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著者・編者 | ジェームズ・P.ホーガン=著 |
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出版情報 | 東京創元社 |
出版年月 | 1983年5月発行 |
ガニメアンたちを乗せたシャピアロン号が地球を去ってから 3 ヵ月がたった。ガニメアンの子孫であり、故郷の惑星ミネルヴァを離れ、24 光年離れた巨人の星「ジャイスター」へ移住したテューリアンとの交信が続いており、地球がだいぶ前から監視されていることが明らかになった。
そんななか、テューリアン代表団が地球を訪れることになった。物理学者のヴィクター・ハントは、生物学者クリスチャン・ダンチェッカーや国連宇宙軍本部長グレッグ・コールドウェル、政治家たちと、北極圏にあるマグラスキー空軍基地へ向かった。そこに現れたのは、ボーイングの超音速VTOL 中距離輸送機だった。機内から流暢な英語でハントたちを案内したのは、テューリアンのコンピュータ・システム〈ヴィザー〉だった。
ヴィザーはテューリアン世界とリアルタイムにネットワークしており、ハントたちはあっという間にテューリアンへ運ばれた。テューリアン政府代表のプライアム・カラザーが地球人たちを出迎えた。地球人たちは、シャピアロン号を攻撃・破壊し、全面戦争に突入するという事実に反する映像を見せられた。テューリアンたちは、自分たちは地球について 2 つのまったく異なる報告を受けていること、そして国連の動きが不自然であることから、直接、ハントたちに話を聞くことにしたのだ。テューリアンに偽の情報を流していたのは、ジェヴレン人たちだった。
アメリカは、当初、国連月裏面代表団のソヴィエト代表ミコライ・ソプロスキンが陰謀をめぐらしているのではないかと考えていたが、ソ連もテューリアンとの交信には積極的だった。怪しいのはスウェーデン代表で委員会議長二ールス・スヴェレンセンだった。ジェヴレン人とは何者か。スヴェレンセンの正体とは――陰謀・策謀とは無縁のガニメアンやテューリアンは呆然とした。地球人により 5 万年間に及ぶ謎が解明され、因果の円環は閉じたのだった。
コロナ禍の最中、ネットではトンデモ医学と陰謀論が乱れ飛んでいるが、本書を読むと、その親和性の高さも頷ける。科学は現象の再現性を求めるが、ホーガンはカレン・ヘラーに「わたしたち法律家は、実験を繰り返す贅沢は許されません」と語らせる。なぜなら、「犯罪者が条件を一定に保った実験室で同じ罪を犯すということはまずありませんから。それだけに、わたしたちは最初の判断が肝腎なのです」――逆に考えると、「最初の判断」を間違えると、すべてが陰謀論となり、トンデモに結びついていくのだ。死してなお、世界情勢を予言し続けるジェイムズ・パトリック・ホーガンは、おそるべき SF 作家である。
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