のようにしびれ始めた。気になって眠れない。しびれは、1週間たってもおさまらなかった。

 整骨院に通い、体を上下に引っぱる牽引(けんいん)療法や電流を流す施術を受けた。そこで「たぶんヘルニアだろう」と言われたことを覚えている。初めて聞く言葉だった。「けがの一種かな」。スポーツにけがはつきもの。それほど気にもとめなかった。1年半ほど通院するうちに、しびれはずいぶん軽くなっていた。

 子どもの頃から駆け足が得意で、サッカーでは攻めから守りまで、どのポジションもこなした。だが、あの「異音」の日から、腰の不調は完全には消えなかった。

 全速力で走ろうとすると、右側のおしりのあたりが痛がゆくなる。試合の後には激しい痛みが1週間ほど続いた。お尻からふくらはぎ、腰までがジンジンと痛む。足を引きずるようにして登校。教室では重心を左側に移し、イスに防災ずきんをはさんで座った。

 いくつか病院を回ったが、どの医師も「様子をみましょう」としか言ってくれなかった。やがて、「これは持病」と痛みを受け入れるようになった。気長につきあおう。10年後にでも、何か画期的な治療法ができるといいな。その時はそう、考えていた。(鈴木彩子)

===抜粋終わり===


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