ストーブ/バーナー/コンロ

■■■ ストーブ、あるいはバーナー/コンロ ■■■

フィールド・クッキングでなくてはならないのがストーブ。といっても暖房用のものではない。バーナーともコンロとも呼ぶが、要するに燃焼装置。家庭の台所のガス台のミニミニ版のことである。
何でも積めるオートキャンプなら脚付きの立派なツーストーブでも何でもいいのだが、ツーリングライダーやバックパッカーは、そうはいかない。
最近では驚くほど軽いものも出ていて、軽さやコンパクトさばかりに気を取られがちだが、、実際のフィールドではそればかりのではない。使い人と使う状況によって、選択肢はいくつもあるから、よく吟味して選んで頂きたい。

1泊2日なら、ストーブなしでも何とかなる(※)けれど、ストーブがあると食事の幅が広がる。山頂で食べるラーメンや、テントの前でお湯を沸かして飲むコーヒーなど、ちょっと重い思いをするだけの価値はある。
 ※初日の昼は下界で、夜は下界で買ったお弁当、朝食はパン、昼食はパンまたは下界で、といった感じ。可能だけれど、ちょっと味気ないよね。
<ストーブ選びのポイント> / <ストーブ使用上の注意>  はこのページの一番下に

ストーブの種類と特徴

自家製ストーブ

これを選択肢に入れていいのか悩むが、自分でストーブを作ることも出来る。
大抵は空き缶などから作り、アルコールや固形燃料を燃料とする。火力はどうしても弱めになりがちだが、自分の好みの大きさのものを作れるのは魅力的。ちょっとしたワンデイトレッキングのお茶の友から、1泊くらいまでなら十分こなせる? 作ることが楽しくて、それで十分満足してしまう、ってこともあるけれど。マルチツール1本で作れるのも魅力。
自作ストーブをアップしている人も多いので、参考に→→→  JSBさん  ブーメランマイスタさん

写真は自作のストーブ。アルミ缶で撮影。写真ではアルコールを燃料にしているが、100均の固形燃料も使える。

固形燃料ストーブ

いちばんお手軽。缶に固形燃料が入っているもの(「ケイネン」や「デュアルヒート」)や、タブレットタイプになっているもの(「エスビット」)に大別される他、鍋料理で使われるタイプのものもある。大抵がアルコール成分で出来ている(プレヒート用のタブレット「メタ」は「メタノール」の省略形。)。従って、空気に触れると気化していく。だから、一度封を切ったら早めに使わないとダメ。
 ・価格:○  (1000円しないものもある。ただし、本気で使おうとするとかなり燃料が必要なので意外と高上がり?)
 ・軽さ:◎  (缶タイプはやや重い)
 ・収納:◎  (缶タイプはちょっとかさばる)
 ・火力:△  (風防がないとかなりツライ)
 ・安全性:◎ (転がさない限り、まぁ安全)
 ・燃料の調達:△ (鍋用のものなら100均でも売っているが、それ以外は専門店で。)
 ・操作性:△ (着火するだけで簡単だが、火力調節は難しい)

火力が弱く、風邪にも弱いものが多いので、非常用として予備に持って行くという感じであるが、ちょっとしたフィールドならこれだけでも何とかなる。

アルコールストーブ

「トランギア」のものが有名。火力が弱いと敬遠する人もいるが、どっこい結構使い物になる。
お手軽で安くて、そしてちょっとレトロでスローなアルコールストーブ(というより「アルコールバーナー」の方が雰囲気が出る)、一番のお気に入りである。ゴミが出ず、空気を汚さないと言われるのも精神的にいい。
灯油やガソリンに比べてアルコールは手についても害が少なく、そしてすぐに気化して匂いが残らないのもグッド。
燃料専用アルコールもあるが、医療用(消毒用)のアルコールも使える。フィールドでの万一を考えれば、こちらの方がいい。度数の高いウォッカも使えるが、当然高上がりである。
 ・価格:◎  (トランギア本体は1500円位。燃料用アルコールは500cc300円位から。医療用なら倍以上。)
 ・軽さ:◎  (本体に燃料を入れて運べば、一番お手軽。ただし、高度がある場合には気圧変化があるので別容器の方が無難。)
 ・収納:◎  (本体に燃料が入れられないタイプは、ちょっとかさばる。)
 ・火力:○  (強くはないが十分使える。風防があるとかなり違う)
 ・安全性:○ (横転には注意。また
炎が無 で、ほとんど 無音で燃える ので、 消えていると思って手を出すとヤケド する。)
 ・操作性:△ (着火するだけで簡単だが、火力調節は難しい。)
 ・燃料の調達:◎ (薬局に行けばどこでも手に入る。国外でも。)
 ・その他 ガスボンベに比べて低温地でも使用可能。ただし、極寒状態ではアルコール自体が燃えない。

ガスストーブ(家庭用ガスカートリッジ用)

