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1-18 再審議前日1
再審議前日1:奈良橋議員の訪問
「で、今日は、どうする?二人でどっか行くか?」
「えっと、大切な用事ができたから、そっち行かなくちゃいけないの。
ごめんね」
レイナはそう言って、唐突に部屋から姿を消した。
「ちょっと待てよ、て言う暇さえ無しかよ。ったく・・・」
おれは二人の朝食の食器をトレイに載せてリビングに戻り、AIに渡し
た。
おれはソファに腰を下ろし、自動洗浄機に食器を入れて傍にやってき
たAIに言った。
「ね、これから、おれってどうなるの?もし知ってたら教えてよ、かあ
さん」
AIはいつもより長い間を取ってから、答えた。
「わ、わかりません。タカシ次第でしょうけれど」
言い淀むAIなんて初めてだった。
「もし二人の間に子供ができたら、かあさん、おばあちゃんになるんだ
ぜ?」
「AIに血縁関係は発生しません」
「子供に、かあさんをそう呼ぶよう仕込むかも知れないじゃないか?」
「それは、ご主人様の決定次第です。私に権限はありません」
「ん?じゃあ、自分の希望ってのもあるわけ?」
「私は、今のままで十分です」
「『かあさん』で?」
「はい」
「ふーん。AIって変ってるなぁ・・・」
「タカシ、さきほどの質問に絡んで、一つだけ確かなことがあります」
「何?」
「タカシと中目零那さんの間に子供ができたとするなら、それは人類と
『彼ら』の双方にとって、最も重要な存在になります」
「うん、まぁ、そうだろうけど。具体的に何かがどうか変わったりする
の?」
「私にはわかりません。現在でも、お二人は世界で最も重要な存在とし
て位置づけられていました。そこに、最低でももう一人、加えられるの
です」
「警備が緩くなるとか?でも、中目相手にちょっかい出せる奴なんてい
るのか?」
「警備レベルは最高位に引き上げられます。ただ・・・」
「なんだよ?」
「前例が無いので何とも言えませんが、妊娠状態となることで、今まで
と同様に振る舞えるのかどうか、一部では疑問視されています」
「万が一、その懸念が当たってたら・・・」
「中目さんの力を恐れていた勢力が、この時とばかりに一斉に反撃に出
る可能性があります」
「でもさ、あいつのことだから事前に手は打っておいたんじゃないの?」
「可能性は有りますが、これまでの中目さんの万能さが少しでも損なわ
れたと知れれば、全く予断を許さない状況です」
「じゃあ、何だってあいつは・・・」
「他に、選択肢が無かったからです」
「いずれ、LV3はやってきてしまうから、か・・・」
「はい。その前に、二つの種族の架け橋を築かなくてはならなかった。
『彼ら』にとっても、『人類』にとっても、中目さんとタカシのような
つがいが、今後も生まれるかどうか、全くわからないのですから」
義務感から、か・・・。もし自分がレイナの、中目の立場に立たされ
てたらどうだったろうか。レイナにかけられているELは、どのくらい影
響を及ぼしているのか、気にかかった。当人の自主的な意思ならともか
く、そんなことまで制御をかけられてるとしたら、人が人に対してでき
る最低の事だと憤慨した。
「人を存続させるには、人が人でなくなる必要がある、か」
自分が今まで聞いた中で最高の皮肉だった。
「タカシ。本日、企業院からの修正案の非公式審議が、午前9時から抽
選議員会館の仮説議場で行われます、出欠の問い合わせが来ております
が、返答はどうなさいますか?」
「うーん・・・。何か乗り気になれないし、赫さんは参加しない方がい
いとか言ってたしなぁ。でも昨日の夜の会合は、あんま頭に残ってないし・・・」
