メキシカン・アメリカンな暮らし

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国際結婚とお姑ごん




無知だと言われても構わないが、お姑ごんなんててっきり日本特有なものだとばかり思っていたのである。
しかし、いざ蓋を開けてみれば、人間世界にはきっとどこにでも居るもので、
私の結婚もやはり例外ではなかった。

良く『国際結婚だからお姑問題も関係ないでしょ。』と日本にいる友人たちに言われるのだが、いやいや、海外にもちゃっかりお舅ごん、お姑ごん、小舅ごん、小姑ごんがいて、国際結婚でも義理家族との問題が起きることもしばしばある、と今は声を大にして言いたいほどだ。


国際結婚、ましてや慣れない海外で住むというのはただでさえ大変なのに、それに義理家族問題まで加わるとなると、負担が大きくないとは言わないが、人間と人間の摩擦と考えれば、義理家族問題そのものが日本のそれに比べて、より特別に大変だとは言えないのではないだろうかと思う。

まあ、国際結婚だと、まず言葉の壁やら文化の違いやらで、国際結婚でない場合に比べるとやはり並々ならぬ努力と歩み寄ろうという意思がより必要になってくるとはいえ、異文化の違いは、時間はかかろうとも“何とか”乗り越えられるものだと思うのである。
私自身、アメリカに住み初めて○年になる今でも、未だにとまどいを感じることも多々あるが、文化の相違を理解し、受け入れられる所は受け入れる構えがあれば、少しずつ馴れてくるものだと私は思う。


例えば、うちのお姑ごんは水曜日と土曜日は肉類を一切食べない習慣がある。
これはメキシコのある特定の地方に住む、カトリック教信者達の典型的な習慣なのだが、肉も食べたい私でも受け入れることが出来た。

お姑ごんが肉を食べれない日は、お姑ごん用に魚料理や野菜をふんだんに使ったご飯を作って、別に、私と夫用には肉料理を作ったり、また、お姑ごんに合わせて魚料理を楽しんだり、少々手間がかかるとはいえ、自分の生活に妥協することなく、また相手にこちらのやり方を押し付けることもなくというやり方をとった。
そうすることによって、お互いに文化摩擦によるストレスを溜めることは少なくなると思ったからだ。


一方、個々の習慣や癖、または感覚や考え方、そして人としての常識の違いを受け入れられるかというのは別の話で、これこそは例え同じ国で育った者同士でも大変なんじゃないかと思わずにはいられないし、嫁姑問題に限らず言えることなんじゃないかと思うのである。

お姑ごんの、隠すような内容でもないのに、人の前でひそひそと誰かの耳元で内緒話をし出す癖、家族だからプライバシーはお互いになくてもいいという感覚、またその他云々には嫌気がさすこともあるし、これには私も、「我慢」か「その場から逃げる」以外の対策法をなかなか見つけきれずにいるので困っているところである。
もちろん、お姑ごんの立場からも同じようなことが言える訳で、きっと私の習慣や癖、感覚の違いで我慢ならないところはたくさんあると思うのだ。


夫も良く私と似たようなことを言う。

『君の文化や習慣は全部尊重したいけれど、夜中の歯ぎしり、、、あの癖だけはお断りだね。』

あと、私の練り歯磨きの使い方が雑で気に入らないらしく、去年辺りから彼専用の練り歯磨きが洗面所に登場するようになった。
彼の練り歯磨きは下の部分から押して使われているのでピシッとした印象があるが、私のはあちこち押されているので、でこぼこのいびつな形をしている。

同じ家庭で育っても、違う人格が育つくらいだし、違う家庭から出てきた人同士が同じ屋根の下で住むのだから、例え嫁姑問題が国際的であろうとなかろうと、互いに歩み寄りがなければ大変なのには変わりはないと思う。

確かに、嫁姑問題が国際的になると、コミュニケーションの道具である言葉から違ってくるし、文化も違ってくる。
その面では、同じ文化背景の人と結婚する場合とは違って、プラスの努力を要することになりうるが、相互理解または相互の歩み寄りが肝要だということはやはりどの結婚においても言えるのではないかと思うのだ。

尚更、姑と嫁の同居なんて、余程仲の良い者同士かお互いを尊重する者同士でなければその苦労は計り知れないだろう。
何度も強調するようだが、尊重すること、理解しようと、または歩み寄ろうと心がけることなどは、決して1人だけの努力だけでは適わないものであって、お互いがそれぞれに努力をしなければならない。
そこが何よりも難しい点だと思うのである。


私は今の所まだ、お姑ごんとは同居していない。
いつか必ずその日はやってくるというのはもう既に分かっていることなのだが、正直不安で一杯だ。
洗面所に転がっているでこぼこでいびつな練り歯磨きとピシッと綺麗な練り歯磨きを眺めながら、もう一つ違う練り歯磨きがあっても何とか大丈夫なような気がしてくるのだが、同居話に現実味が帯びてきているこの頃はせめて心の準備をしなくては、と未だに緊張するのである。



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