映像四郎の百人斬り

「ジャブジャブの夜」

　世間に向かって「ジャブ」を撃つ。

　そんなコンセプトを元に、「ヒキダシ氏」が、

　長年、どんちゃん騒ぎを繰り広げている

　「ジャブジャブ野郎」たちとの酒宴。

　５、６年ぶりに会った人間もいたが、

　基本的に、顔は知っているやつらが、揃っていた。

　「ジャブジャブ野郎たち」は、飲み方も「ジャブジャブ」で、

　頭の中まで、「ジャブジャブ」なのだ。

　しかも、野郎ばかりで、１０人ちょい。

　「ジャブ」をかますというより、

　ドブ川を「ジャブジャブ」素足で、渡りながら、

　月光を浴びつつ、盆踊りしてる感じだ（意味不明）。

　しかも、今回は、「酒池肉林の彼岸の土地」を目指し、

　異郷に旅立つ、若者２名の壮行会も、兼ねていた。

　お酒が、みんなの頭の中に「ジャブジャブ」浸透し始め、

　気勢が上がってくると、

　さらに、ひとりで、レールを逸脱し始めた男が、ひとり。

　「ウサギ男」だ。

　筋力増強に、やたら、凝り始めた「ウサギ男」は、

　酒に酔うと、腕比べ、腕自慢をしたくて、

　うずうずしてしまい、

　「中学生」にまで、退行してしまう。

　私が、人と話していると、

　隙を見て、ほっぺに「ジャブ」をかましてくる。

　「ウサギ男」は、普段、クールで、お洒落なヤツなのだが、

　アルコールが、一定値を越えると、

　ケンカやプロレスごっこが、大好きな

　「中学生人格」が、発動し始めてしまうのだ。

　外に出ると、走ってる車と戦おうとしたりする。

　きっと、頭の中は「ドラゴンボール」と「北斗の拳」なのだ。

　本気で、殴れば、鉄筋コンクリートのビルでも瓦解させられると、

　勘違いしているフシも見受けられる。

　いい加減、大人になってくれ。

　あまりに、腕相撲をねだるので、

　不意打ちで、腕をねじ伏せると、

　私に負けたのが、ショックだったらしい。

　周りの人間は、余りにも、

　どうでもいいことなので、

　遠巻きに無視している。

　一次会が、終了し、外に出ると、

　今度は、ストリートファイトモードだ。

　ローキックをバシバシ、太ももにかましてくる。

　たまに、ハイキックで、私のアゴをかっさらおうとする。

　危ないヤツだ。

　しかし、本人には、悪気がなく、

　嬉しそうな顔をしながら、

　無邪気に、遊んでるつもりなのだ。

　仕方がないので、クリンチし、後ろに周って、

　持ち上げて、「ちんちん」を揉みまくったら、

　悶絶しかけて、大人しくなってくれた。

　（われわれは、ゲイではない）

　それでも、デレデレに

　「ヴァイオレンスモード」に移行している

　「ウサギ男」は、一人だけ、妙に元気だ。

　二次会は、「ヒキダシ氏」と「ウサギ男」と私で、

　「ウサギ男」行きつけの店に行った。

　「ウサギ男」は、そこの常連の「お姉さま」方に大人気なのだ。

　女性客には、挨拶として、みんなと抱きあっている。

　しかし、ここでも、「ウサギ男」のファイトモードは、

　発動し、またもや、ジャブを打ち込み、

　ローキックをかましてくる。

　仕方がないので、足をひっかけて、頭は打たないように倒し、

　唇の脇あたりに、強烈な「キス」を、

　音を出して、２０秒間かますと、

　さすがに、失神しかけて、大人しくなってくれた。

　（私は、ゲイではない。

　しかし、一般的な男性諸氏にとって、

　ゲイに犯されるということほど、

　「この世の悪夢」は存在しない。

　だから、このような荒技も可能なのだ）

　二人とも、おしぼりで、必死に、口を拭きながら、

　ようやく、落ち着いて、飲み始めた。

　「ヒキダシ氏」によると、「右翼バンドマン」は、

　頭だけでなく、遂に内臓まで、破損し始めてしまったらしい。

　だが、依然、正確な所在地は、掴めないのだそうだ。

　気づくと「ウサギ男」は、すでに眠っていた。

　どうやら、今もっとも、「ウサギ男」が、

　惹かれている女性客「ツウ」が、隣に座り、

　安心したのか、甘え心なのか、

　カウンターに、突っ伏している。

　女性客「ツウ」の方に、

　体をよじったまま、寝息を立てている。　

　そして、毎度、３０分から、一時間眠れば、

　「ウサギ男」は、記憶を失って、

　ジェントルなスタンダード人格に戻っている。

　人は、皆、精神構造に、何らかの「歪み」を抱えているものだ。

　「ウサギ男」の「歪み」も面白いと、私は、思う。

　ただ、ＴＲＩＰ時の

　「三度のＳＥＸより、ヴァイオレンスが好き」みたいなのは、

　ホントに、まいる。

　「ウサギ男」の普段の心の中には、

　「０か、１００か」の「ＡＬＬ　ＯＲ　ＮＯＴＨＩＮＧ」な

　モノサシが埋まっていて、社会生活には、

　プラスに作用しているのだが、

　そのシワ寄せとしての「歪み」が、

　ＤＲＩＮＫ時に、暴発してしまっているのではなかろうか。

　全然、悩みなんてない順風男に見えるが、

　知らぬ間に「心理的負荷」を抱えているのだろう。

　「歪み」なんて、別に、直す必要はない。

　ただ、無理に、無理すんなよ、とは思う。

　だから、私は、今後、

　「ウサギ男」と女性客「ツウ」くっつけ計画を発動することにした。

　「ウサギ男」と女性客「ツウ」は、

　お互い「プライド高い系」だが、

　妙に、相互・甘えんぼ関係を

　構築できそうな感じを受けているのだ。

　「ウサギ男」は、ひくてあまたのモテ男らしいが、

　女性に対して、

　中学生のようなツッパリ感覚を保持しているので、

　長続きしないらしい。

　だから、付き合った女性がいて、ＳＥＸはしても、

　「膝枕」などという軟弱なことは、できないそうなのだ。

　そこで、私は、

　「ウサギ男」からの執拗な「ジャブ」をかわすためにも、

　女性客「ツウ」とくっつけ、美しいミニスカの「膝枕攻撃」により、

　「ウサギ男」を骨抜きにしてもらうつもりだ。

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