「音声のみでも傍聴なさいますか?ほとんどリアルタイムで議事録を受
信することも可能ですし」
「そうだね。何時間かかるかわかんないし、とりあえずそれで。あと、
イワオからは何か?監視してくれてる人達の報告書みたいのがあったら
目通しておきたいんだけど」
「では、審議が開始されたら回線をおつなぎします。それと、大石巌さ
んからは、電話もメールも着信は有りません。本日は通常通り球団の練
習に参加されている様です」
セレスティスから降りて行った時の慌て様からすると、腑に落ちなかっ
た。
「誰かに詰め寄ったりとか、掴みかかったとかは?」
「特に報告されていませんが」
「イワオが会いに行ったり、連絡取った相手のリストとかって見れる?」
「それは、大石巌さんのプライバシーの侵害に当たるのでご覧頂けません」
「どうしても、って言っても?」
「その場合は、ご本人に直接お尋ね頂くしかありません」
「わかったよ。メーラーと仮想キーボード出して」
一瞬でメーラーもキーボードも表示され、おれはイワオに状況を知らせて
くれるよう短い手紙を書いて送信した。
『イワオ。確証が無いことは言えないって態度は立派だし、誰かを確証
無しに犯人扱いできないってのも当然かも知れない。でも、何か心当た
りがあるんだったら、教えてもらえないか?おれにも何かできることが
あったら、遠慮無く言ってくれ』
メールを送信して一息ついた頃には、午前9時が迫っていた。
リアルタイムで傍聴するにしても、その間何をするか少し迷った。
半分休学扱いになっている大学に通うこともできたが、審議が佳境に
入っている時に行くのも変な気がした。そんなことを言ってたら、他の
仕事を持ちながら議員の仕事もこなせるという建前は、やはり建前でし
かなくなってしまうのだが。
そんな時、ドアのチャイムが鳴った。
「奈良橋議員が面会をご希望されております。いかが致しますか?」
AIが言い、リビングの空間にドアの前の画像が映し出された。
「説得しに来たのかな?」
「確認してみます」
奈良橋さんの背後には彼のAIも控えていた。
「ただ単にお話ししに来たそうですが・・・」
「わかった。出るよ」
おれ玄関へ向かい、ドアを開いた。
「どうも、奈良橋さん。もう審議会始まってるんじゃないですか?」
「あんなもん、説得される側が来とらんのに身内で話し合っても意味無
いねん。そんなんより大事な話があって来たんや。上がらせてもらうで」
奈良橋さんはおれの返事を待たずにずかずかと上がりこんでリビング
へと向かい、彼のAIは詫びるように頭を下げて、彼の後に続いた。
おれは苦笑してドアを閉め、AIにお茶の準備を言いつけて彼の後を追っ
た。
「それで、どんな大事なお話なんです?」
AI同士で内密の連絡がついていたのか、出てきたのは自分一人でいる
時には出されてきたことのない煎餅と緑茶だった。
「隠し事のできない身ってのも、辛いもんやの」
「えっと・・・。それって、まさか・・・?」
「そういうこっちゃ。知れるとこには知れとるよ」
おれは、何と答えていいかわからなかった。
「ま、神経質になる連中がいるのも許したってや。命がかかってるさか
いの」
「ゆ、許すも許さないも無いですよ。ていうか、奈良橋さんも全部の事
情をご存じなんですか?」
「全部かどうかは知らん。知ってるのは、たぶんあの中目はんだけや。
レイナちゃんだって律子はんだって首相かて、全部知らされてるかどう
か怪しいもんや」
「そうなんですか?」
「そや」煎餅をぱりぱりと噛み砕きながら緑茶を啜り「例えばな、世界
で一番高い山は2万メートルの高さがあるって、信じるか?」
「確か、エベレストでも9000メートル無いくらいじゃなかったです
か?」
「自分で測ったことあるか?」
