2005/05/18
XML




金剛流 『頼政』(以下、敬称略)  
  シテ 松野恭憲   ワキ 植野隆之亮   アイ 茂山宗彦
  大鼓 谷口有辞   小鼓 成田達志   笛 竹市 学  


[あらすじ]
一人の僧(ワキ)が京都から奈良に向かう途中で景勝に見とれていると里の老人(前シテ)が来て僧にあたりの名勝を教えます。
そして平等院に誘い、ここは源三位頼政が武運つたなく戦死した地で、今日がその命日となっている事。
自分がその頼政の霊である事を告げて消えうせます。
〈ここでシテは、中入り〉
僧が哀れな頼政の霊に弔いをしなければと思って居る所へ、里の者(アイ)が現われて、源三位頼政と平家との戦いを語って聞かせます。
頼政は「もはやこれまで」と覚悟し、平等院の芝に扇を敷き、その上で自害したという事でした。(アイ退場)
僧が頼政の霊の為に読経をし、仮寝をしていると法体の身に甲冑を帯びた頼政の亡霊(後シテ)が現われ、挙兵した時の様子から説き起こし、宇治川での決戦、敗色が濃くなると辞世の一首を詠じて自害した事を語り消えうせる。
辞世の一首 『埋木の 花咲くこともなかりしに 身のなるはては あはれなりけり』


私が生で見た2回目のお能。
前の「道成寺」の時は、能の見方を良くわかってなかった気がする。
前シテの動作が遅くって、いつ終わるんだろう。。ってそんな事ばかり考えてたと思います。
そのスローな動作で見せている光景や気持ちを理解してなかったよなぁ。
でも、今回の「頼政」は、ワキとシテのやり取りがとてもよく分かって、幽霊になってまで無念の思いを告げに来た頼政が哀れに思いましたね。
セリフの書いた資料を会場でもらったし、それのお陰なんですけれど。
前シテが中入りしてから、アイの宗彦さんが中央に出て、頼政の話を始めます。
狂言師の声は良いお声ですねぇ。厳しい顔付きにこちらも気が引き締まったりして、思う存分、テレビでしか見た事ない茂山宗彦さんをジックリこの目で見させてもらいました。
いや~それにしても、萬斎さんも小顔だけど、彼も小顔ですよね。
アイの語りで大体のアラスジが分かって、法体に甲冑姿の頼政(後シテ)が出て来た時は、大河ドラマで丹波哲郎さんが演じた「源頼政」を思い出しましたよ。ソックリでした。
宇治川での源平合戦の様子を語る時は迫力ありましたし、最後の扇の上で自害するシーンも、そこに平等院の庭があるようにさえ感じました。

面は「頼政」という特殊面が使われているらしいです。無念と憤りの相を刻んでいて、「頼政頭巾」と一緒にこの曲にだけ使われるそうです。
そして、私がなるほどな~と思ったのは、頼政の辞世の首。
「埋木」という言葉は、彦根藩主だった井伊直弼公と共通するんですよ。
井伊直弼は十四男で、本来なら藩主の地位など無縁の人だったんです。
彼が青年時代を過ごした屋敷を「埋木舎(うもれぎのや)」と言います。
そして直弼もこんな句を詠んでいます。
「世の中を よそにみつつも うもれ木の 埋もれておらむ 心なき身は」
世情からはずれた時を送っているが、このまま土の中に埋もれてはおらんぞ!
ってなところでしょうか。
直弼と縁の地であるからこそ、この首が出てくる「頼政」を選んだのかなと思いました。

大河ドラマ「義経」で丹波さんが迫力ある頼政を演じて下さったお陰で、この曲を興味もって見れてとても良かったと思います。

と、今日は「頼政」のレポだけをUPします。
狂言「棒縛」と 能「葛城」は、もうしばしのご猶予を。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2005/05/18 09:55:11 PM
コメント(8) | コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


Re:彦根城能 『頼政』編(05/18)  
ルビコン さん
つきうささんの感想から、荘厳で夢の中を彷徨う様なお能の世界が浮かび上がってきました。

今まで、狂言の「アイ」っていう役割を知ってはいても、
正直言って漠然としてて良く分かりませんでしたが、このレポを読ませて頂いて、ようやく分かりました。
能の世界へより一層深く導くものだから、狂言師の語り次第で、その世界が印象づけられる大切な役なんですね。

