金剛流 『葛城(かづらき)』 神楽(以下、敬称略)
シテ 宇高通成 ワキ 植田隆之亮 ワキツレ 広谷和夫
ワキツレ 森本幸治
大鼓 谷口有辞 小鼓 成田達志 太鼓 前川光長 笛 竹市 学
[あらすじ]
出羽の国、羽黒山で修行を終えた山伏(ワキ)が大和の国、葛城山へやってきます。
降りしきる雪に行く手を阻まれ困っていると、里の女(前シテ)が現われて、自分の庵で休まれたらいかが?と申し出ます。
山伏達はその行為に甘えて、夜の勤行を始めようとすると、女がついでに加持祈祷をして、自分の三熱(衆生のために受ける神の苦しみの意)を助けてくれるように頼みます。
山伏が理由を尋ねると、女は葛城の神であるが、昔、役の行者(えんのぎょうじゃ)に命ぜられた岩橋を架けなかった為、不動明王の縄に縛られて苦しんでいると言って消えうせます。
(シテ中入り後、正邦さんのアイ語りが始まります。)
麓の男(アイ)がやって来たので、山伏は岩橋について尋ねました。
すると、昔、役の行者が葛城の神に葛城山から吉野山まで岩橋を架けるように命じたのだが、女神は醜女だったので人目に付かない夜にだけ仕事をしていたら、完成が遅い事を役の行者が怒って葛の七宝に縛られたという話をして帰って行きます。(アイ退場)
山伏はその話を聞き、先ほどの里女の話と合わせて奇特な事と思い、夜もすがら女神の為に祈祷します。
すると、その修法に惹かれて葛城の神(後シテ)が現われて、三熱の苦を逃れた喜びを述べ、大和舞を舞い、暁近くになると醜女が恥ずかしいと、岩戸の中へ姿を消してゆきました。
シテは女ですから、頼政とは全然違う見た目で、少し華やかさを感じました。
醜女といいますが、面は穏やかなお顔でとても、醜女に見えません。(っていうか、そういう風に感じ取らなきゃいけないのよね)
山伏役は全部で三人ですが、ほとんど一人が受け答えしています。他の二人は付いてるだけなんですが、ワキ方ってのは「正座しててナンボ」みたいな役なんですよね。
アイ語りの頃からずっと座りっぱなしで、よく足が痺れないな~とそんな所に感心してました。
って、演目と関係のない感想ですね。。
シテが中入りして、待ちに待った正邦さんのアイ語りが始まります。
正邦さんは麓の男役で、お召し物は主の格好でした。長裃姿と言えば、お分かりでしょうか。
時代劇で、お大名が穿いている長い袴。あの姿です。
いよいよ素晴らしい声でアイ語りが始まるわ~と期待に胸を膨らます私。
なのに、なのにぃ~。傾いた日の光が見所(けんしょ)内を照らして、前の人が暑さと眩しさの為にパンフを頭の上に掲げる。
ウギャッ! み、見えないんですけどぉ~~。今、正邦さんは私のド正面にいらっしゃるのよ~。
それをどけて下さいな。。 見えない。見えない。見えないーーーっ!
そ、それに私の席にも光がぁ~~。暑いーー。まぶいーー。 見えないーー。
隣の「臭うおじいさん」はイビキをかきだすし。。。
正邦さんのキリリとしたお顔は拝見出来ないし、全く舞台に集中出来ない事態と相成りました。ガクッ!
「アイ語り」と言うくらいですから、顔を見ずとも、話に耳を傾けていれば済む事なのかも知れません。
しかし、半分ミーハー気分の私はどうしても、正邦さんのお顔を眺めながら話を聞いていたいのぉ~~。
時々、パンフの角度でお顔が見れた以外は、ほとんど隠れておりました。。
パンフおじいさん(これもジジイ。。あっ、失礼)の奥方が後ろの私の視線に気付き、耳打ちされてパンフを少し下げられたけれど、その頃は正邦さんのアイは退場となったのです。。
シクシク。・゜゜ ‘゜(*/□\*) ‘゜゜゜・。あの席は失敗でござった。(教訓!)
で、後シテは神の姿で現われました。
蔦葛(赤い花が幾つも付いてぶら下がってる感じ)の冠に榊の葉を持ち、山伏の祈祷で自由になった葛城の神が大和舞いを舞います。
その舞いはちょっと、翁の舞いに似てるかも。拍子をとりながら踏んでいました。
舞いはさほど激しくはないのですが、最後の方で、日昇が近くなると醜女を恥ずかしがって高天原の岩戸に姿を消すのですが、橋掛かりを行ったり来たりして、動きが活発になりました。
そして、退場の仕方に私は「わぁ~~」と思いました。
幕が段々と少しづつ上がり、シテは後ろ向き(体を舞台に向けたスタイル)に幕内に入るのです。
これは岩戸の中に消えて行ったという表現なんですね。
何かすごく感動しちゃった。こんな終わり方もあるんですね。
いえ、お能は最後の地謡が退場するまで終わってはいないけれど、思わずその時に拍手してしまいそうだった。(まだ、修行が足らないですね)
拍手で思い出したけど、最初の「頼政」の時は、見所全体が拍手のタイミングを「いつか?いつか?」と様子伺いしてた感があります。
シテが退場したときに一人二人、拍手されたんですが、賛同する人はいませんでした。(残念~!)
ワキが退場しても、囃子方が退場しても同じ現象。
いかな事、最後の地謡方が退場される時は拍手なしでは可笑しいので、そこでやっと全員の拍手になりました。
ちょっと、ドキドキしちゃった。私は流れに沿って拍手しようと思ってたんですけど、全体的にギクシャクしてましたわ。
見所も緊張してたのかな。。
でも、「葛城」の時はワキが退場した時に、みんな躊躇わずに拍手しました。
そして、地謡方が退場するときも割れんばかりの拍手。
これでいいんですよね。感じたまま拍手を送れば。
曲によって、余韻を楽しむものは、暫く間をおいてから拍手するほうが似合ってますね。
激しくスピード感のある曲なら、すぐ拍手を送りたくなるでしょうし。
それは狂言も同じ事ですね。棒縛は軽妙な内容と終わり方だったので、シテの千五郎さんが幕に入られる辺りですぐ拍手が送られました。
これで、見所の力も抜けたのかも。やっぱり、狂言って重要な役割してるんだ。
近くに能舞台があって、年に何回か能楽の公演があるって、恵まれてますよね。
この機会を無駄にする事は出来ない。
今年を皮切りに、春の彦根城能は私の定番になるようにして行きたいと心に誓うのでした。
これで、彦根城能のレポは全部終わりです。
つまんない内容になってしまったかもしれないのに、最後まで読んで下さってありがとうございました。
さて、次のレポは是非、萬斎さんと行きたい所ですが、こればっかりは未定でございます。
ホンマに「どこでもドア」が欲しい、今日この頃です。
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