ガスストーブの中でも家庭用のガスボンベ(缶スプレー形)を使用するタイプ。コンパクトさでは下の専用カートリッジタイプに劣るが、手軽さと経済性が魅力的。
いわば、卓上コンロの外側部分を取り、骨だけにしたような構造である(卓上コンロを持っていく人もいる。それも山の上に・・・)
 ・価格:◎  (ボンベは3本200円で売っているところもある。本体は3000円位。)
 ・軽さ:○  (専用カートリッジタイプよりは重い。)
 ・収納:○  (意外とコンパクトなものもある。)
 ・火力:◎  (かなり強いものもある。ただし、寒いと極端にパワーが落ちる。)
 ・安全性:◎ (卓上コンロを使う感覚でオッケー。ただし、ガス流失防止ストッパーなどはないので使用は前室で。)
 ・操作性:◎ (自動着火装置がついているものがほとんど。火力調整も簡単。)
 ・燃料の調達:◎ (国外では厳しいが、国内ならどこでも手に入る。 荷物扱いでも飛行機に持ち込むことは不可 。現地で調達すること。)
 ・その他 × 低温に極端に弱い。また連続使用するとボンベ自体が冷えてしまうので、ボンベを2つ用意して、一つをぬるま湯などで温めておき(熱湯は厳禁)、交換しながら使うといい。また、使用の度にゴミがでるのもあまり嬉しくない。

とはいえ、日帰りトレッキングなどを行う初心者には一番のお勧め。
防災用としてもベストチョイス である。

ガスストーブ(専用カートリッジ用)
上のカセットボンベに対して、専用カートリッジは小さいモノでも1個2~300円する。各種アウトドアメーカーから色々な種類のものが出ている。コンパクト差や軽さを極度に重要視しなければ、3000円程度のものでも十分使える。むしろ、余り小さいモノは、ゴトクが不安定など却って使いづらい場合が多い。
 ・価格:○  (本体は3000円くらいから1万円jくらいまで。小さいものほど高い。)
 ・軽さ:◎  (軽量化の極み、ってものもある。)
 ・収納:◎  (折りたたむと、胸ポケットに楽々入るものやライターサイズになるものも。)
 ・火力:◎  (寒いとパワーが落ちる。)
 ・安全性:◎ (カートリッジが土台になるので、大きな鍋を置くのは危険。使用は前室で。)
 ・操作性:◎ (自動着火装置がないものも多い。火力調整は簡単。)
 ・燃料の調達:△ (アウトドアショップ中心。他メーカーのものでも使えるが、保証外。なお、 カートリッジは飛行機には持ち込めない ので注意。現地調達するしかないが、手に入らないこともある。 国内なら郵便で局留め にしておくという手もある。)
 ・その他:× 低温に弱い。低温用のカートリッジもあるが、使い始めは良いけれど、ガスが減るに従って弱くなる。カートリッジを包んで保温するものも売られている(けど、それだけで結構なお値段である。)
 使い切れずカートリッジがたまってしまうこともある他、カートリッジがゴミに成ってしまうのはやはり気になる。(再注入して使うことのできるものもあるが、安全性の点で疑問。←国内基準をクリアしていないものがほとんどのはず。)

短期登山など、荷物を減らして、かつ、そこそこの調理をしたい、という人にはお勧め。山小屋泊の場合でも一つあると、お昼のバラエティが広がるとともに、いざというときにも安心(道に迷ってのビバーク時には暖かい飲み物が必須。精神的にも落ち着く。
ちなみに、120秒でお湯が沸く」ジェットボイルも店頭で見かけるようになってきた。持ち歩き用にはどうかと思うが、予想より軽くて小さいので、意外と持っていく人も多いかも。

ケロシン(灯油)ストーブ
あの植村直己さんも愛用したという灯油ストーブ。ガソリンよりも安全性が高いので、愛用する人は多い。私も最初のストーブはこの手の灯油ストーブ(ホエーブス/オプティマス)だった。
火力が弱い、という人もいるが、普通に使うのなら十分。徐々に加圧され火力が安定していく様も頼もしい。
難点は、灯油だけに手に付くと洗っても匂いが捕れにくいこと。
ソロ用というよりは、パーティー用向きである。昔はこれが主流だったが、最近はガスに取って変わられている模様。
 ・価格:△  (本体は1万円位から)
 ・軽さ:△  
 ・収納:△  (「黒ひげ危機一髪」位の重さ。小さいモノもあるが火力がいまいち。)
 ・火力:◎  
 ・安全性:○ (カートリッジが土台になるので、大きな鍋を置くのは危険。使用は前室で。)
 ・操作性:△ (着火前に「ポンピング」や「プレヒート」の儀式が必要。火力調整がかなり効くものが多い。)
 ・燃料の調達:◎ (世界中どこでも。)

