ルナ・ワールド

ルナ・ワールド

介入


ある夏の日
見かけた光景は
目の裏に焼きついて
一生、離れないような
気がする。

見たのは
5歳ぐらいの女の子が
すごい形相をした男女に
叩かれているところだった。

ひっそりとした都内の公園で
夜も遅く、
折檻されているのは明らかだった。

理由はわからない。
そもそも理由があったかなんてわからない。

あの二人のすごい形相と
その子のくたびれた様子からして
理由などなかったのではないかと思ってしまう。

私はなぜそのとき
何もしなかったのだろう。

なぜ足早に通り過ぎて
気づかなかったふりをしてしまったのだろう。

新聞で
虐待の末、死体で発見された子供の話を聞くたびに
育児ノイローゼになり、子供を虐待してしまう(母)親についての心理を読むたびに

あの光景が目前にたち現れる。

またあの光景を目の前にしたときに
私は何かできるのだろうか。
今度こそは何か違った行動がとれるのだろうか。

2005年6月5日
アトランタ空港にて。

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