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神奈川県の障害者施設で45人が殺傷された事件から2日で1週間です。逮捕された男は依然、障害者を侮辱する言動を繰り返していて、警察などは近く精神鑑定を実施するか協議する方針です。
「津久井やまゆり園」で入所者19人が殺害され、26人が重軽傷を負った事件。発生から1週間を迎える現場には、早朝から大勢の人が花を手向けに訪れました。
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“障害者がいなくなればいいと思った”植松聖容疑者の身勝手な理由による犯行は施設の元職員の心にも大きな傷を残しました。
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植松容疑者(26)は、現在も重い障害がある人を侮辱する言動を繰り返しているといいます。今年2月、衆議院議長宛に犯行予告ともとれる文書を送りつけたほか、措置入院中にも「ヒトラー思想が降りてきた」などと話していた植松容疑者。
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劣等な子孫の誕生を抑制し優秀な子孫を増やすことにより、単に一個人の健康ではなく一社会あるいは一民族全体の健康を計ろうとする思想をいう。それゆえ、「優生学」は「民族衛生学」とも呼ばれる。
ナチス・ドイツが第一次世界大戦中にT4作戦(テーフィアさくせん)ということで障害者を安楽死という名で虐殺してきた。公式資料でも7万人の犠牲が判明しているが、実際には20万人が犠牲になったと見られている。
対象者は障害者だけではなく、労働意欲のない人や夜尿症、反抗する人、不潔な人、同性愛者なども含まれていた。
街中に安楽死の施設が普通にあり、ガス室で殺されており、街の人たちもなんとなくそのようなことが行われていることは知っていた。
そして、このT4作戦で障害者を虐殺してきたという経験を元に、600万人のユダヤ人をガス室で虐殺したホロコーストにつながっている。
優生思想というのは、ナチス・ドイツだけではなく基本的には欧米諸国でもずっと行われいるものだった。戦後も行われていて、例えば福祉大国とされる北欧も、福祉の名のもとに断種手術、不妊手術が行われていた。なぜかといえば、優生思想というのは病気のない社会、より良い社会、人間の進化などの考え方からすすめられてきた。ナチス・ドイツ的な民族の浄化だけでなく、福祉や健康として発展してきたというのが実は優生思想の問題点でもある。日本もなんと1996年まで優生保護法があった。「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」という文言がわずか20年前まで残っていた。これは、国連の勧告などもあり今は母体保護法に変わった。日本も障害者だけでなく、ハンセン病の方が不妊手術を受けさせられたり、障害のある女性が生理になると世話が大変だからということで子宮を全摘させられたりといったことがあった。すべては福祉の名のもとに行われてきており、先進諸国でも日本のように96年まである国は珍しいが、70年代くらいまでは福祉としてより良い社会を作るために行われていた。人類の進化というものが間違ってしまうとこうなるというのが優生思想なので、単純に民族浄化だと思ってしまうとただの悪になってしまうが、基本は福祉という目線もあった。もちろん、福祉の名のもとに行われてきたことも間違いではあるが、だからこそ広がってきたということでもある。
一方、今回障害者を安楽死させるべきだという思想を容疑者は持っていたわけだが、安楽死についてはどうだろうか。
尊厳死は多くの国で認められているが、安楽死はオランダやベルギー、ルクセンブルク、アメリカの一部の州など多くはない。尊厳死というのは、「死の迎え方を選ぶ権利」を認めたもの。例えば無駄な延命治療をしないというのは死の迎え方の選択権になる。
しかし、安楽死というのは「死ぬ権利」を認めてしまうことである。つまり、多くの国は自分が死にたいと思ったら死んでいいということは許していない。だけど、どう死ぬか、どうやって自分の命を終わらせるかということについての最後の選択権は許そうというのが尊厳死である。
今回の事件後の問題点として、事件の全容がわからないのに政府は措置入院の見直しをすぐに言い出している。 特に自民党の山東昭子氏は「人権という美名の下に犯罪が横行している」、「犯罪予告者にもGPSを埋め込むことを検討すべき」などと発言している。つまり、社会にとって危険になりうる人物であれば、人権を阻害していいという発想は障害者の人権を阻害する容疑者と変わらない。
措置入院とは何が重要かといえば、精神疾患のある人を自害や他害からその人を守るために入院するわけで、社会を守るために入院させるわけではない。それを危ない人を出さないという発想にしてしまうのは、非常に危険である。そもそも、今回は措置入院よりも警察が威力業務妨害や脅迫で立件できる案件だったのではないか。なぜ、措置入院という精神科の医師にあのような難しい案件を投げてしまったのか。
日本は凶悪犯罪や殺人が少ないのに、こういった極端な事件だけで急に高圧的に人権を縛り付けようとするのはいかがなものか。
容疑者は犯行後にTwitterで「世界が平和になりますように。」と自撮りの写真と一緒にツイートしていたことが報じられているが、本当に怖いのは、その後にある「beautiful Japan!!!!!!」の方だ。美しい日本、美しい国のために美しくない人を処分しようという発想、これが優生思想で世界平和よりも彼は、「beautiful Japan」のためにこの犯行を行ったということだ。
美しい国、強い国を目指し、みんな人類をやたらと進化させようとするのが優生思想であるが、私たちはいつでもそちらの方向に行きかねないとも言える。美しい国や強い国というのは、今の与党が好きな言葉で、そういう発想こそが今回の事件の背景にあると思われる。
本来は、いろいろな人が生きられる社会の方が生存戦略にかなっていると思われるのですが。
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http://bylines.news.yahoo.co.jp/sendayuki/20160728-00060463/
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http://bylines.news.yahoo.co.jp/satoshoichi/20160803-00060680/
・相模原・障害者施設19人殺害事件 植松聖容疑者が凶行後、ツイッター投稿するまで - dot.
http://dot.asahi.com/wa/2016080200175.html
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