ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Apr 6, 2008
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「熱狂の♭シ」

quartet.JPG

 今日のカルテットの練習では、 前回 に引き続き作品135に挑戦。一般的に言われるところの、ベートーベンの最後の作品。

 3楽章と4楽章を練習した。バイオリンは僕とパトリシア、ビオラはマリオン、チェロはチャールズ。

 ベートーベンの緩徐楽章って僕は実はあんまり好きじゃない。っていうか、はっきり言って「嫌い」なので、練習する前からとても憂ウツだった。
 でもこの3楽章レントは意外にいい感じ。美しい曲だと思う。少なくとも、同じ後期の 作品127 の遅い楽章よりはわかりやすい。

 幸福感を漂わせながらもどこか深刻。翳りを帯びててアンニュイ。フラット五つだし、弾いてる僕らも別の意味で翳りまくり。


 ベートーベンらしいなーと感動してしまうのは、ここまでじらしといて、頂点に登りつめたとたん、そこに停まることなく三オクターブ真下に急降下したりするとこ。しかもスビトピアノ。ベートーベン以外の何者でもない意を決した潔さに背筋が伸びる瞬間。

135.JPG

 4楽章。「あらねばならぬか Muß es sein?」、「あらねばならぬ! Es muß sein!」のやり取り、第九の4楽章みたいで弾いてて楽しめる。

 ベト様最後のカルテットの終楽章だし、荘厳で崇高なフィナーレを期待してると拍子抜け。意外に素朴で軽やかなのに驚く。滑稽ですらあるし。
 絶望やはかなさの裏返しなのか、あるいは単に開き直ってるのか。人生の終りが見えてきてる彼の「カラ元気」っぽくも思えて不憫?

 それに、ころころ転調するので落ち着かない。ほんとにこれでいいのか、弾きながら不安になるけど、それがまた「かくあらねばならぬ」ということなのだというのが我々の強引な結論。
 こじんまりピチカートとかやっちゃったうえ、最後の音符を弾き終えてふと我に返る。なんとも透き通った響き。ヘ長調。

 ベートーベンって、 弦楽四重奏1番 もヘ長調だったよーな。
 彼の書いた最初と最後のカルテットが同一調だなんて偶然とは思えないっ。←いや、たぶん偶然かと……。





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最終更新日  Apr 8, 2008 08:10:44 AM
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