ルナ・ワールド

ルナ・ワールド

悩み



「別れるってわかってるのに、付き合うってどういう気持ちなんだろう」と言っていた友人の声が頭から離れない。
その時は、「私はまだ別れるって決めたわけじゃないからはっきりとはわからないけれど・・・」とは言いつつも、そういう人の気持ちがわかる、と初めて確信を持った自分に気がついていた。それが良いことだとは思えなかった。

可奈子は今まで、真剣な恋愛はことごとく避けてきた。
最終的に破局を迎えることがわかっている関係には時間も努力も払いたくなかったからだ。

でも、それで得たものは恋愛という、非常に近しい人間関係に対する忍耐心のほぼ完全な欠如だった。

良介の経済観念のなさにはあきれ返っていた。
そして、それを直そうともしない、その根本ともなる原因を直視しようともしない良介にも憤慨していた。
初めに可奈子を良介に引き寄せた、その長所の裏側がハッキリするにつれ、可奈子の呆れは増していった。

「もう我慢できない」と言う言葉がいつも喉元まで出掛かっていた。
そのたびに、可奈子は良介から顔をそむけていた。そして、過度のストレスから来る頭痛に耐えていた。

社交的な人がいい。
当たり前の知性と常識を持ってる人がいい。
生きることの喜びをかみ締めている人がいい。
この世の中に意義を見出して生きている人がいい。

そういうことを明確に思った直後に現われたのが良介だった。
社交的であることは好きでなかったようだが、人当たりは良かった。
四大出で、普通の知識も、常識も持っているようだった。
生きることの辛さも喜びも知っているようだった。
生きることの意義を見出すことを人生の課題にしているような所があった。

可奈子の願っていなかったような条件まで全て満たしてくれる、夢のような人に出会えた、という気分に可奈子は酔いしれた。信じられなった。
あるいは、それを捜し求めていたから、それが目についたのかも知れないが。

可奈子は、まだ迷っていた。



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