「そりゃ無いですけど、いろんな記録見て」
「月とか太陽が地球の周りを回ってるていうのは?」
「そりゃ人類の大半は行って見てきたわけじゃないにしろ、いろんな衛
星とか観測データとか天体写真とか」
「そうや。うちらだけじゃなく、いろんな連中が年月かけて証明してき
とる。いろんな学説が引っ繰り返されながらな。でも、中目はんの話は
どや?」
「いきなりそう言われても。あのアイスベルトの画像とかはご覧になり
ました?」
「見て、直接触れても来た。でも、いまいち信じられへんのや」
「触れてきたって・・・」
「頼めば連れてってくれるで。宇宙服なんぞ無くても平気や」
「そこまでしてもらって信じられないってのは、何でですか?」
「確かに、中目はんの力は普通やない。それは信じる。でもだからって、
全部が全部信じられへんのや」
「『彼ら』が移住してきて人類が絶滅するかも知れないという話とかで
すか?」
奈良橋さんはお茶を啜り終わり、お代わりをAIに注いでもらって、そ
れも一度に呑みほした。
「自分がもうすぐ死ぬ言われて気が動転してるだけかも知れへん。ただ
の、なんやうまく説明できへんが、それが中目はん一人にせよ、『彼ら』
全体の話にせよ、移住そのものだけが目的とも思えへんのや」
「だって、『彼ら』だって死にたくないんでしょ?それ以上、どんな理
由がいるんです?」
「今の宿主とは相当に長い付き合いだそうや。連中かて、なんらかの影
響は受けてる筈やろ?滅びを受け入れた宿主と別れてまで、別の種族を
滅ぼす?それが根絶に近い共倒れに終わるかも知れなくとも?なんか腑
に落ちんのや」
「確かに、勝手に助けたいんなら、宇宙船なり何なりを組み上げてワー
プさせて来ちゃえば済む話じゃないかと、ぼくも思ったんですが」
「生態系とか重力の違いの問題もあって、彼らの今の宿主に基準を合わ
せるのなら、結局人類の生存に適した環境にはならない星になってしま
うみたいや。それもどこまで本気の話やらわからんけどな」
「確かめようが無いですしね」
「そこなんや。わいが一番気にしとるのも」
「でも、こう言っちゃなんですけど、そうなってみないとわからないじゃ
ないですか?」
「そう。だからこそ中目はんは、不安を排除する必要があった。それも
徹底的に」
「もしかしたら、力が弱まったり無くなったりした時の為に?」
「何も無いのかも知れへん。そう思わせて反対勢力の残党をあぶり出し
て一掃するつもりだけなのかも知れへん。わからへん。せめて中目はん
の側の他の誰かと接触できるだけでも違うやろうに、それは一切許され
てへんのや。おかしいやろ?」
「それは確かに変ですね。あいつは理由を言ってましたか?」
「自分は『彼ら』と同じ宿主に宿る前に、レイナを見つけて宿った特殊
な存在。彼らの間の他の誰も、自分を通さずにこちらにはアクセスでき
ない、と」
「なんか、危険を煽って自分を標的にするような発言ですね」
「もしかしたら、それが真実だからかも知れへんけどな。タカシ君の言
うとおりだとして、あれだけの力を持つ種族が、なぜそんなことする必
要があるねん?」
「さあ?わかりませんよ」
「人はなぜ存在するのか?人類共通の謎やな。そこに別の種族が加わっ
たらどうや?」
「解けない謎が増えただけの気がしますけど」
「せやな。そしたらこんなのはどや?なぜウィルスは存在するのか?」
「へ?」
「連中はけったいでな。最初から自分とは別の存在に寄生することを前
提にしてるんや。なぜそんな存在が生まれる?」
「ウィルスの存在定義ですか・・・」
「そや。人間がアメーバから多細胞生物になって、魚や猿といった系譜
で進化してきたとする。その進化の過程に神や何か知らん奴の高尚な意
思みたいなもんを想像するのも可能やろ?