ガソリンストーブ
バイクで国内をあちこち回っていた頃に愛用していたのがガソリンストーブ。MSRのウイスパーライトというもの。本来は白ガス(ホワイトガソリン)専用でバイクのガソリン(赤ガス)は使用不可とのことだったので、目詰まりしながらもマメにメンテすることで問題なく使えた。今では赤ガスOKのものストーブも多いので、 ツーリングライダーにはこれが一番 かも。(赤/白/灯油オッケーというものもある。)
白ガスと赤ガスでは値段が倍近く違い、、かつ、わざわざストーブ用のガソリンを別に持っていくなんでのは面倒。ツーリング中は、ストーブ用の燃料がなくなると、タンクからガソリンを抜いて使っていた。ちなみに、愛用のウイスパーライト(名前だけだと勘違いされる?)は、ウイスパー(ささやき)とは名ばかりにゴーゴー音を立てて燃えていた。でも、誰もいないキャンプ地ではその音が頼もしく、そして、ストーブを消すと静けさが身に染みた。
 ・価格:△  (本体は15000円位から。燃料は赤ガスが使えれば安くすむ。)
 ・軽さ:○  (燃料部分をのぞけば意外と軽い。)
 ・収納:△  (本体とボンベが分割されているものが多い。ガスよりはかさばる。)
 ・火力:◎  (かなりのハイパワー。だたし、弱火が苦手なものも多い。)
 ・安全性:△ (着火時にストーブが火だるまになる場合も・・・。テント内では絶対に使用禁止!!)
 ・操作性:△ (着火前に「ポンピング」や「プレヒート」の儀式が必要。)いキャンプではその音が頼もしく、そしてストーブを消すと、静けさがより一層つのった。
 ・燃料の調達:◎ (赤ガスなら世界中どこでも。)


ストーブ(バーナー)選びのポイント

○軽さ
軽いに越したことはないが、使い勝手や収納時の大きさも考えて。

○コンパクトさ
あまりに小さいと使い勝手が悪くなるので注意。特にストーブヘッドとゴトクの大きさは重要。ストーブヘッドが大きいと燃焼範囲が大きくなるのでいい。特にチタン素材のクッカーは熱伝導率が低いので、ヘッドが小さいと、その部分んしか熱くならなず、そこだけコゲてしまうことも。ゴトクも大きい方が当然いい。小さいと不安定で使いづらい。

○経済的
軽量コンパクトなガスストーブは大体が専用のガスカートリッジを使う。昔よりは安くなったとはいえ、でもまだ高い。

○安全性
火力が強いガソリン、灯油ストーブほど危険性が高くなりがち。時々、天場(キャンプ場)で火柱を上げている人がいる。あれがテント内だったら・・・

○使いやすさ
火力の大きさや、着火の手間、そして火力調節のしやすさは、調理を大きく左右する。
火力が強いガソリンストーブは、ポンピング(加圧)やプレヒート(事前加熱)といった「儀式」が必要。この手間を面倒と言う人もいれば、この手間があるから楽しい、という人もいる。ポンピングしてプレヒートして火を付けている間に、ガスストーブならコーヒーが飲めてしまう場合もある。
ストーブ使用上の注意

・事前に十分な練習をして
 フィールで初めて使い、「どうするんだっけ?」、なんてのは愚の骨頂。。
 もちろん、自薦の練習も屋内での燃焼は厳禁。


・テントの中で使わない。
 不完全燃料やガス中毒で死亡する事故が起きている。もちろん、火事の危険もあるうえ、調理中に鍋をひっくり返してシェラフがグショグショ、なんてコトもよくある話。
 テントから出るのが面倒、というのなら、テントの前室(※)で行うべき。言い換えれば、ストーブを使うのであれば、 テント選びからちゃんと考える必要がある ということ。
 (映画「ホワイトアウト」のワンシーンのようにテント内でストーブを使うことも当然あるけれど、それは熟練者がすること。素人やちょっと知恵がついた程度の人がやるのは自殺行為。もちろん私もやらない。)

※テントの出口の部分にはフライシートが庇(ひさし)のように出っ張っているが、その部分のこと。いわば「土間」である。この部分が広いと、調理が安全かつ快適に行うことができるうえ、例えば雨天時にテント内を濡らすことなく、かつ自分も濡れることなくカッパや靴を脱ぎ着できる。

・予備の燃料は忘れずに。
 ストーブは燃料がなくなれば、単なる「邪魔者」でしかない。とはいえ、南陵の持ちすぎも重たくなるのでほどほどに。
燃料ボトル


・燃料は「燃えるもの」「危険なもの」であることを忘れずに。
 100円ライターでさえ炎天下では爆発することもある。ましてや ガスボンベを直射日光の当たる車内に放置 しておくのはヒジョーに 危険
  また、使用中にボンベが加熱されて暴発という例もある。特に、大きい鍋を使うと熱がナベ下にこもってボンベが暴発する危険性おあるので注意して。

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