☆f4♪LOVE アンクミの徒然日記

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母への想い







まぶしい朝日が司の部屋いっぱいに射す
勢いよくベットから飛び出すと 階下にかけ下りて行く
朝食の席には父も母の姿もまだない

テーブルにつくとメイドが司の前にスクランブルエッグやトーストを次々と並べだす

「お父様とお母様はまだ?」トーストを頬張りながら聞くと
「昨晩はお二人とも遅かったので まだお休みです」

父や母と一緒に食事をしたのがいつだったろう 思い出せないくらい昔のように思える
でも今日はそんな事さえ気にならない つくしと外で食事をしようと決めていたからである

「ね~~料理長にお昼外で食べるからって伝えて あっ!それから二人分用意して欲しいって」
「はい、パテオでお召し上がりになりますか?」
「んん~ 友達と出かけるから バスケットに詰めてほしいって」

怪訝な顔のメイド 『坊ちゃまにお友達? いつものお友達は来られていないのに?』
「ね~~僕食べ終わった出かけるから 早くしてって言ってきてよ」

ボーと考え中のメイドは慌てて調理場に駆け出して行った

パテオでソフィアとじゃれあっていると 母が声を掛けてきた「司さん 早いんですね朝食はもう済んだのですか?」
「はい お母様」
「そうですか 久しぶりに一緒にと思ったんですが お父様と私は昼には東京に戻らなければなりませんが
司さんはどうしますか?」

ソフィアの首筋を撫でながら「僕はもうしばらくここに残ります いいでしょ」

来るのをあんなに嫌がったのに 「それは構いませんよ でもここが嫌じゃなかったんですか」
「ソフィアが居るから」その事も本当だけどまさか つくしが居るからなんて言えないし

まだ司が小さい時 普通の人と話しただけで叱られた記憶がある
『貴方は道明寺家の跡取りなんですよ そんな庶民と話すなんて』

まるで僕を隔離するようにしてきた母
つくしの事なんて 絶対に話せない

不思議そうにしながらも母はそれ以上聞こうともせずに 家の中に消えた

ソフィアに引き綱を付けると いそいで厨房に駆け出す
料理長がちょうどバスケットに果物を詰め終わるところだった

「ありがとう お母様に聞かれたらソフィアと散歩に出かけたと言っておいて」
バスケット持ってるところなんか見られたらまた色々えと聞かれる
司は急いでソフィアを連れて 裏口から抜けだした

外は徐々に太陽が照りつけ 暑くなってきている
あの小川までは林を抜けるとすぐだ その先につくしが住む管理棟がある

『つくし もう起きてるかな?昨日は何時に会おうなんて決めなかったから 突然行ったらびっくりするかな?』

管理棟に着くと 司はつくしの家がどれなのか知らないのに気づいた
でも そんな事心配する必要がなかった ソフィアが真っ先につくしの家の前に走り着いたからだ

ドアをノックしようとしたその瞬間パッとドアが開いて 司は危うく頭をドアにぶつけるところだった
眼の前に司が立っているのに驚いたつくし 

「わぁ~!! 驚いた どうしたのこんなに早く」
「昨日 今日も会おうって約束したから」

『確かにそう言ったけど まさかこんなに早くから来るなんて』

「ね~出かけようよ 僕お昼持って来たんだ どこかにピクニックに行こうよ」
手にしたバスケットをつくしの目の前に高く掲げてそう言うと

呆れたようにつくしが「いいけど すぐは無理よ お父さんに言われた仕事が終わらないと」

『仕事??子供に仕事を頼む親なんているんだろうか』
司が不思議そうにしていると つくしはさっさと家の横に歩きだしてしまった
慌てて つくしの後を追う 司

そこには小さな小屋が有り 中に10羽ほどの鶏がいた
その横にはその小屋より少し小さな小屋があり そのドアを開け つくしは中に入っていった
暫くすると手にバケツを持って出てきた バケツには半分ほど何かが入っている

鶏舎のドアを開け またしてもその中に入っていくつくし
小屋の中に放し飼いにされた鶏たちが それぞれ鳴きながらつくしの周りに集まってくる

バケツの中身を地面にパラパラと撒くと鶏たちはその細い口ばしで地面を突いている

「さぁ~~終ったわよ 出かけられるわよ」
バケツを元の所に戻しながら司の不思議そうな顔を見てつくしが「鶏 初めて見たなんて言わないわよね」
図星されてバツが悪い司 「そんな事ないよ 鶏くらい見たことあるよ」

思わず口を衝いて出てしまったが 初めて見たとは恥ずかしくて言えなかった

「それで 何処に行くの??」つくしと司の周りをソフィアが静かについてく
「僕 別荘の中しか知らないんだ 君は?」
少し考えていたつくしが 「じゃ~素敵な所に連れて行ってあげる 私の一番好きな所」

木々の間から漏れてくる日差しは 徐々に暑くなりだしている 二人ともうっすらと額に汗が浮いてきた

時折バスケットの中から飲み物を出しては喉を潤すが つくしも司も口数は少ない

暫く歩くと司が 「ね~つくしまだ着かないの?」
「司もう疲れたの・・いつも車ばかりに乗っているからよ もう着くわよ」

別荘を抜けてからかなり歩いた 周りの景色は林から森林へと変わり あたりには人影も見えない

聞こえてくるのは 小鳥のさえずりと 時折道端の草花を揺らす 虫たちの音

その時 かすかに水の音が聞こえ出して 司はどこから聞こえるのか 不思議に思った
次の瞬間 100mもある高さから 勢いよく流れ落ちる滝が 目の前に現れた

その圧倒的な勢いに 足を止め 半ば口を開け見入る 司
つくしがその横を 静かに通り過ぎる

「司 口あいてると 虫が入ってくるわよ」そんな司を見て つくしがからかう

滝は谷合に向かって 一直線に落ちている 
安全のために設けられた柵が幅100m以上にわたって設けられている

いまつくしは その柵に寄りかかり じっと滝を見つめている
つくしの横に同じように寄りかかると 「すごいね!!こんなの初めて見るよ」

「ここに越してきて 暫くしてから父に教えてもらったの それから時々見に来るのよ 話をしにね」
つくしの横顔は昨日見た あのはつらつとしたつくしじゃなかった どこか寂しそうで

「お父さんと来るの?」
じっと滝を見つめるつくし  「んん~ん 違う一人よ」暫く何も言わず その後呟くように「おかあさん
と話すの・・」

「おかあさんと?」そう聞きながら司がつくしの顔を見ると その頬に一筋の涙が零れ落ちた
「つくし・・ごめんね 僕~~」その後は言葉にならなかった

「司が謝ることじゃないわ」涙を拭いながらつくしが無理に頬笑みながら答える

「私 寂しくなると ここに来てお母さんと話すの 今でもとっても綺麗だけど 雨上がりの時が一番好き
あの滝の頂上に虹が架かるの お父さんが虹の先には お前の大好きなお母さんが居るんだよって だから」

また一筋涙が その頬を伝う 「つくし・・泣かないで 僕・・僕ずっと君の傍に居てあげるから」
「お母さんに会いたい・・」その声は 滝の大きな水音にかき消されそうなほど小さく 司の耳に微かに聞こえた

母のいない寂しさを 必死に見せず 明るく振る舞うつくし 
もし 僕がつくしのように 母を亡くしていたら

この時から 司のつくしへの想いは 滝の流れの如く 激しく強くなってゆくのである





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