けどな、ウィルスはどや?連中はいろんな抗体に抵抗力持ったりする。
けどそりゃ何の為にや?」
「より、増える為じゃないですか?障害を乗り越えて」
「何の為に?」
「だから、他の生物と同じ様に、増殖と進化そのものが目的なんじゃな
いですか?」
「ここで最初に立ち返るで。連中は最初から他者への寄生を前提として
る。こりゃ矛盾やないんか?」
「あ・・・。そうか。他者がいないと存在できないのに、障害を乗り越
えるってことは、その相手を絶滅させかねないのか」
「そこや。進化を促す劇薬として神だか悪魔だかが世界にスポイトで垂
らしてるんか知らんが、連中はその前提からして存在が矛盾しとるんや」
「安直な反論をするなら、増えていく一方のエントロピーを抑制・制御
する為のバランス装置とか?」
「かも知れへん。連中自身にもその方向性は見えとらんようだし、知的
生命体の数を制御する、か。はっ! まさに人類の天敵やな」
「でも、絶滅はさせない。根拠は無いけど、そう感じます」
「そりゃ、レイナちゃんとタカシ君は生き残るやろ。けど他の連中は」
「かなり減るかも知れないし、減らないかも知れません。でも、減らす
ことそのものをレイナ達が目的にしてるとも、思えないんです」
「今の宿主達の例もあるからか?150億ったら結構な数やしな」
「それだけじゃなくて、アイスベルトなんてものがあって、でも人類の
大半はまだ生かされてる。それが何よりの証拠じゃありませんか?」
「見せられん弱みを連中が持ってるということには、なぜならんのや?」
「そうかも知れないけど、共存が目的じゃなかったら、こんな手間はか
けてないんじゃないですか?」
「単にこっちに命がけで飛んできて、失敗して死ぬのが怖いだけやない
んか?」
「だったら、生きたいっていう目的は一致してるんじゃないですか?人
類と」
「そうかも知れへんけどなぁ。ただの、わいからすれば、例えば連中の
希望者、それでも人類の数が上限になるから、半分がとこは死ぬことに
なるが、その全員が移住に成功したとしてや、中目はんみたいな事が人
類全員にできるようになったら、どの道人類はおしまいな気がするで」
「どうしてです?」
「考えてみい?何でも好きなモノをいつでも好きなだけ取り出せる。い
つでもどこへでも好きな所へ行ける。素人のわいかて、今の経済や政治
やらの仕組みは全部吹っ飛ぶくらいいうことはわかるで。んで二度と元
には戻らへん」
「彼らが配慮して、その能力を封印したら?」
「それはそれで、中目はんの様な特例に要望と負担が殺到するで。際限
も無しや」
「例え人類が壊滅しなくても、しても、地獄ですか」
「相当うまくやらんと、みんな生き残れたとしてもひどいことなるやろ
な」
「あいつにも、おれにも、そんでもしかしたら二人の間の子供にも、明
るい未来なんて無いかも知れませんね」
「わからへんけどな。その為のELかも知れへんしな」
「でも、あいつがそうするのを望んでいるとも思えないんです」
「無い物ねだりかも知れへんで。本人があきらめてたって、なるもんは
なる。願ってたって、ならんもんはならん」
「ずいぶんポジティプな諦め方ですね」
「達観て言うてや。ま、これからも人生の先輩として、わいを頼ってく
れや。ん?」
「じゃあ聞きますけど、奈良橋さんは父親になった事は有りますか?」
「無い。ワケは知っとるか?」
「いいえ」
「人は、それぞれ耐性いうのを持っとるそうや。それが強ければ強いほ
ど、種を残せる相手には恵まれにくいそうや」
「何か逆な気もしますけど。そうじゃなければ耐性が高い事の意味が無
いじゃないですか。耐性が弱い者同士でいくら子孫を遺しても全滅して
しまう組み合わせばかりじゃ・・・」
「そこが不思議やな。縁の一種と考えてもええ。けど、引っくり返して
考えてみい?耐性が高いものがより子孫を残す確率が高く、より多くの
子孫を残してきたというなら、人類の大半は生き残る筈なんや」
「今まではそうだったけど、今度のは、LVは格別ってことですかね?」
「鍵と錠前の組み合わせみたいなもんなんやろな。お互い同士が唯一の
相手、まさに新世界のアダムとイブってわけや」
「でもそしたら、奈良橋さんと二緒さんとか、牧谷さんと内海さんも?