最初は見ていた大河も最近は見ていないので、平家と源氏の詳しい経緯が分かりませんが、ここで勉強させてもらっている、ちゃっかり者です(^_^;) (2005/05/18 10:19:01 PM)

Re:彦根城能 『頼政』編(05/18)  
星の風来坊  さん
今晩は。

茂山家の能舞台は初観劇でしたか、他で観たのと比較しているところにこれまで如何に多くの作品を観て来た豊富なキャリアを感じますよ。 (2005/05/18 10:32:20 PM)

Re:彦根城能 『頼政』編(05/18)  
さるこ0211  さん
すごいです!!
私はまだスローな動作で見せている光景や気持ちを理解出来ないです。。。。
雰囲気として能を感じるのが精一杯です。

テレビで見る宗彦さん、いつもおふざけばかりなんで舞台で演じていらっしゃる姿みるとドキッとします。

つきうささん、あめみこさんのレポ&感想を見る度、「何でここまで詳しく、完璧に書けるのか?!」と心打たれています。
読んでるだけで、自分まで観に行った気分にしてくるほどです。 (2005/05/18 11:21:43 PM)

Re:彦根城能 『頼政』編(05/18)  
りゅう6339  さん
さすが! 見事なレポです
ホントに見に行った気分にさせてくれますね
僕もお能のアイの狂言師の役割が分からなかったけど、やっと分かりました
頼政のお面見てみたいです
このお能の演目だけに使われるなんて珍しいもの見れましたね
次のレポ楽しみにしております (2005/05/18 11:37:22 PM)

☆ルビコンさん  
つきうさ☆  さん
私なんか最近まで、「シテ」「ワキ」「アイ」の意味が全く分かってなかったですよ。
自分が見に行くにあたって、ようやく理解出来た訳です。
「道成寺」のアイは、演技かかってたので、今回の語りだけのアイの役割は重要なんだな~と思いました。
あんなに長いセリフを間違う事なく、それも緊張感を持ってトツトツと語る狂言師って凄いよね~。
普段の狂言の曲とは全然イメージが違うので、アイの萬斎さんを見たいな~って思いました。
感じ的には、岐阜で「平家物語:能登守最後」を披露して下さった雰囲気かしらね。

おや?大河ドラマ見てませんか?
段々、面白くなって来ましたよ。
しかし、あの宗盛はイケ好かんヤツですな~。
毎回、頭をしばきたくなりますよ。
お前が平家をぶっ潰したんだぞー!って言ってやりたいわ。
(2005/05/19 09:55:15 AM)

☆星の風来坊さん  
つきうさ☆  さん
そうなんですよ。茂山家はお初でした。
テレビでは何度か見てるんですけどね、やっぱりライブは違うわぁ。
いえいえ、キャリアなんて何にもないですよ。
ただの知ったかブリです。お恥ずかしいわ。
(2005/05/19 09:56:45 AM)

☆さるこさん  
つきうさ☆  さん
私もほとんど雰囲気しか感じ取れてないですよ。
その奥に潜んでる感情を読み取る技はまだ無いですわ。

アイの時はホントに普段のリラックスした雰囲気と全然違いますよね。
こちらの背筋もピーンと伸びちゃう!
眉間にシワを寄せて。。これまた、凛々しいのなんのって。。
あぁ~。実は、そんな事ばかり注目していたのでした。

こんな中途半端なレポでもよろしいでしょうか。。
もっと、書くことがあったような気もするのですが、もうすでに記憶が。。。
年ですなぁ~。
(2005/05/19 10:00:38 AM)

☆りゅうさん  
つきうさ☆  さん
ありがとうございます~。
りゅうさんって本当に優しいですね。。
能楽には興味なかったと思うのに、狂言に興味を持って下さって、能の感想にも丁寧にレスして下さる。
嬉しいです~。

私もまだまだ勉強途中で、レポ内容も間違った事を書いている可能性大なんですよね。
なので、その場限りですぐ忘れて下さいませね。
(2005/05/19 10:04:31 AM)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: