田中およよNo2の「なんだかなー」日記

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2005年04月11日
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カテゴリ: ほどよく
みなさん、初仕事って覚えています?

でも、ある人が語った初仕事の話は忘れられません。

僕が再就職活動をしてたときのこと。
内定が出ていたようだった。
それで、面接の後、社員さんが業務中にも関わらず食事に連れて行ってくれた。
社長の指示があったらしい。
もてなしてこい、ってことだったのだろう。

たとえ命令で動いていたとしても、社員さんの態度は紳士的だった。


定食屋に入った。
なんだか、とりとめのない話をした。
社員さんも中途入社だったらしい。
僕への質問は前の会社のこととか、どんな大学にいってただとか、だ。

すると、なんだか社員さんのほうがちょっとずつ、具体的な仕事の内容を話してくれた。
具体的とは、つまり、不満も言葉のハシバシに顔をだしてくるということだ。

「僕の初仕事なんだったと思います」
箸を静かに置いて社員さんは僕に聞いた。
「便所掃除か、なんかですか」
くっすり社員さんの口元だけが笑った。
「違いますよ、伝票を焼くんですよ。会社の裏庭で」


もし、はじめての就職活動だったら、しつこく聞いただろう。
でも、分別のさわりだけを知り始めた、僕は聞かなかった。

間を持たせるために僕は醒めたお茶を飲んだ。
社員さんが前かがみになって、じっと僕の目を見た。
「わかります。それがね、三日も続くんですよ。

みんなね、すぐに僕がやめるとおもってたみたいですけどね」
そして、社員さんは煙草を吸い始めた。

お茶がなくなったから、僕は爪楊枝でも使おうかなとか漠然と考えていた。
煙草が灰皿に押し付けられて、火が消えた。
一瞬だけ、煙が塊になって上がった。

「続いてますよね、それでも」
「立派ですよね」久し振りに僕は返答をした。
「そうでもないですよ…。もし、縁があったらお酒でものみましょうか」
そして、社員さんは会計の伝票と自分のスーツの上着をつまんで席をたった。

僕はその企業を丁重にお断りした。
一人の社員さんに好感が持てても、ある種の匂い、正直に言うとオーナー企業独特の雰囲気が嫌だったからだ。
勿論、社員さんの話も大きな要素である。

『伝票を焼く』

そんなことをする理由はただの一つしか、僕には思い浮かばない。
脱税である。
売り上げを過少申告していたのだろう。
他に思いつくものがあったら、教えてもらいたいものだ。
だから、僕は聞き返すことができなかった。

僕がもし、同じ立場ならどうするだろう。
わからない。

あの人のいい社員さんは焼いた。
事情があったり、あるいは無知だったのかもしれない。
初仕事だから、それを心で唱えていたのかもしれない。
だけども、焼いた。
それだけだ。

きっと、会社のみんなは脱税のことを知っていたのだろう。
おかしいということだって知っていたに違いない。
だけど、何も出来ない。
加担することしかできない。
だから、新入社員により強く加担させたのだろう。

大人になるって時々、切ない。
なぜなら、おかしいと知っていることと、おかしいことを直すことの間には深い溝が横たわっているからだ。
同じように、完全に正しいことが存在しないことも、うすうすとわかるはずである。

最近、電車で新入社員らしき人や、学生で就職活動を見かける。
そんな時、僕はあの社員さんの話を思い出す。
そして、聞いてみたい。
「あなたは伝票を焼きますか?」と。

※もっと、「なんだかなー」なら『 目次・◎お仕事・ビジネス 』まで





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最終更新日  2005年04月11日 23時49分29秒
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