でも内海さんなんて結婚してるじゃないですか?」
「LV3が来て旦那さんが死んだ後なら、なんの問題も無いやろ。この国だ
けやない。どこも必死になって、LV3の後も生き残れる、子供を残せるだ
ろうツガイをさがしとるんや」
「だから抽ばれた・・・」
「もっと言えば、だから、この国には抽選議員制度なんてもんが創られ
たんやろ」
「中目の助言に従って?」
「ま、そうなるんやろけどな。最初の年に、最も優先されるべきツガイ
候補達が選ばれた。そして今年LV3が来なければ、次の候補達に同じ訓
練を受けさせるってわけやろ」
「LV3の後の社会に備えて、ですか・・・」
「そや。人類も必死やからな」
「でも、そしたら一つだけ解せないんです。そしたら何で、今でも、ぼ
くや中目が無事でいられるんです?最期の一人になっても、ぼくらをど
うにかしようとしないんですか?そしたらLV3だって止めれるかも知れ
ないのに」
「だからこそのアイスベルトやろ。あれはまだ時々やけど伸びてるそう
や。
それにな、連中の移住は、もしかしたらあと数十年、数百年は来ない
かも知れへん。そしたら、自分とは関係無くなるわけや。
んでもって、中目はんやLV3の正体について知ってるのは、全体のう
ちほとんどおらん。だからみんな平静な生活を続けられとるんや」
「ぼくが知らせようとしても、氷漬けにされるんですかね?」
「さあのぅ。けど何の為に知らせるんや?」
「ぼくが移住を受けて死ぬ側のその他大勢の一人だったとしたら、事情
は知りたいって思うでしょうから。それだけです」
「自己満足か。ま、レイナちゃんに相談してみるんやな。ただ一つ間違
い無いのはな、タカシ君。知らない内は放っておいてくれる連中も、知っ
たら最後、命がけで向ってくるで。それを一人残らず氷漬けにしたい思
うてるかな。中目はんも、レイナちゃんも」
「でも、殺されちゃうんだったら、仕方無いじゃないですか」
「間違っとるでタカシ君。アイスベルトされてる連中は、全員まだ生き
てる。それにまだLV3で人類が絶滅するって決まったわけやないやろ?」
「そりゃ、そうですけどね・・・」
「わいは、この状況を楽しんどるで」
「そりゃまたどうして?」
「人は昔から神様がいるかいないか、ずっと考えてきて、争ってきて、
答えが出せないでいたやん?だけど今は、信じようが信じまいが、神様
のような存在が実在しとるんや。中目はんが世界に与えた衝撃言うんは、
そりゃすごいもんなんやで」
「地球外知的生命体で、ほとんど何でもアリな存在ですからね。でも当
人は神様じゃないって言ってるみたいですけど」
「本人が自分をどう言ってるかは問題じゃないねん。本人がどう振る舞
い、何をできるかだけが問題や。キリストが普通の人だったのかどうか、
聖書を信じる人とそうでない人とで判断は全く違う。
けど中目はんは違う。信じようが信じまいが、彼女に出来ることは変
わらんのや。こりゃ怖いで。へへへへへ」
「楽しそうですね」
「こんなナリでこんなトコいても、本人は坊主のつもりでおるからな。
こういった話は好きやねん」
「いろいろとお話ありがとうございました。ちょっと一人にさせて頂い
ていいですか?」
「そやな。んじゃまた今度お邪魔するで」
「もう来ないで下さいって言っても来るでしょう?」
「ちがいないな」
笑いながら奈良橋さんは出ていった。
<次へ>
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